甘い誘惑なんて退けるに限る。まあ、無理だけど。(1)
お口の匂いが甘くてしかたない一児の母、ミュールです。
主な成分は砂糖。具体的にいうとポット3杯分の角砂糖。
『ミュールは甘い息を吐いた! しかしアヤタネは眠らなかった!』
『……何をやっているのですか?母さん。』
物好きにも古代のテキストデータ『葉隠れ』を(しかもペーパーメディアで!!)
読んでいたアヤタネは不思議そうに首をかしげる。
すきをついて耳元に吹きかけたのに効果ゼロ。母さん、なぜか悲しいです。
それはさておき、むう、古代でもっとも成功したレトロゲーの1つが元ネタなのに
アヤタネには伝わらなかったみたいです。
母さん、ちょっと残念な気持ちだけど少しばかし優越感をかんじてますよ?
アヤタネにも知らないことがあるのですね。
アドヴァンテージ、プラス1。
『ところで母さん、やけに息が甘い気がするのだけど、
まさかまた僕に黙ってお菓子をたべてないでしょうね?』
アドヴァンテージ、マイナス10。
自爆ですか?
完膚なきまでに自業自得ですか?
甘い誘惑なんて退けるに限る。まあ、無理だけど。(2)
『た、食べたわけないじゃないですか……
ちゃんと私は今日に用意されたお菓子しか食べてませんよ?』
用意された以外の場所で角砂糖は食べて来たけど。
ひさしぶりに昔の知り合いに会って、なんか少し嬉しくてついつい手が伸びて、
気がつけばポット3杯分の角砂糖食べてきたけど。
……うーん、3杯分。我ながら凄いと思う。我ながら情けないとも思う。
『なんとういか、角砂糖を3杯分煮詰めたような甘い匂いがするんですよね。』
あなたエスパーですか。
なんでそんなピンポイントなんですか?
『母さん、虫歯の原因であるミュータンス菌は糖分によって繁殖するらしいよ。』
そしてアヤタネの右手に輝くのは虫歯除石用のドリル。
ギャルンギャルンいわせてます。
なぜか満面の笑みを浮かべるアヤタネ。
涙を浮べながら全裸で逃げる私。
恐ろしいまでに、今日もいつも通り。
そんな母と子のガチ日常。