ギャルゲー板SSスレッド Chapter-3

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 ニ限目の休み時間、同じクラスの女の子に茶化された。
「陽ノ下さんって渡瀬くんとデキてんでしょー?」
「デキてるって何が?」
「だーかーら、陽ノ下さんと渡瀬くんがラブラブって事よ」
「ええっ!? ラブラブって、私と公一ちゃんはそんなんじゃ――」
「『公一ちゃん』だって。やっぱりデキてんじゃん!」
 近くにいた男子達が一緒になって囃したてる。
「ラッブラブ、ラッブラブ、渡瀬と陽ノ下はラッブラブー」
「ち、ちがうよーっ」
(その中に公一ちゃんは……いないみたい。取りあえず安心)
「と、とにかく私と公い――渡瀬くんはそんなんじゃないよ!!」
「だったら証拠を見せてよー!」
 クラスの中でリーダー格の女の子がそう言った。
「証拠って……?」
「そうね……今から渡瀬くんのとこに行って、アイツのズボンをズリ下ろしてきなよ。そーしたら信じるわ」
「そ、そんな……」
(まったくヒドイこというなー。そんな事できるわけないじゃない。……でもやらないと信じてくれないんだろうなー。だったら仕方ないかな……)
「わ、わかったわよ、やればいいんでしょ、やれば!」
「おぉー!!」
 安請け合い。安請け合いだったんだよ。
 まさか、それが後であんな事になるなんて……。
―――廊下にて―――
 私は公一ちゃんを見つけてかけていく。
「公い――渡瀬くん!」
「ひ、光ちゃん!? なーに?」
 呼ばれた公一ちゃんは少し驚いた顔をした。
「どうしたの? 『渡瀬くん』なんて……いつもの光ちゃんらしくないなー」
「…………」
 公一ちゃんを挟んで反対側では、さっきの子達が私達の様子をじっと見ている。
(やらないと……)
「光ちゃん、どーしたの?」
「……うん、あのね」
「なーに?」
(ゴメンね、公一ちゃん!!)
「えいっ!」
 ズルッッ!!
 次の瞬間、私は公一ちゃんのズボントに手をかけ、一気に引きずり下ろした。
「えっ……!?」
 一瞬の出来事に何が起きたかわからない公一ちゃんは、そのままの状態で呆然と立ち尽くしていた。
 しかし、やがて後ろや前から、
「やったーー!!」
「キャーー!!」
 という男子達の歓声や女子達の悲鳴が沸きおこる。
 それを聞いた公一ちゃんは我にかえり、その場に座りこみ泣き出してしまった。
「う、うわあああぁぁん!」
 公一ちゃんの泣き声を聞いて、他の子達が何事かと集まってくる。
「わああぁぁぁぁん!」
 それでも、そんなのお構いなしで公一ちゃんは泣き続けた。
「あ……あぁ……」
(……私は、なんてことしちゃったんだろう! ま、まさかパンツまで……)
 後悔。しかし今更、後悔してももう遅い。
 その場に居た堪れなくなった私は、そこから逃げ出す事しかできなかった。
 背中ごしに聞こえる公一ちゃんの泣き声が、ただ私の胸を締めつけた。

 それから一週間もしないうちに、公一ちゃんは引っ越ししてしまった……。