源さん :ミブロ博士は物事の分かる男だ。儂に送られて来た手紙には、
先ず契約金と報酬の事が書いて在った。時候の挨拶すら言わずにだ。
まりも :金が目当てか…。
源さん :そうとも。ソッカーの勝敗なんぞ如何でも良い。儂は金が欲しかったのだ。
パンツ :何て卑しい魂…。あんさん、其の自分の行いが如何なる結果を招いているのか分かっとんのか?
源さん :百も承知だ。其の上で、儂は繰り返し言おう。金の為なら、何でもすると。
りょうま:終わったな…。
モザイ :ええ、もう引き返せないでござる。
チェケOH:其れでYO? 金が手に入って幸せなのかYO?
源さん :"本当の幸せは金で買えるものではない"と…。そう言い度い訳か?
馬鹿がっ…!確かに…幸せは金では買えない…。
だが儂が買い度かったのは、"幸せ"ではない。"安心"だ。
タワシ :成る程。「地獄の沙汰も銭次第」。
源さん :今も世界では多くの者達が、己が身を不幸と嘆き、或いは幸せに成り度いと叫んでいるだろう。
だが彼らは大きな勘違いをしている。不安なのだ…!不幸なのではなく…!
安心し度いのだ…!幸せに成り度いのではなく…!そして購入可能なのだ…!金に依って其れ等は…!
ひよこ :おジイちゃん…。フアンだったの…?
源さん :そうとも。所帯も無し、人望も無し。有り金も残り少ない初老の人間に、どんな生きる道が在る?
ホームレスか?犯罪を犯して刑務所暮らしか?
其れとも何処かの都市型保守よろしく、「下流社会」本で嘲笑されて死んで逝くか?
増して肉体の衰弱で要介護者に成りでもしたら、もう眼も当てられんぞ?
誰も儂の世話などしては呉れん…!糞尿で溢れ返る介護用オムツ…!そして孤独死…!
終わりだ…!此れが儂の辿る道か…!儂は塵に成るというのか…!
金だ。金が全てを解決する。金さえ在れば、衣食住は完璧に保証される。
ホームヘルパーだって雇える。或いはその専用の施設へ入居出来る。
ブルマ姿の眼鏡っ娘が世話して呉れる一流所だ。
儂は別に幸せになど成り度くない。愛だの友情だの、何処吹く風よ。
只単に、安心が欲しかったのだ。金に依って保証される、無味乾燥で盤石な安心。
不釣合いに綺麗な十字架まで続いている、独りきりの小道を。
まあこんな老い耄れの悩みなど、若人たる御前達には分かるまいがな。
パンツ :ああ、分からへんな。こんな地獄の切れ端なのに。今更譲り合いも語り合いもあらへんやろうよ。
まりも :問題なのは、貴方が敵か味方かという事。
貴方が何の悩みを抱えてようが、そんな事は如何でも良いのよ。そう…。如何でも良い…。
どんな道を辿ろうが…。塵に成ろうが成るまいが…。煩いのよ…。はっきり言って…。