Fight1「きっかけは突然に」
そのバーには金網リングが設置されていて格闘イベントが行われている
「ただ今の勝者、無敵のチャンピオン、マウンテンボーーーブ これで今夜5連勝だ」
ナレーションの男がそう叫ぶと会場が揺れるくらい歓声が上がった
「もう挑戦者はいませんか?今夜の勝者はボブになってしまうぜ」
しかしあれだけの巨体の男と戦うものも居なく会場が静まり返る
これでボブの優勝と誰もが思ったとき、観客席に居たアロハシャツ一枚にジーパンを着た黒人の男が手を上げた
「俺がやってやるよ」その男がナレーターに向かって言うと、静まっていた会場も熱をとりもどしたように歓声が上がった
「モーリス、生活費かかってるんだからちゃんと勝てよ」
彼と一緒に居た男がそう叫んだ
「分かってるよ。勝ちゃあいいんだろう?」そう返事を返した彼は自身満々のようだ
リングに上がると、ボブが近づいてきてこう言った
「おいチビ、俺は手加減できねえから、やられる前に逃げたほうがいいぜ」
半ば余裕という彼の発言を小ばかにしたようにモーリスと呼ばれていた男はこう答えた
「なあ、あんた、どういう風にやられたい?失神KO?それとも<ギブアップしてレフリーに泣きつくか?」
そういうとボブの形相が変わりいまにでも飛びつくかの様だった
レフリーがルールを説明しついに戦いは始まった
「Fight!!」
ボブが開始早々、巨体を生かして突進してくる
「退屈だな」、そういうとモーリスと呼ばれていた男は
特にタックルを避けるではなくファイティングポーズで構えている
ボブのタックルがあたる瞬間モーリスと呼ばれていた男が放った
右フックが彼のわき腹にヒットする。その瞬間「ミシッ」という鈍い音が聞こえた
完全に動きがとまったボブにモーリスと呼ばれていた男のローキックが彼の右足に完璧にヒットした
ありえない方向に曲がったボブの足。彼は立ち上がることができない
いかんせん足がは折れていて悶絶している
うずくまって動けなくなったボブにモーリスと呼ばれていた男は笑いながこう言い放った
「お前はもう死んでいる」
その瞬間彼の勝利は決まり、バーの歓声がこれまでにないほどの高鳴りを見せた
「勝者は、ん?君の名前なんだっけ?」
ナレーションの男が聞く。すると彼はこう答えた
「モーリス・J・スミス」彼はそう答えた
このあとナレーションはボブの時のように挑戦者がいないかと会場に聞いたが、ついに誰も現れなかった。
この瞬間、賞金はモーリスの物になった。
「モーリス、さっきの試合よかったよ でも少し遊びすぎじゃない?突進してきてるんだからさ、アゴに一発やってやったら失神KOじゃない?」
先ほどの男が試合後のモーリスに言った
「まあいいじゃん。一発で決めたら会場盛り上がらないでしょ? てかそれより金も手には入ったんだし、飯でも食いにいこうぜ」
モーリスは試合後の雰囲気を微塵も見せず、そう答えた
結局連れの男が金をけちってハンバーガーを食べに行くことになった