ふぅ、
>>193の続き
「早く!早く取ってよぉ。」
背筋をそらし、視線をこっちに向けて哀願するかすみ。
俺は中腰より更に腰をおろした姿勢で、かすみの視線を下から受け止める。
かすみの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
僅かに良心が痛む。が、何気ないふりを装ってかすみに声をかける。
「……お、おぅ。じゃ、じゃあスカートを少しまくってくれないか?」
「え?」とかすみが硬直する。
スカートを自分でまくる、という考えは浮かばなかったらしい。
「い、いや、だって蜘蛛、スカートの内側だろ。何処にいるかわからないし……。」
かすみがうつむく。蜘蛛とスカートをまくることを秤にかけているのが俺にはわかる。
きっと、俺が何も言わず、ぱっと蜘蛛が入ったあたりのスカートをめくって
ささっと蜘蛛を払い落とすと思っていたのだろう。
しかし、答えもまた俺にはわかっている。
「……うん、わかった……」
かすみは消え入りそうな声でその言葉を口にした。
身体に沿って後ろに伸ばした両手が逆手でスカートの裾を持ち、
かすみの肘がノロノロと上がるにつれてスカートに隠れた膝裏が、
そしてむっちりとした白い太腿がその姿を現す。
勿論かすみがブルマの時は、その太腿は惜しげもなく晒されているのだが
かすみが自分でスカートを持ち、ノロノロとそのスカートが上がる度
肉感的な太腿が数ミリずつ顔を出すというシチュエーションは、
かすみの信頼と屈従と恥じらいというエッセンスが散りばめられ
比べ物にならないほどにエロチックに思えるのだ。
俺の中に、胸が締め上げられるような感情が湧く。
……馬鹿だな、かすみは。
ホント、馬鹿だよな。
俺なんかのことをこんなに信頼してくれちゃって
涙浮かべながらスカートめくってるんだから。
そんなかすみの絶対的な信頼に出来るだけ応えてやりたい。
かすみを大事に守ってやりたい。
同時に、そんなかすみの信頼を裏切ってやりたい。
かすみを滅茶苦茶にしてやりたい。
守るのも、滅茶苦茶にするのも、俺以外の人間にはやらせはしない。
かすみは、俺だけのかすみだ。
「かすみ、蜘蛛、いたぞ。」
「えっ」
「ここだ」
バッ、バッ。めくれたスカートの裾を払う。
「かすみ、お前がトロいから、もっと内側に入っちゃったぞ」
「うぅぅ………。」
かすみは目をぎゅっとつむってスカートを持ったままの肩を強張らせる。
「かすみ、一気にスカート上げるんだ。」
「でも……そんなことしたら……。」
パンティが見えちゃう、と言いたかったのだろう。
「なぁ、かすみ、俺達は何度も一緒に風呂に入った中じゃないか。
今更パンティの一枚や二枚のことでうだうだ言うなよ。」
「……うん……。」
かすみが俯く。
かすみが「それとこれとは違う」って
言いたかったことぐらいわかってる。
俺も「それとこれとは違う」と思ってるさ。
そして、「それとこれとが違う」からこそ、
俺は今こうしてかすみのスカートの内側を探求しようとしているわけだ。
だが先ほどのかすみの反応がちょっと気がかりだ。
フォロー入れておくか。
「しかし、かすみ、また太ったんじゃないか。」
「えっ」
「いや、なんかさ、腿のあたりの肉付きがさ。」
「えっ、やっぱり太ったかな…。」
やっぱりこの状態で普通の会話を交わすのは不自然だったろうか。
普段のかすみとは違って、言葉に自嘲的な響きがある。
「かすみ」
「…何?」
それでも、俺に声をかけられたら笑顔に近いものを作ろうとしているのだろう。
なんて健気な奴なんだ、かすみ、お前は。
「おっ、いたぞ、かすみ。そのままでいろよ。」
ここら辺で放免としようか。
俺はかすみが持ち上げたスカートをバッ、バッと払った。
長文スマソ。
マターリと行きたければ次の五つは飛ばしてくだされ。
殆どパンティが見えそうなくらいまで自分でスカートをめくりあげたかすみ。
ムッチリとした太腿が夕陽の色に染まってる。
……気が変わった。
こんな悪戯、そう何度も出来るもんじゃないからな。
出来るときにやっておく、何事もそれが大事だ。
「ああっ、このヤロッ。」
「な、何?」
「蜘蛛が、かすみの脚に……上がっていきやがる。」
俺の指が、蜘蛛をさも追ってるように、かすみの右脚を這う。
柔らかく弾力を持ったかすみのきれいな肌。
閉じた脚の間に俺にしか見えない蜘蛛が逃げ込む。
「かすみ、脚、開け」
反射的に脚を開くかすみ。
蜘蛛は左脚に移り、表と裏とを蛇行しながら足の付け根に向かう。
「ええっ、えっ、えっ。」
為すすべもなく俺の指に太腿を蹂躙されるかすみ。
そして、ついにかすみがめくったスカートより更に内側に
蜘蛛は忍び込むことに成功した。
俺の指が伸びたまま、薄い生地一枚を通してかすみの尻に触っている。
やばい、ここまでするつもりじゃなかったのに。
「かすみ……。」
これから先どうしよう……と思った。
こんなことならスカートめくらせた時点でパッパッとはたいて
「はい蜘蛛落ちたよ」ってことにすれば良かったのかもしれない。
正直俺は後悔し始めていた。
その時手のひらにかかっていたスカートが静かに動いた。
かすみのスカートが更に持ち上げられ、今まで隠されていたパンティが
下四分の一だけ顔を出す。簡潔なフリルの施された純白の下着。
かすみは今まで以上に腕を持ち上げるのではなく、
ただ掴む量を増やしてスカートをめくりあげていた。
肌より更に白い輝きに、俺の視線は絡め取られる。
「か、かすみ?」
「ねぇ……こんな格好、誰かに見られたら、嫌だから……。」
「う、うん。」
「だから…だから早く……。」
動転していた俺に差し延べられた、かすみの救いの手。
だが、その手を掴み、かすみのお情けにすがることは俺のプライドが許さない。
俺のプライドが許さないことをわかってるはずなのに何故救いの手を差し出すのか。
つまりこれは救いの手の形を借りた、かすみの挑発なのだ。
俺は俺の中で最も冷酷な俺を捜す。
どうやらかすみの許容限界にはもう少し余裕があるようだ。
かすみの尻を手の平全体でまさぐりだす。
「えっ?」
俺の手の動きが明らかに蜘蛛を追うより尻を触ることに比重を置いた運動であることに
かすみは戸惑いを隠せない。
その手が今度はまた細くなって、
焦らすようにゆっくりとパンティの一番細い部分を経由して、前面に向かう。
「ね、ねぇ……。」
かすみの口が微かに「嫌」と動いた気がした。
股の間を通った手が、かすみの一番敏感だろうと思われるあたりを行き来する。
「ふ……うぅん」
かすみの声が何かを堪えているような響きを帯びる。
俺の指はかすみの秘所を離れ、太腿伝いに降りていく。
が、意地悪く腿の裏側でUターンしてかすみの尻に行き着く。
尻穴の周りを円を描くように刺激する。
「うぅん…やめてっ。」
かすみが俺に拒絶の言葉を吐くのは珍しい。
だが、今の俺には意味のない抗議だ。ちょっと困った声を装う。
「そいつは蜘蛛に言ってくれ。」
かすみの尻はそのむちっとした太腿が想像させるものより締まっていて
なにやら不思議な引力を感じさせるのだった。
「それにしてもスケベな蜘蛛さんだなぁ。」
再び秘所に指を伸ばしながら俺が言う。
今度は溝沿いに中指を伸ばして
グリグリと上から下へ、下から上へ、力点を変えながら刺激する。
「うぅ……ふぅっ」
かすみの吐息に俺をゾクゾクさせるものが混じる。
すごいぞ、かすみ。
お前は男を喜ばせる天才かもしれないな。
かすみの手は逆手でめくりあげたスカートをぎゅっと握りしめている。
かすみの目はぎゅっと閉じられ、涙が溜まっている。
かすみのパンティはくしゃくしゃになったスカートの影から
今や半分ほど顔を出し、夕陽の色を正確に映している。
かすみの無防備な太腿は、もはや何の惜しげもなく晒されている。
その柔らかな手触りはやはり魅力だが、
スカートの影からちらちら現れた時の興奮は既にない。
荒く不規則に息を吐く度、かすみの大きな胸が揺れる。
それに連動してセーラー服の肩も揺れる。
冬服の黒とパンティと太腿の二色の夕陽色、揺れる胸元の赤。
その瞬間のかすみは、俺の興奮を一個の芸術に昇華させた存在だった。
「………」
「うん、何だ、かすみ。」
「ねぇ……。お願いだから……。」
かすみが「もっと」と言った気がした。
俺の指が箒で床を掃くように、無感情にかすみの脚を上から下へ伝う。
「ふぅ、やっと蜘蛛さんが行ってくれたよ」
「あの蜘蛛、巣を張らないタイプの小さいけど毒持ってる奴でさ、
俺、直接触るの怖かったんだよねぇ。かすみは何処も刺されなかったか?」
「う……うん。」
「そいつは良かったな、お互いに。」
わざとらしく爽やかに笑う。
豹変する俺に呆然とするかすみ。
「かすみ、パンティ見えてるぞ。」
「あ……う、うん。」
かすみが握りしめたスカートを解放する。
「スカートくしゃくしゃになったな。」
「…うん。」
「クリーニングに出すか。風間さんの家、クリーニング屋さんだし。」
「…良いよ、アイロンかけるから。」
「かすみ、ちょっと座らないか。」
俺は臨海公園のベンチにかすみを誘った。
コーラを買ってベンチに座ってから、二人ともしばらく口を聞かなかった。
ただ無言でコーラを開け、飲んだ。
俺は何かきっかけを掴もうとかすみをちらちらと見たが、
かすみはずっと視線を落としたまま、俺を見ようとはしなかった。
無理もないよな。当事者の俺がそう思うのも何だが、
それが素直な感想なんだから、それはそれでありだと思う。
かすみが下を見つめているので、俺はベンチに寄っかかって空を見上げた。
「落ち込んでる時は胸を張って上を見る、か。」
声には出さなかった。
あと一週間で転校なら、何だって出来る、というのが
俺の自制心を働かなくさせたのだろうか。
流れる雲は、どこかケサランバサランに似ていた。
水平線が赤く染まり、上空を、東の空に向かってオレンジ、白、水色、黒のコントラストを描く。
一日が終わる。日付上では、実際起きている時間はまだ四分の一以上残っているのに
日が沈む場面を見ると直感的にそう思ってしまう。
そろそろ寒くなってきたな。
「かすみ、行こう。」
かすみに声をかける。
かすみは無言で立ち上がった。
同じ団地までの道のりを無言で歩く。
いつもはなかなか話が絶えないのに、今日はただ沈黙が支配していた。
団地に着く。
かすみは向こうの棟だ。
そこの角で俺とかすみは別れるだろう。
俺は今回の件でかすみに謝りたくなかった。
この三週間、かすみが俺の心に占める比重が上がっていく中
やってみたい、と正直思っていたことだからだ。
かすみの反応を見る限り「早過ぎたのかも」とは思わなくもないが
俺の年頃の男女なら、こういうことがあってもしかるべきだと言えなくはない。
そして何より、俺には残された時間はあまりにも少ない。
曲がり角に着いた。
「それじゃ、行くから。」
「全部、蜘蛛が悪いんだよね。」
かすみが初めて口を開いた。
「ああ、蜘蛛はたしかに悪いな。だが、全部じゃない。」
俺は言った。かすみが悲しそうな顔をする。
かすみも俺に謝って欲しくないんだと俺は確信する。
「かすみが魅力的すぎるのが悪いんだ」
かすみは「えっ」と驚きの声を上げる。
「私?全然魅力なんかないよ。体型はドラム缶だし、服装は野暮ったいって言われるし。」
「馬鹿、蜘蛛にとって、だよ。」
「あんまり嫌うから逆に寄ってこられるんだよ。子供の頃、お前、よく大きな犬とかに
寄ってこられたよな。それと同じだ。お前が嫌えば嫌うほど、蜘蛛や昆虫はお前に寄ってくる。
お前は虫とかに無関心を装えばいいんだよ。」
「うん……やってみる。もうこんな思いしたくないから。」
最後のが本音なのだろう。それだけ言い終えるとかすみはバイバイと手を振った。
「かすみ。」
俺はかすみを呼び止めた。
「……かすみ。お前は人間にとっても充分魅力的だからな。」
かすみは一瞬バツの悪そうな表情を浮かべて、もう一度手を振って自分の棟に入っていった。
エピローグ1
「やぁ早苗ちゃん。昨日の現場はちゃんと写真に撮ってくれたよな。」
「はい、ご要望通り、先輩の顔は写らないようにしてありますよ。」
「ありがとう。これでもうかすみは俺のものだな。」
エピローグ2
「おい、高林。昨日はちゃんと見ただろうな。
約束通り今日はお前が森下茜にやる番だからな。
ま、俺がやったようにやれば良いんだが……。
おい、どうしたんだよ、今更出来ないって言うわけじゃないよな。
元はと言えばお前が言い出したことなんだからな。」
「でも、茜ちゃんは虫とか平気だからなぁ……。」
「ま、その辺は学年トップの頭脳を絞って考えろよな。
お前は森下のことを十年以上知ってるんだから一つ二つは弱点が見つかるだろ。
じゃあ今日の帰り道、楽しみにしてるからな。」
エピローグ3
「深山さん、昨日の写真はちゃんと撮れた?」
「はい、出来てますよ。先輩が七瀬先輩に痴漢してるところ」
「ありがとね、これ、お礼のクッキーなんだけど。」
「あ、良いんですかぁ?わざわざありがとうございます。」
でも、七瀬先輩、全て計算の上だったんですねぇ。凄いですぅ。」