【うみねこ】古戸ヱリカスレ お箸2膳目【名悪役】

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472名無したんはエロカワイイ
本スレよりコピペ
多分これがカケラ384384834359359045でいいよ。

12年眠り続けた女性が目を覚ます。ベッドの脇には黒髪の女性が。
「・・・ここは? あなたは・・・?」
「・・・・・・っ。私はドラノールデス。
 初めまして、こんにちわ。ヱリカ」
「・・・何人ですか?ハーフ?」
「覚えていませンカ?アナタが高校の演劇部で書いたミステリーの感想を送ったものデス」
ヱリカはポカン口をあけて、彼女の顔をまじまじと見て、そしてベッドから跳ね起きた。
「私の書いた脚本を、匿名で赤ペン使って訂正しまくったの送ってきたムカツク奴ですね!?」
確か、ミステリー好きなことを買われて、演劇部の彼氏に頼まれてミステリー物の脚本を書いた。
読むほうも解く方も散々やったが、書く方は初めてだった。
そして、ずっと動かして居なかった体が、急に働かされてあげる悲鳴を聞きながら身を捩ってベッドに倒れこんだ。
「匿名じゃないデス、きちんとペンネーム書きマシタ」
「ぐっ、くぅぅ……それを匿名って言うんですよ……!あのペンネーム、ノックスの十戒に基づいて訂正してるからそれモジっただけで、個人特定できる要素無かったでしょうが……!」
そこで、はっとしてヱリカはベッドの上から彼女の、若さの抜けてきた顔立ちをした彼女を見た。
そして、痛む体に鞭打ちながら自分の手を顔の前に持ってくる。
白くてやせ細っていてみずみずしさのカケラも無くて、いつか見た母親の手から暖かさと柔らかさを抜いたような、嫌な手だった。
「あんた、当時何歳ですか」
「高校生デシタ、アナタと同じ高校デス。クラスは違いまシタガ」
そこまで聞いて、ヱリカは寝起きながら即座に理解した。
一体自分は何年もの間眠っていたのだろうか。
そうだ、あの時彼氏に振られて、何もかも失ったと思って自暴自棄になって海に……。すっかり血の気の抜けた、生気の無い表情になって、ヱリカは掠れた声でドラノールと名乗った女性に尋ねる。
「それで、顔も見たことも無いような相手が、この古戸ヱリカに何の用で?」
ヱリカの問いに、ドラノールは眉一つ動かさずに応える。
「アナタの次回作を待ってまシタ」
「・・・・・・は?」
「アナタの書くミステリーを待っていたんデス、ずっとずっと楽しみにしてまシタ」
何の冗談かとヱリカはいぶかしんだが、ドラノールの表情はしごく真顔だった。
「は、ははは、あはははは」
「変デスカ?」
「変ですよ!おっかしい!あは、あはははは」
「実は友人にもよく言われるデス」
「あはは、でも、なんだか創作意欲がわいてきました
アンタのお好みに合うかは知りませんけど」
「どんなのデスカ?」
ドラノールが目を輝かせた。
ヱリカは、眠っている間に見た夢の中から、そのカケラを拾い上げて言葉を紡いで行く。
「うん、愛とかなんとか、そういうくっだらなくて甘ったるい吐き溜めのカスみたいなこと書き連ねたような、ひっどいミステリー
しかも、その甘ったるい愛って奴がある見方をしないと、絶対解けないんです
夢の中で、そんなミステリーを解けたら、そして生み出せたらって……最後にはそう願ったんです」
夢の中の記憶は曖昧だったが、最後の言葉だけは力強く断言することが出来た。
「それは、すごく楽しみデス」
ドラノールの硬い、愛想笑いとかそういう融通の利きそうに無い顔が、好奇心に見開かれていることが、今言ったことが彼女の本心であると告げていた。
そのことに、ヱリカは心の底から安堵させられることに、そして初対面の相手に対してそんな安らぎを覚えるお人よしな自分に新鮮な驚きを覚えた。
「きっと楽しい夢だったんデスネ」
ヱリカは首を横に振り、声を震わせながらこう呟いた。
「ううん、全然です」
そしてついにヱリカは目に涙を浮かべる。
「夢の中にすっごくムカツク奴が居て、私のことケチョンケチョンにしやがったんです。だから、今度はあんなの私にも簡単に出来るってことを、そのミステリーを書いて証明して、それでソイツをギャフンと言わせて
それから、そのついでにアンタも満足させてやりますよ」
そこまで言うと、ヱリカは十数年ぶりの覚醒に疲れきったのか、瞼を下ろして呟いた。
「ちょっと、時間かかっちゃうかもしれないですけど・・・・・・」
「あわてないデ。ゆっくり始めまショウ。今日まで待ったんデス、ちょっとくらい伸びても全然平気デス」
「……ぁりがと」
そうしてヱリカは、今度はそんなに長くは無い眠りについた。