美術・芸術ニュース速報

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150わたしはダリ?名無しさん?
京都市美術館80年 鑑賞者、作家育てる場に 文化報道部 河村亮
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/rensai/syuzainote/2012/130213.html

 京都市美術館(京都市左京区)が今年開館80周年を迎える。市は先ごろ、老朽化した施設の
改修などハード面の整備を含め、次世代へ継承する将来構想を策定することを明らかにした。
文化財級の建物を生かすのはもちろん、大事なのはソフト、中身だ。大阪では市立美術館と
近代美術館を統合した大規模館の構想も持ち上がっている。関西のアートシーンの中でいかに
存在感を示せるか、問われている。

 市美術館は昭和天皇即位の大典を機に財界や市民が協力し、1933年日本で2番目の公立美術館
として開館した。戦前は京都画壇を発信し、戦後は海外の優れた美術を紹介する特別展や、美術団体
への貸し館事業も充実させてきた。年間80万〜100万人を超す入場者があり、昨年度は128万人
を集めた。

 ただ、同館を訪れて気になるのは若い鑑賞者が少ないことだ。潮江宏三館長は「60歳以上が
圧倒的に多い。幅広い層に来てもらわないと」という。なぜ少ないのか。一つは、美術の最前線で
ホットな作家が登場する展覧会が少ないからだろう。京都は芸術系大学が多く、優秀なアーティストを
輩出してきたが、それらの作品を取り上げる企画が少ない。例えば、昨年評価が高かった国立国際
美術館(大阪市)の宮永愛子展と兵庫・伊丹市立美術館の中原浩大展。二人はいずれも、京都の
芸大の出身だ。脂の乗った作家、次代を担う作家が地元で見られないのはやはり残念だ。
151わたしはダリ?名無しさん?:2013/02/16(土) 22:54:22.84
 それは美術館の自主企画が少ないせいもある。90年代の「思い出のあした」展などは、
やなぎみわら若い作家が力を付け、その後の京都美術を盛り上げた。だが現在、学芸員の配置は
二条城も含めて5人だけ。近隣の大阪市立美術館の7人と比べても少ない。学芸員は収蔵品管理から
普及教育、調査研究までこなすため、独自企画にまで手が回らないのが実情だ。財政逼迫(ひっぱく)
で予算がないなら、若手や中堅を取り上げて実験的な試みをしている京都芸術センター(中京区)と
連携するのも一つの手ではないだろうか。

 美術品の収集も課題だ。予算は横ばい傾向で、「なかなかコレクションを購入できない状態」という。
特に80年代以降の収集は進まず、潮江館長も「同時代の現代美術が空白で、そこを埋めるのが重要。
京都の最先端作家の作品は大阪の国際美術館にある」と惜しむ。年に1、2回、収蔵品展を
行っているが、より幅広い層の鑑賞者を育てるには、「いま」へ連なる京都の画壇や工芸美術の流れを
分かりやすく見せる常設展も必要だ。

 同館のモダンな建築は優美で個性豊か。2階の部屋は自然光が入り、人気が高い。活用されて
いない中庭や地下倉庫も、工夫次第できっとほかの館にない魅力となろう。鑑賞者も、作家も
「育てる美術館」へ。80周年を機に新たな一歩を期待したい。
[京都新聞 2013年2月13日掲載]