Steins;Gate 想定47(ネタバレ可)【シュタインズゲート】
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さあ、助手に電話だ。
携帯を弾くように開き、耳にあてがう。傍にいたダルとまゆりも
興味津々、裏から耳で携帯に触れてくる。暑苦しいことこのうえな
いが、構わず続ける。
トルルル、トルルルというありきたりなベル音の後に助手が電話
に出た。警戒心のない、澄んだ声だった。
「はろー」
「俺だ。そちらの状況を伝えろ」
「……」
ぶつっ、という耳障りな音と共に電話を切られた。
「あの女……! 切りやがった!」
「そりゃ切られるっしょ。オカリンの電話の仕方に対応できるのは、
たぶん僕とまゆ氏くらいじゃね?」
ダルが腕組みをしながら、うんうんと頷きながら言った。まゆり
に目配せするとそちらも同じジェスチャーをしている。──かたや
うんざり、かたや笑顔──そんな個体差はあるけれども。
もう一度かけてやる……! 即座にかけ直すと、間髪入れずに電
話に助手が出た。同じ挨拶で始まったが、声調がまるで違う。明ら
かにだるそうだ。
「はろー……」
「鳳凰院凶真だ。無言で切るな」
そう答えたものの、自然と言葉が苛ついてしまう。節々に棘が出
る。そんなこっちの状況を、知ってか知らずか──十中八九分かっ
てると思うが──助手はしれっと続ける。
「なんだ、岡部か。てっきりイタズラ電話だと思った」
「こっちの番号は表示されているだろう!?」
勢い余って思わず声が裏返る。情勢を覆そうと作戦を模索するも、
良い考えは浮かびそうにない。そりゃそうだろう。電話レンジ
(仮)がラボに存在する以上、イニシアチブは完全に助手側にある。
どうしようもない。
そして強がりは続く。
「それはつまり、この俺、鳳凰院凶真の狂気ぶりに畏怖を覚えたと
いうわけだな。それなら仕方な──」
ぶつり、とこの世の全てを吹き飛ばすような切断音。
──あ。
「あいつ、また切った! また切ったぞ!」
俺は切られた携帯をまゆりとダルと交互に見せながら、おもちゃ
を買うのを断られた駄々っ子のように主張した。
「だからオカリンの電話に対応するスキルは、僕とまゆ氏しかもっ
てないと何度言えば……」
ダルごときに重ね重ね言わなくたって分かる。ムキになってリダ
イアル。
「はろ〜」
間延びした声だ。おちょくられているのが手に取るように分かる。
奮起した。腹立たしいことこのうえない。目にものをくれてやる。
己の過ちを一生後悔させてやるぜっ!
そんな高揚した気分とは裏腹に、口走った内容はでんぐり返った
ものだった。
「……おかべりんたろうですけど、でんわれんじかっこかりの、せ
っていをすこしいじってほしいんです……」
「初めからそういえばいいのよ」
ふて腐れたガキか、俺は。……我ながら長生き出来そうではある
けれども。