先日、真帆ちゃんと一緒にお風呂に入った時の事です。
真帆ちゃんったら自分の胸の大きさの自慢ばかりするから、その日はつい私も大人気無く怒ってしまいました。
そしてその怒りはおさまる事を知らず、あろうことか真帆ちゃんを殺意を抱いてしてしまいました。
浴槽から出ようとした真帆ちゃんの足を掬い転倒させる。
事故に見せかけたこの殺し方は完璧……のはずでした。しかし真帆ちゃんは――
「姉さん、今わざとやったわね!?」
(ち…頭をぶつける前に手をついたか)
「いくら姉さんでもやっていい事と悪い事があるわ!」
「違いますよ真帆ちゃん。今のは妖精さんのイタズラです」
「またそんなこと言って…!! この『電波』が!!」
―――カチン!
その一言は私にとって禁句でした。
「『電波』っていいましたね、阿婆擦れ女のくせに!!」
「なんですってー!!!」
とうとう私達は御風呂場で取っ組み合いの喧嘩を始めてしまいました。
とはいえ、運動神経が鈍いこの私。喧嘩を始めてものの十秒で真帆ちゃんに馬乗りされてしまいました。
「姉さん、覚悟しなさい」
私の上で拳を構える真帆ちゃん。その手は平手ではなく「グー」です。全く容赦ありません。
(やられる!!)
そう思った時でした。
「誰!?」
不意に背後に誰かの気配を感じた真帆ちゃんが構えを解いて振り返りました。
私も何事かと思い真帆ちゃんごしに風呂場の窓に目を移すと…。
そこにいたのです。
田代まさしが。
「「キャアアアアァァーーー!!」
驚いた私達はつい悲鳴を挙げてしまいました。
するとその声に驚いた田代まさしが一目散に走り出したのです。
「待ちなさい!!」
スッポンポンのまま駆け出す真帆ちゃん。
「真帆ちゃん、タオルタオル!!」
慌ててその後ろを追いかける私。
この時は先程まで喧嘩をしていた事などすっかり忘れてしまいました。
私は必死で追いかけました。しかし悲しいかな、私の足では真帆ちゃんに追いつく事はできませんでした。
段々と視界から遠ざかる真帆ちゃん。私は追いかけるのを諦めざるをえませんでした。
真帆ちゃんが帰ってきたのはそれから一週間後でした。
なぜか田代まさしの着ていた服を身に着けていましたが、怖くてその事については訊く事ができませんでした。