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ベタな定番だけど、やっぱこういうの好きw
やよいの母親が、病に蝕まれていた事
その病は、手術を施さない限り100%助からない事
そしてその費用は、今のやよいの家庭状況では、まず捻出が無理な事
おまけにその金額は、普通の家庭でもおいそれと出せる物では無い事
いつも、元気で明るいやよいの源は、家族があるからなのだ
生活が苦しくても、父や兄弟そして母が元気で居るからなのだ
その母が欠けてしまう…
大事な家族の一員が欠けてしまうかもしれない…
そんな厳しい現実が待ち構えてる未来を、どうしてその小さな胸で受け入れる事が出来よう?
「あんたって、ホンとにバカなんだから…」
溜息と共に、呆れた様な台詞が伊織の口から漏れた
「だって…エグ…ヒック……、だ…ヒック……って…」
だが、言葉とは逆に優しい表情を浮かべると、やよいをギュッと抱きしめる
「…え? い…お…」
「あんたの目の前に居るのは誰だと思ってんの? この水瀬伊織様よ?」
「い、伊織ちゃ…」
「なんで、そんな大事な事、とっとと言わないの!? なんであんたと、duo組んでると思ってるの!?」
「だ…だって…」
「あんたと…私…し、し、親友じゃ無かったの!?」
「!」
伊織が赤くなりながら、やよいを睨む
その表情は、まるで心底怒っている様だ。心からの友人に頼りにされなかった自分を恥じる様に
「で、でも…そ、そんなお金、一生働いても私には…」
伊織が何を言いたいのか、薄っすらと解る
が、そうだとしても、今のやよいにはそれを返せるだけの裏付けが無いのだ
「あーっ、もう! ホンとーにバカね!」
今度は、本当に怒った様な表情
「そんな端金、トップアイドルなら直ぐ返せるじゃない!」
「で、でも…私、トップアイドルじゃ…」
「なれば良いじゃない!?」
「…え?」
「だから、なるのよ!」
「そ、それって…」
「そうよ! トップアイドルになるの! あんたと私で! 2人で!
だから貸しとくわ、トップアイドルになるまで
それに利子は要らないわよ、どーせ38円とか言うんでしょうから
あー、それなら『いつも笑顔で居る事』にでもしようかしらね?
大体、しけた面でドンヨリされて傍に居られると、私も気が滅入ちゃう(ry」
「…う…うぅ……うあぁ…うわぁあああああんんん! 伊織ぢゃあぁあああんん!!!」
伊織の言葉を聞いて、涙でくしゃくしゃの顔をしながら彼女にしっかりと抱きつき何度も何度も頷く
「もう、ホンとバカなんだから…」
ポツリと伊織が呟き、やよいを抱く腕に再び優しい力が篭もった
数ヵ月後、全国にその名を轟かせる事になるのを未だ知らない
そんな彼女達の或る日の出来事だった