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「沢山あるからいっぱいたべて!」
女の子が自身の名が彫ってあるお箸を差し出す。
「えへへ、これ私のだけど手持ちがこれしかなくて…//」
(ドキン‥ドキン…)
君の鼓動が高まってくる。極度の興奮状態。
このおぞましい程支配的な期待はお弁当を食べたいからではない事に君は気付く。
もちろんデザートにでもないはずだ。もう無意識のうちに自分で気づいているのかもしれない。
「美味しそうだ」
君は「重い」お箸を受け取り、そう言う。
話は変わるが、重たいものを持っていたとして、手を放したらどうなるだろうか?
まっすぐ、深く、迷う事なく「底」まで、そして気持ちよく落ちていくだろう。
-美味しそう?確かに…それはすごく美味しいのかもしれない。
「早ーく食ーべーてよぅ!」
女の子は薄く咲いたピンク色の艶っぽい唇を濡らしながら、やや急かす様に言う。
君は先ずさくらんぼを手に取る。2つで1組、ニコイチという奴だろうか。
君はそのさくらんぼの房を引きちぎる。二つは一つずつになってしまった。
その瞬間に君の中の何かがプツっと切れた。
ああ、壊してやりたいな。