暫定名スレ
61 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 00:15:37 ID:yatWsq+0
「てんかーい!」
サギエル軍副官ハーティスは右手を大きく振り回しながら、雷鳴の如き声を上げた。
小柄な体からは想像もできないその声はグーティルに多少のプレッシャーを与えながらも、
勢いを殺すまでにはいたらなかった。
一方ガンダダは身を低くし、馬との密着度を増しながら粛々と転回する。
『ハーティス、無事でいろよ』
走りつつ、副官の方を一瞥すると、壁塞を右手に見ながら南下する形となった。
城壁の上を見やる。
城壁の高さは約30メートル位、厚さはざっと10Mとあろうか。
ガンダダは暗部(スパイ等)がもたらしたグリンパッセナの図面を頭に描きながら、
実物と比べ合わせイメージをより強固に固めていった。
「いくぞ!」
右手の武官達に目配せする。
武官は頷くとすぐさま後ろの馬群に飲み込まれていった。
ガンダダはマントを脱ぎ、兜を脱ぎ捨てた。
そこには、そのマントの中に納まっていたとは考えられない程の筋骨隆々な肉体が表れた。
上腕ニ頭筋、三角筋、広背筋、尺側手根伸筋、大腰筋、大髄ニ頭筋・・・。
全ての筋肉が完璧なまでに鍛え上げられていた。
62 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 00:33:55 ID:yatWsq+0
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ガンダダは思い切り息を吐く。
「すぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅ!!」
次に思い切り息を吸い、丹田に力を込める。
「ぬぅぅん!!」
掛け声と同時に手で複雑に印を作り、紋を切る。
その刹那、ガンダダの筋肉が倍程にバンクアップされた。
「ふしゅゆぅぅぅぅぅ〜」
後ろに下がった武官はガンダダ専用の弓屋輸送担当の兵士に彼の命を伝えた。
兵士はすぐさま馬を加速させて、先頭を目指す。
「しかし、武官殿」
兵士が上目遣いで武官に伺った。
「なんだ?」
「前から聞きたかったのですが、この弓は道具を使って弦を引くのではなかったでしょうか?」
「そうだ、よく勉強してるな」
武官は先頭を見ながら褒めた。
褒めて伸ばすのはこの隊の方針だ。
「それで、いつ弦を引いて発射準備するのかなと思っていて・・・それで昨日その命令が下るだろうと思って無かったので。」
「うん」
「それで質問ですが、弦を引かなくて良いのでしょうか?」
「君は・・・新人君かね?」
武官は兵士を見て微笑んだ。
「そ、そうです。」
63 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 00:48:41 ID:yatWsq+0
「それじゃあ、知らないのもありえるか・・・ガンダダ将軍は結構名の通った人だと思ってたけどな。」
「すいません。」
兵士は頭を下げた。
「いやいや、確かにこの弓は機械的に弦を引かないと使えない・・・あの人を除いてはね。」
武官は顎で前を指す。
そこには、オークを思わせる様な筋肉隆々の人物が馬上にいた。
「!」
武官はその兵士の様子を面白そうに眺めながら続ける。
「あれが、ガンダダ将軍だよ。あの人が本気を出すとああなるんだ。ああなれば誰も敵わない。」
「そそ・・・それでは。」
矢担当の兵士が両手で矢を差し出す。
「それは爆矢といって、1キログラムの矢の先の容器に、4キロの火薬を詰めた物だよ。」
「ひっ!」
「弓の中腹に線が出ているだろ?それが導火線だ。」
「こ・・・こんなもの打つなんて無理ですよ。」
「それが出来るのが・・・ガンダダ将軍なんだ。」
武官がそう言い終えた時には、もう先頭に追いついていた。
「ガンダダ様、持ってまいりました。」
ガンダダは無言で右手を差し出す。
兵士は慌てて弓を差し渡した。
次に左手を差し出す。
爆矢を差し渡す。
「我剛神弓の力、とくと見るがよい!」
言うが早いが、ガンダダは弓矢を構えた。
兵士は驚き、落馬しそうになった。
64 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 01:22:54 ID:yatWsq+0
ガンダダが弓を構えるのを見て、壁塞から弓が飛ぶ。
しかし、弓はこちらに届く直前で地に落ちた。
「あ・・・明らかに射程範囲外だよな。」
心配そうな兵士とは対照的に、武官は余裕をもって眺めていた。
ガンダダは目で武官に合図する。
すぐさま武官は導火線に火をつけた。
ガンダダは再び目を壁塞に戻し、図面のイメージと照らし合わせた。
グリンパッセナは城壁の高さへの奢りと、防衛線の有利さとも相まって、
壁を挟んだ大通りの近くに武器庫がある。
そんなポイントが存在していた。
それは、正門を過ぎて南に100メートルほど駆けた所に位置していた。
ガンダダは馬を走らせながら頭内で算盤をはじく。
『馬の時速は約30キロ、つまり秒速約8メートル、100メートル駆けるのに約13秒』
やがて、ガンダダの目の前に壁門が見えてきた。
城壁を真右に見た時、ガンダダは時を刻み込む
「1・・2・・3・・・」
馬の蹄の音がゆっくりなる。
ゆっくりゆっくり、集中している。
周りがゆっくり動く。
ガンダダは最大限に集中していた。
何も聞こえない。
そのまま12秒目を刻んだ。
そして
「ぬうんっ!!」
ブン!
爆矢は普通の矢とは明らかに異なる発射音を立て、弧を描きながら悠々壁の向こうへ消えていった。
65 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 02:34:46 ID:yatWsq+0
ハーティスはサギエル軍が全力でこちらに追ってくるのを見た。
思惑通りである。
サギエル軍はこちらに指揮官がいると思い違いしているのであろう。
ランダムに左右に進路軸を傾けつつに北上する。
そして手筈通りにサギエル軍の後ろを伺う。
向こうもジグザグで追えば、隊列の幅が縮まる。
そこに隙を見出し、後ろを付く体制である。
「ガンダダ様が壁砦で作戦遂行するまで30分・・・その間粘らねば。」
グーティルは相手が直線的に北上しないのを見て罠の匂いを感じ取った。
しかし、また追いつくチャンスでもあった。
相手が細かく針路変更している限りこちらの北上速度の方が大きいからだ。
グーティルは右腕を上げた。
後ろの方から数十騎の騎馬が追いつき弓を構える。
「全速力だ!」
グーティルが指示すると、騎馬はグーティルを追い越しどんどんガーランド軍に迫っていった。
「打てっ!」
グーティルの指示とともに、百数十の矢がサギエル軍背部を襲った。
66 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 03:13:34 ID:yatWsq+0
「あちらさん、きなすったな」
ハーティスは後ろの様子を伺いながら呟いた。
この隊の背中には厚さ1センチの鉄板が入れてある。
相当重い分、あの程度の矢では貫けはしないだろう。
しかし進軍速度が落ちる。
さらにジグザグに逃げているためになおさらである。
「あと、ニ・三分で追いつかれるな。」
その位置にこられると、矢が鉄板を貫くに十分な威力となる。
しかし、それはガーランド側にとってもチャンスである。
「そろそろ・・・例の準備を」
ハーティスは武官に目配せする。
武官は減速し、後ろに下がっていった。
「逃げ・・・か?」
グーティルはサギエル軍の背後を弓で脅かしているにも関わらず、反撃してこない。
これは逃げているというと捕らえられるが、その割にはジグザグ移動している。
誘っている様な逃げている様な、混乱を誘う行動であった。
グーティルは判断せねばならなかった。
先程の状況と現刻の状況そして未来の状況。
過去・・・
「そういえば・・・」
グーティルは後ろを振り向いた、じっと目を凝らした。
もう一方の分隊が見えない。
「しまった、こんな単純な手に!」
67 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 03:23:44 ID:yatWsq+0
『しかし・・・分隊といってもせいぜい1000だろう。その程度ではグリンパッセナは落ちない。』
グーティルは前を見据えつつ、優先順位をつけようとした。
『グリンパッセナは落ちない。故に分隊は後回しで良い。
って言ってもこちらは陽動隊で本体ではない可能性が高い。しかし、今引き返すと後ろを付かれる。』
心は決まった。
『分隊を叩いて後、グリンパッセナに引き返す。』
そうと決まれば様子見の必要は無い。
罠があろうとなかろうと関係が無い。
とにかく前の部隊を屠るのが先決だ。
「我が隊は全力で敵の左後ろを付く。後ろの部隊は右後ろから付け!」
武官は直ちに後ろの隊に伝えに行った。
「よし、行くぞ!」
グーティルは抜刀して、馬速を上げた。
「追いついてきたな。」
サギエル軍の速度がさらに上がった。
恐らく30秒後に部隊の接触があるだろう。
「前は頼む。」
武官に先導を頼み、ハーティスは隊尾に下がっていった。
68 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 03:51:40 ID:yatWsq+0
ハーティスはすぐさま後ろの武官に追いついた。
「用意は?」
「できました。」
「じき追いつかれる、工作隊、行くぞ。」
ハーティス達工作隊は隊尾に急いだ。
「我が名はサギエルの将軍グーティル。」
後ろでは、さらに速度を速めたサギエル軍とガーランド軍がこの戦最初の衝突を行っていた。
グーティルがサギエル軍後尾の兵4人を瞬時に屠ると、手勢が一気に襲いかかり、馬上の主を屠っていった。
どどっ・・・どさどさっ
サギエル兵士の体が地に落ち、高速で前から後ろへ流れる。
30を数えた所でさらに進度を上げ、さらに屠ろうとした。
グーティルはとっくに、ガーランド軍がジグザグではなく、直線的な逃げに変更しているのに気付かなかった。
そして、ハーティスが隊尾に追いついた。
「くっ」
自分の計算が違っていたせいで、犠牲者が出た事に痛ましい思いがした。
隊尾に追いついた者。
グーティルには見覚えがあった。
二隊に分かれる時に指示を下した『ふり』をしていた
「貴様が隊長か?」
69 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 04:06:25 ID:yatWsq+0
「そうだ。我が名はガンダダ将軍が右腕ハーティス。貴殿は?」
「我こそは神聖サギエルの将軍にして、グリンパッセナ長官・・・」
グーティルは弓を矢に番えた。
「グーティルだ。」
名乗りと同時に矢を放つ。
矢はハーティスの右頬をかすかにかすった。
「挨拶は終り、次は外さん。」
グーティルは二の矢を番える。
「よし、かかれ!」
グーティルはハーティスに狙いを定めたまま、左右に命令する。
これでハーティスは指揮がとりにくいはず。
そしてそれが致命的な遅れをとる事になる。
『お手並み拝見』
口端も弓系にしなった。
ハーティスは身をかがめていた。
その時、グーティルの号令を聞いた。
グズグズしてはいられない。
意を決すると起き上がり、隊後尾の中央に移動し始めた。
後ろから矢が飛ぶ。
今度は遠くを掠めた。
『さっきのは偶然か』
ハーティスは胸を撫で下ろした。
しかし、左右の移動は常に行い弓に備えた。
後ろからは蹄の音が間近に迫っている。
刀独特の殺気が後ろから感じられた。
しかし・・・しかしもう少しであった。
「もっと近づけ・・・。」
後ろを凝らしながら機をみた。
70 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/07 12:35:05 ID:yatWsq+0
「よし、今だ!」
ハーティスは半身を起こし号令を下す。
兵士が一斉に後方に網を投擲する。
「うわあああ!」
「うおおっ!」
「(><)」
網がサギエル騎馬兵の馬の足を捕らえ、断末魔と供に落馬していく。
「飛べっ!!」
グーティルが短く命令を下す。
ぶんっ!
グーティルの馬が網を飛び越え、弓矢でハーティスに狙いを定める。
『先程は大きく外してしまった・・・が次は外さん!』
第二擲を指示するためにハーティスが立ち上がったのを見はからい、矢を放った。
「第二擲!」
ハーティスがそう指示を下し右手を上げた瞬間、喉元から熱いものがこみ上げてきた。
「!」
喉元を探ってみる。
大きな棒が立っている。
「・・ティスさま・・・・・・さま・・・」
皆の声が遠くから聞こえてくる気がした。
目の前が真っ白になり、全身を激しく打つ痛みを感じた。
それが、ハーティスが最期に感じた感覚であった。
|1/ |1/
/ ̄ ̄ ̄`ヽ、
/ ,, ヽ
/ 丿 \ |
| (●) (●) |
/ | さすがのムーミンも
/ ^ |
{ /| |
>>1には
ヽ、. /丿ノ |
``ー――‐''" | 呆れ果てているようです
./ . | |
(⌒―| | ゛―^⌒)
. ̄ ̄|  ̄ ̄| ̄
.| |
!、 /
ヽ、 / 、
ヽ、 、 /ヽ.ヽ、
| | | ヽ.ヽ、
(__(__| ヽ、ニ三
72 :
名無しさんの野望:04/10/08 00:22:27 ID:ImE6xlbl
凄いスレみたいなんでageておきますね
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ ____ ┃
┃ /∵∴∵∴\ ┃
┃ /∵∴∵∴∵∴\ ┃
┃ /∵∴∴,(・)(・)∴| 今 日 は こ こ ま で ┃
┃ |∵∵/ ○ \| ┃
┃ |∵ / 三 | 三 | 読み飛ばした ┃
┃ |∵ | __|__ | ┃
┃ \| \_/ / ┃
┃ \____/ ┃
┃ 2ちゃんねる ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
74 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 01:42:51 ID:Y5PB1jNH
「敵将討ち取ったぞ!」
その雷鳴の如き声は、前方のガーランド軍を萎縮させるのに十分だった。
「ハーティス様が・・・」
「そんな」
ザワザワ・・・ザワザワ・・・。
動揺が軍全体に広がるのが見て取れる。
グーティルは勝利を確信した。
「敵は動揺してるぞ! 一気に畳み掛けろ!」
蛇が卵を飲みこむ様に、サギエルの騎馬群がガーランド軍を後ろから飲み込んでいく。
ガーランド軍の統率が取れなくなるのは時間の問題だった。
まさにその時。
どーん!
グーティルの後方、グリンパッセナの方から爆音が聞こえてきた。
「ま・・・まさか。グリンパッセナが」
「グーティル様」
武官が不安そうに見つめた。
内心の不安は同じで顔にでそうだったが、司令官である以上落ち着き払ってないといけない。
さらにグーティルは決断もしなければならなかった。
『こちらはもう瓦解寸前で後ろを付く余力がないだろう。よし』
グーティルは決断した。
「全軍転進!グリンパッセナへ戻るぞ!」
76 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 01:54:27 ID:Y5PB1jNH
どーん!
グリンパッセナからけたましい音がこだました。
壁上の兵士が慌てている様子が伺える。
「ガンダダ様、当たりましたよ!」
脇の兵士が嬉しそうに声を上げる。
周りの兵士も同様に喚起の声を上げた。
これで武器庫は火事になるだろう。
その隙に、グリンパッセナ内部に進入した暗部が色々と暗躍する手筈になっている。
「全軍転進回れ右!」
自分の仕事を終えたガンダダは、すぐさま分軍の救援に行った。
ガンダダの頭の中では、分軍は今も北上して逃げている筈であった。
「目の前に敵影・・・恐らくガーランド軍です。」
武官の声を聞くまでも無く、グーティルは前の敵影を確認していた。
それはすさまじい程の速さでこちらに向かってきている。
「抜刀、引弓!」
正面衝突を避けれないと判断し、すぐさま白兵戦闘の準備にかかる。
グーティル軍兵士は全員抜刀し、刃を口に咥えると弓矢を構えた。
グーティルが射ると、他の兵士が一斉に射る手筈である。
77 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 02:10:28 ID:Y5PB1jNH
「ガ・・・ガンダダ様!」
転回・北上して数秒もたたない間に目の前に砂埃が見えた。
「ぐっ」
この地点で敵か味方かの判別が付かないために呻いた。
敵ならば攻撃しないと一方的に先制攻撃を受ける。
味方ならば、攻撃したら同士討ちになる。
ガンダダは焦った。
「あれは敵です。」
横から武官が確信に満ちた目でガンダダを見上げる。
「根拠は?」
「ハーティス様の隊にしては砂埃が多い気がします。それに・・・弓を構えているのが見えます。」
「構えているのか?」
「はい、それに全員剣を咥えて・・・あっ!」
その瞬間武官の右頬を矢が掠めた。
すぐさま、反射的にガンダダは声を出していた。
「ふせろぉぉぉぉぉぉ!!」
声がやまないうちに、百数の弓矢がほぼ直線的に飛んできた。
不幸も、こちらは矢の運動と反対方向に駆けているために、弓なりの矢が直線的になるのだ。
ガンダダ以下部下は必死に馬上に背を落とす。
しかし、このままじゃいけなかった。
このままでは、相手の刃の餌食になる。
しかし今から抜刀しても恐らく間に合わない。
勝負の趨勢は見えたかに思われた。
オナニー乙
79 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 02:33:23 ID:Y5PB1jNH
グーティルは弓を射た。
それに続いて前方に百数の弓が襲い掛かる。
射終わると弓をしまい、口に咥えていた刃を構えた。
相手は馬上に伏せている。
こちらの弓が断続的に届いている以上はあの体勢を維持せざるを得ない。
つまり、衝突する直前まで抜刀も出来ずにあの姿勢の訳である。
まさに、『切ってください』といわんばかりであった。
あとは無防備な敵将を打てば、この戦いに終止符が打たれる。
それなので、グーティルは敵将を探した。
数秒もしない内にそれらしき人物を見つけた。
筋骨隆々の禿頭で体の無数の傷が歴戦を物語っている勇士。
右斜め前にそれを確認したからだ。
他の兵士とは、体の鍛え方もオーラも明らかに違っていた。
『名の将軍だろう・・・ここで討ち取るのも惜しいが、これも宿命』
グーティルは刃を握る右腕に力を入れた。
ガンダダは伏せながらも、こちらに駆けてくる一騎を見逃さなかった。
艶良く漆塗られた胸当てと肩当。
その清雅を物語る金色の兜に赤塗りの面。
そして、胸当てまで届かんとする立派な顎鬚。
兵士にしては、そして一介の武官としては立派過ぎる格好である。
格好で判断するのは根拠に乏しいが、あれが敵将である事をガンダダの勘が告げていた。
ガンダダは深呼吸し、バンクアップの準備をする。
あの敵将に、乾坤一擲の一撃を叩き込むため。
80 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 02:50:26 ID:Y5PB1jNH
グーティルは確認していた。
相手が武器を持たず、ただ馬上に伏せているだけだという事を。
筋肉は確かに鍛え上げられている。
しかし、あの体勢から、しかも武器も持たずにどうにかできるものではない。
なすすべも無く切られる。
切れる・・・はずだった。
そしてグーティルがガンダダとすれ違い様に刃を落とした瞬間。
ごうっ。
グーティルは胸当てに、鐘付きで付かれた様な衝撃を感じていた。
「うっ」
胸が詰まった。息が出来ない。浮遊感がある。
「なぜ景色が周っているのか?」
何もかも理解の範疇を外れていた。
ただ、景色がゆっくりと回転していた。
空と雲が下へ流れて・・・上から地面が見えて・・・。
どうっ!!
グーティルは前から地面にしたたかに撃ちつけられた。
「グーティル様!!」
すぐさま武官や兵士が下馬してかけ寄ってきた。
グーティルは乱暴に担がれ、馬の背に乗せられた。
そして、交戦地から遠ざかるのを人事の様に認知していた。
82 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 03:07:52 ID:Y5PB1jNH
「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ガンダダはグーティルの接近を見計らいバンクアップした。
すぐさま右手でアッパーを放つ。
がごん!
その拳はグーティルの漆黒の塗るしの胸当てを半ば貫通した。
グーティルが空中で弧を一回描き地面に落ちる間に、ガンダダは背中の棒を抜いた。
長さ3メートル、重さ50キロのガンダダの愛用の武器『瞬天棒』である。
これを食らった相手は瞬時に天に上る事かこの名前の由来である。
「ぬぅぅっぅぅっぅぅぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
地面を震わす様な大声で、敵に突進しながら腰を始点に棒を回しに回した。
ドドどどどどどすんどすんどすん・・・
棒に触れた敵が、人形の様に落馬していく。
ガンダダは味方を鼓舞するために、敵を威圧するために、叫び単身駆けた。
大将が落馬するのを見た前線の兵は、ガンダダのその鬼神の様を見て、恐慌を抱きグリンパッセナに逃げるのが多数だった。
少数の勇気ある兵士はグーティルを救出したが、やはりグリンパッセナに逃げていった。
その前面の兵の様子と、鬼神ガンダダを見て、恐慌をきたして逃げるものが多数居た。
すると群集心理が働き、サギエル軍は全面的に瓦解し始めた。
大将が指揮を出せない状況と、ここで無理して命を落とす事もない使命感の薄さもそれを手伝った。
「ひっ・・・ひぃぃぃぃぃ」
「き、鬼神だぁぁぁ」
サギエル兵は情けない声を上げながら、グリンパッセナに逃げていった。
ガンダダは深追いをしなかった。
それよりも、当面の作戦が一応成功した事で満足していた。
それ以上に、自軍の実況見分もしたかったからだ。
83 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 03:24:30 ID:Y5PB1jNH
「そうか・・・」
ガンダダがハーティスの戦死を聞いたのは、状況修了二時間後、分隊と合流してからであった。
ハーティスは忠実に片腕として働いてくれた。
知恵が足りない時は知恵を出してくれた。
機嫌が悪いくて部下に当たった時は、フォローしてくれた。
重臣との会談で論難された時に叱咤激励して慰めてくれた。
武官のリストラの際には代わりに肩を叩いてくれた・・・。
そのハーティスがもう居ない。
ガンダダにとって、受け入れがたい事実であった。
戦闘を行えば必ず死ぬ。
でも、彼に限って・・・それが通用しないのは重々わかっていた。
そう考えていた。
しかし、それはあたりまえに引っくり返された。
「本陣に帰るぞ。」
ガンダダは勤めて毅然とものを言った。
しかし、誰の目から見ても憔悴しきっているのが解っていた。
ガンダダは気を使われているのを感じた。
士気に関わる重大な事だ。
「俺も・・・将軍失格だな。」
自嘲するしかなかった。
しかし作戦は動き出している。もう止められない。
ハーティスを弔うには、最早作戦成功しかなかった。
84 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/08 03:28:14 ID:Y5PB1jNH
『ハーティス・・・見ていてくれ。必ず計略を成就し、大陸を統一し、ガーランドの名の下に平和をもたらす。』
「はっ!」
ガンダダは勢い良く駆けた。
彼の横ではハーティスが駆けていた。
在りし日はこうやって駆け競い合ったものだ。
ガンダダが速度を落とす。
ハーティスはさらに速度を上げる。
ハーティスはガンダダを追い越し、そのまま空へ駆けて行った。
やがて見えなくなった。
しかし、ガンダダは消え後をずっとずっと眺めているのだった。
('A`)
ノヽノヽ =3 プゥ
くく
涼スレの予感
う〜さぶいー((((;-Д-)))
記憶!記憶!妄想・妄想!
記憶!KI・O・KU!残像!残像!
サーベージ金時はどこ行ったん?
ガンダダ役のガンダム
グーティル役のダディクール
サギエル役の子安
ハーティス役の子安
登場人物ってこんくらい?
>>88 サーベージ金時は近世界のTOOKYOが滅びた際に一緒に滅びたんだと思います。
>>89 登場人物を私っぽく纏めると
トム:レイアースっぽく、異世界ネタであるならば本編の主人公と思われる。現在異世界のどこかにいるのでは?
ジョン:TOOKYOを禁呪で吹き飛ばした人。生死不明
サーベージ金時:トムのサーバント。トムを救うために次元ホールを作りトムを逃がす。生死不明
ルマランドラ下院議員:収賄の現場をレジスタンスに抑えられる。実力の程は不明だが、皇帝に可愛がられていたらしいので、それなりにあるだろう。
ジルバート八世:ジルバート家の八代目当主?黄河忍法の使い手。サギエル三世の技を餃子の皮に包み込むが、美味しさのあまり昇天してしまう。
サギエル三世:一番上の表記が三世で、以下三世が抜けているが作者が忘れているだけだと思われる。国民に三公七民の重税をかける人の皮を被った悪魔の様な人
男1〜3:謎の男達。男2は雌雄同体らしい。
ルビガンダ:ガーランド帝国皇帝。その他は知らん。
キジニスト:ガーランド帝国宰相。ガンダダにグリンパッセナを落とす策を授ける。
ガンダダ:ガーランド帝国の将軍。バンクアップにより筋力が約二倍になる。物凄く強そう。
グーティル:神聖帝国サギエルの将軍にしてグリンパッセナ長官。野心家だがなんだか弱そう。
ハーティス:ガンダダの腹心。身分は不明。グリンパッセナ攻城戦でグーティルの矢にあえなく戦死。
しまった!ここは糞スレだ(ry
>>1 ライトノベル板でやれば?
いや、煽りじゃなくてマジで。
>>94 ジエンだろ、察してやれ
哀れすぎてヤジれない
96 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/09 01:43:00 ID:1SCNi5s0
ハーティス隊がガーランド軍を引きつけている間にガンダダがグリンパッセナを爆撃。
それに気付いて混乱した、もしくは引き返してきたガーランド軍を両面から叩いて、敵将を捕らえる。
その後グリンパッセナと交渉を持つ。
これが作戦の流れであった。
しかし、ガーランド軍の進軍が予想よりも早かった事が作戦の破綻をきたしたのだ。
一応緒戦で勝ちを得れたが、ハーティスを失い、さらにグリンパッセナと交渉する手段も失い、
戦略的には負けに近い内容である。
ガンダダは憔悴しきっていた。
ハーティスを亡くした事はもちろんの事、作戦が失敗した事が重くのしかかった。
この作戦をしくじる事は、大恩のある宰相キジニストの立場を危うくするからである。
宰相の椅子はただでさえ狙われやすいのだが、枢密院を中心とした反キジニストのグッシール派が
キジニスト追い落としに取り掛かる事は目に見えていたからだ。
しかもグッシールは皇帝ルビがンダと姻戚関係にある。
現在キジニストが宰相の座を守っているのは、彼の脅威の政治的バランスと実務能力のお陰であった。
しかし、この作戦失敗という致命的ミスを犯してしまえば、彼の失脚はほぼ間違いないだろう。
ガンダダはミスが許されなかった。
97 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/09 02:05:24 ID:1SCNi5s0
「どうするか?」
ガンダダは思わず呟いた。
彼は疲れると、思った事を口に出す癖がある。
彼もそれは自覚している様で、この様な日は酒を飲んで寝るのが常だった。
グリンパッセナから5キロ離れた本陣にたどり着い時には、手勢は800騎にまで減っていた。
騎馬も前のめりにキャンターするものが多かった。
人馬供に物凄い疲労をきたしていた。
陣では火を炊き、食事と酒を飲んだ。
しかし、戦友が死んだ悲しさから盛り上がれはしなかった。
やがて誰かのすすり泣く声が聞こえてきた。
それは全員に伝播し、物凄い嗚咽の渦となった。
ガンダダは立ち上がった。
「今日、ハーティスはじめ、可愛い部下200人が旅立たった。」
兵士達はガンダダを見みた。
「敵軍は過去に我々の先祖を辱めているばかりでなく、今日に至るも我々を苦しめた。
よって我々は鉄槌を下そうとした。それが我々の権利だからである。」
全員がガンダダの声に聞き入っていた。
「しかし彼らは、先祖を貶めるだけでは飽き足らずに、我らも貶めようとした。
彼らの様な厚顔無恥の輩があの・・・あの憎っきグリンパッセナの上から、せせら笑っているのだ。
我々の先祖を土足で踏みつけながら、50年余笑い続けてきたのだ!」
全員がガンダダを睨み付ける。
恨みを思い出し、床にこぶしをぶつけるものもいる。
98 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/09 02:17:19 ID:1SCNi5s0
「我々は正当な権利を行使した。しかし、神はまた試練を与えた!
今日苦戦したのは試練を乗り越える課程である。
そのために、今日200人の英雄が散った。
散りはしたが、本日勝利を得た。
神は答えてくれたのだ。
過去においてグリンパッセナで勝利を得た者はいない。
我々は最初の勝利者である。
つまり、神は我々を認めたのだ。
認めたのであるから、次は勝てる。
見よ炎を!」
ガンダダは瞬天棒を炎に向けた。
「今神が下した印を示してやる。」
ガンダダは炎に向かい歩き出した。
1メートルはあろうかという炎である。
その炎の中へ、ガンダダは歩き入った。
そして笑いながら出てきたのだ。
「この通りわしは何ともない。これが神の印である。
これが、グリンパッセナが落ちる事の証である!!」
瞬天棒をグリンパッセナの方へ指し示す。
その瞬間、兵士から歓声が巻き起こった。
悲しみを怒りと希望に変え、さらなる団結が行われたのである。
「明日は進発だ。各自、良く寝とけよ!!」
「おおっ!!」
兵士達にはもう焦燥感は無かった。
99 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/09 03:11:18 ID:1SCNi5s0
ガンダダは寝室に入った。
簡易ベッドに腰を下ろし、具足を脱いだ。
そして横になる。
しかし心は休まらなかった。
作戦が頓挫した以上、明日の行動を考えねばならない。
作戦では、次の段階は交渉だが、こちらには取引するカードが無かった。
このままでは交渉も出来ない。
しかし、何もしない事は許されない。
結果を出さなければならない。
『・・・』
何も思いつかない。
普段なら思考が煮詰まった時、横にはハーティスが居て何か知恵を出してくれるのだが、もういない。
「くそっ」
考えが順々巡りになる。
「キジニスト様位に頭が良ければ・・・キジニストさま・・・」
ガンダダはキジニストの言葉を思い返してみた。
『今回の作戦は情報を武器に使う・・・』
「情報が武器・・・そうだ!」
ガンダダはがばと起き上がった。
「おい!誰か!」
すぐさま武官が駆け込む
「はい、何か?」
「進発するぞ、直ぐに準備をせい!」
なぜこの糞スレが削除されないのが疑問だ
みんな削除依頼出すのもメンドイんだろ、というかかかわりたく無いと言うか
>>1が猿オナニーペースでシコシコやってるからDAT落ちしないし
メンドイだろうけどスレ自体、板違いだから
誰か削除依頼よろ
105 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/09 07:37:25 ID:1SCNi5s0
迷惑かけてすいません。
そして、迷惑ながらも存在を許してくれてありがとう御座います。
それでは移転致します。
106 :
1 ◆h8ZzBXntBQ :04/10/09 08:03:40 ID:1SCNi5s0
>>1 おまえに消費されるスレのほうが勿体無いから駄目です
無駄にするのはお家に置いてあるティッシュと広告の裏だけにしてください。
もう来るな
109 :
名無しさんの野望:
age