面白いフリーソフト レビュー&攻略質問スレPart180
「!ユウ!後ろへ下がれ!」
「なっ!?突然どうしたんだ!?」
ユウの背後から、見た目はワニような鋭い牙を持った巨大な魔物が姿を現せた。
「おっとぉ、なんだこいつは!?……1つ目のワニ?見たことねぇぞ」
「魔獣バジリスクだ!石化に気をつけろ!」
「かーっ!特殊攻撃をしてくる奴は嫌いだ!さて・・・と、逃げるか」
「ユウ、お前は下がっていろ。ここは俺に任せておけ」
「おう、頼んだ!俺はここで、ばっちり見守っていてやるからよ!」
ルイは手にしていた剣を握りしめ、今まさに襲いかかろうとしている目前の相手に集中した。
1つ目の化物は巨大な体に反した俊敏な動きで、即座にルイの背後に回り毒液を吹きかけた。
「ちぃっ!」
「ルイ兄!大丈夫か!よーし、しょうがねぇ、ここは俺が!」
「問題ない……かすり傷だ」
ルイは攻撃態勢に入ったユウを差し止め、再び剣を構えた。
ユウも兄の気持ちを察したのか、一度抜いた剣を鞘に収めた。
「闇剣ディアボロスに敗北の意志はない……」
そして一呼吸おき、バジリスクとの間合いを詰めた。
バジリスクもまたルイとの間合いを詰め、お互いに攻撃が届く距離にまでなった。
「闇の翼に包まれろ!!」
ルイの奥義・死闇翼が相手を死の淵へと誘(いざな)う。
……がしかし、その破壊力は大地をも揺るがすものであったが、
この魔獣相手には、たとえ奥義であろうとも致命傷にすらならなかった。
「ルイ兄の攻撃が効かない……のか!?まさか闇属性の耐性を!?」
そう思った瞬間、どこからか呪文のような声が辺りに響いた。
「汝が司りし破壊の衝動を解放し、その全てを我に委ねよ!
爆炎を纏い出でよ、イフリート!!」
青年の声が止むと空が曇り、炎の精霊が時空の狭間よりその姿を露にした。
イフリート。ガイア世界における四大精霊の1人で、炎の精霊である。
イフリートは獄炎ともいえる威力の炎でバジリスクを焼け包み、息の根を止めた。
「助かったよ、イフリート。だが、ちょっと力を使い過ぎたみたいだな」
「ふ……生憎(あいにく)、手加減など知らぬものでな……」
青年はその精霊に礼を言い終わると、ユウ達の元に歩み寄った。
ユウたちにとって精霊を見るのは初めてではない。
だがイフリートと会話している者を見るのは、初めてのことであった。
「精霊と……会話だって?お前は!?」
突然彼等の目の前に現れたその青年、髪は黒色で歳は17、8に見える。
顔立ちは幼く、優しい表情をしている。
「よっ、危ないとこだったな。まさかあんな場所でバジリスクが出るなんて、
あんた達よっぽどツイてないね」
「さっき精霊を喚んだな。お前、精霊術士か?」
「ん?あぁ。まぁ、そんなものだ。俺はレヴィン・アルナム。よろしく」
「俺はルイ・スティン、こいつは俺の弟ユウだ」
「えーと……ルイ・スティンとユウ・スティンね。ふむふむ。
でも兄弟揃ってこんな森まで訪れるなんて、あんた達結構もの好きだな……」
(……妙だな。こいつ、聖ヘレンズ帝国将軍ユウ・スティンの名を知らないのか。
それに……あの剣はまさか……)
ルイは少し疑問を抱きつつ、この青年の持っている剣を見た。
「おい。その剣はまさか、せ……」
ルイが言いかけたその時、後ろから彼を呼ぶ大声がした。
「レヴィーーーーーーーン!!」
「んあ?あー……。ザリアか……。あいつのことすっかり忘れてた」
「あーいたいた。先に行かないでって、いつも言ってるでしょ!
まったくレモリア大陸まで来て迷子なんてシャレにもなんないわよ……って、
あれ?貴方は……ユウ様……ですよね?」
ザリアという名の女性は赤い髪で、歳もレヴィンと同じくらい。
見た目も性格も活発で、さしずめユウの女版といったところか。
彼女は聖ヘレンズ帝国元博士であるブラウンの孫娘でもある。
当然博士の孫娘であるザリアは、国の将軍であるユウのことを知っていた。
そして傍らにいる精霊を召還したこのレヴィンという青年こそ、
かつての英雄リュナン・アルナムの子孫であることを、まだユウ達は知る由もなかった。