ギャルゲー板SSスレッド Chapter-3

このエントリーをはてなブックマークに追加
 高校卒業と同時に代表候補に選ばれた花桜梨は次期オリンピックにメダルをもたらす若き救世主としてバレー関係者は勿論、マスコミなどのメディアに大きく取り上げられるようになった。
 なぜなら彼女には名前の通り『花』があったからだ。
 バレー選手としての実力は勿論、トップモデルの様なバランスの取れたプロポーションは見る者を魅了し、代表候補の身でありながらCM出演の依頼や、引退後ウチの専属モデルにならないかと、モデル事務所からの誘いもあった。
 彼女は一躍バレーボール界の『シンデレラ』となりバレーボール人気復興の立役者となったのだ。
 しかし『シンデレラ』の物語には終わりがくる。
 オリンピック予選の前日から花桜梨は左足の脹脛に違和感を感じていた。だからと言ってそれを監督やコーチに相談できる雰囲気など当然無かった。
 そして誰にも打ち明けれないまま予選一日目の試合で花桜梨は相手のアタックをブロックしようとジャンプした際、肉離れを起こし縺れるようにコートに倒れた。その瞬間『ああ、やってしまった』と花桜梨は思った。しかしその一方で不思議な安堵感もあった。
 駆け寄ってくるチームメイト達の間からベンチをみると監督とコーチが失望と怒りで顔を引き攣らせている姿が目に入った。
 肉離れの原因は花桜梨のアップ不足が原因と診断され、さも監督やコーチの指導ミスが原因ではないと言わんばかりの形でマスコミに発表された。協会が自分達のメンツを守る為だ。
 日本の予選敗退が決定するとともにマスコミは掌を反したかのように花桜梨バッシングを始めた。『八重花桜梨は周りにチヤホヤされ調子に乗って練習を疎かにした』、それがマスコミ達の共通した報道姿勢だった。
 帰国時、空港のゲートに松葉杖で現れた花桜梨は、生卵をぶつけられ「非国民」と怒号が浴びせられた。声の方を睨みつけたら昼のワイドショーで「生意気で反省の色が無い」と文化人にコメントされた。それを見て花桜梨は泣きたくなった。
 花桜梨の家には既にいたずら電話や脅迫状が殺到しており、近所からも嫌がらせをされていた。一週間後、花桜梨たち一家は追われるように住みなれた街をでた。
 街を出る時、彼にお別れの挨拶をしたいと花桜梨は思ったが、彼からも他の人達同様、罵声を浴びせられるのではないかと怖くなり電話をかけることができなかった。
 花桜梨は再び人間不信になろうとしていた……。
                            END