編集者に原稿を見てもらうも、相手のアドバイスをまったく聞こうとせず
「ある有名作家は36歳、またある作家は44歳で世に出た。だから自分も」と吠えていた。
デビューもままならないのにサインの練習、デビュー時のコメントや
インタビューの応対を考える日々。
『17 年の歳月は彼の中の尊大なる自尊心を肥え太らせるのに十分な時間であった
いつからか彼は「漫画を描く」喜びよりも
「漫画家になって周囲にもてはやされる自分」を
夢想する喜びに日がないちにち、浸るようになっていた。
本来、漫画のアイデアを考えるために使われるべきであった彼の脳細胞は
その夢想と現実の間の埋まらない溝を埋めるための
理論武装にひたすら費やされていくのであった。』