イイヨイイヨー、ガンガレー(゚∀゚)ノ
俺、今日は激マブさんに会いに来たんです、
本当はもうこの店に行きたくなかったんだけど、一言お礼が言いたくて…、
ここに居れば激マブさんが来るんじゃないかなって、
まさかいきなり今日会えるとは思ってなかったけど、
あの、とにかく、昨日はどうもありがと…、
中間君は一気に話し終えると台からカードを抜き、足早に私の横を通り過ぎました。
あっ、ちょっと中間君!
突然の告白に呆けてしまった私は、店を出ようとしている中間君を慌てて呼び止めました。
近年まれに見る名作
今から君のお父さんと会うんだよ、飲みに行く約束なんだけど一緒にどうかな?
中間君は未成年だから普通の飯屋でもいいし、お父さんも喜ぶと思うんだ、
中間君は私の呼び掛けに振り返ってくれましたが、
父親のことを言った途端に顔を背け、心を閉ざしてしまいました。
いや、俺はいいっス、俺と会ったことも話さないでください、あいつ怒るから…、
そう言うと中間君は足早に店を出て行ってしまいました。
しまった、と私は思いました。
北村部長に対する中間君の態度を見ているのですから、
ストレートに誘ったところで断られるのは当然予測できることです。
私は一体何をやりたかったのでしょうか。
空気の読めない発言を猛省しながらしばし呆然としていると、
背広のポケットに入っている携帯電話が鳴りました。
さっき会社を出たので駅前まで10分程度で着く、と北村部長からの電話です。
財布を開きバーチャカードを忘れていないか確認しながら、
中間君と会ったことは北村部長には内緒にしておこう、
と私は考えました。
古い雑居ビルの地下1階、北村部長お気に入りのショットバー「三庫裏」に今日は先客がおりました。
カウンターの端に座っているその老婆はマスターよりも一回り近く年配ではないでしょうか。
マスターと会話をするでもなく、ただ黙ってグラスを傾けておりました。
ベージュの半纏に茶色の綿パンを履き、白髪を束ねて老眼鏡をかけた彼女は、
そこいらのスーパーで買い物をしている
普通のお婆ちゃんにしか見えませんでした。
外で飲むにしても、気取ったバーを好む様には思えません、
マスターの知人でしょうか?
やぁお久しぶりです、こんにちは、
と彼女に向かって北村部長が言いました。
はいはい、こんにちは、今日は鬱陶しい天気だねぇ、
と老婆は笑顔を見せました。
どうやら彼女もこの店の常連客で、北村部長とは顔見知りのようです。
カウンターに座った北村部長はカルボナーラを2つ注文しました。
店に入る前、小腹が空いているので今日は飯を食えるところで飲みませんか?
と私は提案したのですが、部長はこのカルボナーラを強く推し、
結局今日も三庫裏で飲むことになったのです。
はぁ、カルボナーラですか…、
私は米を食わないと食事を摂った気がしない質で、
ラーメン、焼きそばなど麺類は全ておやつと思っております。
特にパスタなどは女子供の食い物と内心バカにしておりました。
しかし、ナイスミドルなマスターが作った
ほんのり醤油の香りのする和風カルボナーラは
私の想像を超えてウマいものでありました。
野村君、昨日は本当にありがとう、
私が食べ終わるタイミングを見計らったかのように、北村部長がそう言いました。
部長もう勘弁してください、そう何度も礼を言われると、かえって恐縮です、
と私は照れて言いました。
後ろめたさがあるせいか、北村部長に礼を言われると妙に心苦しいのです。
938 :
保守:2007/12/10(月) 23:32:26 ID:yVJQDXdVO
仕事を早々に切り上げ、バーチャに励む俺
強敵達と切磋琢磨し、とてもいい汗をかいた。
家に帰り、シャワーを浴びた俺の目に排水溝に流れ行く黒い物体が写った…。
男にはもう一つのバーチャがある。
抜け毛という名のバーチャが。
ヽ( `Д´)ノ ゴキかと思った(排水溝の黒い物体)
すまない、話の取っ掛かりが欲しくてね、
ところで君は息子のことを知っていたようだが…、
一体どこで知り合ったのかね?
と北村部長が言いました。
ええ、中間君…、いや息子さんとはこっちに着いた初日にゲームセンターで知り合いまして、
私も彼も同じゲームにハマってるんですよ、ははは…、
私はバーチャを素晴らしい趣味だと思っておりますが、
ゲームをやらない者からすればたかが子供の遊び、といったところでしょう。
悪事を働いているわけではないのですから、
世間体を気にして秘密にしたり、ことさらへりくだる必要は断じてありません。
と私は考えているわけですが、それでも他人に話すのは気恥ずかしいものです。
四十を過ぎた中年のゲーセン通いは、決して人様に誇れる行為ではないのですから。
ああ…、そうだったのか、私はその…、テレビゲームというものに疎くてね、
息子は家でもずっとゲームをやっているようなんだが…、そんなに面白いのかね?
と部長は言いました。
ゲームと言っても色々ありますので一概には言えませんが…、
私のやっているゲームは1対1の対人戦で勝ち負けを競うゲームですので、
囲碁や将棋に近いものがあると思います、
操作やルールを覚えれば以外に奥が深くて、大人でも楽しめますよ、
と私は、大人でも楽しめる、をことさら強調して言いました。
そうです、バーチャは子供から紳士淑女まで楽しめる、
知的かつメンタルな遊戯なのです。
942 :
俺より強い名無しに会いにいく:2007/12/16(日) 09:48:35 ID:FcS39Z72O
次回、『部長もアーケードデビュー!?』
このスレまだあったのか
北村部長は宙を見つめて私の話しを聞いていました。
バーチャの話が北村部長の興味を引いたようには見えなかったので、
マズい、熱く語り過ぎたかな、と私は不安になりました。
しばしの沈黙の後、実は息子のことなんだが…、と北村部長は中間君のことを語り始めました。
名前は恭介と言うのだが、大学をすぐに辞めてしまってね、
この半年間何もしないでフラフラしとるんだよ、
大学を辞めてすぐのときは私も恭介を目にする度に叱りつけていたんだが…、
あいつは俺に何を言われても言い返さないんだよ、全く無反応なんだ、
相手にされていないというか…、息子に無視されるのは辛いもんだ、
俺にはあいつが何を考えているのかさっぱりわからん、
そう言うと北村部長はグラスを一気に煽りました。
場違いじゃね?2ちゃんでやらなくても…
2ちゃんでって2ちゃんだからこそだろ
どこの誰だかわからない名無しの一人が書いてるからこそ良い味出るんだと思う
少なくとも俺は毎週楽しみにしてる
年内には完結してほしいね。
はぁ、その…、ええと、難しいですね、
と私は首を傾げて考え込むフリをしました。
深刻な話は苦手です。ましてや父と子のすれ違いのことなど、私にわかるはずがありません。
軽はずみな発言をして後で後悔するよりはいいだろう、
と考えた私は、最小限の相槌で聞き役に徹することにしました。
いや、すまない、もちろん君にこんな話をしてもどうにもならんのはわかっとるよ、
私の心中を察したのか、北村部長はそう言って笑いました。
いやその、はは、お力になれなくて申し訳ありません、
逆に北村部長の気遣いを受けて焦った私は、
何か気の利いたセリフはないかと、今まで観た映画や読んだ書物を思い返しました。
そうしているうちになぜか脳裏に浮かんだのは、5年前に他界した親父の姿でした。
独り身の私には親の気持ちはわかりませんが、
うちの親父は自分勝手で、気に入らないことがあると家族に怒鳴り散らすような男でした、
私のことを気にかけてくれたことなど1度もなかったと思います、
北村部長はいい父親じゃないですかね、
と私は言いました。
ははは、ありがとう、
と言って北村部長はマスターにウーロン茶を頼みました。
今日は酔いが回るのが早いようです。
君の親父さんは話し下手で照れ屋だったんだよ、
君のことはいつでも気に掛けていたはずだ、と北村部長は言いました。
今となっては私もそう思います。
気難しい偏屈者、その親父が死んだとき、
1度として腰を据えて語り合わなかったことを後悔したものです。
さて、そろそろ帰るか、と北村部長が言いました。
私は迷いました。中間君とゲーセンで会ったことを話したほうがいいのでしょうか、
私に礼を言うためにゲーセンに来た勇気を北村部長に伝えるべきではないのでしょうか。
部長、私はもう少し飲んで行きます、今日はありがとうございました、
と私は言いました。
そうかね、それじゃあお先に失礼させて貰うよ、
愚痴に付き合わせてすまなかったね、お疲れさま、
北村部長はそう言って店を後にしました。
酒が入っているせいかも知れませんが、
帰り際の北村部長はずいぶん表情が和らいだように思えます。
少しは気が晴れたのではないでしょうか。
結局私は中間君と会ったことを言えませんでした。
中間君が言わないで欲しいと望んでいる以上、
その意志を尊重するべきでしょう。
マスター、と私は人差し指を立てて言いました。
さっきのスパゲティ、おかわりください、
私は飲み足りなくて店に残ったのではなく、食い足りなくて店に残ったのです。
いやぁ、ほんとにウマい、このカルボナーラはどう作ってるんですか?
と私はマスターに聞きました。
企業秘密でございます、
とマスターは微笑みを返しました。
そのやりとりを聞いていたカウンター端の老婆が、けたたましく笑い出しました。
あっはは、そんなものが美味いとはねえ、
最近の若い者は本当に美味い物を知らないね、
お客様の前で勘弁してくださいよ、おいとさん、
いつも微笑を浮かべているマスターの困り顔は初めて見ました。
どうやら「おいと」と呼ばれるこの老婆は、相当馴染みの常連客のようです。
婆ちゃんファイター方面に話が動いて来たな
そちらのお兄さんご免なさいよ、悪気はないんでね、
老婆はそう言って笑いました。
大きな目を笑い皺が縁取っております。
若い頃はさぞやお綺麗な方だったのではないでしょうか。
彼女はこのビルのオーナーなんですよ、
とマスターが言いました。
いつもこうして店に来るお客様をからかうのです、
私の店で閑古鳥が鳴くのはオーナーのせいではないですかね、
とマスターは老婆を睨みつけました。
何を言っとる、私が来なけりゃこんな店とっくに潰れとるよ、
この店が流行らん理由はお前さんが不自然に背伸びして格好つけとるからだ、
見かけ倒しで薄っぺらいんだよ、のう兄さん、
と老婆は私のほうを向きました。
この男は昔、私の会社で左官職人をしておってな、
仕事は遅いわ腕は悪いわ頭は悪いわ、
仲間からも相手にされないダメ職人だったよ、
そう言うと老婆は声を出して笑いました。
へえ、意外ですね、
と私は言いました。
てっきりどこかの一流ホテルで勤めていた方かと思いましたよ、
ちょっとおいとさん、私の話はもうよしてくださいよ、
とマスターは不貞腐れました。
そうかい、お前さんの話なら一晩中喋り続けてもネタは尽きないがね、
と老婆はまだマスターをからかい足らなさそうに言いました。
しかしキタさんにも困ったものだね、
と老婆は再び私のほうを向きました。
子供が父親に逆らうなんざ、私らの時分じゃ考えられなかったよ、
あれで会社じゃ部長なんて呼ばれて威張っているんだろう?
一度仕事ぶりが見てみたいもんだよ、
そう言うと老婆はまたカラカラと笑いました。
まったく元気なお婆ちゃんです。
すっかり圧倒された私は、アハ、アハ、と阿呆のように愛想笑いをするしかありませんでした。
ところで兄さん、昨日あんたが暴れた店も私の店だよ、
唐突に発せられた老婆の言葉に私は焦りました。
ええっ!? ゲーセンのことですか?
そうさね、駅の南側の建物はほとんど私のものだよ、
と老婆はビールを飲みながら横目で私を睨みました。
そうでしたか、それはとんだご迷惑をおかけしました、
と私は頭を下げました。
別に迷惑しちゃいないよ、
と老婆は目尻に皺を寄せました。
たまには何か事件がないと退屈で仕方ないさね、
ところで兄さん、あんたはキタさんのドラ息子のことをどう思うかね?
と老婆は私に聞きました。
私は…、いい子だと思いますよ、
そう言って私はここに来る前に中間君と会ったことを話しました。
何だ、今日も来てたのかい、毎日ゲームをやりに来るぐらいなら、
いっそのこと店で働いたらどうかね、
と老婆は言いました。
あっ、それいいですね、店員がゲーマーのほうが
レバーやボタンの調子が悪いときに言いやすいですよ、
と私は言いました。
仕事をするつもりならまずあの風体をどうにかして貰うよ、
客商売だからね、言葉遣いも改めなけりゃならんし、
同僚との人間関係も上手く築いていかねばならん、あの子に出来そうかね?
と老婆は私に聞きました。
いや、そこまではわからないです、実際やってみないとわからないですよ、
それに私自身そんなこと出来るかどうか自信ないですね、
現に今の職場でも私1人浮いちゃってて、はは…、
と私は頭をかきました。
そうかい、しかしあんたは正直な男だね、
と老婆に言われ、いや、それほどでも、と私は照れました。
勘違いするんじゃないよ、お前さんは馬鹿だと言っとるんだ、
それじゃあ女にもモテないだろう、
そう言って老婆は立ち上がりました。
そろそろ帰るとするか、楽しかったよ、
最後まで高らかと笑い声を響かせながら、老婆は店を出て行きました。
昨日は飲み過ぎてしまったな…、
2本目の缶コーヒーを買った私は、
こめかみを押さえながら休憩室の長椅子に腰掛けました。
昨夜老婆が帰った後、1人でさらに小一時間ほど飲んでしまいました。
出張最終日に二日酔いで出社、情けなくも私らしい有り様であります。
早く帰って横になりたい、
そんなことを考えながらクリーム色の壁を見つめていると、
休憩室に北村部長が入ってきました。
どうしたのかね、何やら具合が悪そうだが、
と心配する部長にことの顛末を話し、
私は二日酔いであることを告白しました。
君はもっと己を知らんといかんな、年を考えて飲まんと、もう若くはないんだから、
と北村部長は笑いました。
しかし、おいとさんがそこまでの地主とは知らなかったよ、
あのビルのオーナーということは知っていたが、
と北村部長はしきりに感心しました。
これ以上親子の問題に首を突っ込んでいいものかどうか、
私は迷いましたが、思い切って北村部長に自分の考えを提案することにしました。
部長、恭介君をおいとさんに紹介してみてはいかがですか?
私のほうから恭介君に話しをしてもいいですし、
恭介君にとっても興味のある仕事だと思うのですが、
と私は言いました。
ゲームセンターか…、と北村部長は眉間に皺を寄せました。
野村君、私はいつまでも恭介にゲームをやらせていたくないんだよ、
せっかくだが、その話は断らせてくれんかね、
と北村部長は言いました。
残念ですが仕方ありません。中間君をゲームから遠ざけたいという気持ちはよくわかります。
北村部長はゲームにハマる中間君の気持ちを理解できないのですから。
そうですか、恭介君の社会復帰の取っ掛かりになればと思ったんですが、
と私は言いました。
それにおいとさんに合わせたところであいつはロクに挨拶も出来んよ、
恥をかくのは私じゃないかね、
まるで自嘲するように言い放った北村部長のその一言は、
私の心に熱い怒りの炎を灯しました。
部長、何を言っているのですか? 息子さんを人に紹介するのが恥ずかしい?
それは本気で言っているのですか?
いや、それは言葉のアヤというものだ、落ち着きたまえ野村君、
私の語気の強さに驚いた北村部長は、私をなだめようと引きつった笑顔を見せました。
部長、私は落ち着いています、ええ落ち着いておりますとも、
私は手に持った缶コーヒーを一気に飲み干しました。
部長はゲームがお嫌いですか? 私も中間君も大好きですが、それが何かお気に触りますか?
私はバーチャのおかげで若い友人が沢山できました、
遊びとはいえ技術を競い合う日々に精神の鍛錬もされたと思っております、
ゲーセンで働くのは恥ずかしいことですか?
部長は自分の仕事がそこまで誇らしいとお思いですか?
私には部長の仕事もゲーセンの店員も大した違いはないように見えますがね、
いつの間にか休憩室のまわりに人だかりができていました。
ほら、野村君、皆見ているじゃないか、場所を変えて静かに話さないかね、
北村部長は辺りを見渡しながら脂汗をかいています。
そんなことどうでもいいよ北村君!
と私はさらに声を張り上げました。
大事なのは中間君の気持ちじゃないか、そうでしょう?
私がさらに言葉を続けようとしたそのとき、
突然工場内に火災報知器のベルが鳴り響き、私は我に返りました。
部長、火事です! 早く避難しましょう!
と私が慌てて北村部長の袖を掴んだすぐあとに、
今のベルは火災報知器の動作テストです、
と構内放送が流れました。
…来週消防訓練なんだよ、君には伝え忘れたようだ、すまないね…、
とすっかり消耗した北村部長が言いました。
ホテルに戻り、荷物をまとめる作業はものの数分で終わりました。
休憩室での演説を思い返すと顔から火が出る思いです。
会議室で最後の挨拶をした際、
皆一様に気違いを見るかのような眼差しで私を見ていたように思えるのは
私の思い過ごしでしょうか。
北村部長はあの後すぐに外回りに出てしまいました。
改めて無礼を謝罪したい私は、
とりあえず夜までどこかで時間を潰す必要がありました。
どこか、と言っても、もちろん私の向かう先はゲーセンです。
まだ時間は午後3時です。誰もバーチャには座っていません。
私は1人で練習を始めました。
1人プレイとはいえ、入れたつもりの投げ抜けが入っていなかったときなどは悔しいものです。
私は時折、ああっ! また入ってない!
などと声を上げながらプレイを続けました。
そのうちに1人の若者がバーチャコーナーに現れ、私との同段戦が始まりました。
八段にしては強過ぎる、と私は思いました。
最初の一戦で私を遥かに上回る力量を感じたのですが、
なにせ彼しか相手がいないのです。私は腹をくくり連コインしました。
結果かろうじて1度だけ勝てたものの、私はほぼストレートに七段に降格してしまいました。
ああ、ついに出張前よりも段位を落としてしまったな、
覚悟の上の事とはいえ、私は気落ちし、うなだれました。
相手が悪かったですね、この人メインは王ですよ、
背後からの声に振り向くと、そこに立っていたのは中間君でした。
毎日居ますね激マブさん、俺もだけど、
と中間君は恥ずかしそうに笑いました。
私達はメインが王の若者に交互に乱入し、組み手状態の対戦を楽しみました。
そのうちに人も集まりだし、バーチャコーナーが賑わいを見せ始めた頃、
私の携帯に北村部長からの電話が入りました。
ようこそいらっしゃいませ野村様、
三庫裏の扉を開くと、いつもと変わらぬ微笑みを浮かべ、マスターは
1人カウンターを磨いていました。
おや、今日はお一人ですか?
とマスターは言いました。
いえ、北村部長もじきに来られますよ、
私はそう言ってカウンターに腰を降ろしました。
ゲーセンを出るとき中間君に今日で帰る旨を伝えると、
もう1度対戦したかった、
としきりに残念がってくれました。
北村部長が店に顔を出した時、私はマスターと今年のプロ野球について話をしていました。
私は席を立ち、深々と頭を下げ今日の非礼を詫びました。
おいおい、止めてくれたまえよ野村君、マスターが驚いているじゃないか、
と北村部長は笑いました。
しかし君は見た目と違って…、おっと悪い意味ではないよ、
息子を助けてくれた時といい、本当に熱い男だな、
そう言うと北村部長は今日の出来事をマスターに話し始めました。
ひとしきり店内が笑いに包まれた後、北村部長は私に頭を下げました。
野村君、君の一喝は効いたよ、私が石頭だったようだ、ありがとう、
と北村部長は言いました。
もう1度恭介と腹を割って話し合ってみるよ、
おいとさんにも相談するつもりだ、
その言葉を聞いて私は嬉しくなり、北村部長の手を握り締めました。
部長、その意気です! と私は北村部長にエールを送りました。
実はもう一つ君に謝らねばならんことがある、
と北村部長は再び頭を下げました。
今回の広告の話だが、実は最初から他社に決まっていたんだよ、
数社を比較して検討している、というポーズ作りのために君を利用したというわけだ、
この埋め合わせは、いつか必ずしたいと思っている、
無駄足を踏ませて本当に申し訳ない、
と北村部長は言いました。
そんな事でしたら構いません、
と私は言いました。
現に私は今、別のことを考えていてそれどころではありませんでした。
さっき中間君をチームに誘えばよかった、
まったくどうしようもない愚図であります。
私はそのことを思いつかなかった自分が歯がゆくてなりませんでした。
まだ中間君はゲーセンに居るだろうか、
そんなことを考えているうちに、おいとさんが店に顔を覗かせました。
おや、あんたら今日も居るのかい、
なんだ、いい年した男が手なんか繋いで、気持ち悪い、
そう言うとおいとさんは、私達の脇を素通りし、カウンター奥の椅子に座りました。
突然ですが、そろそろ失礼致します、
と言って私は立ち上がりました。
おいおい、おいとさんも来たことだし、もう少しゆっくりしていけばどうかね、
と北村部長が言いました。
いえ、実はさっきまで中間…、いや恭介君と遊んでいましてね、
大事な話をし忘れてしまったんですよ、すぐに店に戻らなければ、
と私は言いました。
966 :
◆23CLwV/abQ :2007/12/30(日) 15:21:50 ID:9/6cqZScO
それでは部長、4日間お世話になりました、マスター、おいとさん、また会いましょう、
と私は扉の前で皆に向かって敬礼しました。
野村様、しばしお待ちを、
そう言うとマスターは私に特製カルボナーラのレシピを耳打ちしてくれました。
作り方は市販の料理本の表記そのまんま、隠し味として、
しこたま味の素をぶち込んでいるのでございます、
とマスターは不器用に片目をつぶって見せました。
なるほど、ウマいはずであります。
三庫裏を出た私は、規則正しく街灯が並ぶ駅前の通りを駆け出しました。
中間君は私のチームに入ってくれるでしょうか。
私のチームメイトは中間君と同年代です、きっと仲良くなれるでしょう。
私はチームの皆でここに遠征する光景を想像して可笑しくなりました。
三庫裏のカウンターが満席になるのは、きっと開店以来初の快挙でしょうから。
何とか激さん出張編を書き終えることができました。
この2日で一気に打ちましたので、誤字脱字が多いと思いますが、ご容赦ください。
やはり携帯でこの長さはキツかったです。
応援や批判のレスをくれた方々、読んでくれた方々、ありがとうございました。
まだだ!まだ終わらんよ!!
次回、激マブ上等兵出張編最終話・それぞれの明日へ…
乞うご期待!
969 :
俺より強い名無しに会いにいく:2007/12/30(日) 19:40:24 ID:sAD7Lp0W0
次回
あいつの名前はシャガパンマン
お楽しみに
>>967 以前「激さん鳥付けてくれ」と言った者です
どうもお疲れ様でした
971 :
俺より強い名無しに会いにいく:2007/12/30(日) 20:19:46 ID:EKNImk3T0
次回
アイツは北京からきた!!
お楽しみに
面白かった。
おつかれ。
何気にマスターがいい味だしてた。
味の素だけに。
あけおめ
974 :
俺より強い名無しに会いにいく:2008/01/19(土) 12:29:41 ID:SEqxK2OpO
スレ的にはあと1作か…
作品の保存の準備に入ろうかな…
976 :
俺より強い名無しに会いにいく:2008/01/20(日) 13:09:50 ID:BxWmr85pO
>>975 需要ないかもな… 何らかの形で作品を残したいもんだが
次スレ もうひとつの鉄拳とかどーよwww
まあ次スレ立てるほどの勢いもない品
これはこれで終了ということにしようじゃないか
忘れた頃にまた立つかもね
無理してパートスレにしてもすぐ落ちるだろう
978 :
俺より強い名無しに会いにいく:2008/01/26(土) 08:15:00 ID:+lH5E0Rz0
なかなか良かったよ。
次のアイデアを考えようか。