コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 30
■SSを投下される方へ
1.投下前後に開始・終了の旨を書いたレスを入れて下さい(または「何レス目/総レス」を名前欄に)
2.規制に掛かりやすくなっていますので、長文の場合は支援要請の旨も冒頭に書いて下さい。
逆に2〜3レスほど使用の場合、支援は要らない旨を書いてください。レス毎の投下間隔は2分〜3分程度がベストです
3.投下前は、他作品への割り込みを防ぐ為に必ずリロード。尚、直前の投下完了宣言から15分程度の時間を置いてください
4.投下許可を求めないこと。みんな読みたいに決まってます!
5.ゲーム内容以外で本編放送前バレ情報があるSSは始めに注意書きを。
6.なるべくタイトル・カップリング・分類の表記をして下さい。(特にタイトルはある意味、後述の作者名よりも重要です)
・読む人を選ぶような内容(オリキャラ・残酷描写など)の場合、始めに注意を入れて下さい。
7.作者名(固定ハンドルとトリップ)について
・投下時(予告・完了宣言含む)にだけ付けること。その際、第三者の成りすましを防ぐためトリップもあるとベスト。
トリップのつけ方:名前欄に「#(好きな文字列)」#は半角で
・トリップがあってもコテハンがないと領地が作れず、??????自治区に格納されます
■全般
1.支援はあくまで規制を回避するシステムなので必要以上の支援は控えましょう
2.次スレ建設について
・950レスもしくは460kB近くなったらスレを立てるか訊くこと。立てる人は宣言してから
・重複その他の事故を防ぐためにも、次スレ建設宣言から建設完了まで投稿(SS・レス共に)は控えることが推奨されます
※SS投稿中に差し掛かった場合は別です。例 940から投稿を始めて950になっても終わらない場合など
3.誤字修正依頼など
・保管庫への要望、誤字脱字等の修正依頼は次のアドレス(
[email protected])に
※修正依頼の際には 作品のマスターコード(その作品が始まる際の、スレ番号-レス番号。保管庫の最優先識別コード)を“必ず”記述して下さい
例 0003-0342 のタイトルを ○○ カップリングを ○○
(↑この部分が必須!)
マスターコードを記述されず○スレ目の○番目の……などという指定をされると処理が不可能になる場合があります
4.睡眠は1日7時間は取りましょうw
■画像投稿報告ガイドライン
ロスカラSSスレ派生画像掲示板
PC用
http://bbs1.aimix-z.com/gbbs.cgi?room=lcsspic 携帯用(閲覧・コメントのみ)
http://bbs1.aimix-z.com/mobile.cgi?room=lcsspic 1.タイトルとコテハン&トリップをつけて絵を投稿する。尚、コテハン&トリップについては、推奨であり強制ではありません。
・挿絵の場合は、誰の何のSSの挿絵と書く
・アニメ他公式媒体などにインスパイアされた場合は、それを書く(例:R2の何話をみてテンさんvsライを描きました)
2.こちらのスレに以下のことを記入し1レスだけ投稿報告。
例:
「挿絵(イメージ画像)を描いてみました。
画像板の(タイトル)です。
・内容(挿絵の場合は、SSの作者、作品名等。それ以外のときは、何によってイメージして描いたのかなど)
・注意点(女装・ソフトSM(首輪、ボンテージファッションなど)・微エロ(キス、半裸など)・ゲテモノ(爬虫類・昆虫など) など、
絵はSSに比べて直接的に地雷になるので充分な配慮をお願いします)
以上です。よかったら見てください。」
画像掲示板には記事No.がありますので、似たタイトルがある場合は記事No.の併記をおすすめします。
*ただし、SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。
3.気になった方は画像掲示板を見に行く。
画像の感想は、原則として画像掲示板に書き、SSスレの投稿報告レスには感想レスをつけないこと。
画像に興味ない人は、そのレスをスルーしてください。
4.SSスレに投稿報告をした絵師は以下の項目に同意したものとします。
・SSスレに投稿報告した時点で、美術館への保管に同意したものと見なされます
・何らかの理由で保管を希望しない場合は、投稿報告時のレスにその旨を明言してください
・美術館への保管が適当でないと判断された場合、保管されない場合もあります
(不適切な例:ロスカラ関連の絵とは言えない、公序良俗に反するなど)
----テンプレは以上です----
>>1 こっちでも乙!
ちょっと早めの仮の投下予告です。
めちゃくちゃ長いのを書いてしまい、しかし話の都合上どうしても1日で投下したいのです。
そのため予め今日の夜8時頃(都合で上下する可能性あり)を目処に投下予告しておきます。
また、他の職人様で投下したい方は、遠慮無くこの時間付近でも投下して下さって構いません。あくまでも仮の予告なので。
そしてもしお暇な方は、猿回避のため支援をお願いしたいです。
まだしっかり数えていませんが、解りやすく言えば某民主主義を超える分量になっています……
予告だけで期待度が高まってしまうw
支援します。
自分も支持します。
前スレのナナリーにはぷにぷにがない件についてだが、マリアンヌを見るに将来性は期待していいと思うんだけどなぁ
>>5 支援
「ピンクオン・ストラもふ、SSを執筆するぜ」
「もふルヤ・もふティズム、SSを推敲する」
「ピエリア・アーデふ、SSを投下する」
「もふもふ・F・ピンク、投下を支援する」
こんな風に4人いたら楽なのにね。
では投下宣言です。
まえがき 1レス
アバン&タイトル 1レス
§1 10レス
§2 7レス
§3 7レス
§4 15レス
§5 3レス
あとがき 1レス
字数制限及び行数制限に引っかからない限りこれでいきます。
怒涛の45レス、余裕で60KB超えてますが何か?
10分後に投下開始します。支援準備よろしくねがーい
もふもふマイスターズwww 全力で支援させていただきます!
了解。支援準備OK
支援準備完了。いつでもどうぞ!
支援します
>>12のトーマス卿!あなたは保管に専念したほうがいいのでは?!
「さあ、始まるザマスよ!」
「いくでガンス」
「では、注意事項をよく読んでから本編をお楽しみ下さい」
「まともに始めな……あれ?」
注意事項
・作者はご存知ピンクもふもふ。。。通称もっふー。もうこの名で呼ぶ方が多数派だったり。
・カップリングはいつもの如くライ×アーニャ。。。もはや代名詞。もっふーと言えばこれだよね。
・ジャンルはシリアス気味で大真面目に恋愛物。。。ギャグ要素は皆無。いつものもっふーを想像していると残念な結果に。
・本文43レスです。。。非常に長いですが大目に見て。分けんの面倒だし。
・オリキャラ注意。。。結構重要な立ち位置で登場します。いいじゃねえかよ。
支援よろしくお願いします。
支援
16 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:18:07 ID:GKuBsb8H
少女は求めていた。
少年は求めてはいけなかった。
自分を闇から救い出してくれる存在を。
他の何を失っても守りたいと思う存在を。
記憶などお構いなしに、誰かに依存して生きる。
罪を重ね、誰かを守る事で生きる。
格好悪いけど、それができたらどれだけいいだろう。
最低だけれど、それができたらどれだけ楽だろう。
少女は見つけた。
少年は見つけてしまった。
彼となら、生きていける。
彼女となら、生きていきたいと思ってしまう。
それは、少女にとって知られざる世界。
それは、少年にとって許されざる世界。
互いのココロを埋めるカケラ。
そのカケラを敷き詰めた時、映し出されるモザイクは如何なる答えを世界に見出すか。
‡モザイクカケラ‡
支援
支援
支援
>>13 よく私とわかりましたね、IDを見たんですか?懸念はごもっとも、ですが……
この保管システムを甘く見てはいけない!リアルタイム保管を敢行するのでピンクもふもふ卿の領地に着目せよ!
20 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:20:58 ID:GKuBsb8H
§1
十月二十六日、広がる空の色は一面の漆黒。
黒の中に一つだけ浮かぶ青白い光は丸い月の輝き。
帝都ペンドラゴンもまたその闇に染まっていた。街灯や家々の光は暗さに敵う事なく、儚い。
風も無く、音も無く、静かな世界に――しかし、雄弁に存在を示す空間があった。
巨大な屋敷だ。
帝都の中でも一際目立つ広大な敷地。
次々と車がその豪邸に集まっていき、屋敷全体が人で溢れている。
集まる車のライトが輝き、無数の窓からは照明が零れ、庭という庭が灯火に包まれ、空から見るとそこだけが光を持ってるかのように明るかった。
その敷地の中心からやや外れた辺りに、光の中心となる大きな建造物がある。
豪勢で意匠の凝った装飾品が飾られ、それらがまた光を反射し鮮やかな色合いを見せる。
忙しなく人が行き来するその建造物の正体は、パーティーホールであった。
ホールの中は外見に負けることなく、豪華な飾り付けが成されている。
見るだけで美味と分かる料理群が至る所に置かれ、壇上では楽団がクラシックの音楽を奏で、それに合わせてホール中央にある広い空間ではダンスが行われていた。
正に貴族のパーティーだと言わんばかりのこの会場には、勿論ブリタニアにおいて有力な貴族でごった返しだ。
皆が皆、金のかかった衣装を身に付けている。
その中で色を失う事なく存在を示し、人々の群れが向かう所があった。
群れの視線の先にいるのは、桃色の髪の少女である。
髪の色より少しだけ濃いピンク色の、胸元の大きく開いたフリル付きのシンプルなドレス。
美しく着飾った彼女の周りには笑顔を張り付けた人々が。しかしそれとは反対に、彼女の表情は至って不機嫌だと示すかのように眉尻が下げられていた。
●
「お誕生日、おめでとうございます」
誰かがアーニャに向かってそう言った。
知らない人だ。それだけ確認し、アーニャは軽い会釈を返す。
無愛想な性格なので、これが最大限の返事。
だが、これでいい。どうせ相手も形だけ。そう思い、頭を上げた後はその誰かから離れるのだが、すぐに次が来る。
「アーニャ様ももう十五歳ですか。どうですかな?私のせがれなんかは……」
支援!
支援
支援
24 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:23:13 ID:GKuBsb8H
(鬱陶しい……)
露骨に媚びを売る人もいればさり気なく近付く人まで、様々な人物が寄ってくる。
(正確に言うと私じゃなくて――)
皆が寄るのはアーニャ・アールストレイムという名前に、だ。
「はぁ……」
何度目か分からない吐息を漏らす。
辺りを見渡せば、広いホールの中には大勢の人だかりが出来ていて、それがまた不機嫌さを倍加させるのだ。
(……いけない)
表情が堅くなってくるのが解る。
我慢、我慢と自分に言い聞かせ、アーニャは儀礼をそつなくこなす。
(もう帰りたい……)
ここから逃げて、部屋に戻って、ベッドに沈む自分を想像する。何と素晴らしいアイデアだろうか。
しかし、その望みは叶わない。何故なら、これはアーニャのためのパーティーであるから。
(今日は、私の誕生日)
この余りにも豪勢なパーティーは、単なる自分の誕生会なのだ。
だが、それだけならいいとアーニャは思う。憂鬱の理由は、このパーティーの隠された目的の方にこそあるのだ。
●
「アーニャ、ヴァインベルグ家だぞ」
「はい……」
隣に立っていた父からの言葉にアーニャは頷く。
少しだけ緊張を解き、示された方に視線を向け、
「よく来て下さいました、ヴァイン――」
「よう、アーニャ〜誕生日おめでとさん」
丁寧な挨拶を心掛けていたのだが、一瞬で崩壊させられる。
気の抜けるような軽い、聞き馴染んだ同僚の声。格式張ったパーティーの中では随分と新鮮に感じる響きだ。
(馬鹿……)
この男はいつもこうだ。へらへら笑顔でのん気に生きている。
最悪だと思う。羨ましい、とも。
支援
支援
27 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:25:42 ID:GKuBsb8H
「ジノ、アールストレイム家の御息女に何たる挨拶か」
「うるさいな、おやじ…父上は。いつもアーニャとはこんな感じなんだよ」
「まったくお前という奴は……すまないな、アールストレイム」
と、ジノの父親がこちら側に頭を下げ詫びた。確かにこういう場での貴族同士の会話としては、ジノの無礼はそうそう許される物ではない。
が、自分の父親はそういう事には寛容であるとアーニャは知っている。何しろ、ジノ以上に、自分は満足に敬語すらも扱えないのだから。
案の定父は笑いながら、
「いやいや、仲が良くていいじゃないか。どうだ、君のところも……」
「ああ、ジノもそういう年だからな。どうせならそちらのアーニャ殿と――」
「ははは、アーニャでは勿体ないだろう。それより――」
どんどんと話にのめり込む父親二人からそれとなく離れていき、アーニャはジノと改めて挨拶する。
「どうだ、アーニャ。私の親父殿はお前と結婚しろと言っているのだが」
「最悪」
考えるだけでも嫌だ。
最悪という気持ちをそのままに、アーニャは苦い物を口にしたかのように顔を歪めた。
ジノも肩をすくめるだけで、こちらの返事は予想の範疇だったのか気にしていない。
彼は手近な使用人から飲み物を受け取り、
「しかしアーニャも大変だな。婚約者探しとは」
「ジノの所はいいの?」
「まあな。……一昨日もお見合いだったが」
軽い感じでそう言うジノにアーニャは内心で舌打ちする。
(結婚だなんて……)
考えたこともない。
だが、自分は貴族。それもブリタニアでは五本の指に入る名門貴族のアールストレイム家だ。
当然、そこの一人娘となれば嫁ぎ先には問題が出てくる。
このパーティーは確かにジノの言う通り婚約者探しの一環だ。しかも本日発表予定。
自分に選択する権利がある分まだマシだが、周りにいる男達の中にに選ぶ価値がある人物なんて一人も見当たらない。
(本当、最悪……)
今日という日も、何もかも。
そもそも記憶が無いのに、貴族の意識なぞあるわけが無いのだ。
父親にしても顔を合わせる事が少ないからなのか、自分の娘が記憶を失った事さえ気付かない始末。
支援
保管庫見てみました。
同時保管すげぇw
支援
30 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:28:16 ID:GKuBsb8H
(私も男に生まれれば良かった…)
と、眩しそうにアーニャはジノを見上げた。
こんな事で悩まなくていい彼が羨ましく感じる。まあ、彼はどんな状況でも同じスタンスなのだろうが。
同じ名門貴族でありながら、何故女性であるというだけでこうも違う扱いなのか。
そんなアーニャの複雑な思いを乗せた視線に気付いたジノは、にんまりと頬を緩ませ、
「なんだ。やはり私と結婚するのが一番楽か?」
愉快げに問うジノを、アーニャはどこか呆れたような顔で見た。
「それ、モニカに言い寄った時と同じ」
「知ってたか」
「モニカに何度も聞かされた」
「ああ、そっか」
ジノはなるほど、と呟いた。
そしてアーニャの耳元に顔を寄せ小声で話しかける。
「そういえば、“相手”は誰になったんだ?」
それを聞いた瞬間、アーニャの表情が今までで一番険しい物になった。
(やっぱり聞いてきた…)
この“相手”について聞かれる事が嫌だったのだ。モニカや一部の人しか知らないそれを。
すぐバレるにせよ、できることなら誰にも教えたくない情報だ。
「スザクか?ルキアーノとか?」
「違う」
スザクはともかくルキアーノは無いだろう。そう思うが、ジノの想像がラウンズ内に限定されているようで、“相手”の名が告げられるのも時間の問題だと気付く。
アーニャはただドレスの裾をぎゅっと握りしめ、ジノをあしらう。
(むぅ……はやく来て…)
いつになく弱気な自分に嫌になるが、背に腹は代えられない。この場で救世主になるはずの“相手”を待つ。
「なあ、誰なんだよ。ビスマルクか?……そりゃないか。って事は……ラ――」
「ごめん、遅れた」
ジノの言葉に重なるように、背後から別の声で謝罪が飛んできた。
(来た……)
支援
支援
支援
34 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:31:12 ID:GKuBsb8H
その声が誰かはすぐに分かった。だからアーニャは立ち止まったまま、軽く深呼吸をして、
「遅い」
振り返ると、そこに立っていたのは思った通り、申し訳なさそうな表情をしたライだった。
「だからごめんってば」
「むぅ……でも遅いもん」
「おっと」
ぷくっと膨らましかけたアーニャの頬をライが慌てて両手で押さえる。彼は「この感触が好きなんだ」とこちらのほっぺに良く触れる。
口の中から空気が抜けていく感覚を楽しみつつ、アーニャは改めてライの服装を見て言った。
「馬子にも衣装…」
「失礼な!……まあ、誉めてるからいいのか?」
「いいの。でも、ライって貴族の服着慣れてるの?」
「……そう見える?」
「うん」
今日のライはラウンズの制服とは違って、緩やかな金と銀の装飾が付いた白い上下。そこに銀色の髪が映え、すっきりしているのにどこか高位な品格を漂わせている。
馬子にも衣装と評したアーニャだったが、その実、ライはブリタニア貴族特有の艶やかで煌びやかな一張羅を完璧に着こなしているように見えた。
ひょっとしなくても、“カッコいい”と思える。――絶対に言わないが。
「まあ、僕も昔はこういうのを着ていたりも……したからね。こっちの方が自然体かも。でも…」
「?」
しかしそんなアーニャに対し、ライはというと、
「でもアーニャは綺麗というか可愛いというか……見違えたよ」
「う……」
手放しで賞賛され、思わずアーニャは後ずさってしまう。「どうかした?」というライの無垢な瞳が痛い。
(忘れてた……)
こういう男だった。改めてライの性格を思い知る。
天然で真面目でぼけぼけで、加えてこうやって恥ずかしげもなく気持ちを表現してくるのだ。
女の子と仲が良い事を指摘されると「まんざらでもない」とか答えちゃう性格なのだ。
「むぅ……」
「アーニャ?」
そしてこういう状態になると、アーニャは自分が素直に褒める事ができないでいるのが居心地が悪く感じる。
まるで、ライの方が大人であるかのような錯覚。事実として彼の方が年上ではあるが、しゃくに障るのだ。
支援
支援
支援
38 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:33:42 ID:GKuBsb8H
(よし……)
せめて「似合ってる」くらいは言おうと決意したその時、アーニャは後ろにいるジノの存在を完全に忘れていた。
「ライも……その、似合っ……て……」
「どしたアーニャ、顔真っ赤だぞ――ぐはっ!いきなり殴るなよ!?」
「ジノ……空気読んで」
「いや、読めと言われてもなあ。さっきから二人だけで話してるから」
「そう。でも、ジノに用は無いから」
「んあ?じゃあライにはあるのか?……あるんだな?くっくっくっ…」
ジノは突然何かに気付いたようで、腹を抱えて笑い出した。
怪訝な表情をするアーニャに一言、
「ライが“相手”か」
「っ……!」
しまった、と思った時にはもう遅かった。指摘された瞬間、アーニャは顔を真っ赤にしてそれを事実上認めてしまった。
ジノは心底愉快そうに、
「やっぱりなー!いやぁ、ライ!お前はフラグ立てるのが本当に巧いなあ」
「褒めてるのかい、それ?……まあ、アーニャを放っておく訳にもいかないし」
「そうかそうか…くっくっくっ…そうかライか…!」
ツボに入ったのか、ジノは必死に腹を押さえて笑いを堪えている。
ライも若干困った様子は見せているが、特にそれ以上の反応は無い。
だがアーニャの方は、
「くぅ……」
と、下唇を噛んで恥辱に震えている。
「アーニャ〜、別にライが“結婚相手”ならそう悪い話じゃないだろう。何ならいっそのこと…」
「うるさい。ジノはあっち行って」
「へいへい。ライ、後で例の物は書いておくから受け取っておけよ。ではお二人でごゆっくり〜」
言って、背中を向け人の群に溶け込んでいくジノを見ながら、アーニャは突き付けられた現実を直視していた。
(ライが……結婚相手)
「どうする?ジノも行ったし…踊ろうか?」
「……わかった」
ここでじっとしててもしょうがない。アーニャは渋々承諾した。
支援
支援
支援
トーマス卿すごすぎるw支援と保管を同時にこなすとは…!
42 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:35:58 ID:GKuBsb8H
●
二人は手を繋いでホール中央まで歩き、そして白とピンクのコントラストが並び立つ。
お辞儀。
すると、アーニャは周りから人の気配が退いていくのを感じた。
パーティーの主役が今夜初めて踊るのだから、注目されるのは当然だ。
(何か変な感じ…)
モーセの杖の気分、と変な思考に突入するのはライが目の前にいるからか。
“婚約者となる人物”が前に立っていると考えると、流石に緊張してしまう。――たとえ本物ではないにしろ。
(とりあえず、ライのおかげで何とかなる……)
アーニャは目の前にいる救世主に、心の中で感謝の言を述べた。
●
――1ヶ月ほど前、モニカに相談を持ち掛けたのが始まりだった。
どこから間違ったのか。恐らくは相談相手か。モニカにも似たような事があっただろうと適当に考えたのが問題だった。
彼女は面白がって協力してくれた。その結果が、ダミーの婚約者。
(それがライ)
ライは今、クルシェフスキーの家名を受け継いでいる。
彼はエリア11からノネットに連れて来られた経緯を持つが、しかしエニアグラム家の保護下にあったというだけ。ラウンズという身分以外、出身すら不明の謎だらけだった。
モニカはそんなライをクルシェフスキー家に養子として招き入れる事によって、アーニャの婚約者として相応しい立場に押し上げた。
(だけど……それは一時的なもの)
アーニャは今日、ライを婚約者として選ぶ。
だがその後――ライがクルシェフスキーの養子でなくなったら?
(ライはアールストレイム家に釣り合わなくなる…)
アーニャにとって、家の地位で結婚が左右されるのは本来ならごめんだ。そもそもそれが原因なのだから。
支援
支援
支援
46 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:38:42 ID:GKuBsb8H
だが今回はそれを利用する。
後日、ライは何らかの事情で養子から外される事になる。
そうすれば自然とライとの婚約は解消となり、晴れてアーニャは自由の身。
不安要素があるとすればその後のクルシェフスキー家の立場にあるが、それについてはモニカも承諾してくれた。それくらい構わない、と。
元々ライは出身不明者であるから、上手く理由を付ければクルシェフスキー家に責任は及ばない。
(だけど……)
ライの立場は微妙になる。これは避けられない事だ。
養子になって、婚約者になって、しかし養子から外され、婚約も解消。元に戻るかと言ったらそうはならない。
今後ライが他の貴族に関わる事は非常に難しくなるだろう。たとえラウンズであろうと。
(なのに……)
ライは躊躇せずにその役目を引き受けてくれたのだ。
●
「あ」
考えごとをしていたせいで、アーニャは足を踏み外した。慣れないヒールだったせいもある。
「おっと」
軽やかなステップ一つでライが踏み込み、ダンスの流れを途絶えさせないままにアーニャを支えた。
「……ありがとう」
アーニャは少し恥ずかしくなりながらも礼を言った。ライは頷き、
「どういたしまして」
「……」
「どうかした?」
別に、と首を振って返す。
言いたい事はあった。だけど、何から言えばいいかアーニャは分からなかった。
(ありがとうって……)
支えられた時みたく、自然に出される感謝の言葉以上を伝えたいと思う。
ライからすれば、何のプラスにもならない事だ。なのに彼はこうまで自分の為に――。
(どうして?)
どうして彼がこんな役目を引き受けたのか。不意にそんな疑問が頭をよぎった。
最初に思い浮かぶ理由は、彼の“性格”だ。頼まれたら断れない性格。
支援
支援
49 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:41:22 ID:GKuBsb8H
(だけど……)
アーニャはそれを、性格だと思いたくはなかった。もし性格だとすれば、それはつまり彼は頼まれたら誰の婚約者にでもなってしまうという事。
それは、何となく嫌だ。そんな物に感謝したくはないし、第一そんな人物ではないとアーニャは知っている。
「ねえ、」
「ん?」
「何で引き受けてくれたの?」
くるくる踊りながら、二人だけの世界でアーニャは問う。
ステップ、ステップ、ターン。ステップ、ステップ、ターン。
「さあ、僕にもよく分からないよ。何でこんな事してるのか」
「迷惑かけて……ごめんなさい」
「いいよ。だって……」
「だって?」
ステップ、ステップ、ターン。
――アーニャには、幸せになってもらいたいから。
「…かな?うん、それが引き受けた理由だと思う。……そうだ、言うのを忘れていた。誕生日おめでとう、アーニャ」
爽やかな笑顔で言われ、その笑顔を見てアーニャは押し黙る。
思う事は一つだ。
嬉しい。
(どうして…)
今までアーニャに声を掛けた貴族にだって、似たような台詞を言った者はいた――と思う。あまり覚えてないから分からないが。
それなのにどうしてこうまで彼の言葉は真っ直ぐに自分の心に響いてくるのか。
「どうして私に幸せになって欲しいの?」
答えは聞かなくても分かってる。
でも、その答えをアーニャは聞きたかった。ライの口から、直接。
何故なら、
(天然で真面目でぼけぼけで……だから)
だから、ライは嘘をつかない。少なくともこういう場では。
それが分かっているからこそ、彼の言葉はアーニャに響く。心地よい音色で心を揺らしていくのだ。
ステップ、ステップ、ターン。
支援
支援
支援
53 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:42:42 ID:GKuBsb8H
「どうして幸せになって欲しいかって……勿論、アーニャが好きだからだよ」
(馬鹿……)
アーニャの思った通りの台詞が来た。
これから婚約者の立場になると分かってて言っているのだろうか。たぶん、分かっていない。
普通に聞けば告白だ。
「本当、馬鹿」
「ええ!?」
「でも、……ありがとう。嬉しい」
「え……あ、うん。どういたしまして……?」
ステップ、ステップ、ターン。ステップ、ステップ、ターン。
支援
支援
56 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:45:21 ID:GKuBsb8H
§2
「は?」
父に呼び出され、ライとのダンスを中断してやって来たアーニャは自分の耳を疑った。
「今……なんて?」
「だから、この方がお前の婚約者だ」
「クリスティアン・ローゼンクロイツです。初めまして、アーニャさん」
と、馴れ馴れしくもいきなりファーストネームで呼んできたのは、如何にもキザったらしいお坊っちゃんという風情の男だった。
アーニャの父親はそんな得体の知れない男を、あろうことか婚約者だと紹介してきたのだ。
「ローゼンクロイツ伯爵は各方面にも顔が利いてな。婚約の後、所領の譲渡についての事も決まっている」
それを聞いて、アーニャは声が上擦るのが抑えられなかった。
「な……私を売るって事!?」
所領の譲渡。これだけで、アーニャは全てを理解した。自分の父親は、爵位目当てに娘を売ろうとしているのだと。
ブリタニアにおいて爵位の度合いは、基本的には所領の大きさで決まる。
そしてアールストレイム家の所領は現在アーニャの父がその大半の権利を保持。
アーニャとてラウンズであるため貴族制度では皇族に次ぐ地位にあるが、世襲制ではなく一代限りの襲名となっているため、父の地位には結び付かないのだ。
そして今、アーニャの父は自分を嫁がせる事によって新たな、自身の領地を得ようとしている。
アールストレイムとラウンズという、他からは喉が出るほど欲しい自分を売って、公爵から大公爵へと位を上げるつもりなのだ。
(そんなの……!)
許せる訳が無い。
たとえ初めからこの結婚が政略に絡む物だと解ってはいても、誰を選ぶかという最後の権利まで奪われる事なんて。
アーニャはすぐにでもその事を撤回させようとしたが、
「少しいいですか、アーニャさん。どうやら勘違いしているようなので…」
にこやかな笑顔を浮かべるクリスティアン。だが、アーニャの良く知る“にこやかな笑顔”とは打って変わって嫌悪感しか抱かれない。
「勘違い? 私の父は大公爵の位を、あなたはアールストレイム家と繋がりができる」
それが目的、ときっぱり告げるアーニャに、しかしクリスティアンは首を振った。
「違います。私の目的はあなたを妻にする事なんですよ」
「なにを……」
支援
支援
支援
60 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:47:47 ID:GKuBsb8H
「あなたを愛しているんです」
「っ……」
言われた瞬間、動揺がアーニャの中に走った。
(何…これ……)
胸がむかむか、焼けるように相手を拒めと訴えかけてくる。
今まで自分に対して「愛している」と言ってきた男なら星の数ほどいる。そのどれもが気にも留めない物だった。
(違う……)
だが、違う。
この男からその言葉を言われた瞬間、いやもっと前から、アーニャは何かに囚われていた。
「いや」
感情そのままの言葉を発する。
「おい、アーニャ。何を言って――」
言うことを聞かせようとする父親を、しかしクリスティアンが止めた。
「アーニャさんは突然の事に照れてしまっているんですよ。少しお話しすれば理解していただけますよ。私にお任せ下さい、アールストレイム“大公爵”」
「む…分かった」
引き下がる父を後ろに、クリスティアンがアーニャの前に立つ。堂々とした様子で、
「アーニャさん、もう一度言います。私はあなたを愛しています」
「……あっそう」
興味なさげに呟くアーニャに、しかしクリスティアンは酔ったように続けて言う。
「強く、美しく、しかしそれでいて儚さを持つあなたは砂漠に咲く一輪の花。初めて見た瞬間、雷が落ちたようでしたよ」
一言一言が張りぼてのような薄っぺらい言葉に、うへぇ、とアーニャはジノのようなリアクションを取りそうになる。その雷で頭のネジが飛んでいる、と。
「ありがとう。でも私は、あなたと結婚なんかしない」
「ほう、ではどなたと?」
「む………」
言おうとして、しかしアーニャは口を閉じた。
呼べば、きっと彼は来る。そして自分を助けようとしてくれる。
(だけどこの状況で呼んだら…)
彼の立場は最悪に近くなる。それは駄目だ。これ以上、迷惑を掛ける訳にはいかない。
だから、
「ねえ」
「なんでしょうか?」
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63 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:49:30 ID:GKuBsb8H
「あなたは、私を幸せにしてくれるの?」
問われたクリスティアンは質問を反芻するように深い頷きをする。そして真剣な表情で、
「勿論。愛する女性に幸福を届けるのは男の役目です。それに――」
一息。笑顔を作り、
「私はローゼンクロイツ伯爵。この名に懸けて、決して不自由な思いなどさせませんよ」
言って、クリスティアンはアーニャの手を取り、優雅な仕草で手の甲にキスを落とした。
その様子に、周囲からは「おぉ…」という類の感嘆の吐息が漏らされる。
まるでおとぎ話の姫と王子のような魔法がかかった世界。
皆がその世界に酔いしれる中で、一人だけ十二時の鐘を告げられ魔法が解かれている者がいた。
アーニャだ。
周りにいた貴族も、目の前にいたクリスティアンも気付かない。クリスティアンの台詞に、微かに眉尻が下げられていたのを。
(そっか……)
そして今、アーニャの目は虚ろ。何も映してはいなかった。
深い思考の中にいたのだ。
(わかった)
理解する。自らに潜んでいた感情を。
クリスティアンが現れてからずっと感じていたえもいわれぬ不快感。その正体を。
(私は、この男を何とも思っていない)
クリスティアン自体はアーニャにとってどうでもよかった。ただ、
(婚約者って言われたから……)
婚約者はあなたじゃない。そう言いたかったのだ。自分を幸せにしてくれる人物は、きっと他にいる。
そして、与えてもらった幸せを返したいと思う人がいる。
彼と一緒にいたいと思う。
(わかった……)
感情のカケラが、ココロにかっちりとはまる。埋まる。満たされる。
(私は――)
私は、ライの事が――。
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66 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:52:26 ID:GKuBsb8H
「っ!?」
何かが弾けたような苦しみに襲われアーニャは胸を押さえた。
(なに、これ……!?)
眠っていた感情の爆発。
理屈や理性、論理的な思考では説明がつく事なく、鼓動による波紋が自分を中心として津波となって無限大に広がり、そしてその行く先はたった一人の少年の下。
アーニャのココロは、その莫大な感情の奔流に耐えられなかった。
(どうして……)
どうして、自分は彼の側にいないのか。何故、こんな男と話しているのか。自分の世界に入り込んでいるこの邪魔者は何なのか。
今まで以上に他者を疎ましく感じる。
(いやだ……)
「どうかされましたか? アーニャさん」
苦い表情をするアーニャを気遣っての行動か、もしくはそう見えるようにしただけか。
どっちにしろ、今のアーニャにとっては煩わしい。
「私は、あなたを選ばない」
明確な意志を持つ拒否。それを拒絶と言う。
「私は……私には、心に決めた人がいるから」
その言葉を聞いて、初めてクリスティアンは今までとは別の顔を見せた。獲物を前にした獰猛な獣のような表情。
「ほう……それは誰ですか?」
「それは…」
言い淀む。
恥、という考えがある訳ではない。
言ってしまったら、恐らく彼は来るだろう。きっと助けてくれる。アーニャの望む通りに。
だが、だからこそ名前を呼べない。
好いているが故に、これ以上自分のわがままで彼を巻き込みたくはなかった。
(でも……)
助けて欲しい。
それでも助けて欲しい。
彼には待っていてと言ってあるが、こちらの様子くらいは伺っているはずだ。
(助けて…)
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>>19 どうやったらこんな離れ業を出来るんだ支援
71 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:54:36 ID:GKuBsb8H
「誰なんですか?私以上にあなたに相応しい人なんて」
(助けて――ライ!)
「僕ですよ」
「何だ…君は?」
目の前にいるクリスティアンが怪訝そうにアーニャの背後を見た。
後ろにいる――ライを。
(ああ……)
来た。来てしまった。
優しい響きに促され、アーニャは振り返る。そして呼ぶ。ありったけの想いを込めて、
「ライ!」
駆け寄り、そのままライの胸に飛び込む。嬉しさのあまり涙が零れ落ちるが気にはしない。
「おっと」
ライはアーニャを優しく受け止め、そっと抱き締めた。
「ごめん。呼ばれない限り出て来ない約束だったけど、我慢できなかった」
アーニャはライの胸に顔を埋めながら首をぶんぶん振る。
「いい。遅いくらい」
「あはは、今日は遅れてばっかりだ」
申し訳なさそうに笑うライを見て、アーニャはそうじゃないと言いたかった。
(言いたい事は…もっといっぱいあるのに)
言葉が見つからない。先に涙の方が出てしまうくらいだ。
「ライ……わた、私…」
「ん?」
ライに見られるだけで体が熱くなる。
焼けるように赤くなった頬そのままに、アーニャはしどろもどろになりながらも感情を口に出した。
「私……もっと言いたい事…あって。ライの服、似合ってる…とか。迷惑かけてごめんなさい…とか。もっと…もっと……あぅ」
喋り出したら止まらなくなった。今までのツケが回ってきたのか、話したい事が沢山ありすぎた。
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74 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:57:04 ID:GKuBsb8H
ライはそんなアーニャの唇に人差し指を添え、口を閉じらせた。
「わかった。僕も君と沢山話したい。でも、それは後だ。今、アーニャが僕に一番して欲しい事。それだけ言って」
「一番…して欲しい事…」
今のアーニャにはそれだけ伝える事も難しい。
ただ言うだけではなく、想いも伝わるように。
流れる涙を拭う事さえ忘れ、アーニャは言う。自分の気持ちを。
「助けて……あと、もし良かったら…わ、私と……けっこ――」
「そこまでにしませんか?アーニャさん」
アーニャの懸命な努力によって発せられた言葉に、別の物が覆い被さった。クリスティアンだ。
彼はこちらの様子を辛抱強く待っていたらしい。律儀だとは思うが、かと言って邪魔であることに変わりない。
アーニャは文句の一つでも言おうとして、しかし先に悪態をついたのはライだった。彼はクリスティアンを一瞥し、
「まったく邪魔な奴だ……なに、アーニャ?鳩が散弾銃食らったみたいな顔をして」
「え……私、そんな変?」
ライが人に敵意を向ける事などなかなか無いから驚いていたのだが、思わず顔を触って確かめる。
「大丈夫だよ。……そして受け取った。『助けて』という君の願いを僕は叶える」
「う、うん」
アーニャが頷くと、ライは急に顔を逸らした。心なしか、彼の頬が赤い。
どうかしたの。そう言おうとしたところで、
「もう一つの願いは……後で僕から言うよ」
「あ…………」
じわっと再び心が満たされる。
絶対、今自分の顔はにやけている。そう確信できるほどに幸せに溢れている。
「わ、笑うなよアーニャ」
「笑ってないもん…」
頬はだらしなく緩み、ぴくぴくと震えている自分は間違いなく笑っている。
(だって…だって…)
ライは耳まで真っ赤になっていたのだ。これをどうして笑わずにいられよう。
(ライも、私と一緒)
悩んで、怒って、悲んで。色々な感情を持っていて。そして、恋をする。
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78 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 20:59:49 ID:GKuBsb8H
「じゃあ、後は邪魔者に消えていただくとしよう。アーニャ、僕が合図したら……」
耳元で告げられた言葉を頭の中で復唱する。
「?……そうすればいいの?」
「それだけでいい。後は僕がやる。予定とは違うけど、何とかしてみるよ」
「わかった」
アーニャはしっかりと頷き、ライに全てを任せると決めた。
「さて、お待たせしましたクリスティアンさん」
そしてライはアーニャの頭を一撫でした後、クリスティアンに向き直った。
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81 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 21:02:03 ID:GKuBsb8H
§3
「さて、お待たせしましたクリスティアンさん」
言って、彼は頭を下げた。
誰からも一目で優雅と感じられる傾頭。更に上げた表情もまた柔和で人に親身な感情を抱かせる。
一方、クリスティアンは同じ微笑でももっと狡猾で、何かを秘めているようなギラつきを持っている。
「まったくだよ。まあ、私も大人だ。何やら面白い話をしていたようだけど…」
流れるようにライへの叱責と自らの賞賛を同時にこなす。慣れているのだろう。続く言葉に淀みは無い。
一方のライは笑みを崩す事なく、そのことですか、と頷いた。
ここで皆が気付く。彼は表情こそ柔和さを醸し出しているが、その実表情の裏に激しい怒りを帯びている事に。
そしてライは自身の言葉を待つ人々全てに向けて、皮肉っぽい笑顔を浮かべ、よく通る声で堂々と言った。
「ああ、2人の愛を確かめ合っていただけですよ」
●
言った瞬間、周囲にどよめきが走るのをライは見た。
クリスティアンの表情も穏やかな笑みを見せてはいるが、口元がひきつっている。無駄に大きそうなプライドを傷つけられたからだろうが。
その表情を見てライは笑みを濃くする。屈辱だろう? と。だが、
(これくらいで済むと思うな。アーニャの婚約者と名乗った事を後悔させてやる)
ライは非常に怒っていた。激昂、と言ってもいいかもしれない。
思うのは自分の事とアーニャの事。
今アーニャは、自分が抱き寄せた腕の中で小さく震えている。安心しきったのか、全体重をこちらに預けている状態だ。
(どうしてこんなになるまで呼ばなかった…)
恐らくは自分に迷惑を掛けないため。それはライにも分かっていた。故にその意図を汲んでライは動かなかいでいようとした。
また、それ以上に動かせない自分の意志も存在した。
アーニャに手を差し伸べる事を、自分は恐れていた。いや、今も恐れている。そんな資格は自分には無いのに、と。
誰かのために立ち上がり、そして幸せになる。それは、
(僕がそれで罪を犯し、失敗した事だ……そして、今また同じ事をしているんだと)
そう思い、ライはアーニャの所へ行こうとする自分を必死に縛り付けた。
だが、できなかった。
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84 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 21:04:09 ID:GKuBsb8H
飛び出した理由は、色んな感情が渦巻いて説明できない。罪の意識だってある。ただ一つ確かな事は、
(僕がアーニャを好きだという事…)
それだけだ。
(初めから分かっていた事だったんだ…)
『何で引き受けてくれたの?』
『アーニャには、幸せになってもらいたいから』
(そう思ったのは、何故だ?)
『どうして私に幸せになって欲しいの?』
『それは勿論、アーニャが好きだからじゃないか』
あの時、もう答えは全て出ていたではないか。
あの時、ライは『嬉しい』と返してもらえた事を喜んでいたのだから。
(馬鹿だな……僕もアーニャも)
最初から二人の関係は進んでいた。自分も、そしてアーニャもその事に気付いていなかっただけ。
婚約者という役目を引き受けたのは、きっとそうなる事を望んでいたから。
たとえ彼女をこの手に掴む事が、自分には許されない事だとしても。
(僕はまた、罪を重ねる)
その事はきっとまた自分が生きて背負う上で、枷となるのだろう。正直、これ以上の罪悪に押しつぶされないかは不安だ。
だがアーニャには、あの自分の過去の過ちを見せたくない。彼女を巻き込みたくはない。
(でも……アーニャは見たいと思うのかな)
その先に見えた微かな自身の救いを否定する。これ以上望む物は無いのだと。
今はまだ、どうなるかは分からない。躊躇いもある。後悔もある。しかし、
(アーニャを放っておくなんて出来ない!)
目の前にいる男を見る。
――敵だ。
その後ろにいるアーニャの父を見る。
――敵だ。
周りにいる貴族達。
――敵だ。
どれもがアーニャの枷となる存在だ。そして、自分は助けてと彼女から言われた。
(だから……)
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87 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 21:06:59 ID:GKuBsb8H
助けてみせる。アーニャを苦しめる世界から、彼女を救い出す。
ならばどうするか。ライの頭脳は単純かつ明確な解答を――既に弾き出していた。
そのための下準備も、アーニャには済ませてある。
(僕は……やれるのか――)
しかし、それをやる覚悟は未だに決まらない。
●
「そういえば君の名前を聞いてなかったね」
「ライ・クルシェフスキーです」
クルシェフスキーの名を聞いて、クリスティアンは興味深げにライを見た。
「ライ……確かラウンズだったね。だが、クルシェフスキー家に属しているなど聞いた事も無いが?」
「僕は最近養子に迎えられたので、あまり知られてないかもしれませんね」
一息。ライはにっこりと、
「でも安心して下さい。――僕もローゼンクロイツなんて聞いた事無いですし」
再び周囲が息を呑む。
「っ……無礼な!」
「ではこちらも同じ言葉をお返します」
言われ、クリスティアンは押し黙った。家名はまだしも、個人の地位はラウンズが上だ。まともな言い争いでは分が悪いと判断したのだろう。
襟に手を当てて首元を緩めて彼は、
「なかなか面白いね、君は。しかし…例えクルシェフスキーと言っても養子。こんなやり方で彼女を手に入れて、本当に幸せにできるとでも?」
問われたライは、初めて笑顔を崩してクリスティアンを睨んだ。
相手の心の奥まで見透かしてしまうような蒼炎の瞳が周囲を威嚇する。
「どういう意味でしょうか…」
「養子程度の君と結婚などしても、アールストレイム家にメリットは無い。元々彼女もラウンズなのだから」
「それが?」
「分からないかな。君と結婚したら、アーニャさんの立場は非常に悪くなるだけさ。だが私ならそうはさせない。決して不自由な思いをさせないよ」
言って、クリスティアンは勝ち誇った表情で身を横にずらした。
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「そうだな…」
クリスティアンの後ろから穏やかな声を挙げ現れたのはアーニャの父。無精髭をさすりながら残念そうに彼は言った。
「君のアーニャを想う気持ちは父親として嬉しいと思う。ただ、君もアーニャの真の幸せを願うなら……分かってもらえないか」
真の幸せを願うなら。
それはつまり、ライとアーニャの想いなど一時的な感情に過ぎないのだと。そして、ライではアーニャを幸せにできないのだと、そう告げられたようなものだ。
だが、
「父親として? 真の幸せ……?」
ライはアーニャの父を睨んだ。怒りと悲しみが混じり合ったような色を灯して。目尻には涙さえ浮かべて。
「なら……なんでアーニャの意思を無視するんですか。なんで話を聞いてあげないんですか! なんで……アーニャを売ろうとした!!」
「く……勝手によその家の事情に首を突っ込まないでくれないか」
「違う! これは家の事情じゃなくてアーニャの問題だ!」
「君達は子供だから分からんかもしれんが、こうする事が一番なのだ!」
アーニャの父親も声を張り上げた。
今やホールに集まる人全てが、この言い争いの行方を見守っている。
アーニャもまたライにしがみつきながら、決して視線を彼から逸らさない。
そのアーニャの肩を痛いくらいに強く抱き寄せ、ライは叫ぶ。
「その子供を結婚させようとしているのがあなただ! 偽りの善意を押し付け、自分一人が全てを手に入れようとして……ふざけるな! アーニャはあなたの道具じゃない!」
放たれる激情に、アーニャの父親は息を詰めて返す言葉を失った。
アーニャの幸せを望んで、という善意の嘘は二人には通用しない。
感情という物ではもはやライとアーニャは揺るがない。何よりも強い結束が二人にはあった。
ならば、その二人を揺るがせる物は別の物。
「だが君のそれは理想論だ」
92 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 21:10:06 ID:GKuBsb8H
再び前に立ったクリスティアンが告げる。事実は変わらない、と。
「事実、親が子を道具として扱う事もある。私はそれを利用したとも。悲しい事だがそれが現実さ」
それはつまり、
「……僕達は現実を理解しようとしない子供だと?」
「そう。これは……貴族として生まれた者としては当たり前の事なのだから」
「アーニャはそれを望んでいない!」
「それが子供だというんだ! 望んでいない? だからなんだ。世の中にはどうやっても貴族になれない生まれの者が沢山いるぞ!」
逆もまた然り。クリスティアンは感情ではなく理性と理屈でもってライに立ちはだかる。
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96 :
モザイクカケラ:2008/10/26(日) 21:13:14 ID:GKuBsb8H
「庶民には庶民の、貴族に生まれたからには貴族なりの、それぞれに伴う義務がある。それがノーブル・オブリゲーション。この世界のシステムだ!」
貴族に生まれた誇り。庶民の上にある立場としての義務は、確かにブリタニアの制度を形作る物だ。
「だがそのシステムに相容れない人はどうすればいい! 抗う事すら許されないと言うのか!」
「抗うなら抗えばいい――だが、見ろ」
クリスティアンは両腕を左右に大きく広げた。
その先には、ホールには有力な貴族達が集まっている。システムの中心が。
ライが、敵だと認識した存在が立ちはだかっている。
「君は私を含めここにいる全員を、そして世界というシステムを敵にすると言ったのだよ?」
「…………」
ライは言葉を詰まらせた。顔を俯け、ただ悔しそうに唇を噛む。
「それでどうやって彼女を幸せにできる! 全てを失って2人だけでどうやって幸せを掴む!? 私より彼女を幸せにできる保証が、どこにある!!」
これが理性。これが理屈。
ライとアーニャがどれほどの想いを抱えようと、逃げる事のできない現実。
アーニャには失った記憶を取り戻したいという願いがある。日記に書かれた彼女の姿は、確かにアールストレイムとしてのもの。
ライには犯した罪を償いたいという願いがある。そのために今の立場はどうしても彼には必要なもの。
両者とも、全てを無くして進むには途方もなく厳しい道のりだ。
いくら抗っても、それが今の彼らの頼どころである以上勝ち目は無い。
「それでも……」
その時、黙っていたアーニャが突然口を開いた。
皆は聞く。ライにしがみつき、俯いたまま放たれる言葉は力無く、覇気は欠片も見当たらなかった。
しかし、
「それでも私は……」
現実に打ちのめされようと、理想が夢と共に打ち砕かれようと。彼女は揺るがない。
「ライといられるなら、私はそれだけで幸せ……そう思う」
笑顔。アーニャは顔を上げて笑顔でそう言った。
弾かれたようにライはアーニャの顔を見つめる。
「アーニャ…!」
それが二人の答えだった。
「馬鹿馬鹿しい…!」
クリスティアンは吐き捨てるように声を荒げた。それが彼らの答えだ。
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だが、というようにライとアーニャは並び立って言葉を返した。
クリスティアンとアーニャの父に。その他周囲に立ち並ぶ貴族達に。
「あなたは、あなた方は、僕達の答えを馬鹿馬鹿しいと思う。それが普通なのでしょう」
「でも、それが私達が出した答え。例えそれが馬鹿にされるような物でも――あなた達に否定する事はさせない。それに……」
アーニャがライに視線を向け、彼は促されるままに懐から束になった羊皮紙を掲げた。
皆の視線が集まるその紙の束を――、
「僕達は何も世界に喧嘩を売る訳じゃない。認めてくれる人たちだって確かにいるんです」
言って、バラまいた。
なんだ、という疑問の声が発せられるが、羊皮紙は停まらない。空気に圧され、ひらひらとその場に舞い落ちる。
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そして散在した羊皮紙を、貴族の一人が拾う。すると、一瞬でその顔を青ざめて言った。
「これは……婚約の推薦文…しかもヴァルトシュタイン家の!?」
告げられた言葉に、皆に緊張と動揺が走る。
そして羊皮紙を拾った別の人物が、
「こっちはエニアグラムだ!」
また羊皮紙を拾った別の人物が、
「おいおい、ブラッドリーにエルンスト家まで…」
次々と挙がる名前は、皆アールストレイムに負けず劣らずの名門貴族のもの。
ラウンズに属する名家と、更にその家と深い繋がりを持つ名前まで。
更には別の羊皮紙を拾ったアーニャの父が、
「ヴァインベルグも……一体どういうつもりだ!?」
「いや、ジノがどうしてもと言うから先ほど……名前はあいつが書いておったし、まさかこういう使い方をされるとは……」
喧騒が輪となってホール全体を包み込む。皆が恐ろしい物を見るかのように羊皮紙を前に驚愕している。
「何だこれは……!」
クリスティアンが叫ぶ。焦りを帯び、怯えたような声だ。
如何に伯爵の名であろうと、いや、逆に伯爵という地位で相手にした事がここに来て仇となる。
相手はラウンズ。クリスティアンよりも楽に有力貴族との繋がりが持てるのだから。
誤算としては、まさか他家の婚約に別の家が介入するなど考えもしなかった事か。
アールストレイムの息女一人の話ならまだ大丈夫だった。しかしもう伯爵の地位如きで相手取るには敵が強大過ぎる。システムで相対していた彼の方が、逆に追い詰められる結果がそこにはある。
クリスティアンは自分の足下に落ちていた最後の羊皮紙を手に取った。
そこに書かれた名は――、
「『ライ・クルシェフスキーとアーニャ・アールストレイムの婚約を我が名において推薦する』……な、ナナリー・ヴィ・ブリタニア!? 皇族までが、何故だ!!」
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>>96 頼どころ は”よりどころ”だと思うけど漢字が違うような気が・・・
どういうことか、という周囲の疑問がライに向けられる。
だがライは何食わぬ顔でただ事実を突き付けるのみ。
「僕はあなたよりもアーニャを幸せにできる立場にあるみたいですよ。だから…あなた方はそこで僕達の歩みを黙って見ていればいい。――アーニャ!」
ライが突然叫び声を上げてアーニャに呼び掛けた。
すると、アーニャはそれに対して一つの行動を見せた。
耳を塞ぐ。
次の瞬間、皆は見た。だがそこまでだった。
何を見たのか、何を言われたのかは記憶に一切残っていない。
『ライが命ずる――――!』
赤の鳥が羽ばたいて、闇に消えた。
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§4
星空の下、アールストレイムの敷地内にある庭園で二人は歩いていた。
夜風に花が揺れ、ざわざわと音を立てている。
その音は幻のように二人を包む。まるで夢の中にいるかのような錯覚。
だから、というようにアーニャはしっかりと傍らにいるライの手を繋ぎ、並んで歩く。
それが本物である事を確かめながら。
「ねえ、いい加減教えて」
アーニャは何度目になるか分からない質問をした。
「………何のこと?」
とぼけたように首をかしげるライに、アーニャはむっと口を尖らせて言う。
「絶対ライが何かやった」
「……だから何もしてないって」
でもそれ以外考えられない、とアーニャは呟いた。
(合図したら耳を塞げって言われたから……)
もういいよ、と塞いだ耳を開けられた時には、アーニャの見ていた世界は姿を変えていた。
皆が皆、自分達に祝の言葉を投げかけてきたのだ。クリスティアンも、父も、全員が「おめでとう」と。
何が起きたのかは分からないが、ライが何かをしたのは確実だった。
(なのに……)
聞けども聞けども、彼は「何もしてない」としか返さない。
「どうして教えてくれないの?」
「アーニャ…」
困ったような表情をされても、構わない。しつこいと思われても、アーニャは聞きたかった。
「言いたくないならそう言って。でも、そう言われない限り、私は何回でも聞く。だって……」
だって、ライの事は何でも知りたいから――なんて恥ずかしげもなく言えたらどんなに楽か。結局最後の方は小さくて聞き取れないほど尻すぼみ。
だがアーニャの意思は一応ライには伝わったらしく、笑みを苦笑に変え、
「本当は……言いたく無いし、アーニャには……ううん。誰の前であろうとあれはもう使わないと決めていたんだ…」
そう言ってライは草むらに腰掛けた。
アーニャは隣に座ろうとして、しかしライに手を引かれてしまう。座らされた先はライの手前。
支援
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アーニャは隣に座ろうとして、しかしライに手を引かれてしまう。座らされた先はライの手前。
「あっ……ら、ライ?」
すっぽりとアーニャはライの腕の中に収められてしまった。
覆い被さるようにライが背中にのし掛かる感触が鼓動を速くする。
この時ばかりは、小柄な体格で良かったなどと思ってしまう。
まとめた髪に乗る重さは心地よく、耳にかかる彼の吐息はくすぐったい。
全身でライを感じる。
(でも……ライの顔、見えない…)
それだけを残念に思い、次の瞬間はっとする。それがライの目的ではないか、と。
今から彼は何かアーニャに秘密を明かそうとしている。言いたく無い事を話すのだ。きっと、見られたくない表情をするのだろう。
ならば自分はこのままでいい。そう考え、ライの言葉を待った。
そして待つこと数分、やがてライはアーニャの頭に顔を埋めながら、ぽつりぽつりと呟くように話し出した。
「ある所に――魔法使いの少年がいました」
●
――ある所に、魔法使いの少年がいました。
「魔法?」
そう。彼は魔法で何でもする事ができたのです。彼の望んだ通りに人を操り、従わせる。
全ては彼の思いのままに動かせたのです。
「その魔法で、やりたい放題?」
「それは違う。彼も一応力の使い所は考えていたさ」
彼には大切な家族がいました。生まれのせいで不憫な思いをしながらも大切に育ててくれた母と、幼い頃から共にいた妹です。
彼は2人のためにだけ魔法を使いました。
2人を傷つける存在を敵と見なし、逆らう者は全て葬り去る。
全ては2人を幸せにするために。
少年はそれを悪行だと分かっていながらも、しかしその行為を続けました。
「どうして?」
「たぶん……それしか知らなかったんだよ。2人を幸せにする方法は、他に無かったんだ」
それ程、彼らの生きる世界は悲惨だったのです。
偽善と嘘に満ちたその世界で、彼は自らの目的のために敵を殺し続けました。魔法で、力で幸せを勝ち取ろうと。
支援
支援
支援
たとえ、他者の幸せを奪う事になろうとも。
それしかできなかった。彼は罪を重ねる事でしか――、
●
「――現実には抗えなかったのです」
月の光の下、銀の髪がそれを反射して踊っている。
銀の色を靡かせているのは、すぐ真下にある桃色の髪をいじっている少年だ。
彼は空を見上げた。
遠くの、月よりもずっとずっと遠くの何かを見るように。
そしてぽつりと、風に消えてしまいそうなほど儚い声で呟いた。
「アーニャは、そんな魔法使いの少年をどう思う?」
●
話を切り、問い掛けられた内容をアーニャは何度も頭の中で繰り返した。
彼はどんな答えを求めているか。
彼がどんな答えを望んでいるか。
アーニャは考え、しかし止めた。
(そんなの、ライは求めてない…)
ライはどんな思いで問うたのか。
自分の素直な感想。そして素直な気持ちを、ライは聞きたいのだ。そう思う。
だから、
「酷いと思う」
「っ……」
一瞬、ライの体がびくりと震えたかと思うと、アーニャの体から離れていこうとした。
だがアーニャは腕を掴んでそれを許さない。
(逃げないで)
言葉は必要無い。
アーニャはただ、今ライはどんな表情をしているだろうか、と思い馳せる。
支援
支援
支援
>>112 すげえw しかも前スレのぷにぷに卿のもすでに保管完了だとおお?!!
支援
掴んだ彼の腕はそれはそれは弱々しく震えていた。
「どうして――」
そして口から紡がれる言葉も、同じく弱々しい。
「どうして、酷いと思う?」
アーニャは即答。
「だって、他人の幸せを踏みにじって、自分だけ幸せになろうとしたんでしょ?」
「それは、……そうだけど」
「でも、」
声を低く沈ませるライに、アーニャは優しく話し掛ける。
一旦言葉を切って、掴んだ腕を撫でながら言う。甘える子供に聞かせるように、素直な気持ちを言葉に乗せて。
「もし私がそのお母さんと妹なら、嬉しいと思う。……たぶん、悲しいとも思う」
「……悲しい?」
うん、とアーニャは小さく頷く。
「だって、その魔法使いの子が大切に思う人達だもん。自分達のためにしてくれた事に嬉しくて喜んで、だけどその事で傷付いていく姿を見るのは……たぶん悲しい」
そんな感じ、と言うとライは黙った。
力が抜けたように息を吐き、
「そっか……そうか…悲しい、か」
何度もアーニャの言葉を噛み締めるかのように呟きを繰り返す。
そして再びアーニャの背中に体を預け、また「そうか…」と呟き続ける。
そんなライに、今度はアーニャが問い掛けた。
「ねえ、ライ……私も、そうなの?」
「え?」
「だって私はラウンズ。人を殺して、たくさん幸せを奪ってきた…」
言ってから、その事を今まで一度も考えていなかったと気付く。
幸せを掴み始めて、だからこそアーニャは初めて知る。他の人にもこんな幸せが無い訳ではないのだと。
自分は、そんな幸せをいくつも潰してきた。ラウンズとして。
敵だからという理由で、簡単に命を奪ってきた。
それを思うと、自分は何て酷い人間だと感じる。
人を殺す意味を全く知らなかった自分は、もはや人間ですらないように思える。
支援
「ライも……こんな気持ちだったの?」
問うと、ライはアーニャの頭を撫でた。
アーニャは、大丈夫、と言われた気がした。安心した訳ではないが、とにかく心が落ち着いたのだ。
さら、という風と髪が流れる心地よい音の後、
「アーニャは、ここで気付けたから大丈夫だよ。ちゃんと前に進めるさ」
「……でも」
本当にそれが可能とは、今は思えない。
(だって、こんなに……)
「辛い?苦しい?悲しい?……そうだね。でも、それだけなら良かった。耐えられる。だって全てを幸福に向かわせるなんて事、できないくらいは現実を知っていたから」
「え……?」
不意に、ライは再び顔をアーニャの頭に埋めた。先ほどと同じく、いやそれ以上に弱々しく体を震わせながら。
(あ……)
アーニャは理解した。ここからがライの闇なのだと。
先ほどまでの問い掛けは、単に自分を次の事を話すに値するものにしただけだと。
――彼はまだ、深い傷を抱えている。
「続きがあるんだよ。その愚かな魔法使いの少年の話には」
●
――魔法使いの少年は、魔法の力でその夢を叶えました。
理想のように美しく手に入れた物ではないけれど、それでも母と妹には平和な暮らしをさせる事ができたのです。
だけど、その幸せも長くは続きませんでした。
彼らの前には、現実が、世界がやはり立ちはだかったのです。
彼は母と妹を守るために魔法を使い続けました。
「だけど……いつしか、彼は自分を見失っていたんだ」
「自分を?どういう事?」
「どうして自分は人を傷付けて、罪を重ねているのか。何をしたかったのか。……忘れてしまったんだよ」
支援
支援
支援
魔法の力に囚われた彼は、それからも魔法を使い続けました。
人の思いを操り、尊厳を踏みにじるという卑劣な手段で、彼は敵を滅ぼしていきました。
しかし世界は強く、広い。どれだけ魔法の力を使っても、現実を打ち砕くには至りませんでした。
そして彼は遂に魔法の力に呑まれ、とんでもない事をしてしまったのです。
「とんでもない事って?」
「…………」
「ライ?」
「大切な、大好きな母と妹を………殺してしまったんだ」
「っ!? そんな……!」
過ちに気付いた時には、少年は全てを失ってしまいました。
周りには敵も味方もありません。等しく死が与えられ、彼は一人になってしまったのです。
どうしてこうなったのか。答えの出ないまま、少年はその罪を背負い、永遠の眠りについたのです。
「それで…?」
しかし少年は目覚めてしまいました。何もかも失って、それ故に、少年の道のりは誰かに与えられる事によって成り立っていました。
誰かに幸福を与えるという事を、彼は知りました。
そして彼は誓ったのです。
もう過ちは繰り返さないと。可能な限り、人々に自分が貰った幸せを返そうと…。
ですが、少年は再び見つけてしまった。
「何を?」
「自分にとっての幸せ。大切な存在を」
「あ……」
少年は自分には幸せになる資格なんて無い事を知っていました。
しかし、それでも、かつての母や妹と同じくらい大切な存在を見つけてしまった。
そして、気付いた時には再び魔法を使っていました。
もう過ちは繰り返さないと誓ったというのに。少年はその大切な存在欲しさに、誓いなど忘れ、いとも簡単に魔法を使ってしまったのです。
「今、その少年は大切な人を……アーニャを、幸せを手に入れている」
支援
支援
●
アーニャの頭の上、そして頬に水滴が落ちてきた。
雨、と思いすぐに違うと気付く。
「ライ……泣いてるの?」
「……アーニャ。僕は…僕は……またやってしまったんだ」
悲しみと、憤りと、嗚咽混じりにライは続ける。
「もうしないと…過ちは繰り返さないと決めたのに……!」
「そんな事……」
ない、とは言えなかった。ライは確かに、その魔法か何かで人の意思をねじ曲げたのだろう。
誓いを破った。誰の責任かと問われれば、それは彼以外には無いのだろう。
「僕は怖いんだ」
「……何が?」
「いつか……君まで殺してしまいそうで」
反射的にアーニャは叫んでいた。
「ライはそんな事しない!」
前に回された腕を振り払い、ライの方に向き直り、
「そんな事しないって信じてる!」
「だが僕はそれで一度失敗した! そして今もそれを繰り返している!」
ライはこちらを見ようとはしない。顔を俯け、叫び続ける。
負けじとアーニャも叫ぶ。慣れない大声に裏返ってしまうが構わない。
「でも信じてる!」
「その信頼が魔法の力かもしれなくてもか!?」
「っ…」
●
ライはアーニャが押し黙るのを見た。
返す言葉が見つからない事を悔しがるような、そんな表情だ。
支援
支援
それを見て思う。
(アーニャは、僕の事をこれほど思ってくれている…)
だが、だからこそライは言いたくなかった。ギアスの事を。
――手放したくない。
自分の中に湧き上がる衝動を必死に抑え込む。
どす黒い感情が心に滲み、アーニャを求めてさ迷い歩く。
(駄目だ……このままじゃ…)
いつか彼女にも使ってしまう。そんな最悪の可能性も無視できない。
今はいい。彼女の気持ちは、自惚れではあるが、確かに自分に向いている。
だがいつかアーニャの気持ちが自分から離れていったなら。
(たぶん……僕はギアスを使う)
それだけは避けたい。
(だから言いたくなかった…)
本当は全て自分が背負おうと決めていたのに。
しかしアーニャの優しさや想いが心地よく、つい話してしまった。
(いけない)
これ以上アーニャに依存してしまう事が。
一緒に罪を背負って欲しいなどという思考がじわじわと音をたてて忍び寄る。
(それは駄目だ!)
そう思った時だ。
●
「ねえ、ライ……」
「なに――」
ご、とライの頬が鈍い音をたてた。
(は?)
音の後に続いて感じるのは視界の転倒。正面に向けていた視線がぐらりと右に揺れた。
更には刺すような痛みが頬を焼き、苦い味が口の中にじわりと広がる。
支援
支援
(はい?)
殴られた、と理解したのは再び正面を向いてアーニャの突き出された右拳を見た時だ。
「アーニャ…?」
ぽろり、とアーニャの目から何かが零れ落ちた。
涙だ。
「アーニャ?」
もう一度呼び掛ける。だがアーニャは返事をせずに、
「他には?」
「え……」
こちらの呆けた返答に、アーニャは眉尻を下げ、真剣な表情で問う。
「他に…話さなきゃいけない事は無いの?」
「え……と、とりあえずは」
ライはこくこくと頷く。
まだ犯してきた罪の具体的な話はしていないが、一通りの流れは伝えたはずだ。
すると、
「馬鹿」
といきなり罵声が浴びせられた。
ライは返す言葉を失っていると、
「ドジ、マヌケ、天然、ぼけぼけ、……女たらし」
「おい」
いきなりどうしたというのか。思い付いた罵声を片っ端からアーニャはまくし立てる。
一頻り罵詈雑言を尽くした後、
「どうして……それを一人で背負おうとしたの?」
「っ……それは…」
ライは思わず顔を逸らし、
「逃げないで、こっちを見て」
アーニャがライの顔をむんずと両手で押さえ、正面に向けさせた。
「アーニャ…」
支援
支援
ライの目の前には、涙に濡れ、怒ったアーニャの顔。
吐息が鼻にかかり、少し近付ければ唇が重なってしまいそうな距離にそれがある。
しばしの間考えていた事を忘れ、ライはただ両頬に感じるアーニャの手の感触に酔い、そしてこちらを見つめる真っ直ぐな深紅の瞳に見入っていた。
「やっと、ライの顔が見れた」
笑みを浮かべ、アーニャはそっとライの目元に溜まった涙を拭いながら言う。
「私は、ライが一人で罪を背負って、それで私だけ幸せになっても嬉しくない」
「なら…どうするんだ。僕の罪は僕の罪だ。アーニャには関係無い」
ライは押さえられたままの頭を振る。
アーニャを幸せにする事自体を諦めた訳ではない。アーニャと生きていく事はもはや揺るぎない決意となっている。
しかし、
(アーニャに僕の罪を背負わせる事なんて出来ない)
それはアーニャの望む物ではないだろうが、これはどうしようもない現実だ。
だがライは、これでいいと思う。
「僕は君を幸せにする。約束するよ。それでいいじゃないか」
アーニャはいやいやをするように否定する。
「良くない。ライも幸せになってくれなきゃだめ」
「僕はアーニャといられるだけで充分幸せさ」
「そんなの嘘」
「本当だよ」
嘘、とアーニャはもう一度言って、
「じゃあ……何で“過ち”なんて言ったの?」
言われ、ライは肩を震わせた。動揺を悟られないよう顔を逸らそうとするが、アーニャの手がそれを許さない。
「ライは…後悔してる。私を助けた事を過ちだと思ってる。そんなの、嫌」
アーニャはこちらから目を逸らさない。その潤んだ瞳を見てライは思う。
(何をやってるんだ僕は…)
幸せにしようと言っているのに、先ほどから彼女を泣かせてばかりいる。
だが、自分には何も出来ない。この場で彼女を笑顔にする術を持たない。
だから聞いた。
「アーニャは僕にどうして欲しいんだ?」
違う、とアーニャは首を振る。
「ライは私にどうして欲しいのか。それが知りたい」
「僕……が?」
考える。自分がアーニャに何をして欲しいか。
(一緒にいてくれるだけでいい)
それだけで、充分自分にとって許されない救いだ。
更には罪まで明かしてしまった。その上で側にいて貰えるなど、本当はあってはならない事だ。
(これ以上望む事なんて無い…)
無いのに、
(どうして……こんなに辛いんだ)
そして気付く。
自分はこの痛みに耐えられないのだと。穢れを祓う事に疲れたのだと。
一人でしか背負えない罪。
余りにも重いそれに、目の前にまで現れた救いを見て、自分は屈してしまったのだ。
(助けてくれ、アーニャ…)
その望みは言えない。それを望んではいけない。だが、ライがアーニャにして欲しいのはそれだ。
(一人で背負うのは疲れたよ…)
ライは、救いを求めていた。
●
ライが何かを言おうとして、しかし、次の瞬間口を閉じた。
アーニャは黙ってそれを見つめていた。
薄暗い視界の中、月明かりに照らされた彼の表情は今まで見た事が無いほど弱々しい。
アーニャはその姿を知っている。
ライが助けに来てくれるのを待っていた自分の姿と同じだ。
肩はがくがく、唇はかさかさで、目の奥がちりちりする。
そんな感覚にあった自分を救い出してくれたのがライだ。
(今度はきっと、私の番)
ライは助けを求めている。
支援
支援
(絶対、私を助けた事を後悔させない)
だから、
「ライ……」
アーニャはライの頭の後ろにそっと腕を回し、優しく胸に抱いた。
するとライが、
「アーニャ……助けて」
消え入るような、小さな声でそう呟いた。
聞き間違いではなく、確かにアーニャはそれを聞いた。
(大丈夫、助けてあげる)
甘えるようにライの腕がこちらに回される。
可愛い、と場違いな感想を胸に仕舞い、
「大丈夫。ライは私といていい。罪になんかならない」
なぜならば、
「私は――許してあげる」
アーニャは、懐にしがみつくライを安心させるために、回した腕に力を込める。
「あなたがこれまで犯した罪も、これから犯す過ちも何もかも許してあげる。私が、私だけが」
この過去を、恐らくライは自分以外には話していない。話さない。自惚れと言われればそれまでだが。
(けど、話してもらった私だけが出来る事がある)
「許……す?」
胸に押し付けたライが震える声を上げた。
アーニャは頷いて、
「そう、私はあなたの全てを許す。――そうする事で、あなたという罪人を許した、大罪人になる」
「そんなの……ぶっ」
何かを言おうとしたライを無理やり黙らせる。薄い胸にぎゅっと力を込め押し付ける様子はまるで、
(首絞めてるみたい…)
もう少し胸があったら雰囲気が出るのにと思う。
「勘違いしないで。許すのは私だけ。あなたの罪は、決して消えない。だけど…」
一息。
「ライが幸せになる罪の分くらいは、それよりかは……私もその罪を背負ってあげる。あげられる」
だから、
「ライは……幸せになってもいい。私という罪を背負うだけだから」
支援
忠義の支援!
支援
●
「あ……」
ライは、アーニャの身に包まれながら、じっと彼女の言葉に聞き入っていた。
聞き終わった後も、しばらくは動けずにいた。
そして、
「はは……」
湧き上がるのは笑い声。空気を切るような短い笑いが、ライの体を揺らす。
「なんだよ……それ…」
「何かおかしい?」
真面目に問うアーニャの様子が更に可笑しくて、ライは笑う。
「だって……結局、何も変わらないじゃないか」
そう、そうなのだ。
アーニャがライを許すという罪となり、その新たな罪をライは許された分背負う。――アーニャごと。
結果、ライの罪に変わりはない。それなのに、
「それなのに、幸せになってもいいって……あはははは!」
「な…何で笑うの!? 私は真剣に…!」
「だ、だって可笑しくって……ははは!」
ライは笑った。こんなに笑うのは何日、何年――何十年、何百年ぶりだろうか。母や妹の前でも、これ程笑わないのに。
(アーニャらしいよ、本当に)
彼女は自分の居場所をライに見出した。ただ、自分の願いを叶えるために。
こちらの都合なんてお構いなしだ。適当に理由を付けてアーニャはライの所に居座ろうとしている。
こっちはアーニャの事ばかり考えていたのに。
(でも、)
自分には出せない結論だと思う。
いつも間違っている自分が出せない答えはつまり、
(逆意で正しいという事なのかな…)
そう思う。
それに、許された以上、ライはその分アーニャの罪を背負わなければならない。
支援
勝手にアーニャがこちらの罪を奪ったのだから、こちらも放っておげばいいかと言うと、
(そんな事、僕には出来ないし…)
選択肢は残されていない。全て、アーニャの思いのまま。
(話した時点で、僕の負けは決まっていたのかも)
ライは過去を明かした時、全ての罪の行方を、無意識のうちにだが、アーニャに委ねていた。
そして、アーニャは何が何でもこちらと一緒に幸せになれるよう結論付けるというのは、考えてみれば当たり前の事で。
「本当……アーニャって…」
「なに…」
笑われた事に腹を立てたのか、むすっとした表情でアーニャが返す。
(可愛いな)
そう思い、笑顔で、
「好きだよ」
「っ!?」
続けて、
「大好きだ」
「っっ!!?」
最後に、
「愛してる」
そう言って、ライはアーニャの唇に自分のそれを重ねた。
触れる、押し付ける、長い長いキス。
目を開けて見れば、アーニャは顔を真っ赤にして瞼をきゅっと閉じている。
その表情も何もかもが愛らしいとライは思う。
そして許しをもらった今、ライは薔薇の蕾のような柔らかな唇の感触を存分に味わい、幸せを摘み取った。
息が続かなくなると、離し、息を吸ってまた重ねる。
それを何度も何度も繰り返し、やがてライはアーニャからそっと体を離した。
「はぁ…はぁ…あはは、アーニャ顔真っ赤」
「それはライも……はぅ」
アーニャはくねくねと悶えながら、キスの感触を思い起こして惚けていた。
そんなアーニャの頭を愛おしそうに撫でながら、ライは懐から小さな手のひらサイズの小箱を取り出した。
支援
支援
我に返ったアーニャがそれを見て、
「なにそれ?」
「開けてごらん」
手渡して、アーニャを促す。
アーニャはゆっくりとラッピングされた小箱の封を開け、
「これ……指輪?」
中に入っていたのは、飾り付けのないシンプルな銀の指輪が二つ。
「モニカがクルシェフスキー家の紋様を刻んだ指輪を渡そうとしてくれたんだけどね……何となく断って、それを街で買ったんだ」
「私にくれるの? 誕生日プレゼント?」
「それも込み。だけど、これは僕の分」
言って、ライは自分の指――左手の薬指に、片方の指輪を嵌めた。
そしてもう一つの指輪を右手で取り、開いた手でアーニャの左手を持ち上げる。
「あぅ…ライ…もしかして、それは…その…!」
アーニャは顔を真っ赤にさせ、あたふたと手を揺らして抵抗する。
そんなアーニャを逃さぬようライは覗き込んで言う。
「もう一つの願いは僕から…そう言ったよね?」
「こ、心の準備が……!」
「駄目」
有無を言わさず、ライはアーニャの左手の薬指に指輪を通した。
すっと固定出来る位置まで持っていき、しかしそこから少しだけ引く。
怪訝な顔をするアーニャをおいて、ライは深く深呼吸。ドクンドクンと高鳴る心臓を必死で宥めて落ち着きを保つ。
(緊張するな……)
アーニャ以上に顔が赤らんでいるのが解る。
気恥ずかしさを懸命に振り払い、ライは言った。
「アーニャ。僕と、結婚して下さい」
問うて、ライは差し込んだ指輪を掴んだまま止まった。
すると僅かな時間の後、アーニャはライの右手に、自分の右手を添えた。
そして次の瞬間、力を込め指輪を己の左の薬指にしっかりと嵌め、固定した。
そして頷いて、簡潔に、
「うん…!」
支援
支援
§5
アールストレイム家の庭園にて、二つの影が動いていていた。
ライとアーニャだ。
二人は今、夜も深まったので家路についているところ。
ライはどこか力が抜けて、ゆったりとした様子で前を歩くアーニャを見ている。
そしてそんなライの少し前を歩くアーニャはというと、
「えへへ……」
「アーニャ、さっきからにやけ過ぎだ」
「だって……えへへ」
アーニャはライに指摘されても、にやけ顔を戻さない。と言うより、出来ない。
視線の先にあるのは己の左手の薬指に嵌められた、銀色の指輪だ。
月明かりに照らされ、美しい反射の色で存在を示している。
アーニャはそれを見てまた、
「えへへ……」
と先ほどからずっとにやけ続けている。
ライは再び呆れた様子でため息をつき、
「他の人に見せびらかしたりするなよ。僕が恥ずかしい」
「むぅ、そんな事……してもいいかも」
「おいおい」
アーニャは、はっきり言ってモニカあたりには見せびらかす気満々だった。
(だって……)
女の子の憧れ、結婚指輪を手にしたのだから。それも大好きなライとの。
「ライ、ありがとう」
「はいはい。そう思うなら、ちゃんと僕の罪も背負ってくれよ」
分かってる、とアーニャは頷き、
「私はライの罪を全部許すから――浮気以外」
最後に付け足した言葉に、「ありゃ?」と妙な声を上げてライがこけそうになった。
「何だ、その浮気以外って。まるで僕が女たらしみたいじゃないか……ってそういえば、さっきもそう言われた気がするな」
支援
支援
「だって事実」
いつもライの周りは女の人でいっぱいだ。悔しい事に、自分よりスタイルのいい人ばかりが。
その時は気にも留めなかった事だが、今思うと非常に腹立たしい。
「絶対、浮気は許さない」
「僕だって、アーニャが浮気したら許さないさ」
「私が? 浮気?」
アーニャは首をかしげた。自分の方が浮気する可能性など、これっぽっちも考えていなかったからだ。
そんなアーニャにライは眉をひそめて、
「そうだよ。僕だってアーニャが他の男と話してたら……たぶん、これからは面白く思わない」
「ふぅん……」
アーニャは何となく、自分がジノやスザクらに囲まれて話している様を想像した。
その様子を、遠くの方でライが見つめている。
そして話し終えた自分を捕まえて、ライがやきもきしながら、何を話していたかをしつこく問うてくるのだ。
「いいかも…」
単なる思いつきだが、焼き餅をやくライというのを見てみたくなった。
今度試してみようと思った瞬間、アーニャは後ろからライに抱きかかえられた。
「ひゃっ」
「いいかも、じゃない。僕だってそれなりに独占欲はあるんだから」
「それを見たい」
と、適切に自分の意思を伝えるが、
「駄目だ」
と、ライにあっさりと否定される。
支援
支援
やがてライに下ろされたアーニャは、安心したように息をついた。
そして未だに不満そうな顔をするライに、笑顔で告げる。
「大丈夫、私はライから離れない。ずっと側にいて、ライが魔法を使わないように見張っていてあげる」
するとライは少し驚いた後、「ありがとう」と礼を言ってアーニャに顔を寄せた。
「なら僕も、ずっとアーニャを幸せにする――ううん。アーニャと、幸せになるよ」
「うん」
アーニャは頷き、目を閉じて顔を上にあげた。
身長差があるため、爪先立ちになる自分が少し恥ずかしい。
互いの吐息を交換した後にライが告げた。
「アーニャ、愛してる」
アーニャは少し逡巡した後、
「………私も」
と言うと、アーニャは閉じた瞼の奥にライの苦笑が見えた気がした。
「アーニャ」
責めるような口調。
「むぅ…」
ライが何を言いたいのかは分かっている。だが、恥ずかしいものは恥ずかしい。
キスをする寸前の状態でずっと固まったまま、やがて決心したアーニャは深呼吸をして言った。
「私も、ライを愛してる」
瞬間、二人の唇が重なった。
fin.
支援
支援
せーの! アーニャ誕生日おめでとう!
アーニャ誕生日記念SS投下終了。読んで下さった方、及び支援して下さった方ありがとうございました。保管も乙。
しかし何つー真面目な話。。。こんなの私のキャラじゃないと思うんだがどうだろ。
でもまあ、たまにはこんなのも書くんです。
色々な都合で書ききれなかったところもあり、決して満足いってる訳では無いのですが……。
アーニャの「許す事が罪」って結論は大好き。かなり自分勝手ですけど。ライも言ってたけど、それがアーニャらしいかなって。
この二人が今後どう世界と相対していくかを想像しても面白いかもしれない。
ここからR2の世界に旅立ったとするなら、たぶんロスメモとは違った答えに着地するんだろうなあ。あっちはライの記憶が無い分、互いの依存関係がこの話より深いし…。
では今回はこんなところで。
次回の投下はいつになるか分からんが、多分大作戦を終わらせるんじゃないかな…? 今は5話を書いて、でもちょっと長くなったので適当に肉付けして分けて6話(最終話)に突入中。
え? どんな話か忘れた? ソンナノシルカー ヽ(`Д´)ノ コッチガオボエテルカライインダー!
じゃあ皆さん、感想書くなら「アーニャ誕生日おめでとう」を忘れずに。
感想書かなくても忘れずに「アーニャ誕生日おめでとう」。
もうぶっちゃけ感想は「アーニャ誕生日おめでとう」だけでもいいから忘れずに。
オールハイル ヽ(`Д´)ノ モッフー!
アーニャ誕生日おめでとう
まあしかしすっさまじいボリュームですこと!そして途中で全然飽きない。
保管のしごたえがあるわ〜、GJ乙です!
今から読もう。
アーニャ誕生日おめでとう
GJ!
貴公の書くライアニャは俺のツボにぴったりと当て嵌まるんだ何故だろう。
我が儘なアーニャが大好きです。後ろ向きなライに前を向かせるアーニャが大好きです。照れてるアーニャが大好きです。貴公の書くアーニャが大好きです!
アーニャ誕生日おめでとう!
ラウンズ大作戦?
確かライアニャレクの接続をしようとするシャルルんを、ルルが止めようとするって話だったっけ?
>>166 大作乙&GJ! 二時間…。本当にお疲れ様です。
アーニャ可愛いよアーニャ。
中盤の不利な状況から一気に形勢逆転するところに非常にすかっとしました!
二人にとってはそこからが本当の戦いだったわけですが。
罪とそれを赦すことと向かい合って、前に進んで行こうとする二人に幸あれ!
アーニャ誕生日おめでとう!
アーニャ誕生日おめでとう
そしてもっふー万歳!
泣きました、萌えました、震えました。
アーニャ誕生日おめでとう。
え? アーニャ誕生日だったの!?
不味いぞ……テンさんなど書いている場合ではなかったのか……
しかし今からでは……とりあえず「アーニャ誕生日おめでとう!!」
173 :
171:2008/10/26(日) 22:29:20 ID:b5iwbbvq
途中で投下してしまったorz
卿のライアニャはどこまでも自分のど真ん中を突き抜けてくれる。
そして願わくば2人の進む道に小さな幸せと一握りの優しさを…
最後にもう一度、アーニャ誕生日おめでとう。
アーニャ誕生日おめでとう!!!
そしてオォォォーーール・ハァァァイル・もっふー!!!!
>>166 ピンクもふもふ卿、超GJでした!
涙腺が、涙腺が……あぁ……太陽系に生まれて良かったーーー!!!
圧倒的な分量ながら飽きずに読み進められる面白さ!
ライが過去を語る所など蝶サイコーと叫び回りたくなるくらいの感動が私を襲いました!
ラウンズたちの推薦文なども我が胸は激しく打ち鳴らされました!
そして、再びアーニャ誕生日おめでとう!
貴公の次の投下を我が全力を挙げてお待ちさせていただけますか!
まったく、毎度毎度もっふーは……俺をもふもふさせやがるぜ。
ブラボーもっふー。
俺もこの流れに乗って投下しよう。長さは、どれくらいかな。6〜8レスくらい?
次から諸注意など書き始めます
これから投下するのはコードギアス The reborn worldの番外的な話です。
・わりとふまじめです。特に後半。
・一部独自設定です。
・微妙にライを有能にし過ぎたかもしれないです。
・そういうのが嫌な人はスルー侍でお願いします。
支援
ミレイが用意してくれた新品の制服に身を包んだライは、そこで改めて自分に与えられた部屋を見回した。
先程までライが眠っていたシングルベッドの以外でこの部屋にあるのは、部屋の隅に置かれた胸ほどの高さの棚と姿見、
備え付けの机の上にはノートパソコン以外には本の一冊もなく、セットの椅子とともにただ置いてあるだけの状態になっている。
そしてクローゼットを開いてみれば、ライがゲットーで老婆から貰った粗末な服が一着あるのみである。
「生活感の無い部屋だな」
だからと言って特に思うところがあるわけではない。ただ事実を言ったまでのことだ。
ライがアッシュフォード学園に暮らすことが決まってから一週間。今日から、ライは学校に通うことになっている。
コードギアス The reborn world 4.5話
「おはよう、咲世子さん」
清潔感溢れる白いエプロンが、ライの声に合わせて翻る。
朝食の準備をしていた咲世子はライに気付くと手を止め、メイドらしい丁寧なお辞儀を返した。
「おはようございます、ライ様。
ルルーシュ様とナナリー様は既に席に着かれておりますので、ライ様もどうぞお早く。
料理はすぐにお持ちしますので」
咲世子はライのことも様付けで呼ぶ。彼女曰く「お客人」だかららしいが、ライとしては非常に落ち着かない。
落ち着かないのだが……ライが本調子でないときに咲世子は色々と世話をしてくれ、その度に様付けはやめてくれと頼んでも折れなかったのでライは諦めている。
「手伝おう」
「ありがとうございます。ですが、そのお気持ちだけで十分です。
お客人に手伝いをさせるわけにはまいりませんから」
淡々とした口調でそう言われては、ライとしては返す言葉が無い。咲世子の言うとおり、席について大人しく待っていることにした。
先にいたルルーシュ、ナナリーの二人と挨拶を交わして、定位置となったルルーシュの隣、ナナリーと向き合う形になる席に座る。
支援
支援
「ライさんは、今日から学校に行かれるのですよね」
「ああ。ルルーシュ達と同じクラスだよ」
ライの答えを聞くと、ナナリーは安心したように頬を緩めた。
「そうですか。それを聞いて安心しました。
記憶が無いことで色々と大変だと思いますが、困ったことがあったら何でも言ってくださいね。
私はお話を聞くことくらいしか出来ませんが、お兄様は優しくて、とっても頼りになりますから」
純真無垢なナナリーからの手放しの称賛。隣のルルーシュが微かに身じろぎしたことをライは感じ取ったが、
敢えてそちらを見ようとはしなかった。見なくても分かる。きっとルルーシュは今、照れて赤くなっているだろう。
ルルーシュがある程度平静を取り戻すのを待って、ライは言葉を発した。
「何かあった時は頼らせてもらってもいいかな、ルルーシュ」
「……勿論だ」
そのそっけない物言いに微かな笑みを口元に浮かべながら、ライは咲世子が運んできてくれた料理に目を移した。
ほかほかと湯気を立ち昇らせているつやつや輝く白米に、ごぼうが多めのきんぴらごぼう、そして鼻孔をくすぐる香り漂うお味噌汁。
以外にも和食が好みだったライのために、咲世子が気を利かせてくれたようだ。
ルルーシュ達と一緒に手を合わせながらライは、今日一日頑張ろうと思った。
登校後、一先ずルルーシュと別れて職員室で一通りの説明を受けたライは、自分のクラスへと案内されていた。
クラスの担任の後を追いながら、ライは緩やかに視線を周囲に巡らせる。
エリア11屈指の名門校の名に恥じぬ規模と設備を備えた広大な学校、私立アッシュフォード学園。
休み時間にはその規模に相応しい数の生徒達で賑わう廊下も、ホームルーム中の今はライ達以外の人影は無い。
(妙な気分だ)
窓から見える様々な態度で教員の話を聞いている生徒達を観察しながら、ライは一人眉をひそめた。
違和感があった。自分が今ここで、こうしていることへの言い様の無い違和感が。
自分がこの学び舎に相応しくない、酷く場違いな人間に思えて仕方が無かった。
そしてそう感取している不可解な自分への不審。その思考に埋没していたせいで、
クラスに着いたことを告げる担任の声にライが気づくまでに僅かなりとも時間を要した。
支援
支援
「緊張してるのかい?」
人の良さそうな顔立ちの担任の問いに、「いえ」とライは短く答えた。
緊張しているわけではない。ただ、釈然としない何かを感じているだけだ。
しかしその態度は担任を勘違いさせたらしく、担任は励ますようにライの肩に手を置いた。
「安心しなさい。うちのクラスの生徒達は良い子ばかりだからね。
このクラスには君と同じように最近編入してきた名誉ブリタニア人の生徒もいるんだが、彼はクラスの連中と仲良くやれているよ。
だから君も大丈夫さ。それに、君は中々の色男だ。きっと女子達にもてるぞ?」
「はぁ……だと良いんですが」
教員のわりに妙に気安い担任に曖昧に頷くライ。世辞を額面通りに受け取るほど、彼は単純ではない。
担任はライにさらに何かを言おうとしたが、思いなおして教室の扉に手をかけると一度ライに視線を向け、一気に開いた。
担任が入り、続いてライが教室に入ると、ざわざわと多少騒がしかった教室が一気に静まり返る。
ライはその生徒達の反応に疑問を抱いたが、見知らぬ人物が入ってきたことで戸惑っているのだろうと解釈した。
「おや、急に静かになったな。流石に驚いたか?
えー、今日からこのクラスでお前達と共に授業を受けることになったライ君だ。
じゃあライ君、軽く自己紹介をしてもらえるかな」
支援!
頷き、教卓の前に立つライ。自分に視線が集中していることを感じながら、ライは教室を見渡した。
ひょうきんな笑顔を浮かべているリヴァルに、小さく手を振ってくれているシャーリーとぎこちなく頭を下げたニーナ。
眼が合うと軽く微笑んでくれたのはカレンで、ニコニコと人懐っこく笑っているスザクは、特に反応を示さなかったルルーシュに手振りで何やら促している。
そして彼等以外の生徒達の驚きや興味に彩られた顔を一通り見た後、ライは出来る限り自然な口調で言葉を発した。
「ライ・ウーティスです。色々と至らない点があると思いますが、どうぞ宜しく」
そう言ってライが頭を下げたのと、教室が生徒達の喧噪に包まれたのとは同時だった。
勿論ファミリーネームの「ウーティス」は偽名である。適当な身分をでっちあげる際コンピュータがランダムで選出したものなのだ。
そしてウーティスの意味を知ったミレイは別の名前にしようとしたが、ライが望んでそのままにしてもらった。
ウーティス……意は"誰でもない者"。
記憶を失った自分には、これ以上無いほどぴったりな名前だとライは思ったのだ。その時ミレイは、複雑そうな顔をしていたが。
ちなみに、その後の残り時間を利用して行われたライへの質問では生徒達は授業では見られないほど積極的に挙手をし発言していた。
言うまでもないことであるが。自分に向けられる質問に予め考えていた答えを返していたライが、質問しているのが女生徒ばかりである理由に気が付くことはなかった。
「ほっほ〜。そんなに凄かったんだ、ライの人気は」
「そりゃもう! 放課後は私達が学校を案内してあげようかな〜って思ってたんですけど、
他の子達が勝手にやってて出番がないくらいでしたから。ね、ニーナ」
「うん、すごかった。特に女の子が」
放課後の生徒会室。書類整理の手は止めずに行われていた女同士のお喋りは大盛り上がりだった。
話題の中心は当然、今日から学校に登校することになったライのことだ。
「なんとなく予想は出来てたけど、恐るべし美形パワーね。
でもまあ確かに、転校生が美青年ってのは王道よねぇ。そりゃ放っておかれないか。
それに彼、なにか人を惹きつけるところがあるし」
「そうですね。あの様子なら、すぐに友達も出来ると思うなぁ」
「でもライさん、ちょっと困ってたみたいだけど……」
心配そうなニーナとは対照的に、ミレイはとても楽しげに笑って見せた。
「良いの良いの! 女の子に囲まれて困るのって、男の子にとってはご褒美みたいなもんよ!」
「そうかなぁ? なんか、本気で困ってる気がしたけど……。
そういえば、リヴァル遅いね」
けらけらと笑い続けるミレイに首をかしげつつ、ニーナは生徒会室のドアに目をやる。
生徒会室のドアは開かれる様子もなく、きっちりと閉まったままだ。
「スザク君が軍の仕事で早退で、カレンはもう帰っちゃったからねぇ。
これでルルーシュにまでサボられたら堪らないから、ルルーシュ捕獲に向かわせたんだけど」
「というかルルが来なかったら、この書類今日中には終わらないですよ」
眉間にしわを寄せるミレイに、嫌そうな顔でシャーリーが生徒会の大きな机の上を指差す。
あちこちに付箋のついた書類の束で、ちょっとした山が出来ていた。さっきから作業しているのだが、ちっとも減っている気がしない。
改めてそれを見て流石に気になってきたのか、ミレイが携帯に手を伸ばす。
支援
「遅くなりましたぁ……」
噂をすれば影とでも言うべきか。今まさにミレイがリヴァルに連絡しようとしたところで、
当のリヴァルが生徒会室のドアを開けてやってきた。その後ろに、ルルーシュの姿は無い。
「リヴァル、ルルはどうしたの?」
「それが……ごめん。だめだった。逃げられたよ」
「ルルーシュのアホー!!」
面目なさそうなリヴァルの言葉に、思わずミレイが悪態をついた。
そして次の瞬間には繋がらないと知りつつも、ルルーシュの携帯に電話をかけるが。
『お客様のおかけになった番号は、現在……』
無情にも答えたのはルルーシュではなく、留守電用のアナウンスだった。
「あーもう! あーもう!! あのサボリ魔ったら、帰ってきたらナナちゃんに叱ってもらうんだから!」
そう言いつつミレイの指は高速で携帯のキーを打ち、
『このシスコン! むしろナナコン! もやしっこ! 恩知らず!!』
等々、サボったルルーシュへの怨嗟の声をメールにして送信していた。
「ルルったら、前からサボってたけど最近はひどすぎ!!」
「どうするの、ミレイちゃん?」
「どーするもこーするも、私達だけで仕事やるしかないっしょ」
「や、やっぱりっすか。でもルルーシュ無しでこの量はキツイですよ……」
うげぇ、と言わんばかりの表情で書類の山の一角をピラリと持ち上げるリヴァル。
シャーリーもニーナも、頼りにしていたルルーシュが来ないと知って表情を暗くせずにはいられなかった。
漂う嫌な空気を振り払うように、ミレイが大きく手を叩く。
「はいはい、暗い顔しない。こーなったからにはしかたがないでしょ?
ルルーシュには罰ゲームを受けてもらうとして、とにかくやれるだけやるわよ!
アッシュフォード学園生徒会ぃぃぃ〜〜〜ガァァァッツ!」
気合を込めて、ミレイが高々と右腕を掲げる。
皆の視線がミレイに集中した瞬間、頃合いを見計らったようにノックの音が響いた。
即座に、その場の全員が一斉にドアの方に視線を向ける。
「会長、手伝いに来たんだけ、ど?」
やや躊躇いがちに開いたドアからひょっこりと顔をのぞかせたライは、ミレイ達の視線を一身に受けて戸惑いの表情を見せた。
反応に窮しているライを知ってか知らずか、ミレイはツカツカとライに歩み寄る。
「あの、かいちょ」
ライは最後まで言葉を続けることが出来なかった。何せ、ミレイの豊満な胸に顔をふさがれていたのだから。
それこそ、ぎゅー! と力強く、だけどもふにふにと柔らかく。
何やら感動した面持ちのミレイは、更にライを抱きしめる腕に力を込める。
ライがばたばたと悶えているのには、どうやら気付いていないようだ。
「ライ、あんたって子は……なんて良い子なの! ぎゅーしてあげちゃうんだから! ぎゅー!
さぁ皆! ライという援軍も加わったことだし、気合い入れてやるわよ! ガアァァァッツ!!」
「ガアァァァァッツ!!」
ミレイに合わせて、メンバー達もまたガッツの魔法を唱えた。その顔には、失われていたやる気が満ちている。
しかしながらライだけは、軽い酸欠状態に陥って顔を蒼くしていた。
後にライは語る―――あの胸は、凶器になり得ると。
支援
支援
「ごめんごめん。ちょっと感動しちゃって、つい」
「いや、大丈夫だ。それで、僕は何をすればいい?」
ばつが悪そうなミレイの隣の席に腰掛けながら、ライは書類の山に目を向けた。
ライは学園内の構造は把握していても、学園内の事情についての知識は殆ど無い。出来る仕事は限られていた。
「そうね……それじゃあこのアンケートの集計と、学園に対するご意見箱の中身のまとめ、
それからちょっと数が多いけど、この今月の予算関係についての書類をお願いできる? 出来るだけで良いから」
ミレイは書類の山の一角をライの横に置いて、窺うような眼差しをライに向けた。
ライは結構な量がある書類に軽く目を通してそれが学園の知識は不要であり、根気と頭を使うことを必要とする物であることを確認して頷いた。
「分かった。慣れるまでは少し質問をすると思うが」
「オーケー、分からないことがあったらじゃんじゃん聞いてちょうだい。
それじゃ皆、いっちょ頑張っていくわよ!」
「おー!!」
「ほら、ライもやって」
「僕も? ……お、おー」
少し恥ずかしそうなライの掛け声を聞いて満足そうに頷いた後、ミレイは自分の作業を始めた。
ライもすぐに書類に視線を落とす。
(まずは学園祭のイベントについて、か。ふむ。
ナイトメアでスモー、スシドー展示会、ギネス級の超巨大ピザ……なんでこんな変なのばかりなんだ?)
珍妙な提案の数々に内心首をかしげながらも、ライの手は淡々と動き続けて提案を別紙にまとめている。
ライもこうして作業をして初めて気付いたが、こうした事務仕事は得意分野らしい。
書類を読み進めるライの眼は驚くほど早く正確に要点を把握し、動き続ける手は的確に内容をまとめあげている。
現時点でもライの処理速度は異常なほど速いがまだまだ限界には程遠いらしく、慣れてくるにつれ益々その速度は速くなる。
集中して取り組んでいたということもあるだろうが、気が付けばライは任されていた書類全てを片付けていた。
一先ずミスが無いか軽くチェックし、確認したうえでライは作業に没頭しているミレイに声を掛ける。
「会長」
「ん、なに? どこか分からないところあった?」
「いや、問題なかったよ。それで書類が全部片付いたんだが、次は何をすればいい?」
支援
「……は?」
ライの報告を聞いた途端、机の書類に視線を固定したままだったミレイが顔を上げる。
その視線はゆっくりと横にスライドし、ライが処理した書類の山に向けられる。
「片付いたって、それ全部?」
「ああ」
「アンケートだけとか、意見まとめだけとかじゃなくて、全部?」
「そうだ」
「……」
疑念混じりの顔で、ミレイは山から一束書類を引っ掴んで目を通しだしたが、チェックした書類の枚数が増すにつれその表情が驚愕に染まりだす。
当然である。ライの言葉通り、書類は全て処理されていたのだから。それも、機械がやったのかと疑うほどに完璧に。
「ちょ、本当にこれ全部やったの?」
「だからそう言ってるだろう」
「信じられない……」
半ば呆然としているミレイの様子に気付いた他の面々も、ライが処理したという書類の量を見て目を丸くしている。
それほど驚くことだろうか、とライは思う。寧ろライとしては、もう少し早く終えられただろうにと不満なくらいなのだから。
「ミスは無いと思う。不安ならもう一度確認するが」
「あ、いや、うん。大丈夫。今私もちょっと見てみたけど、もう完璧。文句のつけどころなし!
いやー、驚いた。ルルーシュもビックリね。この調子で、頑張ってちょうだい」
「ああ。世話になっている分、これくらいはやらせてもらうよ」
そこからのライは、最早呆れる他無いほどの能力を発揮した。
ライ自身の処理速度も驚きだが、それ以上にミレイ達が度肝を抜かれたのはライが人を上手く動かすことに長けていたことだった。
初めは事務が苦手なリヴァルに請われ助言をしていただけだったライが段々とリヴァルに指示を与えるようになってゆき、
続いて細かいところでミスをするシャーリーのフォローまでするようになった。
その結果ミレイとニーナの負担が減っただけでなく、これまでばらばらだった作業に連携が生まれたことで無駄が無くなった。
更にその結果として作業効率が上がり、気が付けばあれほど大量にあった書類がその姿を消していた。
支援
支援
「きゅ、救世主……!」
「ん、今何か言ったか? って、なんだ?」
最後の書類を仕上げたライが顔を上げると、四対八つのキラキラと輝く瞳が尊敬の眼差しでライを見ていた。
たじろぐライを尻目にミレイは万歳のようなポーズをすると、その体勢のままライを拝むように頭を下げた。
そのミレイの行動に倣って、シャーリー達もライを拝み始める。頭を下げては上げ、下げては上げ。
「救世主! 救世主ライ様のご降臨よ!」
「ありがたやありがたや……!」
「へへー!」
「ありがとうライ様! これ、つまらない物ですがお納めください!」
そう言って生徒会のおやつ棚から取った可愛らしい小瓶を恭しい手つきでライに差し出したのはシャーリーだ。
思わず受け取ってしまったライだが、いつまで経っても終わらないライ様コールに焦れたように叫んだ。
「な、なんなんだいきなり。やめろ、拝むんじゃない! 様付けもよすんだ! 頼むからやめてくれ!!」
滅多に感情を顔に出さないライが、堪え切れず悲痛とも言える表情で懇願する。
そんなライの願いも虚しく。ミレイ達が本来のノリに戻るまで、ライはライ様コールを受け続けた。
後に生徒会の中で『救世主(メシア) が 生まれた 日』と語り継がれるこの日以降、
生徒会では時折ライのことを救世主と呼ぶようになった。特にルルーシュがサボってそのカバーをライがした場合はかなりの高確率で呼ばれている。
救世主たるライ本人は「何かもやもやした気分になる」らしく、全力で嫌がっているが。
尚この出来事により、カレンが色々な意味で伝説となった、
「ライがいれば大丈夫……じゃあサボってばかりのルルーシュは、"いらない子"ですね」
という言葉を残しているが、明言されたルルーシュが本気でへこんだこともあって『ルルーシュいらない子発言』は生徒会内ではタブーとなった。
また同じ頃、何故か暫くの間ゼロがカレンに冷たくなるということもあったらしいのだが、それはまた別の話。
支援
支援
おまけ的な物。
ライの部屋の情報が更新されました。
今現在ライの部屋には、
・ゲットーで貰った服
ライがゲットーで世話になった老婆から貰った服。捨てられない。
・チョコレートが詰まった小瓶←New!
綺麗に包装された一口サイズのチョコが詰まった、美味しいと評判のチョコレート専門店の人気商品。シャーリーのお気に入り。
があります。
支援
投下終了です。おまけとか、ちょっと番外編とはいえふざけすぎたかなと思いましたが、
アニメのサヨーシュのはっちゃけぶり見てたら気にならなくなりました。
すいません、次回はたぶんまじめな話です。
それでは、救世主ライ……メシア、ライ……メシアライザー……プッ。
という連想を一人でやってた千葉はライの嫁でした。
まぁたみぃぃてぎぃあすぅぅぅ!!
>>203 千葉はライの嫁卿、GJでした!
ライの事務処理能力がヤバいwww
いらない子認定なルルーシュ哀れwww
あと、気になったんですが留守電なら「おかけになった〜」ではなく「只今電話に〜」だと思うんですが……どうだったかな?
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
>>203 GJ! このシリーズ、本当に楽しみにしているので読めて幸せです
小瓶の中身が気になるなあと思っていたら、おまけで明かされたw
ライの処理能力の有能さは各社に一人欲しいところですなw
有能だけど、いらない子!まじ凹みしてるルルーシュが目に浮かびましたwww
>>204 原作でもルルの電話のメッセージは「おかけになった〜」だったよ。
作中でシャーリーが2回ほどこのメッセージ食らってた記憶があります。
たしかそうだったね
ルルーシュの携帯電話って海底でも使えたけど、あれって蜃気楼の中だから?国際電話にしても無理がありすぎると思うけど。
>>208 7話でも潜水艦に向けて電話してたね。
一応考えたけど、これ以上は別のスレでになるか。
ものすっごく周波数が低いのか…減衰しようが関係無いくらいの強い電波か。
若しくは全く別の通信方式か。軍用ならあまり知られてない方法もあるかも。
ただ、コードギアスの携帯電話はサクラダイトを使って、バッテリーが無駄に高容量だから何かあっても不思議ではない気がする。
因みに、蜃気楼のいた神根島の近海は、一期を見る限り大して深くはないっぽい。
誤字報告
181の14行目
「以外」は「意外」かと
212 :
うにゃら…:2008/10/27(月) 20:03:13 ID:MMY+45/g
アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜バレンタイン編〜
僕が生徒会室に行くと、ミレイさんが何か配っていた。
リヴァルにルルーシュ、スザクにそれぞれなにやら渡している。
みんな花柄の紙でラッピングされた小箱で赤いリボンが丁寧に巻かれている。
リヴァルなんか貰って感激して涙を流している。
他の二人、スザクは照れているし、ルルーシュも貰って悪い気はしてないみたいだ。
何なんだ?
そう思っていたら、ミレイさんが僕に気がつき近づいてきた。
「はい・・・。ライの分ね」
ミレイさんから手渡された小さな小箱。
花柄の紙で綺麗にラッピングされ、青のリボンが巻かれていた。
「あの…これ、なんですか?」
僕はきょとんとして聞き返す。
僕にしてみればいきなり渡されても面食らうだけだ。
それに僕のだけリボンの色違うし・・・。
「あ・・・そっか…」
一人で納得するミレイさん。
きょとんとしたままの僕を見て苦笑している。
そして、説明しようとミレイさんが口を開きかけたとき、ルルーシュが先に説明を始めた。
213 :
うにゃら…:2008/10/27(月) 20:05:20 ID:MMY+45/g
「バレンタインだよ、ライ」
「ばれんたいん?」
聞き返す僕に、ルルーシュも苦笑する。
仕方ないな…。
そんな感じで、でも解りやすく説明してくれるルルーシュ。
そういう風に見せるのは照れくさいというのもあるのだろう。
ほんとは、他人想いのいいやつなのだ。
で、説明を受けていたら、リヴァルが復活して会話に入り込んできた。
「ところでさ、ライのやつだけ、リボンの色が違うぜ。なんで?」
その言葉に誰も答えず、沈黙がその場を支配する。
どう考えても、空気読めよっていう雰囲気だが、リヴァル本人はわかってないらしい。
それどころかとんでもないことを言い出した。
「いいなぁ。俺のと交換してくれよ」
その瞬間、ミレイさんの声が響く。
「駄目ぇっっっっつつ」
皆の視線がミレイさんに集まる。
214 :
うにゃら…:2008/10/27(月) 20:07:49 ID:MMY+45/g
あたふたとして言葉を続けるミレイさん。
「えーっと・・・ほら・・・ライのはたまたま赤のリボンが無くなったので代用で使ったのよ。
中身はみんな一緒なんだから・・・」
どう考えても怪しさ大爆発な態度と言葉だが、リヴァルは気にしなかったらしい。
「ならさ・・・いいじゃん・・・」
おろおろしているミレイさん。
その姿を見て溜め息をひとつしてルルーシュがリヴァルに言葉をかける。
「おいおい、せっかく手渡しで貰ったものを変えるなんて。無粋だな、お前は…」
「そうだよ…。失礼だよ」
スザクがそれに続いて言う。
こういう処は、実にいいコンビネーションだと思う。
「あー…そうか…。すみません、会長」
素直に謝るリヴァルとホッとした表情のミレイさん。
「あ・・・リヴァル、ちょっと用事があった。付き合ってくれ」
ルルーシュがいきなりそう言うとリヴァルを引きずるように連れて行く。
「そうだ、僕も軍の用事があったんだ。お先に失礼します」
スザクも二人に続いて部屋から出て行く。
支援
216 :
うにゃら…:2008/10/27(月) 20:10:09 ID:MMY+45/g
何なんだ・・・いったい・・・。
そして、皆が出て行き、二人きりになった生徒会室。
普段とは違う雰囲気が漂っている。
何をしゃべったらいいのか解らず黙り込んでしまう。
するとその沈黙に耐えられなくなったのだろう。
ミレイさんが意を決したように表情を引き締める。
そして、真っ赤になりながら、しっかりと言葉を紡ぎ出していく。
「ライ、そのチョコ手作りなのよ。
だから、チョコの感想、後日聞かせてよね」
ミレイさんは、そう言い終わるとそのまま生徒会室を出て行った。
僕は、どうしたにいいかわからずにその場にしばらく立ち尽くしていた。
だが、思い出したように小箱のラッピングを空けて中身を確認する。
そして、その箱の中には、ホワイトチョコで「貴方を愛しています」という文字の書かれたハート型のチョコがあった。
おわり
なんというゲリラ的投下w 乙です
『た』が抜けた…orz
すいません
>>216 うにゃら…卿、GJでした!
空気の読めないリヴァルと空気を読んだスザク……なんか新鮮w!
というかリヴァルは一体どうなってしまうのかw
しかし、このミレイさんは真に可愛い。
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
221 :
食卓:2008/10/27(月) 21:39:04 ID:zHvYTzmW
5分後ぐらいから投下します。
・多分最初のSS以来のまともな内容?
・オリジナルナイトメア注意。
・「戦神の目覚める日」(保管庫参照)の続きと思って下さい。
・13レスぐらいの予定です、可能な範囲で支援お願いします。
支援
223 :
食卓:2008/10/27(月) 21:45:49 ID:zHvYTzmW
「誰か、誰でもいい、彼女を救ってくれ!」
天帝八十八稜に黎星刻の悲痛な叫びが木霊する。
間断無く注がれるガン・ルゥの砲撃を2本のハーケンで防ぎ続ける星刻と神虎の技は既に人の域を超えた絶技。
だがそれでも目の前の少女を、天子を救うことは叶わない。
そして無情かつ非情にも彼の願いを聞き届ける者も、叶える事の出来る者もこの場には存在しない。それでも星刻はそれを願わずにはいられない。
かつて交わした約束のため、命を救って貰った日の誓いのため、何より目の前の彼女自身の為に。
砲撃に耐え切れず、先に負傷していた神虎の右翼の守りが崩れる。
最早奇跡という神の御業によってのみ動かすことが許されるこの戦況。
だが奇跡とは起こり得ぬ偶然の産物。叶わぬ願いを抱く人々が創った最後に縋る拠り所。
元より存在しないものが今この場で都合良く起こるなど、遙かな夢物語でしかない。
だがもしも、今この場で奇跡を起こせる者がいるとするならば―――
『分かった。我らが聞き届けよう、その願い』
降り注ぐガン・ルゥの砲撃が天子と神虎のみならず、彼らが足を着ける斑鳩さえも爆炎で覆いつくした。
誰もが戦いを忘れ、爆炎が治まり煙が晴れるのを見守る。
そこにはあれだけの爆発にも拘らず、それまでと変りのない光景が、否。
斑鳩艦首の先端に、まるで神虎と天子を守るかのように2機のKMFが立っていた。
―――それは奇跡の再現すら可能な神か魔か、はたまた必滅の戦場をも力で覆す戦鬼の所業か………
支援!
dis illusion
◆
迫り来る中華連邦とブリタニアの連合軍。
圧倒的な数の中華連邦と、3人のナイトオブラウンズに加え次世代の量産機ヴィンセント・ウォードを投入するブリタニア。
質と量を備えたKMF軍団の後ろには、ブリタニアと中華連邦の旗艦、アヴァロンと竜胆が空地に陣取っている。
この強大すぎる連合軍に対し、孤立無援の状況下に追い詰められた黒の騎士団は圧倒的不利な状況にいた。
『こちらの航空戦力は限られている、一騎当千の気構えで当たれ!』
『『承知!』』
藤堂の斬月を先頭に千葉と朝比奈が暁で続く。
「私も暁で出る」
ブリッジでは普段は決して自分から前線には出ようとしないC.C.が出撃を口にする。それほどに状況は切迫しているのだ。
『C.C.』
そんな彼女をゼロが呼び止める。
『不利になったら、脱出しろ』
「その前に手を打っておけ」
そんな2人の会話を聞いたライは立ち上がる。
「ゼロ、僕も―」
出撃を口にしようとして、
『ライ、お前の出撃は許可できない』
それを阻まれた。
「どうして?今は少しでも戦力がほしいときだろう!」
思わずライは叫んでしまう。
ブリッジにいる扇たち幹部とオペレーターたちが一斉にライたちを見る。
支援
確かに戦力は必要だ。
だが、この場にお前を投入することはリスクが大きすぎる。
相手が中華連邦や並みのブリタニア兵だけならば問題はないが、ここにはナイトオブラウンズが3人もいる。
ジノ・ヴァインベルグ、アーニャ・アールストレイム、そして枢木スザク。
お前がこの1年、ブリタニアにラウンズとして潜入した中で最も各地で戦線を共にし、模擬戦を繰り返した3人だ。
特に枢木スザクは実戦での戦闘も多々ある相手だ。
お前ほどの腕をもつパイロットの動きならば、相手に覚られている可能性は低くない。
ナイトオブイレブン、ライ・ランペルージは今は日本にいることになっている。
気持ちは分かるが、ここは藤堂たちを信じて静観しろ、ライ』
「でも、ゼロ―」
『これは命令だ』
∽
(我ながら酷なことを言う…)
心の中でルルーシュは呟く。
(ライの性格を考えれば多くの仲間が不利な状況で命がけで戦っているときに、自分は安全な場所から見ているだけなど行動の選択肢に入ってなどいる筈がない。
こういう状況でこそ真っ先に飛び出し、最前線にその身を置き仲間の被害を抑える。それがライのやり方。
バベルタワーで記憶を取り戻し、卜部と仙波が死んでからはよりその傾向が強くなっている。1年前の責任を感じていることもあるだろう。
卜部が俺を含めた3人の為に命を散らし、仙波の時は止むを得なかったとはいえ自らもラウンズとして黒の騎士団の殲滅に関わっていた。
そして今回の一件。到底我慢できることではないだろう。
だがライ、お前には討てるのか?
偽の記憶を植えつけられていたとはいえ、1年間苦楽を共にした新たな仲間を、ジノとアーニャを。
俺ならば目的のためには非情に徹することに苦はない。
だがお前は違う、今のお前はそこまで非情になり切ることは出来ない。そこがお前の良い所であり、羨ましいとさえ思える。
しかし今はその優しさがお前の命を奪うかもしれない。だから俺はお前を行かせるわけにはいかない。
どんな事をしてでも!)
支援!
∽
「悪いけどゼロ、その命令には従えない」
静かに、しかし揺ぎ無い決意を籠め、ライはゼロを見据える。
「僕のことを配慮してくれたことには感謝する。
けど、今はカレンも捕まっているし戦力に差がありすぎる。
例の手を打つにしたってまだ時間が要る。その間に犠牲が増えるのが僕は嫌だ。
我侭なのは分かっている、とても戦闘総隊長の言葉ではないということも。
それでも例えどんな責めを負う事になっても、僕は出る!」
そう言ってライはゼロ以外には見えないように右目の遮光コンタクトを外し、ギアスの宿る瞳を彼に向ける。
相手の聴覚に訴える以上、さしたる意味はないが己の本気を伝えるために。
『行かせない、と言ったら?』
ゼロの仮面の一部が開き、ギアスの宿るルルーシュの左目がライを睨む。もちろんライ以外の団員達からは見えないように。
「行かせてもらう、絶対に!」
ライとルルーシュが同時に命令を発しようとしたとき、
「いい加減にしろ、お前たちが争ってどうする?」
C.C.がライとルルーシュの間に割り入った。
「『C.C.?』」
「まったく呆れた連中だな。
だが、どちらの言い分も…まぁ最もだ。
それにお互い譲る気はないんだろう?
なら、平和的に多数決で決めたらどうだ?
幸いここには幹部が揃っている」
C.C.は2人を交互に見ながらそんなことを言った。
『「………」』
支援
思いもしない提案だったが、2人は暫し考えその提案を了承した。
ギアスの使用を避けて事を解決するにはそれしかないと考えたのだ。
『聞いてのとおりだ。
今ここでライを出撃させるべきか否かについて、幹部たちの意見を聞きたい。
ただし、現在の感情ではなく今後の大局も考えて言ってくれ。それによって騎士団の未来も左右されることも忘れないでほしい。
それでいいな、ライ?』
仮面を閉じて左目を隠したゼロが全員に問う。
ライもコンタクトを素早く戻し、無言で頷く。
「今のところは僕とゼロでそれぞれ賛成1、反対1となっているけど…」
「私は反対です。
この場はゼロの言うことがもっともです。まだ貴方というカードを切るには早すぎます。
そもそも、戦闘総隊長の貴方が感情でものを言うのは軽率すぎるのでは?」
すぐさまディートハルトが反対する。
「すまないゼロ、俺はライに賛成だ。
ライに動いてもらえばカレンを助けられる可能性だって上がる」
ディートハルトに割り込むように、扇がライに賛成する。
『ラクシャータ、君はどうだ?』
「アタシもとりあえずは賛成。あの2機の実戦データがほしかったのよ、丁度」
寝そべったままラクシャータが言う。
『そういう訳だだが、援軍は必要か?藤堂』
ゼロが手元の通信装置を通して藤堂に聞く。
『ライ、君の気持ちだけありがたく受け取らせてもらおう。
しかし、君は今後の騎士団、ひいては日本の奪還には欠かせない人間だ。
ここは我々が何としてもくい止める、だから今は耐えてくれ』
反対こそされたが藤堂の気持ちは痛いほどライに伝わる。
『これで3対3か』
「………」
無言でライとゼロがにらみ合う。互いに継ぐべき言葉を模索していると、
支援
「では私は賛成だ」
突然C.C.がそんなことを言った。
『な、C.C.お前何を―』
「忘れたのか、こいつをスカウトしてきたのは私だぞ?
だからこいつのことに関しては私も幹部待遇でいいと思うが、どうだ?」
C.C.がルルーシュに視線を向ける
「何を馬鹿な、今はそんな感情でものを言っている場合では―」
『止むをえん、いいだろう』
ディートハルトの反論を遮ったのは以外にもゼロだった。
「ゼ、ゼロ?」
ディートハルトをはじめ、C.C.を除くブリッジの全員が驚く。
『ただし、出撃のタイミングはこちらに任せてもらう。
それとナイトオブラウンズとの戦闘は極力避けろ、最悪後方支援か敵を撹乱する程度でもいい。
お前だと分かるような戦い方をするな。この条件でなら出撃を許可しよう。どうだ?』
「それはありがたいけど、本当にいいのかいゼロ?」
『多数決で負けたのだ仕方があるまい』
かつての彼からは到底考えられない発言だったが、ライは
「ありがとう、ゼロ」
友の変化を内心喜びながら感謝した。
「あいつは変ったな」
格納庫でライの前を歩いていたC.C.が不意にそんなことを言った。
「ルルーシュのこと?」
ライが聞き返す。
「他に誰がいる?1年前からしたら考えられないことだ。お前もそう思うだろう?」
「そうなのかな?」
「変えた本人は自覚が無しか…」
小さな声でC.C.が呟く。
「何か言った?」
「なんでもない。私は先に出ているから早くこいよ」
そう言ってC.C.は暁に、ライはその隣の青いナイトメアに乗った。
sien
支援!
◆
かたや見た目何の武器も持たない黒いナイトメア。
かたや左腕には紅蓮と同じ輻射波動の腕、背部の腰に暁のものより小さめの廻転刃刀、両脚にスラッシュハーケン、右肩にはランスロットのハドロンブラスターと同様、発射時には展開されるであろう折畳まれた砲身を担いだ青いナイトメア。
「何だあの2機のナイトメアは!?」
「天子だけでなく、星刻も守ったと?」
予期せぬ乱入者たちに驚く大宦官たち。ブリタニアにも少なからず動揺が広がる。
そんな両軍を前に黒いナイトメアから問いが投げられる。
『中華連邦ならびに、ブリタニアの諸君に問おう。まだこの私と、ゼロと戦うつもりだろうか?』
ゼロ自ら最前線に出てきたことに誰もが驚き、黒いナイトメアを注視する。
しかしその中に1人だけゼロが乗る黒いナイトメアと同じくらい、その傍らに佇む青いナイトメアに強い視線を向ける人物がいた。ナイトオブセブン枢木スザクである。
(左腕に輻射波動の青いナイトメア! ライ…なのか?)
1年前、ブラックリベリオンの時、機体性能で勝るランスロットを相手に巧みな戦術と緻密にして大胆な戦略で、終始互角に渡り合った月下のパイロット。
(まさか記憶が戻っているのか!? いや、そんな筈はない。さっき学園に電話した時ルルーシュ共々生徒会室に居るのを確認している)
そんな筈はないと自分に言い聞かせる一方で、目の前のナイトメアと先ほど電話で話したライの声がスザクの中で重なる。
「何をしている、一斉射撃で撃ち落とせ!」
ゼロが出てきたことを絶好の好機と思った大宦官が攻撃の命令を下す。
この戦況、司令官自らたった1機の供と出てきたところで覆るような状態ではない。
止んでいた砲撃の雨が再び降り注ぐ。
だが、
「成る程、それが大宦官としての返答か」
瞬時に展開されたエネルギーシールド、絶対守護領域によって砲撃は全て防がれる。
更に砲撃が途切れた一瞬に黒いナイトメアより拡散構造相転移砲が放たれ、大量のガン・ルゥが撃墜された。
その様子を斑鳩で寝そべりながら見ていた黒いナイトメアの製作者、ラクシャータは満足気に立ち上がった。
「ナイトメアフレーム『蜃気楼』、その絶対守護領域は世界最高峰の防御力なのよぉ。 そして、」
支援
支援
次いで地上のガン・ルゥに代わり、空中から3機のヴィンセント・ウォードが蜃気楼に迫る。
それに対し蜃気楼は迎え撃つでも絶対守護領域を展開するでもなく、
『では後は任せたぞ、我が半身よ』
傍らの青いナイトメアを一瞥し、迫り来るヴィンセント・ウォードたちに背を向けた。
(半身って…大げさだな)
相変わらずの過度な物言いに苦笑しつつも、ゼロが自分を「半身」と呼んだ意味と責務を頭の中で噛み締め、ライは自分の乗るナイトメアを飛翔させる。
敵は中央、左、右にそれぞれ展開しライフルとロケットランチャーを撃ちながら接近してくる。
それに対しライは瞬時に思考を巡らせる。
本来の自分ならここは相手を分散させ1機ずつ確実に潰すところ。
しかしそれではルルーシュの危惧が現実になる可能性が高い。
(だから!)
飛来する相手の砲弾を機体を巧みに操り、紙一重で回避する青いナイトメア。
それは太平洋でトリスタンの攻撃を回避した紅蓮の動きそのものであった。
(カレン、君はいつもこんな動きをしてるのか。 まったく、恐れ入るよ)
実際にやってみて改めて彼女の操縦技術とそれを可能にする度胸にライは感服した。
「あの動きはカレンの!」
「おいおい、あいつもラウンズ並の腕前か?」
「少しだけ、やっかい…」
離れた位置でそれを見ていた3人のラウンズから驚きと賞賛が青いナイトメアに送られた。
支援!
支援
敵の砲撃を回避しきったライは腰の廻転刃刀を抜き取り、中央のヴィンセント・ウォードに接近する。
青いナイトメアの予想を越える動きと速度にヴィンセント・ウォードのパイロットは僅かに対応が遅れる。
そしてそれはライにとって十分すぎる隙だった。
敵がソードを抜き取るよりも早く廻転刃刀を胸部に突き刺し、そのまま下方に切り裂く。
切り裂かれたヴィンセント・ウォードは爆散する。
しかし右に展開していた別の1機が仲間の死を無駄にせんと、ソードを抜き払いながらライのナイトメアに突撃する。
充分に距離を詰めた時点で振るわれた一撃は右腕の廻転刃刀に阻まれる。
そして次の瞬間には交差する2刀の横から伸びた青いナイトメアの左腕が、ヴィンセント・ウォードの頭部を掴む。
掴んだと同時にライが輻射波動を出力を最大に上げる。
ヴィンセント・ウォードは成すすべなく爆ぜ散った。
その姿を見ていた最後の1機は再び間合いを取るべく距離をとろうとするが、青いナイトメアの右肩の砲身が展開される。
だが充分に距離はある、あの位置から動くナイトメアに当てるなどラウンズでも簡単に出来る芸当ではない、筈だった。
青いナイトメアより放たれた弾丸が一直線にヴィンセント・ウォードに直撃し、3機のブリタニアの次世代量産機は1機のナイトメアにより瞬く間に撃墜された。
「すごい…蜃気楼の絶対守護領域も驚いたけど」
「戦闘総隊長のナイトメア、紅蓮や蜃気楼のような派手さはないですけど」
「的確素早くに1機ずつ倒しているのは流石ですね」
斑鳩のブリッジでオペレーターの3人、双葉、日向、水無瀬がそれぞれ感嘆を述べる。
ラクシャータ以外のメンバーも口にこそ出さないが驚きは隠せていない。
「ナイトメアフレーム『新月』。
遠近中すべてに対応した武装から繰り出される多様な攻撃に坊やの腕が加われば、新月の射程はさながら絶対攻撃領域ってトコかしら?
あと、新月の輻射波動は紅蓮みたいに飛ばしたり拡散したりは出来ないけど、出力は紅蓮のを上回るわよ〜」
斑鳩のブリッジに上機嫌なラクシャーの声が響いた。
支援
支援
「何かおかしいね」
アヴァロンのメインモニターに映る蜃気楼と新月を見ながらシュナイゼルは呟いた。
「ゼロはどうしてこのタイミングで出てきたと思う?
それにあの青いナイトメア、形状や動きから察するにデータにある紅蓮と並ぶ「騎士団の双璧」の片割れだろうけど、何故ブラックリベリオンの時ゼロ共々突然姿を消したパイロットとナイトメアが、今になって出てきたんだろうね?」
その場にいる誰もが答えを出すことが出来ない。
「バベルタワー襲撃、中華連邦領事館前での人質奪還、太平洋の奇襲、ゼロの復活から一連の事件で青いナイトメアは目撃されていない。
仮に機体が出せなかったとしてもあれ程の力量のパイロットが重要な局面に一度も顔を出していないのは妙だね。
今回は出れる条件が揃ったか…それとも今までは出ることの出来ない理由があったのか…」
アヴァロンのブリッジにシュナイゼルの疑問の声だけが響いた。
3機のヴィンセント・ウォードを撃墜したライは改めて戦場を正面から見据える。
前方にはアヴァロンと竜胆、そしてまだ多くの敵ナイトメアがいる。
その中にはトリスタン、モルドレッド、ランスロットの姿もある。
ランスロットは幸いにも斬月と交戦中だが、獲物を失ったトリスタンとモルドレッドは新たな標的、新月を見ている。
(交戦は…避けられないか)
目を閉じ大きく深呼吸してライは覚悟を決め、新月を加速させ敵陣に突入させる。
偶然にもこの時、ブリタニアと中華連邦側から見た青いナイトメアはその背に満月を背負っていた。
to be continued
支援!
247 :
食卓:2008/10/27(月) 22:22:06 ID:zHvYTzmW
以上です。支援ありがとうございました。
久々にマジな展開だったんで感覚がイマイチ分からなかったんですが、どうでしょうか?
ぶっちゃけ騎士団版ライ専用ナイトメアを出したかっただけなんですが…
中途半端なトコで切ったのは、こらから先は今後予定している別SSと重なるのであえて途中で終らせました。
ナイトメアの名前は「斬月」と字面も似てて、「蜃気楼」が遠くの見えないものが見えるのに対して
見える筈のものが見えなくなるという対比がいいかなと思って「新月」としました。
「さあさあさあさあやってきましたまいりました! 今回のエントリーは
食卓の騎士卿、マスターコード0030-0223『dis illusion』でございます!」
「(テンション高いなあ…)単体間リンクはまだ張ってないけど、必要ならいつでも言ってね」
「いつでもお待ち致しておりますよ!……では、いきますか!」
「うん」
「「せーの」」
「きゅうゥゥひゃアくううゥ、とッッぱああアッー!!」
「ばばーん」
〜作品総数900到達〜
249 :
訂正願い:2008/10/27(月) 22:25:58 ID:zHvYTzmW
トーマス卿へ
>>227 1行目:確かに〜 を 『確かに〜 に
>>242 下から4行目:「射程」を「間合い」に
訂正お願いします_(_ _)_
>>248 ああ、トーマス卿だ。
うにゃら卿の「ハロウィンの悪夢 」が見れないのですが…。
確認お願い抱きますか?
食卓の騎士卿、おめでとうございます。
しかし、すごいねぇ…。
900突破とは…。
こりゃ、軽く4桁いけそうだなぁ…この調子だと…。
251 :
食卓:2008/10/27(月) 22:33:34 ID:zHvYTzmW
って、もう保管してる!?恐ろしいお方だ…
早速の訂正が少々心苦しい。
単体間リンクの方はとりあえずまだしないでおいて下さい。
>>247 乙&GJ! 何より戦闘シーンが(・∀・)カコイイ!!
カッコいいというより、ウォード三機を倒すところが滑らかできれいに見えました。
次回の投下も楽しみにしています!
あと個人的に反逆学園が楽しみでなりません、とこっそり付け加えておく。
>>250 修正しました。なんかこのごろこんなミス多いなあ……引き締めなくては。報告どうもです。
>>251 リンクの件、承知致しました。
>>247 食卓の騎士卿、GJでした!
冒頭のシーンに鳥肌が立ちました!
カレンの動きを真似るライに
流石は双璧、互いの動きをよくわかってるんだな、と感じました!
シュナイゼルの持った疑問がどう影響するのかなど続きが気になるところが多々ありますね。
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
すごい!!こんな短期間で900だとは。
ここまで人気なんだから公に何かおきれば・・・・。
1000到達を夢見てます!!そして900到達おめでとうございます!!!
でかい花火が公式から上がればここはどうなることやら…
>>247 遅れましたが食卓の騎士卿GJ!
人居ますか?
投下していい?
支援
259 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:37:02 ID:doyWCAoF
では支援に感謝して投下します
「セシルさん奮闘記」の続きです
やっと本編です
カップリングはもちろんライ×セシル
約12レス
注意点
・全力でギャグ
・タイトルのわりにライ視点です
・ライの言葉が少し乱暴なとこがあったりします
では投下
260 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:38:39 ID:doyWCAoF
「〜〜♪」
まだほんのり薄暗い早朝。
いつもより早く起きたセシルは鼻歌を奏でながら気になるあの人のことを思い、腕によりをかけて弁当を作っていた。
その姿はとても生き生きしていて美しかった。
ただお弁当に盛り付けられた料理の数々は、間違いなく、惨劇を引き起こすことになるだろう。
「ライ君、喜んでくれるかしら?」
弁当を包み、そう呟いた彼女の横顔はまさしく恋する乙女と表現するに相応しい。
「あら、もうこんな時間…!」
時間を確認したセシルはお弁当を鞄の中に詰めた。
(エニアグラム卿、あなたに教わったこの方法でライ君にアピールしてみます!)
カーテンを開き、空を見上げたセシルは心の中でこの場にいないノネットに報告した。
『いや、教えてないし。あと、それ止めた方がいいぞ』
そんなノネットの声がどこからか聞こえて来たような気がしたがセシルには届かなかったようである。
「待っててねライ君!」
そう意気込むとセシルは仕事場へと向かった。
261 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:41:37 ID:doyWCAoF
『セシルさん奮闘記』
「ライお疲れ、はい」
「あ、ありがとうスザク」
シミュレーションが終わり、適当なイスに座りこんだ僕にスザクがペットボトルのジュースを差し出した。
「スザクはお昼どうするの?」
ペットボトルのフタを開け、何気なく聞くとスザクも自分の分のジュースのフタを開けた。
「僕はたまにはコンビニのお弁当じゃなくて外食にしようかな、なんて思ってるんだけどライも一緒にどう?」
「外食か……うーん、どうしようかな。あれ、そういえばロイドさんは?」
いつもならその辺でゼリー飲料とか軽いものでお昼を済ませてすぐプリンを食べながらまた作業してるのに今日に限ってはどういうわけか姿が見えない。
「ロイドさんならお昼になった瞬間に急いで外に行ったよ」
「へぇー、珍しいね」
「ライ君!」
「あ、はい、セシルさ…」
スザクと話をしているとセシルさんに呼ばれたので僕が振り返ると僕の視線がある一点に集中してしまい、言葉が詰まった。
セシルさんの腕には少しサイズが大きめの包みがあった。
今はお昼時。
僕の頭に悪い予感がよぎった。
「セシルさんそれ…」
「あ、これね…」
包みを指差すとセシルさんは急に恥ずかしそうにもじもじしだした。
支援
263 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:43:42 ID:doyWCAoF
その仕草がとても可愛らしく見え、僕の心臓の鼓動が一瞬高鳴ったが、同時に包みの中身が不安で別な意味でも心臓が波打ってるのを感じる。
「今日はライ君のためにお弁当作ってきたゃった」
照れ笑いを浮かべセシルさんは包みを僕に差し出した。
そんなセシルさんの姿を見て、僕は2重の意味で一瞬気が遠退いた。
ああ、年上の女性にこういうのは失礼かもしれないけどセシルさんがすごく可愛らしいです。
そのはにかんだ笑顔の破壊力抜群です。
ただそのお弁当も破壊力抜群なんでしょうね。
それを食べないといけないと思うと気が遠くなって行く。
「あ、ごめんねスザク君。私ったらスザク君の分を用意するの忘れてたわ!」
そんな意識が朦朧としていた僕に気付かず、セシルさんは引きつった表情のスザクの方を見てそんなことを言った。
「い、いえ、僕はこれから外食してくるのでどうぞごゆっくり」
「まあ……スザク君ったら」
どこに照れる要素があったのか?
セシルさんは恥ずかしそうに微笑みチラリと僕の方を見た。
セシルさんと2人っきりでセシルさんの手作り弁当を?
ふざけるな。
そんなスイートな時間(お弁当的な意味で)耐えられるか!
支援
支援
266 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:45:46 ID:doyWCAoF
「せっかくだから一緒に食べよう」
満面の作り笑顔で、僕は逃げようとするスザクの腕を掴んだ。
「いや、僕は…」
「僕だけで食べるなんてもったいないよ。せっかくセシルさんが作ってくれたんだから一緒に食べよう」
顔は笑顔だが必死に僕の手をひっぺがそうとするスザク。
離してたまるか。
だって僕達は友達だろ?
「ねえ、セシルさんもそっちの方がいいですよね?」
さらに追い詰めるつもりで僕はセシルさんに同意を求めた。
「え、ええ」
あれ、妙に歯切れが悪いな?
どうしたのかなセシルさん?
「わかったよライ。だから手を離してくれないかな」
ようやく観念したらしい。
僕がスザクから手を離すと僕達3人はセシルさんの用意してくれたお弁当を囲むように座った。
ただセシルさんが妙に浮かない表情をしてるのが気になったけど、どうしたのだろう?
「じゃあ、開けるわね」
セシルさんが包みを開けると中から2段の重箱が出て来た。
そのままセシルさんがフタを開けると室内に甘そうで焦げ臭く苦そうな妙な臭いが漂い始めた。
お弁当の上段には真っ黒なミートボールにカラフルなソーセージ。
支援
268 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:48:06 ID:doyWCAoF
妙に水っぽいポテトサラダになんか黒いものを包んだロールキャベツが入っていた。
下の段はというと明らかにパイナップルやらバナナやらがはみ出てるオニギリ。
さらには柑橘類の粒やブルーベリーを混ぜ込んだオニギリなどとても恐ろしいものが見えた。
「うおぉぉー!!」
突然スザクが雄叫びを上げ立ち上がった。
何事かとスザクを見ると心なしかスザクの瞳が赤く輝いていた。
……あれってまさかギアス!?
「僕は生きなきゃいけないんだ!」
「おい、待てスザク! 待ってくれ! どこへ行くんだ!? スザクゥゥ!!」
何かにとり憑かれたように走り出したスザクは僕の制止も聞かずに真っ直ぐ外へと走り去って行った。
「どうしたのかしらスザク君…?」
心配そうにセシルさんは言った。
誰だスザクにギアスをかけた奴は!
「まあ、それはそれとして……食べましょライ君」
スザクが居なくなったのにどこか嬉しそうにセシルさんはニコッと笑った。
誰か、何ってかけたかは知らないがスザクと同じギアスを僕にかけてくれ。
「じゃあ、いただきます」
こうなったら腹をくくるしかない。
覚悟を決めた僕は最初にやたらカラフルなソーセージにフォークを刺した。
支援
支援
271 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:49:37 ID:doyWCAoF
特に何か特別な味付けをした様子ない普通のソーセージ。
きっとカラフルなのは複数のハーブが挽き肉と調合されてるからだろう。
そう信じて僕はソーセージを口の中へと運んだ。
「どう?」
心配そうな表情でセシルさんは僕の顔を見つめている。
「!? なんだこれは!? 口の中でソーセージがはじけた!!」
あまりの衝撃に僕は思わず口に出した。
ソーセージを口に入れて噛みしめた瞬間、ソーセージの皮がはじけると同時に皮の中の甘い何かが口の中で暴れだしたのだ。
それと同時に口の中に広がる肉汁。
食感は衝撃だが正直これ不味い。
「そうなの、実はそのソーセージ私の手作りなの」
僕の反応をいいほうに勘違いしたのかセシルさんは嬉しそうに手を叩いた。
「肉を機械で挽き肉してお菓子のはじけるキャンディを混ぜて羊の腸につめたものなのよ」
嬉しそうに説明するセシルさん。
なるほど、このカラフルなのははじけるキャンディでしたか。
以前カレンからもらって時には驚いたがこれにはもっと驚きました。
あとセシルさん、変なとこにこだわってるんですね。
ソーセージくらい買いましょうよ。
支援
273 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:51:13 ID:doyWCAoF
「次はこのロールキャベツを食べてみて」
味が好評だと勘違いしてるのかセシルさんは次のおかずを勧めてきた。
「……いただきます」
不安にかられながらも僕は中身が黒いロールキャベツを口に入れた。
うん、汁をよく吸ったキャベツの中にほど良い甘さの何か。
醤油ベースの味とは不釣り合いながらもやっぱり美味しくはない。
唯一の救いはさっきのソーセージほどじゃないということかな。
「セシルさんこれ…」
「フフ、これはねキャベツ中にエリア11のお菓子の羊羹を入れて、エリア11の調味料で煮込んでみたロールキャベツなんだけどね。とう?」
綺麗な瞳でセシルさんは僕を見つめ言った。
「ええ、初めての味です…」
そんな綺麗な瞳を向けられたらそれしか言えません。
目尻が熱くなってきた僕は目尻を押さえ、今度はポテトサラダに手を伸ばした。
「………しょっぱい」
口に入れた瞬間、口の中に不愉快な感触が広がった。
この香りは牛乳だな。
ポテトサラダに牛乳を混ぜて塩で味を整えたってところかな。
牛乳さえ入れなければ完璧だったのにな。
「あら、塩入れすぎたかしら」
支援
275 :
萌は文化:2008/10/27(月) 23:52:40 ID:doyWCAoF
「ごめんなさいね」とセシルさん申し訳なさそうには謝った。
セシルさん、塩は2の次なのでまず牛乳入れるの止めましょう。
「それじゃあお詫びに…」
セシルさんはミートボールにフォークを刺すと僕の方へと差し出してきた。
「はい、ライ君。あーん」
反則的なまでに可愛らしくセシルさんは恥ずかしそうに微笑んだ。
セシルさん……その笑顔は卑怯です。
だけどセシルさんの差し出す凶器(フォークのことじゃないよ)のせいで逆に冷静になる自分が憎い。
「ほら、ライ君」
急かすようにセシルさんが言うと僕は観念して口をあけた。
天使が地獄を運んでくるとプラマイゼロだと言うことを今日僕は理解しました。
「どう?」
「これは!」
ミートボールを口に含んだ瞬間、またまた衝撃を受けた。
「口の中に入った瞬間にミートボールが溶けた! 溶けた瞬間に広がるチョコと肉汁! これは!」
「これは?」
どうやらミートボールが黒いのはチョコレートが混ざっていたかららしい。
口の中に肉汁とチョコレートというミスマッチな味が広がった。
支援
277 :
萌は文化:2008/10/28(火) 00:00:34 ID:G5Cz3oQo
「辛い!!」
チョコレートと肉の味が広がった後、急激な辛さに襲われた僕は大慌てで近くにあったミネナルウォーターのペットボトルを手に取った。
「あ、それ私の…」
セシルさんが何か言っているがそれどこらじゃない僕はペットボトルの中身を一気に飲み干した。
「辛い…まだ辛い……」
ある程度辛さは引いたがまだ口の中がヒリヒリする。
(ライ君と……間接キス…)
ミネナルウォーター飲まれたのがショックだったのだろうか?
セシルさんは空になったペットボトルをぼんやりと見ている。
「セシルさん……これチョコの他に何入ってるんですか?」
「え、あ、それはね…」
セシルさんにミートボールの中身を聞くとセシルさんは妙にそわそわしながら言った。
「お肉とチョコレートとあと、お肉の中に乾燥させて粉にした唐辛子をこねて丸めたものを…」
「それだセシルさん………形は変わったとはいえ唐辛子丸ごとはキツいですよ」
半分涙目でセシルさんに言うとセシルさんは困ったように首をかしげた。
「そうよね。やっぱり乾燥させたやつより生の方が良かったわよね…」
「……………」
あえて僕は突っ込むのを止めることにした。
支援
279 :
萌は文化:2008/10/28(火) 00:03:13 ID:doyWCAoF
天然には何を言っても無駄だっていつかルルーシュが言ってた気がするしね。
「ん……!」
ふと気配を感じ後ろを振り返った。
「あ!」
「あれ?」
「む!」
「おや?」
いつから居たのかドアの隙間からこちらを覗いていたスザク、ロイドさん、ジェレミア卿、ノネットさんと目があった。
「おい…!」
思わず荒い口調になる。
ジェレミア卿やノネットさんはともかくロイドさんやスザクまで…。
見ていたのならなんで助けてくれなかったんだと怒りが湧き上がってくる。
「あちゃー見つかっちゃったねぇ」
「ロイドさんそれどころじゃないですよ!」
「早く逃げるぞ」
「ライ卿よ。悪いが全力で見逃せ!」
「あ! コラ待て!!」
急ぎドアまで駆け寄るが開けた時にはすでに4人の姿はなくなっていた。
「あ、クソ…」
「どうしたのライ君?」
支援
281 :
萌は文化:2008/10/28(火) 00:05:01 ID:doyWCAoF
突然ドアまで駆け寄った僕を4人に気づかなかったセシルさんは不思議そうに見ていた。
「…いえ、なんでもないです」
「そう? それじゃあこのオニギリを食べてみて。特にこの混ぜ込みご飯のやつが自信作なんだけど…」
(勘弁してください)
セシルさんのお弁当をなんとか全て平らげた僕だったがその日の午後、体調不良により僕は倒れた。
倒れぎわ、やっぱりと呟いたスザクとにやけ顔のロイドさんを殴ってやりたかったけど身体が言うこと聞かないのがすごく悔しかった。
支援
283 :
萌は文化:2008/10/28(火) 00:07:07 ID:G5Cz3oQo
おまけ
ライの病室
ノネット「人間、不味いもん食べ続ければ気持ち悪くなって倒れるんだな」
ジェレミア「ライ卿……貴様は立派な騎士だった」
スザク(ごめんよ。生きろのギアスさえなかったら僕だって…)
ロイド「おめでと〜。食中りってヤツ? 当たっちゃったね」
スザク「いや、全然めでたくないですよ」
ジェレミア「その通りだ。不謹慎だぞ」
ロイド「え、なんで?」
ノネット「セシルの代わりに教えてやろうか?」
ロイド「いえ、遠慮します」
スザク「そういえばセシルさんは?」
セシル「ライ君は起きましたか? お粥作って来たのだけど」
ノネット「あ、私殿下に呼ばれてるんだった」
ジェレミア「全然で逃げ出す!」
ロイド「さ〜て、ランスロットの調整に戻ろうかな」
スザク「俺は、生きなきゃいけないんだ!!」
セシル「??」
支援
支援
286 :
萌は文化:2008/10/28(火) 00:08:53 ID:G5Cz3oQo
以上で終了
途中で規制にかかりましたorz
ちなみに続きます
やっぱり怒ってたとはいえ言葉使いが荒いライは止めたほうがよかったかな
ぶっちゃけ一部を抜かしたセシルさんの料理は私の実体験から誕生しました
では支援ありがとうございました
>>286 GJ
セシルの弁当を前に必死なライの様子を楽しませていただきました。特に
> 離してたまるか。
> だって僕達は友達だろ?
の部分は邪悪な笑みを浮かべたライの顔を想像してしまい大笑いしてしまいました。
連作だというので続きを楽しみに待っています。
誤字らしき部分があったのでご確認くだされば幸いです。
263
「今日はライ君のためにお弁当作ってきたゃった」
273
ロールキャベツなんだけどね。とう?」
277
ミネナルウォーター
>>286 萌は文化卿、GJでした!
……え? どれか食べたことあるの?
唐辛子チョコは聞いたことがあるけど……喉が焼けそうになったと友人がいっていた。
生きろギアス発動するスザク、それほどまでに危険な料理なのか!?
恐るべし、セシルクッキング!
そしてそれを食べきったライもまたある意味恐るべし!
口調に関してはあぁ、起こってるんだなぁ、と納得出来ましたし、多用しなければよろしかったりするのではないでしょうか。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>288 誤字指摘ありがとうございます
申し訳ありませんが以下修正お願いします
>>263 「今日はライ君のためにお弁当作ってきたゃった」→「今日はライ君のためにお弁当作ってきちゃった」
>>273 ロールキャベツなんだけどね。とう?」→ ロールキャベツなんだけどね。どう?」
>>277 ミネナルウォーター → ミネラルウォーター
ちなみ実体験とはソーセージ以外全部ですよ
幼なじみの新料理開発に付き合わされた時に……(実話)
幼なじみ……。なんと甘美で羨ましい響き!
病人食でさらにダメ押しをされるわけですね、わかりますwww
萌は文化卿、たのしませていただきましたw
293 :
うにゃら…:2008/10/28(火) 11:19:02 ID:/ThhvG+T
アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜反省編
「会長っ、またかつぎましたねっ…」
僕はそう言うとミレイさんに詰め寄った。
「あははは…ごめんねぇ…」
さすがに僕がかなり怒っているのがわかるのだろう。
苦笑して誤魔化しているがすこし焦り気味のようだ。
「今日という今日は、反省してもらいますっ」
「あはははは…。勘弁してよぉ。お・ね・が・い…」
甘えたような口調で活路を見出そうとするミレイさん。
「駄目ですっ。そういう甘えた口調は、ナナリーとかがやったら考えますけど、ミレイさんじゃ却下」
バッサリ切り捨てる僕。
実は、かなりドギマギしているのだが、ここで弱みを見せると後々が大変である。
「ひどいーっ、差別だわ。ナナリーばっかりぃっっ」
芝居がかった調子で喋るとポーズまでとってたりする。
反省してませんね…本当に…。
無言でぎろりんと少し睨むと慌てて反省したポーズに変えるミレイさん。
「ナナリーは、ナナリーで、ミレイさんは、ミレイさんです。
差別じゃありません。区別です」
はっきりと言い切り、腕を組む。
するとどうしたのだろう。
急にミレイさんは俯いて何も反論してこない。
294 :
うにゃら…:2008/10/28(火) 11:20:32 ID:/ThhvG+T
「どうしたんですか?」
普段のミレイさんらしくない対応に、僕は言い過ぎたかと思ってしまう。
僕が顔を覗き込もうとしている前でそれはおこった。
右手を招き猫の手のようにくねくねと動かし、かわいくウインクして…
「うにゃらっ…」
今まで色気で押された事があったが、こういう攻撃は初めてだった。
僕は、普段のミレイさんからは想像できないかわいらしさに思わず動きを止めて見入ってしまう。
「ごめんね、ライ。反省してるわ。
だからもう行っていい?」
かわいらしくも甘ったるい甘え声で囁かれ、無意識のうちに僕はうなづいてしまう。
その瞬間、普段のミレイさんのモードに切り替わり、そそくさとその場を立ち去ろうとする。
僕は、はっと我に返って呼び止める。
「ち、ちょっと待ったーッ」
「えーっ…行っていいって聞いたら、うなづいたじゃないのっ…」
「うっ…」
言葉に詰まってしまう。
「そういう事で…じゃあね〜♪」
そう言うとミレイさんはその場を後にした。
僕は、ただその後姿を納得できない気持ちで見送るしかなかった。
くそぉーっ…アレは反則だよぉーーっ。
好きな女の子にあんな顔されたら、どうすればいいんだよぉ…。
僕は、悔しさと…そして、なぜか幸せ感に心が満たされるのを感じていた。
おわり
>>294 ゲリラ投下キタ━( ゜∀゜)━━!
ミレイさんかわええwww
>>294 GJです。ミレイさんはライを手玉にとるくらいでちょうど良いと思う。
>>294 うにゃら…卿、GJでした!
ギャップって凄いよね。
なんと言うか、こう、凄いよね。
というかナナリーがやったら考えるんだね、ライw
貴方の次の投下を全力で待っています!
水を差すようで悪いが、とりあえず問うか宣言と終了宣言は出すべきだと思うんだ。
テンプレにあることぐらいは最低限守ってほしいのだが。
299 :
298:2008/10/28(火) 19:56:11 ID:pLXKSuzZ
まあ分かると思うけど、「投下」宣言ね。
この人の作品は急に投下されるのが持ち味の一つだと思う。
それに、レス数も支援が必要なほどでもないからそんなに気にする必要はない気がする。
いきなりですが、ライの本名は何がいいと思いますか?いろんな職人さんが色々名付けていますが。
(…と次の投下までの話題をふってみる。)
ラインハルトとライディースしか思い出せないが、そんなに沢山あったか?
>>302 知ってるのは
ラインハルト・ライサンダー・ライゼルぐらいだ
ライディースなんてあったか?
正直なところ、そのまま「ライ」にしておいた方が一番無難なのではないだろうかと思わないでもない
ライル・デュランディでいいよ
>>301 「あなたの中でのライの本名は何ですか?」ってことにしたほうがいいと思う。
投下なかなかこないなぁー
308 :
快風:2008/10/28(火) 23:59:27 ID:hLsD+Rxn
0時に投下します。
10レス程になります。
専任騎士シリーズです。
309 :
快風:2008/10/29(水) 00:01:09 ID:hLsD+Rxn
行政特区日本。
それは口に出すのも憚られる忌まわしき名。
亡きユーフェミア皇女の”悪名”を轟かせる原因となった政策。
ブラックリベリオンの発端となった事件のきっかけである。
制圧を完了し、良い報告を伝えることができたと思ったのも束の間のこと。
本国のシュナイゼル殿下より通信が来た。
行政特区日本は失敗に終わり、百万人のイレブン、
いや、日本人を国外追放するという結果になった。
その結果だけを聞けば、何がどうなったのか、全く理解が出来ず、混乱した。
だが、詳しく事情を知れば、”また”ゼロにしてやられたと言うことだ。
そして、一連の流れについて不審に感じたことがいくつかあるのだ。
それは、スザクについてだ。
支援
311 :
対峙:2008/10/29(水) 00:04:31 ID:zdTbppuw
これはスザクをよく知らなければ成立しない賭けだったはず。
まず、過去に自分を捕縛した相手が、何故今回は見逃すことを了承すると思ったのか、だ。
通常ならばそんなことを考えもしないはず。
ましてや自らの存在を憎むスザクを。
次に、多くのゼロを前に制圧しようとする軍を、何故スザクが止めると確信できたのか。
これはまだなんとか理解できる。
彼のこれまでの行動を見ていればゼロならば予想はつくだろう、これは除外。
最後に、何故ゼロは、スザクが日本のためにブリタニア軍に属したのだと知っているのか。
いや、そうだと見抜いたのか。
これは彼をよほど知らなければ解らないはず。
……、いや、そんなはずはない。
余りの結末に動転しているのか?僕は…。
自らの考えを否定し、今後について考える。
これは完全に出し抜かれたこちらの負けだ。
支援!
313 :
対峙:2008/10/29(水) 00:06:36 ID:zdTbppuw
だが、こちらにもメリットもある。
不穏分子を一掃できたのだから、今後のエリア11は平定するだろう。
少なくとも表立った抵抗運動もないはずだ、今後は衛星エリアを目指すだけだろうし、
ナナリーもそうすべく努力していくだろう。
後は、中華連邦に渡った黒の騎士団。
反主流派と結託し、第一皇子と天子様の婚儀を防ぐであろう。
これは更に一波乱が待ちうける事になるだろう、護衛計画の見直しを考える必要が出てくる。
殿下のことだ、既に考えているであろう。
おそらくラウンズを召集するだろうから彼等を除いたメンバーの増員をせねばなるまい。
精鋭と新型の量産機を回してもらうように手配をカノンさんに頼もう。
やることは山ほどある、そう考えながら、全速前進で本国へと戻るのだった。
支援
315 :
対峙:2008/10/29(水) 00:08:11 ID:zdTbppuw
結局戻ったときには既に準備は整っており、すぐさま中華連邦へと出発となった。
ほとんどの事は通信で済ませたとはいえ、殿下とカノンさんに丸投げしてしまい申し訳なく思う。
しかし、このような情勢な以上事は迅速にせねばならない。
黒の騎士団が体勢を整える前に。
多少強引に日程を早めたと言うが、大分無理をしたのは予想できる。
中華連邦の大宦官たちをどう言い包めたのかを聞き、苦笑するしかない。
やはり、この御方は毎度の事ながら恐ろしく思う。
彼に比類するのは敵としてはゼロだけだろうな、と漠然と思った。
「それで、オデュッセウス殿下は?」
「部屋で御寛ぎになられてるわ、そう言えば貴方とも久しぶりに話したいとおっしゃってたわ」
カノンさんとお茶をしつつ、日程確認を行う。
オデュッセウス殿下は今何をしているのだろうと思い、口にしたらやぶ蛇だった。
彼の人柄は好ましいのだが、どうにも無防備で見てるこちらが不安になってしまう所が、
どうにも苦手意識をもってしまう。
そして、そのペースに載せられてしまうところも。
とても皇位を争うという皇族と言う感じがしないのだ。
一応皇位継承の最大のライバルの騎士なのだから、冷たい目で見られるのではないか、
と構えている此方のほうが馬鹿みたいに感じてしまう。
…いろいろな意味で恐ろしい御方だ。
支援!
317 :
対峙:2008/10/29(水) 00:09:03 ID:zdTbppuw
「まぁ、貴方は人好きのする子だものね。
殿下も貴方が騎士になってから楽しそうだし、ね。
…あの方は孤独な人ですもの、これからもよく仕えて欲しいと思ってるわ」
カノンさんが急に真剣な顔でこちらを見てくる。
…カノンさんの言いたいことは分かるつもりだ。
シュナイゼルという人は何でも出来すぎてしまい、他の人と共に歩めないのだと。
何をしても完璧にこなしてみせる、望まれることを全て演じられる人。
それは幸せなようで不幸なことだろう。
そして、哀しい事に彼がそう思っていない事がまた、哀しく思う。
だが、もしかしたら、皇位継承に積極的に動かないのは彼のささやかな抵抗なのではないか。
そうカノンさんは以前こっそりと僕に話した。
カノンさんからすれば、皇帝を目指すようさりげなく進めているようだから、
歯痒いようで、かといって、積極的に進めることができないのだろう。
僕もそれを知り、少しでも役に立てるよう頑張ると誓ったのだ。
「はい、僕も騎士に取り立てていただいた恩義のためにも、これからも頑張りますよ」
「ホント、いい子よね、ライは。私も負けてられないわね」
シュナイゼルを支える”武”と”文”の臣下は決意を新たにするのだった。
318 :
対峙:2008/10/29(水) 00:09:59 ID:zdTbppuw
中華連邦に着き、盛大な歓迎を受け、早速歓迎パーティーに出席する事となった。
そこでは既に一足早く到着していたラウンズたちが待っていた。
ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグ。
ナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイム。
ナイトオブセブン、枢木スザク。
3人も皇帝陛下が派遣したと言う事はかなり重要視しているということだろう。
そう言外に伝わってくる。
殿下への挨拶も終わり、それぞれがパーティーを楽しむこととなる。
そして、僕は懐かしい人との再会を果たす。
「だ〜れだ!!」
突然後ろより眼に手を当てられる。
気配は察知していたものの懐かしい感じがしていたためそのまま見過ごす。
「ミレイさんでしょう?ロイドさんから聞いてますからね。
だからきっとそうじゃないかと思ってましたよ」
手を外し、振り向く。
1年しか経ってないのにとても懐かしく思う。
支援
320 :
対峙:2008/10/29(水) 00:10:55 ID:zdTbppuw
「お久しぶりです、ミレイさん。ご無沙汰してます」
「本当よぅ、あなたったら、まったく連絡して来ないんだもの。
そしたら、いつの間にか皇族の騎士になってるし、本当にもう。
保護者には報告してくれたっていいんじゃないの?」
変わらないミレイさんの態度に嬉しく思う。
あの頃とは大分立ち位置が変わってしまったから、余計に思う。
だけれども、彼女との懐かしいやりとりがとても嬉しいのだ。
「すみません。いろいろと慌しくて。
なんか事後報告みたいで申し訳ないです」
「あはははは、別にいいわよ。元気そうで安心したわ。
ブラックリベリオンの時は負傷したって言うから心配したのよ?
けど、大活躍してるみたいだから情報には困らなかったのが救いかもね?」
「ははは、おかげさまで。生徒会の皆はどうですか?」
「うん、みんな元気よ。いつか顔を見せに来なさいよ?
いつだってあそこはあなたの居場所なんだからね」
これだから、この人には頭が上がらない。
「ミレイさん……。ありがとうございます」
だからこそ、自然と甘えてしまう。
支援!
322 :
対峙:2008/10/29(水) 00:13:03 ID:zdTbppuw
パーティにもちょっとしたハプニングが起こる。
ゼロの登場だった。
まさか、ここまで堂々とやってこられるとは…。
常に殿下の前を離れずに構える。
ゼロの傍のカレンを見て、彼女の方も僕を確認したのかきつく睨む。
彼女には色々と世話になったが、やはり、僕を許せないのだろうか。
もう戻らない日々を思う。
今や、僕は皇族騎士、彼女はゼロの騎士、覆すことのできない事実。
やりきれない思いもあるが、反面、覚悟もある。
軍人になったときから、迷いはない、そう自分に言い聞かせる。
…胸の奥がチクリと痛むのを、僕は無視した。
支援
324 :
対峙:2008/10/29(水) 00:16:17 ID:zdTbppuw
ゼロと殿下のチェス対決、そして、ニーナの乱入といった出来事。
ゼロの思考を読み取る殿下、これで彼の正体を探ることができるのか、
僕には殿下が何を確かめたかったのか、分からなかった。
そして、ニーナの狂気染みた行動。
それは僕とスザクにとっての忘れる事の出来ない後悔の記憶。
最後まで波乱ずくめのパーティであったが、流石のゼロもこの婚儀はどうしようもない。
もはや、誰にも止められないだろうと思っていた。
だが、そんな僕の考えを嘲笑うかのように事態は急変する。
「我は問う!天の声、地の叫び、人の心!!何をもってこの婚姻を中華連邦の意志とするか!!」
「すべての人民を代表し、我はこの婚姻に異議を唱える!!」
反主流派の大物、黎 星刻のクーデター、やはり出てきたのか、彼は。
衛兵を薙ぎ払い天子様の元へと駆ける星刻。
だが、突如国旗が落ち、天子様を包む。
そして、そこから”彼”が現れた。
支援!
326 :
対峙:2008/10/29(水) 00:18:49 ID:zdTbppuw
「感謝する、シンクー。君のおかげで、私も動きやすくなった」
ゼロの登場だ。
「それはどういう…」
戸惑う星刻、だが、
「動くな!!」
突如として天子様に銃を突きつけるゼロ。
「花嫁はこの私が貰いうける。」
それはこの上ない脅しであり、もはやその行為だけで誰も動けない。
「この外道が!!!」
「おぅや、そうかい??フハハハハハハハハ!!!!」
厳粛な婚儀は二転三転し、”主役交代”となってしまった。
これが中華連邦での争乱の幕開けとなった発端である。
中華連邦内での内乱、そしてそれにつけ込む黒の騎士団とブリタニア。
今、新たなる戦いの火蓋がきって落とされる。
この戦いが僕にとって一つの転機となることを、
このときの僕は知る由もなかった。
支援
支援
予告レス数からして投下終わってるのかな
猿?
投下終わっているのなら、おわりぐらい入れたらいいのに。
ゲリラ投下でも、最後には入れているし…。
猿なら、ご愁傷様です。
331 :
快風:2008/10/29(水) 01:20:08 ID:zdTbppuw
以上です。
サルに捕まってしまいました。
投下宣言してからすぐでスミマセン。
今回の中華編は、冒頭部はどうしてもライが傍観者になってしまうなぁ、
と思いつつもこのような形になりました。
次回はR2序盤最大の戦闘なのでオリジナル色を出せていけたらいいと思います。
感想ご意見お待ちしております。
ではまた次回に。
>>331 快風卿、GJでした!
ウー様に癒される……
ミレイとの再会、自然にライと接する様子にライも安堵を覚えますか。
次の話においてどのような色を見せていただけるか期待しています!
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
>>300 些細なしてきでは歩けど、持ち味の一言で容認するならテンプレなんて必要なくなるんじゃないのか?
334 :
333:2008/10/29(水) 11:18:33 ID:PxuH7QVh
ぐは、なんてしょぼい変換ミスを…
「してきでは歩けど」→「指摘ではあるけど」
>>331 gjでした
珍しい色を出しつつも、物語の進行に違和感を抱かせない文章力は見事です
今後もこの設定を生かしたオリジナル色を期待させていただきます
>>333 それと、わざわざ蒸し返して問題提起するのなら、それにプラスして直前のSSに感想なども書いてみては如何でしょうか?
指摘がもっともなものだとしても、SSスレでSSに感想を書かずに自分の意見ばかり書き込むのでは、印象はあまり良くないと思います
>>331 GJです。珍しいシュナイゼルの騎士という設定のこのシリーズ、毎回楽しみにしてます。
カノンに可愛がられるライという構図がいいなあw
次回のご投下をお待ちしてます。
>>333 貴方の指摘に対して、
>>300で職人さんへの擁護が付いた後、
他の人から言及が無いってことは特に気にすることでもないと受け取られてるんだと思うんだけど。
だったらテンプレはいらないだろって、些か視野が狭くないかい?
>>337 >>333が言いたいことは以前テンプレつけるつけないで荒れかけ
それでせっかく職人さんたちが気を使ってテンプレつけてくれるようになったのに
作風といっても例外を作ってしまえばまた荒れる元にもなる。
なによりせっかく短編であってもテンプレをきちんとつけるようにしている
職人さんたちに悪いということじゃないのかな?
俺の勝手な解釈だから気に触ったらスマン
投下終了の合図がサルに邪魔されてしまい、ご迷惑をおかけしました。
>>332 期待に応えられるようにしたいと思います。
>>335 そう言っていただけると安心します。
今回は割りと流す感じでしたので。
>>337 カノンとのやり取りは色々と気をつかいました。
一歩間違えればBLととられる可能性があるので…
今回は投下終了を告げることができずご迷惑おかけしました。
この場を借りてお詫び申し上げます。
>>337 一応職人と呼ばれる立場の俺の個人的意見を言わせてもらうと、ゲリラ投下は少し違和感があるな。
初めて見たときは「なんなのこれ?」と思ったな。目くじらたてるのもどうかと思って流したけど。
でもそれ以降俺はゲリラ投下は読む気がしないので読んでない。他の方はどうだか知らないが。
それと、前に投下された作品に感想もつけないで「投下まだかな」とか言っている人がいるのも書く立場としては寂しい気分になるね。
>>336さんも同じようなことを言ってくれているけど、短くいのでいいから感想を付けてあげて欲しいな。最近特に目に付くようになったから。
なんか愚痴みたいになってしまったな。投下したい職人の方がいたら遠慮なくどうぞ。
ゲリラSSの最たる存在>THREADシリーズ
342 :
333:2008/10/29(水) 14:34:36 ID:z5JScLsM
感想がどうこう言われたので言わせてもらうと、俺も
>>340と同じ理由でゲリラ投下作品は初投下のとき以外はスルーしてるので
感想はつけられません。
それと
>>338の言うようにそれが作風だ持ち味だと言って簡単に例外を認めてしまえば、開き直って堂々とテンプレ無視する職人だって出てくるかもしれないと思ったのであえて指摘させてもらいました。
THREADシリーズに関してはほぼスレ立て直後という絶妙なタイミングで投下されて内容はもとより、
存在そのものがネタとして成立してたから気にならなかった。
あれはよくてこれはだめ、とは自分でも身勝手な言い分だとは思うけどね。
気分を害した人も多いようなんでこの辺でやめときます。
すいませんでした。
>>342 THREDシリーズに関して"は"と言ってる時点で、例外を認めてる
矛盾してるぞ
少なくとも、ゲリラ投下を指摘出来る立場にはいないわ
そもそもテンプレ無視してまでゲリラ投下するメリットって何?
迷惑かける事はあってもいい事なんてなさそうなんだけど。
>>338 >>342 うん。言いたいことは理解してるつもり。確かにテンプレ守らない職人さんばっかりになるのは
駄目だと思う。各職人さんの意識でもって守らなきゃいけないのがテンプレだという認識ね。
んでもそれをギチギチに守らせようとするのは如何なものかってこと。
SSスレがたった当初からいる者だけど、ここのスレの成分の半分以上は優しさと大らかさでできてると思うんだよ。
俺からこの流れ始まってるな。ごめんよ、俺自身が空気悪くして。自重します。
そういえば、THREADシリーズは思いっきりテンプレ無視でした……
今さらですけどすみません。何か前例作っちゃったみたいで…
もっふーさんが責任を感じる必要は無いと思いますよ!
あのシリーズはみんな楽しみにしてると思うのでw
ぶっちゃけスレの流れを見て投下宣言する意味ないと思われてもしゃあないだろ
俺達だって24時間居るわけじゃないしゲリラ投下の人は過疎ってる時に投下してくれるし
確かにタイミングを誤ったら何これ?だけどさ
次からは一言下さいねでこの話は解決だろ
それなのに今後テンプレを守らない奴がとかメリットデメリットがとかお前らいちいち煩いよ
書き手が丁寧に投下・終了宣言しても支援(最近はそれすら少なめかな?)だけで感想はGJの一つも書かず、そのくせ投下待機中!とかの変なノリ作ったり、今みたいに蒸し返しの議論には熱心に参加されてたりする方が多いですね
こんな状態のスレでは、真面目にテンプレ遵守している方が馬鹿を見ている感じがして気分悪いですよ
上の書き込みにもあるように、ゲリラ投下の方に一言お願いするようにして、終わりではダメなんですか?
正直上の方でテンプレがどうのと変なタイミングと流れでグダグダ言っている人達よりも、テンプレ違反でもタイミングと流れを間違わずにスレを盛り上げてくれてるゲリラ投下の書き手さんを私は支持したいですね
>>348 見ていて気分を害したのは分かりますが、もうちょっと口調に気を付けましょうよ。
もっと荒れてくださいって言ってるようなもんですよ。これ以上荒れるのは勘弁してほしい……
>>349 こうして書きこんでる時点で同罪なんでしょうが、敢えて言いますね。
既に発端の333さんが謝罪してこの話題はもうよそうと言っていて、
333さんに意見を言った345さんも謝罪して同じように締めるような感じで終わらせてるのに、
何故貴方が書き込んだのかが私には理解できない。しかも挑発的ともとれる内容で。
慇懃無礼とまでは言いませんが、口調が丁寧なら何でも言っていいというわけではないでしょう。
結論はもう出てるじゃないですか。基本的にテンプレを遵守。
ゲリラ投下の方は
>>348さんも言っている通りこれ以後は注意してもらう。これが最善ではないかと思います。
あ、投下予定のある職人の方々は気にせずに投下してください。
>>350 大変申し訳ない
ついつい口調が荒れてしまった
職人の方もすいませんでした
こういうやりとりで優しい雰囲気に軌道修正できるところがこのスレの偉大なところだよなあ。不覚にもやりとりにちょっと感動してしまった。みんな大好きだw
このスレはこういうところが他とは違うんですよね。
自分も好きですよw
仲直り♪
保管庫の更新が止まってるな
またサボりぐせが出たか
スルー検定とNG設定が日課になりつつあるな
ところでコンプリやっと手に入れたよ。結構読み応えあった。中田さんのインタよかった!
「TALKIN’ REBELLION」はこれのおかげで全部読めたけど、一期の頃の「僕らの日々」ってどこかにまとまってないのかな?
誤爆……orz 申し訳ありません。
>>355 釣りと承知で言うが、トーマス卿は風邪を召して体が大変辛いらしい。
ちょっとぐらい待とうぜ
自己管理も満足に出来ないのか、救いようがないな
管理人交代も近いな
はいはいツンデレツンデレ。
>>358 寒くなり始めたしねぇ。
まあ、のんびり待てば良いさ。
で、代わりに君がトーマス卿以上の管理が出来るんだね。
すごいなあ尊敬するよ。
誤爆したし、お詫びも兼ねてコネタ投下するよ
「人を血液型で判断してはいけません」
最近、黒の騎士団では血液型診断が流行っている。
元を辿れば、井上が面白がって買ってきた「B型自分の説明書」だ。ちなみに過去には脳内メーカーや
動物占いも流行った。黒の騎士団は若い集まりなのだ。
「租界でも売れているとは言え、買うのは日本人がほとんどですよ。科学的根拠がない上、
半数以上がO型 であるブリタニア人の間ではあまり関心がもたれないようです」
長い顎と鬱陶しい前髪の諜報部員がそう嘯いたが、お茶とおやつを持ってきた咲世子以外は黙殺した。
「うるせぇよ! で、お前は何型なの?」
スルーできなかった玉城は好奇心に負けたのだろう。
「……ABですが、それが何か?」
それを聞いた途端、玉城は爆笑し、ディートハルトは眉間にますます深い皺を刻んだ。ディートハルトは
血液型占いなど微塵も信じていないが、日本人に毎度毎度このような反応をされるといい加減腹も立つというものだ。
そんな外野を気にすることなく、カレンは雑誌の相性占いの頁を真剣に読んでいた。
「私はB型だから……。ん? ライは?」
「僕? うーん、わからないな。この間、血液検査をしたから、ラクシャータなら知っているかもしれない」
「そっか。後で聞きに行こう」
カレンは雑誌の開いたまま、B型の項を指でなぞった。
「ねぇ、ゼロは?」
仮面の総司令についてカレンはふと思いついた。黒の騎士団は全員血液型の登録をしている。
いつ、どこで輸血が必要になる事態に巻き込まれるかわからないからだ。素性をすべて伏せている
ゼロも同様のはずだった。
「青い血でも流れてるんじゃねぇの?!」
玉城は自分で言って爆笑している。カレンはにこやかに宴会部長を拳で黙らせた。
「私は聞いたことがないけど、そうねぇ……」
おやつのひよこ饅頭を配りながら井上はちょっと考えるそぶりを見せた。
「まぁ、見てればだいたい分かるよな」
言いながらひよこを手のひらに乗せて、頭から食べるべきかお尻から食べるべきか、扇は悩んでいるようだ。
『ありゃ、A型でしょう』
全会一致の意見だった。
よっ待ってました!
以上です。1レスだけど、コネタだから。
コンプリート面白いよ。やっぱり設定があるとSS書きやすい。
>>367 乙でしたー!
脳内メーカーは宛にならん、と思いつつも何が出たのか気になるw
小ネタって良いよね、書きやすいし読んでて楽しいし。
貴方の次の投下を全力でお待ちしております!
>>367 GJです!
>長い顎と鬱陶しい前髪の諜報部員
ワロタw明確に特徴が出てて微笑ましい。平和な黒の騎士団、いいですなあ。
次回のご投下も心よりお待ちしてます。
長い顎に不覚にもワロタ
>>367 GJでした!
にこやかに玉城を殴るカレンの姿を容易に想像出来て笑ってしまいましたw
貴方の次の投下を楽しみにお待ちしております。
こないだの誕生日の表に血液型も入れてあるけど……いる?
1/ 1 マオ(17※) 不明
1/ 3 藤堂(38) A型
1/12 シュナイゼル(28) AB型
1/13 コーネリア(28) O型
1/28 天子(13) O型
2/ 2 ロイド(30) AB型
2/16 ディートハルト(32) AB型
3/ 3 玉城(25) A型
3/18 扇(27) O型
3/27 ライ(ロスカラ発売日)(?)不明
3/29 カレン(18) B型
4/19 ルキアーノ(?) AB型
6/ 1 ヴィレッタ(27) B型
カノン(28) O型
7/ 8 シャーリー(18) A型
7/10 スザク(18) O型
7/20 リヴァル(18) AB型
7/24 ミレイ(19) O型
8/ 2 ジェレミア(29) A型
8/ 4 シャルル(63) A型
V.V.(63) A型
8/10 神楽耶(15) B型
8/27 ニーナ(18) A型
9/ 1 千葉(30) O型
9/ 7 セシル(25) O型
10/11 ユーフェミア(16※) B型
10/19 ギルフォード(28) A型
10/25 ナナリー(15) AB型
ロロ(?) O型
10/26 アーニャ(15) AB型
11/ 9 咲世子(25) O型
11/17 ラクシャータ(29) B型
11/22 マリアンヌ(30※) B型
11/27 ジノ(17) B型
12/ 5 ルルーシュ(18) A型
12/23 ビスマルク(?) A型
12/31 星刻(24) A型
クロヴィス(24※)O型、バトレー(58)、片瀬(62※)、草壁(45※)、仙波(43)、卜部(36)、朝比奈(29)
C.C.はunknown
・血液型
A型:ブリ8/日2/中1/計11人
B型:ブリ5/日2/ 計7人
AB型:ブリ7/ 計7人
O型:ブリ7/日3/中1/計11人
カレンは日本人として集計しています。
・年齢
基準はR2。※印は享年を表しています。
平均年齢は28.525歳でした。千葉さんはご愁傷様です。
ありがとうございました。
参考にして何か書けるといいなぁ……
>>365 GJです!
なにげに真相(ブルーブラッド)に辿り着いてる玉城がすごい?
黙らされなければさらに真相に近付いたのか?
さて。
22:40より投下したいのですが、12レスほどを想定しております。
ご支援いただけますでしょうか。
支援しま
支援表明ありがとうございます。では、投下します。
タイトル:Intermezzi #3 〜ピンク・タイフーン〜
ジャンル:ギャグ
カップル:ライ×ナナリー
保管庫0029-0423「Intermezzi #2 〜ピンク・サイクロン〜」の続きです。
・純血派編と学園編を並行→新シナリオへ?という展開です。
・なのでライはルルーシュ=ゼロを知りません。
・ただしスタート地点でルルーシュは利用を考えクロヴィスを殺していません。
(公式記録上で死亡とされ本国へ帰っており、以後の展開は同じですが)
・両シナリオ終焉のギアスの暴走やテロリストの襲撃は無かったものとお考えください。
・アニメを含む公式ネタが若干入ってます。
ナナリーの「優しい世界」実現のため、ひたすら和平路線でルルーシュの復権を目標とする
ライのドタバタ風味の日常風景です。
既にジェレミアをルルーシュに引き合わせ、兄妹の騎士同士として活動する筈なのですが、
イレギュラー相次ぎ、純血派シナリオ本編以上にライの苦労が続いています……。
支援
ルルーシュについての要らない情報を聞いてしまってから、ジェレミア卿は全力で僕を避け続けている。
特派には全く寄り付かなくなった。こちらから訪ねても会ってくれない。
政庁の廊下で見つけて声をかけようとしたら、すごいスピードで逃げ切られた。無駄に体力のある人だ。
体力には体力、スザクに協力して貰って挟撃を試みたが「全力で見逃してくれ!」と叫ばれたスザクは、自分が原因という負い目のためあっさりスルーした。
しかもその後で「許しは請わないよ!」と僕の足止めまでした。違うな、間違っているぞスザク!
彼の誤解を解くためだって説明しただろう。その場でほだされて脊髄反射しないでくれ。
急ぎの用件ではないけれど、相談したい事もある。
だが、なにより本人が気がかりだ。ヴィレッタ卿によると、睡眠も食事もガタガタなのに碌に休みも取らず、軍務の後はどこかへ出歩いているという。
いつも元気が暴走気味で能天気とか傍若無人とかって言葉さえ似合う人だけど、さすがに心配になる。
もういっそ、スザクがルルーシュと初対面でいきなり殴った事でも聞かせればよかったか。
そしたらたぶん『なにぃぃぃ?枢木スザク、懺悔は今!』とか一刀両断しに来るだろうから、その隙に捕獲。
……と、待て待て。煮詰まってちょっとブラックになってないか、僕。
そんな中、特派の仕事が「しばらくお休み」と、セシルさんから連絡が入った。
おかしな言い方だなと思ったが、久々に学校に集中できるのが嬉しくて、僕は詳しい説明をお願いしなかった。
しとけば良かった、と心から思ったのは、朝のミーティングでこんな話が出てからだった。
「先生方に急な研修が入ったので、しばらくの間代理の先生が授業を行う」
「ぐはあっ」
壇上に並んだ「先生」たちを見て、僕の咽喉から変な音が出た。先回と同パターンだ。
げーほげほごほ、と咳に紛らせ誤魔化したが、確実に全員の注目を集めてしまったのは間違いない。
離れた場所でスザクが、気の毒そうに見ていた。知ってたならせめて警告しろ!『裏切りの騎士』って仇名するぞ!
支援
「ノネット・エニアグラムだ!体育を教える!よろしく!」
「アンドレアス・ダールトン。歴史の担当だ」
「ギルバート・G・P・ギルフォード、古典および文学史を教授する」
「ロイド・アスプルンドです。科学を担当することになります」
「ヴィレッタ・ヌゥ。選択コースで家庭科を指導する」
「ジェレミア・ゴットバルト……数学、だ」
そして続く衝撃というか、このラインナップを納得させる人物が登場した。
「ユフィ・エニアグラムです。家の事情で短期間だけですが、ご一緒に勉強することになりました」
銀髪のウイッグで変装したユーフェミア殿下が、にこにこと挨拶されている。
スザクが緊張と嬉しさという、相容れないはずの表情をいっぺんに浮かべて見守っていた。
そーかそーか。これが原因で、他のことはみんなお留守か。やっぱり君がルルーシュと初対面で以下略。
それにしても皇女殿下、どうやってあのボリュームを短かめのウイッグに収めているのだろう。
な〜んて事を考えている余裕は、無かった。
ミーティングが終わると「先生」たちが一斉にやってきて、僕を空き教室へ拉致した。
「いや〜、新鮮だな!あ、姫様は私の妹設定だから微妙な演技をするように!」
「貴様もこの学校に居るとは好都合だ、よろしく頼むぞ」
「理解していると思うが、これは極秘任務だ。協力してくれ」
「お・め・で・とぉ〜☆君はスザク君と一緒に巻き込まれ決定だよ?」
「ええと、その、なんだ。いろいろ頑張ろう」
「……」
ジェレミア卿が何も言わないので、みんな怪訝な顔で彼を見た。
が、すぐに僕に向き直ると、学校の設備だの位置関係だの生徒の交友状況だの、熱心に訊きはじめた。特に前半三人が目の前にひしめくのは強烈このうえない。
ジェレミア卿!助けて!お願い!せめて援護を!
僕は必死に目で訴えたが、彼は窓の外のどこか遠くをぼ〜っと見ていた。
確実にダメージが悪化してる?どうにかしないと、この先ずっとこんな調子かもしれない。
支援
しかし、この顔ぶれがここに居るってことは、政庁はどうなってるんですか。
コーネリア総督閣下、また本陣が手薄です!
さすがにここまでイレギュラーが続くと、僕もプレッシャーに耐えかねて、癒しが欲しくなってきた。
……この時間だと、生徒会室周辺に居る可能性が高い。
……しかし普通に行くと戻りが遅れて「先生」方の誰かにチェックされかねない。
という訳で窓から窓へ覗いていくと、僕の姫君は二階の資料庫で一人、点訳本を読んでいた。
窓の下枠に掴まり彼女に近いところへと平行移動する。この方法なら、秘密のために彼女の手を握れないジレンマも生じない。我ながら名案だ。
「ナナリー」
「ライさん」
姫君が僕の声に振り向く。いとけなさの残る無垢な笑顔が最高に愛らし、いっ!
「……ライさん?」
「ご、ごめん、一回落ちた」
「おかしなライさん。チャットじゃないんですよ?」
物理的に落ちたんだけどね。二階の窓から。
「ルルーシュも言うと思うけど、代理の先生方に」
「気をつけて、高等部へは近付かないように。外出も控えるように……ですね」
「どうして……ああ、もう来たのか、ルルーシュ」
「はい、息せききっていらっしゃいました。そのあと5分ぐらい、ちゃんとお話ができなくて」
声がずいぶん低いところから聞こえたんです、と彼女はくすりと笑った。床でへたばってたな、ルルーシュ。
「ライさんは、先生方の他にも何かご心配なのですか」
「どうして?」
「そんなお声に思えて」
いつもながら、彼女の耳や感覚は失われた視力を補って余りある。
僕に向けた心もそこにあるから……というのは思い上がりかもしれないが。
支援
支援
誰か増援頼む!
支援
「ジェレミア卿がね。その、落ち込んじゃってて」
「どうなさったのですか?」
「ええと、とても辛い話を聞いてしまって。それから僕を避けてるんだよ」
「そうですか。それは、気をつけて差し上げたほうがいいですね」
「でも捕まらないんだ」
「いえ、捉まえるのではなくて、心をかけて様子を見るだけになさったほうがいいと思うんです」
ナナリーはゆっくりと、選びながら言葉を繋ぐ。
「私には、大人の方とお会いする機会は先生方しかありませんが、皆さん色んなことを見聞きなさっています。
だから何かあった時には、私たちより沢山の答をお持ちなのではないでしょうか。
それに、大事なお友達のライさんを断りもせず避けるなんて、意味無くなさる方ではないのでは」
言われてみればその通りだ。
大人としてはかなり単純明快な人だけど、直接的な手段で解決できる保証も無いのに、年下の僕が保護者気取りで追い回してどうなるものでもない。
何もかもを己の手の内で即座に片付けようなんて、それこそ思い上がりだろう。
考え込んだ僕に、ナナリーは少し不安を覚えたらしい。
「あ……私、生意気……ですね」
「いや、君はいつも僕に答をくれるよ、ナナリー」
そもそも、ナナリーの小さな世界の幸せこそが、ルルーシュと僕の守るべき第一のものだ。
その世界の中心が、窓辺で柔らかな陽射しを浴びて微笑んでいることをまず大事にしよう。
今この瞬間、全ての答はここにある。
両手を差し伸べて届くところに。
……ほんとに差し伸べるとまた落ちるから、今はしないが。
支援
支援
支援
支援
「ライさん」
花びらのような唇が僕の名前を呼ぶ。
「ジェレミア卿がお辛くてライさんを避けるということは、お兄様の事なのですか」
あ。
「お話してくださらないんですね。それはライさんにも……いいえ、私にも悲しいお話なのですね」
しまった。作戦に穴が!ナナリーがちょっと考えればバレるに決まってるじゃないか!
けれど言葉に詰まってしまった僕を察してくれたのだろう。
「きっと、お話の終わりは悲しくなくなります。ミレイさんの呪文、かけましょう!」
彼女は僕だけに届く声でそれを唱え、いつものように話題を変えてくれた。
「そうそう。クッキー、召し上がりませんか。咲世子さんと一緒に焼いたんです」
可愛くラッピングされた包みが取り出される。僕が教えた桜の折り紙で飾ってある。
「甘いもので、ちょっぴりでもお気持ちが癒されると嬉しいです」
ナナリー。この状況で、絶対に欲しいものが目の前にって。これは、僕の罰?
って、スザク向きの台詞のような気がするが、たとえどうあろうと、断るなんて問題外だ!
「あ、り、がとう、貰うよ」
僕はぎりぎりとにじり上がって片腕だけで体重を支え空いた手を伸ばし、何とか受け取った。
「お口に合えばいいのですが……ライさん?なんだか呼吸が変のような」
「そ、そんなこと、無いよ、ナナ、リー」
窓枠に片手懸垂状態ぐらいで息切れだなんて、みっともなくて言えない。
いや待てよ、この状況をナナリーが後でルルーシュに話したら、彼にはバレるのか。
ふ、まあいい。君が床と仲良くした事と引き分けにしてやろう!
脳内で宣言していると、部屋にニーナが入ってきた。
らしくもないと言っては悪いが、頬を上気させ足取りも軽い。
しかし、ここで驚かせたら、いつかのようにまた悲鳴を上げられるに違いない。
「それじゃ、ナナリー!」
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リロードしたんだ信じてくれ
支援
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>>395 おのれ…ちょっと可愛いとか思っちまったじゃねえかw
手を離し、今度の着地はしっかり決めると、背後で声がした。
「何してるんですか」
いつ来たのか、転入生のロロがすぐ傍に立っていた。
バルコニーの逢瀬……には見えなかったか。ちょっと残念。しかしロロは続けて言った。
「窓から見えた人、ライ先輩の彼女ですか」
「え、そんな、恋人だなんて付き合ってるだなんて相思相愛だなんて!」
「そこまで言ってませんよ、僕」
言ってくれてもいいのに。
とりあえずクラブハウスに一緒に住んでる遠縁の親戚でもあるんだと彼には説明する。僕の血液から調べたデータによれば、あながち嘘でもないが。
「そうだ、クッキー食べるか?」
「彼女から貰ったのに、いいんですか?」
「嬉しいことは分けると人数分嬉しくなるって、前に彼女本人がね」
「へえ」
間を空けてから「いい人ですね」と言葉が続く。なにか何処かで覚えがある、変な感触だ。
「美味しい」
今度は妙にしみじみと呟いてる。お茶も欲しい、とか続きそうだ。さっきの違和感は僕の気のせいなのだろうか?
「だろ。ところで同じクラスなのに『先輩』っておかしくないか?」
「僕、年下だから」
「そんなの気にするな。ただのライでいい。さ、授業に行こう、ロロ!」
次の時間はちょうど数学で、ナナリーの言うとおりジェレミア卿の様子を見ることができた。
とりあえず授業に問題は無い。以前、先生に向いてると思ったけど、教え方は上手だし根は親切な人だ。
いつものようにやたら勢い良くないのも、知らない人には好印象だろう。僕にはやっぱり心配の種だが。
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ただ、ルルーシュを見て顔を赤くしてたという噂があり、シャーリーのルームメイトのソフィとその仲間たちが熱弁をふるい出した。
「間違いないわ!あれは一目惚れしたのよ!でもって、あのS攻めっぽいほうのメガネの先生が嫉妬するの!」
S何だって?それってギルフォード卿のことか?
「設定メモしないと」
「設定って、何の?」
思わず訊くと顔も上げずに「どーじんし」という答が返って来た。すごい集中力で何かがりがり書きなぐっている。
深く追求すると怖そうな雰囲気なので、僕はそこで撤収した。
願わくば、話が大きくなりませんように。
だがそう思った端から、当のギルフォード卿が休み時間にジェレミア卿を問い詰めにかかった。
「最近ますます挙動不審ではないか、オレンジ君」
今この場では、貴方のほうが不審です、ギルフォード卿。
庭の木陰で人目をはばかる風情ありありの密談というのはどうかと思います。
しかも話題の男性二人の片方が、もう一方を木の幹に押し付けんばかりに迫ってるというのは。
あっちの校舎の窓で女の子集団が目をキラキラさせて見つめてます。僕は知りませんからね。
「ご命令どおり、教師らしく授業をしているではないですか。大概にして戴きたい」
校舎の陰から見ていても、溜息まじりに応じるジェレミア卿は相変わらず元気が無い。
「ここでの話ではない。最近とみに貴族社会での交際に熱心と聞いたのだよ、オレンジ君。以前は社交に関心が無いどころか避けていたそうだが?」
NGワード「オレンジ」を連発するギルフォード卿。だがジェレミア卿は表情でさえ反応しない。
「埒も無い疑惑のおかげで暇を持て余しただけです。そんな者を追跡調査とは、貴公も存外お暇なのですか」
「総督閣下の統治に障害、いや汚点となり得るものがあるなら排除したいだけだ。それこそ全力でな」
周囲は明るい陽射しに照らされているのに、この一角は氷点下だ。
止めに入りたいが、僕ではちょっと役者不足だ。若輩に庇い立てされたなどと、却ってジェレミア卿には不名誉になりかねない。
だが、流石にこれは放っておきたくない。弱り目に強烈な祟り目では気の毒すぎる。
どうしようか、と思った時。
支援
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「ごきげんよう、ギルフォード!ときに、男色に目覚めたと聞いたが本当か?」
あまりにもあけすけな問いかけと共に、ノネットさんが現れた。
「「な」」
ギルフォード卿は呆然とノネットさんを見つめ、ジェレミア卿は超高速で彼から後ずさった。
「何を仰るのです、エニアグラム卿!」
「女生徒が噂をしていた。ギルフォード先生はジェレミア先生をず〜っとキツ〜い眼で見つめてる、アヤシ〜イとさ」
かなりソフトに言い換えてあったが、それでも衝撃はかなりのものだったらしい。
ギルフォード卿が言葉を無くして口をぱくぱくさせてるところなんて初めて見た。そこへ情け容赦無い追い討ちがかかる。
「思えばコーネリア殿下一筋の貴公がかりそめにも他の女と、とは考えにくい。だから浮気は男と!うん、道理だ!」
「納得しないで下さい!」
ギルフォード卿はノネットさんの大声をかき消すように声を張り上げた。
「君も否定しろ、オレンジ君!な、なぜ逃げる!」
「よよよ寄らないで戴きたいっ」
「おっ、逃げたくなるような事があったのか?聞かせろ聞かせろ!」
ノネットさんは傍目にもうきうきとジェレミア卿に向き直る。ギルフォード卿が割って入る。
「そんな馬鹿……し、失礼しました、その、有り得ない事を、学生の戯言から想像されるなど!」
「いやいや、素性を知らないのにずいぶんリアルに描かれていてなあ!悪い虫がついたらイケナイ折檻をするという話だった。したのか?」
「何です?良家の子女がそのような、はしたないというか、みだらがましい妄想を?」
「いや〜、すごいぞ!いまどきの娘たちは!」
「そ、そんな!よもやユーフェミア殿下のお耳にも!殿下から姫様に?誤解です姫様ぁっ!」
何か、違うスイッチが入ったらしい彼は、猛スピードで駆け去った。たぶんユーフェミア殿下が汚染されないように見張るつもりだろう。
それにしても、面白い反応だ。彼の違う一面を知ってしまった。特に知りたくなかったが。
「いつもながら愉快な奴だ!そうそう、これは貸しにしておくよ、ライ!」
いつの間に手に入れたのか、それよりいつから僕に気付いていたのか。
通り過ぎざま例の「どーじんし」で僕の頭をぽふぽふ叩き、ノネットさんは軽快に去っていった。
やれやれ、どんな返礼を期待されてるやら。ま、とりあえず助かった。
支援
支援
支援
この場にトーマス卿がいないのが悔やまれる
あの方的に大好きな展開だったろうにw
「ジェレミア卿、逃げないでくださいね」
「う」
ようやく話ができそうだ。
改めて見ると、少々やつれ気味だ。身なりには寸分の隙も無いけど、表情は翳りがちで目は伏せたまま。
これがあの女の子たちに弱者(っていうのと違うのか?)認定された要因か。
ギャラリーの目の届かない図書館の方へ一緒に歩きながら、僕は外堀から埋めにかかった。
「そもそも、どうして僕から逃げたんですか」
「君を見るたび、殿下のお姿を思い出すのだ。あのように華奢であらせられるのは、ご幼少のみぎりの食生活のためかと思うと……お、おお、おいた、わし……くううぅっ」
泣けちゃうんですか。確かにこれは、政庁周辺でやっちゃ困るな。あそこに「どーじんし」趣味の人がいたら、僕らはどう見られるやら。
「確かに僕ほど背丈はないけど、標準より下ってわけじゃないですよ」
そもそも、この人を含めてブリタニア軍にはやたらでっかい人が多いと思う。彼らから見たら、僕だってチビで痩せっぽちの部類だ。
「体力が無いのは極端にインドア派だからだし」
「人目を忍ぶお暮しのせいで、そのような……ううっ」
「性格ですってば」
大概の事は無駄に全力で前向き判断なのに、ルルーシュの事はそうできないのか。まあ、聞いた内容が悲惨な子供時代だから仕方ないが。
しかし、こんな調子で話していたら、次は僕らが「どーじんし」のネタになる。それは措いても目立ちすぎだ。
誤解について僕からルルーシュに伝えましょうかと提案すると、彼は変装のつもりらしい伊達メガネを外し目を擦りつつ拒絶した。
「いや、これは君に頼る事ではない。まずは拝謁しお詫び申し上げなくてはならぬ」
「謝ることなんか無いですよ。ルルーシュだって気にしてないし」
「そうはいかん。君を信用せぬわけではないが、人づてに済ませることではない。無礼は無礼だ。誠心誠意、謝罪せねば」
確かにそうか。直接話さなくては相手の気持ちなど量れない。
言葉が無くても許される関係だろうと、蔑ろにしてはいけない。自己満足ではなく、相手に対する思いの問題だ。
……ルルーシュがなおざりにしがちな事なんだよなあ、これ。彼の場合は諦めが良すぎて。
支援
「過ぎたことはどうにも出来ぬ。だがそれを言い訳にしてはならんのだ。まして今からでも補える事があるならば」
「全力で?」
うむ、と彼は当然のように頷いた。
「だったら、もっと早く僕に話してくださっても」
「幾つか避けられない用向きがあってな」
「もしかして、さっきギルフォード卿が言われてた社交の類ですか?」
「聞いていたのか」
いずれ交渉ごとをもって地歩を固めるのに、貴族というのは概ね厄介極まりない相手だと彼は言った。
「自分もその階級に属していながら言うのは不本意だが、も、ももも」
「もも?」オレンジの次は桃?
「もの凄くイライラするのだぁっ!」
「耳元で叫ばないでくださいっ」
「すまん。だが2時間もかけて時候の挨拶だけの、空疎そのものの会話をするような人種なのだぞ」
冗談めかして口にしたが、そんな事は氷山の一角で、もっと始末の悪い、うんざりするような事もあるだろう。
何故か分からないが、僕にはそれを容易に想像することができた。
そして彼が、そういう人々に立ち混じって本国の動静を探っていたのだと、ここしばらくの事がようやく腑に落ちたのだった。
基本が直線の武断傾向の人には、ストレスなんてものじゃないだろう。やつれもするか。
「しかし、ギルフォード卿に目をつけられたのは危険では?」
「なに、構わん。どうせ私は大した事はしておらんのだ」
「でも情報は収集されてますよね?前にも、第8皇子様の取巻きが第2皇子様に含むところ在り、とかって」
「秘訣があるのだよ、ライ卿」
分かるか?と言いたげに橙色の瞳が僕を見下ろす。先生モードだ。
しばし考えて、僕は答える。
「黙っていること、でしょうか」
「ご明察」
支援
支援
支援
これと狙った相手に水を向け、礼を失しない程度に黙っている。向こうにこちらを取り込む意図があれば勝手に何くれと話したがるものだ。
思わせぶりに対応すれば、相手によってはさらに口を滑らせる。閉鎖社会に生きている人間にありがちな、視野の狭さからくる反応だ。
僕はそういう社会に居たのだろうか?そんな場での駆け引きも、まるで経験を重ねたように理解できた。逆に、ジェレミア卿にそれが出来ることに驚いたくらいだ。
「後ろ暗いところがあると思わせれば、実に効果的だな」
嘆息めいた言葉が、僕の疑問に答を返す。
「皮肉なもので、例の疑惑が却って役立っている。殿下のお為になると思えば、ゼロに感謝せねばならんか」
信じて欲しい人々にさんざん疑われたそうなのに、そんな風に言えるのか。
「ジェレミア卿。貴方って、どこまでも前向きな人ですね」
「当然だ。いずれこれらのご報告も兼ねて殿下にお目通り願うべく、その折は君に取次ぎを頼むつもりだったのだが……まさか任務でこのような事になろうとは」
そこでまた彼はがっくりと肩を落とした。
「好機の筈なのに、人目が多すぎて、迂闊に殿下に近づけんのだ!」
「夜、こっそりクラブハウスに行くのはどうですか」
「あのような噂の立つ環境で、誰かに見られたらどうする!私はいいが、殿下の名誉が!」
「クラブハウスには僕も住んでます。お連れしますから」
「あ、それならいいな」
そ、即決?
「いいんですか。僕の名誉はどうなっても」
「そう言うな。君とてナナリー様とこのような事態になったら困惑するだろうが」
「それはまあ、お察ししますけど」
確かに、ナナリーはルルーシュが頑張ったおかげで野草なんか食べてない。
彼女がそんな苦労をしてたら僕は、純血派結成どころじゃなく、イレヴン殲滅大作戦に乗り出したくなるかもしれない。
とりあえず過去は過去とし(きれてないが)「今」のルルーシュを案じてるだけ、ジェレミア卿のほうが大人ってことか。いろいろ不本意だけど。
支援
支援
「もっとも君の場合、ナナリー様については別問題だな」
「どういう意味ですか?」
「気付いていないのか。君、ナナリー様の話題になるたびに表情が変わるのだが」
「え、え?えええ?どんな顔してるんです、僕?」
「……教えてやらん」
ジェレミア卿はやっといつものように笑って僕の頭をがしがしと撫で、では後でと去っていった。
大人って、ずるい。
ちょっと年齢相応な思いをかみしめつつ、僕は教室へ戻った。
ところで、この特別期間中、ルルーシュは可能な限りサボってサボってサボりまくることにしたらしい。
「特区の時の独走を反省したくせに、今度は相談しておいて見切り発進か!もう知らんからな、ユフィ!」
以上です。
猿恐怖症のため、いささかスローテンポになりました。
ご支援下さいました皆様、どうもありがとうございました!
GJ! この長さでギャグのバランスが抜群すぎる……
あとさ、オレンジとかどうでも良くなるほど、ナナリーがカワイイ(ぁ
つまりもう一度……GJ!!
>>418 GJGJ!!!! 今回も面白かった!
ジェレミアがほんとーに駄目な大人なのに、〆るところは〆るのでちょっと格好良く見えた!
「どーじんし」が色々な意味で怖すぎるww 読んだんですかノネットさんwww
あと、ギルフォードの切り替わりがww
あーおもしろかったー!
次回の投下も楽しみにしています!
ギルとジェレのやりとりのところで吹いたw
絶妙ですなあ、チンポといいギャグといい。次回の投下を全力で待ってます!
>>418 銀鰻卿、GJでした!
スザクとルルーシュの出会いを話せばジェレミア卿はマジでそんなことしそうだwww
というか光景が脳内で再生されたぜ!
先生ズのインパクトがヤバいwww
そして頑張りすぎだwwwライwww
ナナリーが、ナナリーの可愛さが凄まじいレヴェルだ!
ロロに対してのろけすぎだwww
当たり前のようにオレンジと呼ばれても動じないジェレミア卿が素敵w
あぁ、素晴らしいSSをありがとう!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>418 なるほど、いいセンスだ。貴公はギャグのさじ加減が絶妙だと思うのです。
GJ!
>>421 ネタか?打ち間違いか?
>>418 とても面白かったです。
しかし…BL好きな人にはたまらないカップリングですなwww
ジェレ×ギルとは…。
それとナナリーがかわいい。
とてもかわいい。
それ以外、言う事ないくらいかわいい。
あと、話のテンポとギャグのうまさが絶品だと思います。
次の投下を楽しみにお待ちしております。
あ…最後になりますけどGJでした。
425 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 00:40:42 ID:wV3s+CFp
ゲリラ投下の人です。
どうも、皆様、ご迷惑をおかけしました。
投下の時間帯が人の少なくなる時間帯が多いので、支援ナシでやろうと思ってああいう感じでやってました。
まことに申し訳ないです。
今後は、前レスと全部で何レスかという事などは入れるようにします。
ただ、終了は、文章の最後に「おわり」と入れますのでそれで勘弁してください。
支援なしを前提に全部で5レス程度で収まるようにしたいのでご理解の程、よろしくお願いいたします。
あと、よろしければ投下してよろしいでしょうか?
今回も本編は4レスと短いので支援は必要ないと思います。
必要なようなら支援するよ
428 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 01:07:25 ID:wV3s+CFp
すみません。
支援は大丈夫だと思います。
4レスで終了なので…。
では…投下いたします。
タイトルは「アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜看病編〜」。
カップリングは「ライ×ミレイ」です。
429 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 01:08:16 ID:wV3s+CFp
アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜看病編〜
「こんな季節に風邪だなんて…」
ミレイさんは、呆れ顔で僕のおでこに手をやって熱を測っている。
「ずびばせん…」
ぐったりとベッドに横たわる僕。
ほんと…情けない…。
「うーん…。まだ熱が下がってないわね。
しっかり養生するのよ…。薬は飲んだの?」
「ばい。ざっぎ飲みまじだ」
「あー…声もガラガラだし…」
心配そうに覗き込むミレイさん。
その視線がふとベッドの横にある見舞い物の山に向けられる。
「あらー、みんないろいろ置いていってくれたわねぇ…。
果物に、缶詰、お菓子に……エロ本?!」
その瞬間、ぼんやりした頭がぴくりと反応した。
しまったーっ…。
リヴァルが置いていったのを隠すの忘れてたっ。
どーっと脂汗が流れる。
「ふーんっ…巨乳派なんだぁ…、ライって…」
赤面しつつも興味津々でエロ本をめくるミレイさん。
確かに大きい方が好きですけど、ち、違うんです…それは、リヴァルがぁ…。
そう言おうと思っても身体も口もいう事を聞かない。
ただ、ぱくぱくと口が動いているだけである。
430 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 01:11:04 ID:wV3s+CFp
「うふふふ…、だったらうちの生徒会の女子はライの好みばっかりね。
シャーリーは美乳でそこそこ大きいし、カレンだってボリュームたっぷりだし…」
そしてニヤリと微笑むと寝ている僕の上に覆いかぶさるかのように迫ってくる。
やばい…。ただでさえ普段から胸に目が行くのに…こんな格好で迫られたら…完全に胸に目が釘付けになっちゃうというか…今、なってます。
ぼーっとした頭が、興奮してさらに熱を持ち、オーバーヒートしそうになっていく。
そして、迫りつつ、ゆっくりとミレイさんの口が言葉を発する。
「それとも、私のがいいのかしらん…」
その甘い誘惑にも似た言葉に、完全に理性のタガがハズレてしまう。
「うん…。ミレイさんのがいい…」
完全に思考が停止し、ミレイさんの問いかけに僕は自分の思いを言葉にしてしまう。
その言葉を聞いてミレイさんの表情がうれしそうなものにかわると僕の右手を握ってゆっくりと誘導する。
そして…手に柔らかい感触を感じたのを最後に僕の意識は途絶えた。
431 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 01:14:02 ID:wV3s+CFp
目に当たる日の光で目が覚めた。
どうやらもう朝になっており、気分がかなり楽になっていた。
薬が効いたのか、それともじっくり寝た(?)のがよかったのか熱も下がったようだ。
ゆっくりと身体を起こす。
何気なく隣を見ると…そこには…ベッドの中に入り込んで眠っているミレイさんの姿が…。
「な、なんでぇ…」
その声で目が覚めたのか、ミレイさんが眠気眼で起きてくる。
「ふぁ〜、おはよー、ライ。調子いいみたいでよかったわ」
「ミレイさん…なんで…」
一気に脂汗が流れ、意識を失うまでのやり取りが頭に浮かぶ。
「あー…、あの後…大変だったんだから…」
そう言うと恥じらいの表情で僕を見るミレイさん。
「あ……」
やばい…わからない…。
もしかして…やっちゃったんでしょうか…。
僕は…僕は…。
「責任取ってよね」
そう言われ、僕はうなづくしかなかった。
432 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 01:17:44 ID:wV3s+CFp
で3日後…。
僕は、ミレイさんに呼ばれ、買い物の荷物持ちをやらされていた。
「あのー…まだあるんですか?」
大量の荷物を持たされ、よろけながらおそるおそる聞いてみる。
「もちろんよ。責任とってくれるんでしょ?」
「はい…。それはもちろん…」
僕は、しぶしぶ従うしかない…。
で…なんでこんな事になったかというと…。
見舞いの後、本当はミレイさんは買い物に行く予定だったらしい。
ちゃんと荷物持ちにルルーシュを呼び出していたらしいからさすがというか準備がいいというか…。
ところが僕が見舞いの最中に気を失ったものだから、ミレイさんは大慌てで一晩中看病をしてくれていたらしいのだ。
本当、ありがたいことです。
でも、眠くなったからっていって僕のベッドに潜り込むのはやめてください。
心臓に悪すぎます。
そして、買い物の荷物持ちを責任もってやらされているというのが現状だったりするわけです。
出かける前にルルーシュにはえらい感謝されてしまいましたが、今だとなせ感謝されたかはよくわかります。
ええ、わかりますとも…。
まぁ…でも一晩中看病してもらったお礼だと思えばいいかな。
よし、今日はミレイさんにとことん付き合う事にしますか。
それに、好きな女の子に振り回されるのも悪い気はしないかな。
ミレイさんも嬉しそうだし…。
そう思いなおして僕は荷物をきちんと持ち直すとミレイさんの後をついていく。
でも…最後に感じたあのとても柔らかい感触はなんだったんだろう…。
ただ、それだけが気になってしょうがない…。
《おわり》
以上でおわりです。
>>433 GJ!ライがうらやましい。もしかして触ったのか、触っちゃったのか?
振り回して振り回されてのライとミレイさんの関係っていいね。
日付け的には昨日だけど、まあ色々議論は交わされましたが、あなたの作品を
楽しみにしている人間もいるので、これからの投下もお待ちしています。
>>433 うにゃら卿、GJでした!
何て言うか、リヴァル……見舞いにんなもん持ってくんなwww
それを赤面しながらもしっかりチェックするミレイさんは何かこう、熱いものが込み上げて来そうだw
思考が停止して思いをそのまま伝えるライ……それを受け入れるミレイさんは凄いと思う。
というかその状況で責任〜は……ねぇ?
一瞬思ったのは私だけでは無いと思いたい。
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
>>433 これはGJといわざるをえない。
しかしニーナをスルーしたのはミレイの優しさなのかw
そして投下予約をしたいと思います。
2:30くらいから全部あわせて10レスほど投下予定なので支援願います。
支援します。
ただし、途中で力尽きたらごめんなさい。
今夜はオールナイトだ!支援するぜ!
>>429 ライは大きいのが好きなんですか!ということは、ナナリ
トーマス卿、先日は誤字訂正ありがとうございました。
年下専門です、長編の続きを8レスほど投下します。
タイトルは「優しい世界で目覚めて 第十話 純情カレンな乙女」
・ギアス篇と学園篇の複合エンド後にしてR2終了後からの話
・ライは黒の騎士団入ってて学園篇エンドを迎えた、ルート的にはランペルージ兄妹メインに万遍なく頑張ったライ君
・ジャンル傾向はほのぼのしんみり系
・カップリングは現時点ではなし
・アフターに関しては情報が少ないため、自己解釈の要素を多分に含んでいます
しえん
支援
どうした
>>439!途中で切れてるぞ!応答しろ439!!
「カ―――!?」
叫びかけた声を両手で口ごと塞ぐ。
視界の片隅にとらえた赤毛の少女。
遠目からでもわかる、女性らしいメリハリのあるスタイルと活発そうな雰囲気。
黒の騎士団で幾度となく見たいわゆる『本性』バージョンの髪型。
それは、紛れもなく自分の友人にして戦友であり、そして相棒であった紅月カレンだ。
(あ、危なかった、もう少しで「カレン」って思い切り呼びかけるところだった……)
懐かしさを覚える余裕もなく、ライは冷や汗を流しながら思案する。
幸い、向こうがこちらに気づいている様子はない。
だが、彼女は何かを探しているのかしきりにきょろきょろと周囲を見回している。
このままではこちらに気づくのも時間の問題だろう。
室内ということもあり、帽子は脱いでいる状態のため今のライは素顔を晒しまくっている。
つまり、見られたら最後―――間違いなく気づかれるわけで。
(マズイ……ッ)
まさかこんなところで遭遇するとは思っても見なかったため、油断しすぎた。
そう悔やむも事態が好転するわけではない。
今はとにかくこの場を離れなければ。
「ジノ! 申し訳ないけど急用を思い出したから僕はこれで!」
「え? オ、オイ……」
「アーニャ、後でね!」
ぽん、とアーニャの肩をすれ違い様に軽く叩きつつライはフルスロットルでダッシュをかける。
背後からジノの困惑した声が届くが、構っている暇はなかった。
人の波を器用にすり抜けながら駆け抜けていく銀髪の少年は、あっという間にその身をラウンジから消していくのだった。
「……アイツ、やるなぁ」
突然置いていかれた形になったジノは、しかし不快そうな様子を見せずにむしろ感心した表情を浮かべていた。
元ラウンズという視点から見てもライの動きは機敏で無駄がない。
何より、あれだけの速度で走りながらも一人として接触者がいないのだ。
あれだけの体術が使えるとなると、それなりに名が通っているはずなのだが少なくともジノの記憶にハルトのデータはない。
支援
しえん
>>442 きっと、始まったので自重したのではないでしょうか…。
それか…
「ま、アーニャに聞けばいいか。おい、アー」
「見つけたわよ!!」
「ニャ?」
ぶつ切りになってしまったため、まるで猫のようになってしまった声でジノは首を傾げつつ振り向いた。
そこにいたのは、目を釣りあがらせて怒りに顔を紅潮させている一人の少女。
今夜のパーティのために、半ば強引に誘いをかけて連れて来た紅月カレンだった。
「何が、ニャ? よ!」
「お、今のニャ? は可愛かった。もう一回言ってくれないか」
「誰が言うか!」
気の弱い人間ならば腰を抜かし、子供であれば泣き出しそうな剣幕で怒鳴るカレン。
しかし、ジノはといえば柳に風とばかりににこやかな表情を崩さない。
「まったく……いきなり姿を消さないでよ!」
「いや、すまない。寂しい思いをさせてしまったね」
「してない!」
ガーッ! と吠えるように否定する赤毛の少女。
これで頬を赤く染めて表情に照れがあればツンデレの完成だが、その表情には怒りの赤みしかなかった。
デレなど一片の欠片もない完全なツンツン状態である。
だが、それも無理はないだろう。
久しぶりに友人たちと会えるからと仕方なく誘いを受けてみれば連れて来られたのは日本で最高級のホテル。
勿論部屋は別々だが、セレブな雰囲気を出しまくっている建物内は落ち着かないことこの上ない。
とにかく、荷物を置いて部屋でゆっくりしたい―――そう思っていたら隣にいたはずの青年がいつの間にか姿を消していた。
慌てて周囲を探してみるものの、恐るべき広さを誇る建物の中で人一人を探し出すのは容易ではない。
しかも、場所が場所だけに駆け回ったり大声を出して歩くわけにもいかなかったのだ。
これだけでも、カレンの苦労は推して知るべしといえるだろう。
「しかし、タイミングが悪かったな。是非会わせたいヤツがいたのに」
「会わせたいヤツ? それってそこにいるアーニャ・アールストレイム?」
ひょい、とカレンはジノの背後を覗き込み、そこにいる少女を視界に収める。
確かにお目にかかるには珍しい人物ではあるが、別に会うのは初めてではない。
支援
しえん
ジノやスザクと同じ元ラウンズ。
更に、同じ女性エースパイロットとして興味があった人物ではある。
しかし、ジノを仲介にした数度の邂逅と会話を経て、カレンはアーニャから興味を失っていた。
はっきり言って、絡みづらいのだ。
無口で無表情で、それでいて発言の内容は鋭く容赦がない。
元々、時間をかけずにその内面を理解することはほぼ不可能といっても良いのがアーニャという人間だ。
どちらかというと短気な傾向があるカレンが彼女を苦手になるのはそう時間がかかることではなかった。
(……ん?)
一応挨拶くらいはしておこう。
そう思い、口を開きかけたカレンの瞳が驚きに大きく見開かれた。
明らかにアーニャの様子がおかしい。
頬を薄く染め、いつもは無機質な瞳に熱がこもっているのがハッキリとわかる。
視線はふらふらと宙をさまよい、どこか夢を見ているような雰囲気だ。
(なんか、たまにシャーリーがこんな様子だったような……)
今は亡き友人を思い出しながら、カレンは珍獣を発見したような気分でジノへと振り返る。
金髪の青年はニヤニヤと笑いながら、軽く首を振るだけ。
放っておけ、ということなのだろう。
「どうしたの、この娘?」
「いや、ちょっとね。まあ、それはさておき……会わせたいヤツってのは別にいる。いや、いた」
「なによ、過去形なの?」
「ついさっきまでここにいたんだが、用事を思い出したとかでどこかに行ってしまったんでね」
「ふうん……」
気のない返事をしながらも、カレンはジノの視線を追うように上階へと続く階段のある廊下を見やる。
(もしかして……ううん、まさか、ね)
ジノを怒鳴りつける前に見た一瞬の光景。
そこには、銀の髪をなびかせながら駆ける少年の姿があった。
一瞬のことだったので見間違いだったのかもしれない。
けれども、あの時見えた後姿は確かに記憶にある一人の少年のもので。
支援
しえん
(ライ……)
幻のように自分達の前から消え去ってしまった少年の名前。
あの学園祭でのテロ事件が終結した際、彼は時を同じくして姿を消した。
記憶が戻り、自分の居場所に帰ったのではないか。
そう結論を下し、半ば捜索を諦めようとしたこともある。
だが、ふと一人になった時―――あるいはナイトメアでの戦闘中。
どうしても背中に意識を向けてしまうことがあった。
黒の騎士団の双璧と呼ばれ、ゼロの両腕と評され、互いに背中を預けあっていた二人。
思えば、あの頃が一番充実していたかもしれない。
危険はあったけれども、仲間内で和気藹々とにぎやかに笑いあい、少年との仲をからかわれていた遠いようで近い過去。
今はもう取り戻すことのできない、楽しかった日々。
(思えば、黒の騎士団の雰囲気がおかしくなったのって、ライがいなくなってからだったのよね)
新参でありながらも、多岐にわたる才能を発揮して組織に貢献していたライ。
序列としてのナンバー2は扇だったが、実質的な貢献度でいえば間違いなく彼が黒の騎士団の副リーダーだったといってよい。
そんな彼の突然の脱退は目に見える形で影響を及ぼしていた。
ゼロ―――ルルーシュはどこか焦りを見せるようになり、C.C.はふとたまに悲しそうな表情を見せ。
扇は頼りになる幹部の抜けた穴を塞ぐことができず、仲がよかった(かなり一方的なものだが)玉城はイラつくことが多くなり。
藤堂は彼に目をかけていたが故に落胆し、四聖剣も個人の差異こそあれども寂しそうな様子を見せていた。
ラクシャータやディートハルトは見た目には変化はなかったが、彼の能力を買っていたが故に時折愚痴を零すことがあった。
そんな中での特区日本の宣言、そしてブラックリベリオン。
あの頃から何度ライがここにいればと思ったことだろうか。
彼がもし姿を消すことなく、黒の騎士団に居続けてくれていれば。
自分の背中を守り続けてくれていたら、未来は変わっていたのではないか。
ルルーシュはあんなふうに死ぬことなく、もっと別の未来があったのではないか。
そう思ってしまうのだ。
彼とて全知全能の神ではない。
ライがいたところで、どうしようもない事態はあったことだろう。
だが、それでも思わずにはいられなかった。
どうして、私達の前から姿を消してしまったの―――と。
しえん
支援
「カレン、どうかしたのか?」
「え?」
「何かぼうっとしていたようだけど」
心配そうに顔を覗き込んでくるジノの顔が視界に映る。
カレンは反射的に不躾な男の顔を押しのけると、こほんと一つ咳をついた。
「で、どんな人なの? その会わせたかった人って」
「アーニャの彼氏」
「は?」
ぽかん。
そんな擬音がピッタリの間の抜けた表情でカレンは口を丸く開く。
目の前でぶつぶつと何事かを呟きながら自分の世界に入り込んでいるこの小柄な少女に、彼氏。
いや、別におかしくはない。
多少幼い外見ではあるが、美少女と評しても全く問題ない容姿に、儚げな雰囲気。
元がつくとはいえ、貴族でラウンズと肩書きも申し分ない。
性格的に難があるような気はするが、それを加味しても十分お釣りが来るであろう少女に恋人がいたところで何ら不思議はないだろう。
しかしである。
失礼は承知だが、ハッキリいってカレンにはこの少女の隣に立てる男の顔が全く思い浮かばなかった。
(この娘の、彼氏……)
成程、確かにそれは会ってみたい存在ではある。
包容力のある大人の男性か、はたまた彼女と同じく大層な変わり者か。
ついこの前までは世界最強の女パイロットをやっていたとはいえ、やはり年頃の女の子。
興味津々といった様子でカレンはジノに続きを促す。
「んー、髪は銀髪で見た目は美男子って言葉がピッタリな感じだったな。線は細そうだったが、身体は鍛えられているようだった」
「名前は?」
つい先程まで考えていた少年を連想させる形容に、少しドキリとしながらも問いを発する。
少しだけ早くなってきた気がする鼓動がやけに煩い。
自分は何を期待しているのだろうか。
カレンは我知らず身を乗り出しながら、ジノの言葉を待った。
支援
しえん
「確か……青月ハルトとか言っていたな」
「……そう」
自分で思っていたよりも重い落胆の声。
表情をジノに見られないように僅かに伏せつつ、カレンは自嘲した。
(そう、よね……そんなに都合のいいことが、あるはずないか)
もしかしたら、アーニャの彼氏というのはライではないか。
そんな突拍子もないことを思ってしまった自分に苦笑するカレン。
「ま、夜になれば会えるんじゃないか? 彼も今夜のパーティに参加するだろうし」
「そうね……じゃあ、その時を楽しみにしておくわ」
「しかし、コイツはいつまでこんな調子なんだ?」
呆れと驚きを半々に乗せた声音でジノは呟いた。
目線の先に居るアーニャは未だにトリップを続けている。
別に放置しておいたところで問題はないだろうが、確かにいい加減心配になってくるというものだ。
「うーむ、まさかアーニャのこんな姿が見れる日が来るとはな……」
「酷い言いようね。彼女だって女の子なんだから別におかしくはないんじゃない?」
「いや、そうなんだが……カレンと同じで、コイツも男っ気がなかったからなぁ」
「ちょっと、それってどういう意味?」
ギロリ、と目線で音を立てながらジノを睨む。
別に彼氏が欲しいというわけではないが、一人の乙女として流石に今の言いようは看過し難いものがあった。
「怒らないでくれよ。それに、カレンは全くといっていいほど男を寄せ付けようとしないじゃないか」
「誤解を招くような言い方をしないで。それに、全くってほどじゃないわ。現にこうしてあなたといるわけだし」
「おお、遂に私の愛が届い」
「てないから。誤解しないでね」
なんだ、と肩をすくませるジノは、態度とは裏腹に落胆の様子はない。
自分が一番カレンに近いのだという余裕の表れか、それとも単に鈍感なだけなのか。
恐らくは後者なのだろう、と思いつつカレンは溜息をついた。
「しかしあんまり男にツンケンした態度ばかりとっていると、困ったことになるんじゃないのか?」
「何がいいたいの?」
支援
しえん
ジロッとジノを睨みつつも、カレンにはその言葉に対する心当たりがあった。
戦争終結の後、黒の騎士団を抜け、学生に戻ったカレンは当然ごとく注目の的だった。
何せ彼女は黒の騎士団所属のエースパイロット、しかも最終決戦の折には枢木スザクの駆るランスロット・アルビオンを撃破している。
最終決戦までは一般人にはある程度秘匿されていた彼女の情報だが、今や彼女の名前を知らない人間は皆無に等しい。
ルルーシュによる反逆者の処刑の際、大々的に情報は公開されてしまっているのだからそれも無理はない。
しかも、普段のカレンは病弱設定だったため、おしとやかで儚げな薄幸の少女というイメージが強かった。
それが蓋を開けてみれば薄幸の少女はナイトメアを駆り、戦場で大暴れする戦乙女だったのである。
このギャップに注目しない人間がいないはずもなかった。
あっという間に彼女は学園のアイドル、否、英雄に祭り上げられ人気は沸騰。
元々いた「儚げな彼女が良い!」という一部の男子生徒を除いて、カレンはミレイ無き後の人望と人気を独り占めすることになったのであった。
しかし、当のカレン本人はそれをどこ吹く風とばかりに受け流し地を出しまくっていた。
戦争の荒波にもまれて神経が図太くなったといえばそれまでだが
そうしていれば周囲が勝手に失望して騒がしさも消えていくだろうという計算もあったのである。
が、彼女の計算はあえなく崩壊した。
確かに実物のカレンに引いた者もいたが、大多数―――特に下級生の女の子はそこがまたいい! と更なる人気の沸騰が起きたのだ。
ニーナを連想させる女子達にお姉さまと呼んでもいいですかと言われることは毎日のこと。
ラブレターの比率も何時の間にか男よりも女の子から貰うことが多くなっていた。
これで、毎日纏わりついてくるように構ってくるジノがいなければ真面目に貞操の危機すらありえただろう。
支援
(何度転校を考えたことか……)
自業自得といえなくもないが、それでもカレンは学園を去るという選択肢はとらなかった。
アッシュフォード学園には生徒会の皆との思い出がたくさん詰まっている。
今では昔の面子はリヴァルしか残っていない生徒会だが、黒の騎士団とは違った意味で大切な場所だ。
ミレイが指揮を執り、ルルーシュが溜息をつき、シャーリーが笑い、リヴァルがおどけ
ニーナがさりげなく鋭いツッコミを披露し、遊びに来たナナリーが微笑み。
そして―――ライが最初に見つけた居場所だったのだから。
「というか、カレンって今まで好きになった男はいないのか?」
「何よ突然」
「いや、ちょっと気になった。まさか本当に男に興味がないってわけじゃないんだろ?」
突然の質問に眉をひそめつつ、カレンは考えた。
しえん
支援
好きな異性、と問われれば最初に頭に浮かぶのは兄だ。
ブラコンと言われようが、優しくて強くて格好よかった紅月ナオト以上に素敵な男性などいない。
勿論、カレンとて常識はわきまえているので兄が回答の中から除外されるのはわかってはいるが。
次に浮かんできたのは仮面を被った救世主―――ゼロだ。
ただの弱小レジスタンス組織だった自分達を、黒の騎士団としてブリタニアと戦えるまでに育ててくれた彼は憧れの対象だった。
その正体がルルーシュと知るまでは、という期限付きではあったが。
他には、目の前にいる元ナイトオブスリーを初めとして、スザクや黎星刻といった美形にして能力のある男とはそれなりに関わりはあった。
ルルーシュとて、様々な感情に目を瞑れば十分優良物件の条件を満たしている。
しかし、そのことごとくを頭に思い浮かべてはバツをつけていく。
彼らは確かに良い男ではあるのだが、どこかピンと来るものがないのだ。
(……あ)
その時、カレンの脳裏に銀の色が流れた。
様々な男達を却下していき、最後に脳裏に残ったのは失踪した少年の姿。
背中を預けあった、かけがえのない相棒にして戦友。
他の誰よりもその友情を信じていた蒼の月下のパイロットの顔が、浮かぶ。
(な、なんでライの顔が……)
確かに親しくはあったし、仲をからかわれたこともある。
しかしそれはあくまで親切であり、カモフラージュであり、決して色っぽい要素は一つもなかったはず。
なのにどうしてだろうか。
今頃になってその頃のことを強く思い出してしまい、恥ずかしくなってしまう。
(ああもうっ、何よ今頃っ!)
自分はライに特別な感情はない、なかったはずだ。
きっと、先程それらしき人物が目に入ったからたまたま意識してしまっただけなのだ。
そう強引に自分の感情をまとめるカレンは、しかし数秒後にジノによって頬の赤みを指摘されることになるのであった。
(……まったく、今どこにいるのよ……ライ)
彼女は知らない。
ライが同じ建物の中にいるということを。
そして、彼が今危機の真っ只中にいることを。
支援
投下終了、支援感謝です。
今回はサブタイトル通りカレンのターン!
>>468 投下お疲れ様でした。
いやぁ、カレンの感情や思いの表現がいいですねぇ。
それに各キャラクターが生き生きとしていて、読んでいて楽しいです。
後、読みやすいのもあるかなぁ。
一気に読めちゃいますね。
私は、文法とかわかんないけど、いいなぁと思います。
続きがんばってください。
GJでした。
カレンが可愛い…!ジノとのやりとりもGJです。
続きが楽しみでたまらん!
カレンの影に隠れちゃってるけどアーニャもいい味出してるよねこれ
貴公の文は読みやすくてとっても気に入ってます。次も楽しみにしてますね
で、
>>439はどうしたの?
>>468 GJです!カレンがか、可愛い…!アーニャもさることながらカレンも素晴らしい。
罪な男ですなあ、ライは。これは修羅場を期待せずにはいられない。
次回のご投下も心からお待ちしてます。
オハヨウゴザイマシタ
>>468 年下専門卿、GJでした!
最初にライシールド21という言葉が浮かんだw
しかし一切喋って無いのに可愛さを振り撒くアーニャは反則だと思う。
カレンの心境も結構アレだね、うん。
平たく言うと可愛い……俺のボキャブラリーの無さに絶望orz
最後の一文が次回への興味をより大きくさせております!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちさせていただきます!
474 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 17:41:36 ID:OD5cMjKd
こんにちわ。
ゲリラ投下しに来ましたwww
タイトルは「アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜バイト編〜」で、カップリングは恒例の「ライ×ミレイ」です。
本レスは、4レスなので支援は必要ありません。
また、終了レスは入れないので、本レスの最後に《おわり》と入っていたらそこで投下終了となります。
ご注意ください。
475 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 17:43:17 ID:OD5cMjKd
アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜バイト編〜
「すみません、ミレイさん。もし時間があるようなら、僕のバイト先に来てもらえませんか?」
そんな電話がかかってきて、私は不思議に思いながらも必死なライの声から言われた場所に向かった。
そこは、ライがリヴァルの紹介で短期バイトとして入っているハンバーガーショップだった。
しかし、なんでいきなりバイトとか始めたんだろ?
そう思いつつ、お店の中に入る。
「いらっしゃいませ」
そう呼びかけられ、カウンターを見るとバイト服を着て笑顔でお客を向かいいれるライの姿があった。
さわやかそうなスマイルと元々の美形ぶりで一際目立っている。
カウンターfは3箇所あるのだが彼のところだけ列になっていた。
もちろん、並んでいるのは若い女性客ばかりである。
「あちゃー…」
思わずそう口から言葉が漏れる。
声をかけるかどうか迷っていたら、ライの方から気が付いたみたいだ。
指でそこで待っててというジェスチャー。
そして、テキパキとお客を裁いていく。
しかし、それは適当に対応して、ただ流しているわけではない。
実にうまく対応しており、お客様に尽くしている感じさえするほどだ。
中には赤面し、ぼーっとしたままライに見とれている人までいる。
ああ、ライ…結婚詐欺とかやったらすごい数の女性騙せそうだわ…とかそれを見ながら思ってしまう。
そして15分程度で列がなくなると、すぐに別の店員に変わり奥に引っ込む。
その鮮やかな手際は、ライ目当てに再度並ぼうとしていた女性客を煙に巻くほどであった。
うーん・・・確か…このバイト初めて3日目だと聞いたんだけど・・・どうみてもバイト歴が長いベテラン並だと思うのは気のせいかしら。
476 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 17:45:12 ID:OD5cMjKd
唖然としていると後ろから肩を指で突付かれる。
「お待たせ、ミレイさん」
私服に着替えたライが後ろに立っていた。
早い・・・。早替わりの術でも使ったかのようだ。
ライ・・・手品師にもなれそうよ・・・貴方は…。
「あ・・・うん、大丈夫よ。
でも話は出来れば別の場所でお願いできない?」
私は、呆気にとられながらもそう言った。
いい加減、ここから離れたかったのだ。
いくら神経図太いと自覚していても、あまりにも居心地悪すぎである。
だって、店内の女性客の敵意にも似た視線を全身に浴びているのだから…。
「あ、うん…」
そう言うと彼は店から出て、私を店の裏口に案内する。
「ミレイさん、申し訳ないけど僕の話に合わせて下さい。お願いします」
短くライがそうささやく。
私は、「なぜ?」と聞きたかったが、その疑問を飲み込んだ。
なぜなら、裏口には、女性店員ばかり8人ほどがこっちを見ていたから。
全員の視線がとてもきつい。
店内の女性客の敵意とは比べ物にならないほどの鋭さだ。
477 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 17:47:29 ID:OD5cMjKd
そんな彼女らの前にライは私を連れて行くとにこやかに微笑んで私を紹介した。
「僕の婚約者でミレイさんって言います。学校卒業したら結婚するんだ」
えーーーっ、聞いてないわよ、そんな事…。
そりゃ、私もそうなったらいいなぁとかちょっと思ったりした事あったけど、これはいきなりすぎるわよ…。
そんな事を考えてしまったけれど、彼女らのきつい敵意が私を舞い上がらせてはくれなかった。
そして、それでピンときた。
あー、さてはバイト先の女の子たちに言い寄られたな。
だから、私を恋人役にして諦めさせようとしてるのか…。
もう、本当にライは優し過ぎるんだから…。
私は、心の中で溜め息をひとつすると彼の作ったシナリオに合わせることにした。
ライ・・・、この借りは高いからね。
そう思いながら…。
「皆さん、こんにちわ。私、ライさんの婚約者のミレイ・アッシュフォードと言います。
彼がいつもお世話になってます」
華麗におしとやかにお嬢様らしく振舞う。
まぁ、こういう演技はお見合いで何度もやっているので手馴れたものだ。
もちろん、意味深に「婚約者」と「アッシュフォード」の部分を強調する事を忘れない。
まぁ、落ちぶれたとはいえアッシュフォード家の名声と権力は、ここエリア11ではそこそこ有名である。
もっとも、本国ではたいしたことは無いんだけどね。
どうやら、私の言っている意味がわかったようだ。
バイトの女の子たちの敵意が消えていく。
「ごめんね、こういうわけだから、付き合えないんだ。
ほんと、ごめんね」
ライがすかさずそう言って謝っている。
どうやら、うまくいったようだ。
ライのホッとした姿を見て、私もなぜかホッとしてしまっていた。
478 :
うにゃら…:2008/10/30(木) 17:49:54 ID:OD5cMjKd
30分後、公園で私たち二人はベンチに座っていた。
「本当に助かったよ、ミレイさん」
ライがさっきからペコペコと頭を下げている。
「もう、いいわよ。でも、これ・・・借りだからね」
にたりと笑ってそう言うと、ライは苦笑する。
「お手柔らかにお願いします」
そして、二人で笑いあった。
ひとしきり笑った後、私はどうしても聞きたかったことを聞いた。
「なんでバイトなんて始めたの?
必要な物があるなら言ってくれればお金渡すのに・・・」
私の顔を見て、彼は真剣な表情で答えた。
「どうしても自分で働いたお金で買いたいものがあったから。
でも心配かけてごめん」
そう言われてしまえば、私は何も言えない。
「いいわ。ライが自分で決めたことだもの。
応援するから、がんばるんだぞ」
そう言って励ましたが、寂しい想いが私の心に湧き上がる。
確かにライの婚約者役が出来たことはすごく嬉しかったのだが、なんだろう・・・この終わったあとの寂しさというか虚しさは・・・。
そして私は考える。
私は、ライをどうしたいのだろう・・・。
そういう思いに私の心は囚われてしまっていた。
《おわり》
>>478 GJでした!
うにゃらさんが書くミレイさんは可愛いですねw
ミレイさんが好きな自分としては嬉しい限りです。
>>479 GJです!うにゃら氏のおかげでミレイさんのSSがぐんぐん増えていき幸せです。
氏の描く、心揺れるミレイさんは最高です。次回もご投下を心待ちにしております。
>>478 うにゃら…卿、GJでした!
バイト初めて3日で客をテキパキ裁くとか凄まじすぎだw
ミレイさんが婚約者役、なんか新鮮w
しかしながら、貴方の書くミレイさんが素敵すぎる!
貴公の次の投下を全力で楽しみにしております!
年下専門氏のってただのハーレムものか?
なんか微妙な感じだなあ
>>482 趣味にあわないと感じたらスルーするのが大人の対応だぜ?
こういうのが沸くたびに思うが、「自分の趣味に合わない作品はスルーしましょう!」みたいな書くのもバカらしくなる
一文をテンプレに入れなきゃいけないんだろうか…
>>482 好みは人によって違いますからね。
自分の場合は雑食....というか、今まで投下されたSSで苦手なジャンルはありませんでしたね。
なんにでも好感を持ててしまうのもどうなんだろう?と、思う時がありますがw
でもハーレムは人を選ぶと思うが……確かに気に入らないならスルーが基本ですねぇ
でもU-1系はなぁ
誰かいますか?
いますよ、支援要請ですか?
投下します。支援宜しくお願いします。
了解しました! 支援から感想までお任せください
新シリーズを投下する予定でしたが、最近スランプで思うように行きません。
過去に書いたものを投下します。前と後の二部作品で、後編は選択あり。
の前編です。
タイトルは『紅と銀と碧』 cpは、カレン→ライ←C.C.
支援宜しくお願いします
支援
紅と銀と碧
学園でテロリスト襲撃から数ヶ月が経った。
僕は、身を隠すように、祖界とゲットーの境目付近のボロアパート転々と生活していた。
世間では、行政特区日本やら、ブラックリベリオンやらで大騒ぎだった。
一方僕の方は、生きるために、朝、バイトして、次の現場に行きまたバイト。
日が沈めば、夜の街でバイト。
食べる事も寝ることも忘れ、ひたすらバイトに打ち込んでいた。
全ては、今を生きるために。
そんなある曇天の雨の日、僕の生活が余りにも大きく変わった。
支援!
今日のバイトを終え、ボロアパートに帰った。
部屋のドアを開けようとすると、中から、二人の話声が聞こえた。
「ちょっとC.C.いいの勝手に入って。」
「良いではないか。鍵が開いていたのだからな。」
「もし、住人が帰ってきたらどうするのよ。」
「その時は、殺せば良い。」
「無駄に騒ぎを起こしてどうするのよ。」
取敢ず、余り聞き心地悪い話だが、意を決してドアを開けた。
「誰だ。」
中にいた一人が言った。
声からして、女性もしくは、声変わり前の男子。
性格はどちらかと言うと、強気。
「ここの住人だ。」
僕は、帰ってきた声に驚いた。
「ライ!」
声と同時に出てきたのは、アッシュフォード学園生徒会役員で、僕の元お世話係主任のカレンだった。
「久し振りだな。」
それと、魔女のC.C.だ。
「どうしてここにいる。」
まるでここにいるのが当たり前のようにC.C.が言った。
「雨宿りだ。」
「人の家に。家出出来る位荷物を持って。」
「そうだ。」
カレンが申し訳なさそうに言った。
「私は一応止めたんだけど、」
僕は溜め息を吐いた。
「暫く居座るつもりだろ。」
「当たり前だ。それとも、お前は、乙女二人を外に追い出すのか。」
「わかった、好きにしろ。」
元々狭い家だったので、ベットに二人寝てもらい、僕はダイニングの椅子で寝た。
こうして、居候二人と僕との奇妙な共同生活が始まった。
支援
こんな毎日が続いていた。起きて、三人分の飯作ったり、カレンとC.C.を起こして、
喧嘩しそうな二人を止めたり、
たまに化粧品やら、薔薇の入浴剤やらを大量に持ってきたりした事もあった。
しかし、そんな日々は長く続かなかった。
「ライ!」
「何でしょう。店長。」
「余った惣菜持ってけ。」
《どっちを持って帰る?》
△ピザ OR ○ハンバーグ
ミスった。497は、スルーして下さい。
支援
支援
495の次はここから。
支援!
支援。御錬師氏、ちと投下速度を落としたほうがいいのでは。
次の日
「おいライ何か作れ。」
「ちょっと、私たち、一応居候の身よ。」
「だからなんだ。居候でも食べなきゃ死んでしまうぞ。」
「だからって、」
「お二人さん。朝飯出来てるよ。」
取敢ず、バイト先で貰った、ベーコンと卵で作った、ベーコンエッグとトーストが朝飯。
「ごめんね。朝御飯まで作ってもらって。」
「別に構わないよ。これからバイトだから、鍵はポストにでもいれといて。」
「解ったわ。」
朝からC.C.の声を聞いていないが、まぁいいか。
僕はバイトに行った。
支援
支援
うん、ギリギリだと規制に引っ掛かるよ?
バイトを終え、帰宅した。
「ただいま」
「おかえり、ライ」
「遅かったな。」
「おみあげ。」
そう言って袋から、赤、灰、緑のトレーと水色、青、黄色のカップを取り出してテーブルに置いた。
「「ありがとう。」」
「別に構わない。」
二人は少し嬉しそうな顔をしていた。
「晩飯は?」
「未だだ。何か作れ。」
「わかったよ。」
「手伝うよ。」
「ありがとう。カレン。」
「じゃあ、…」
「出来たぞ。」
「何だ。此は、」
「ロールキャベツ」
「そうか。」
「なによ、C.C.。何か言いたそうな顔じゃない。」
喧嘩になりそうな雰囲気。
「ゴメンナ。ID無しで稼ぐのも限界があるから。」
なんとか、喧嘩だけは回避できた。
食事を終え、シャワーを浴び、また、夜のバイト。
「この後バイトだから。鍵閉めておいて。」
「わかった。」
帰宅すると、二人ベットで、寝ていた。
僕は床に落ちていた二枚の毛布をかけてあげた。
支援
こんな毎日が続いていた。起きて、三人分の飯作ったり、カレンとC.C.を起こして、
喧嘩しそうな二人を止めたり、
たまに化粧品やら、薔薇の入浴剤やらを大量に持ってきたりした事もあった。
しかし、そんな日々は長く続かなかった。
「ライ!」
「何でしょう。店長。」
「余った惣菜持ってけ。」
《どっちを持って帰る?》
△ピザ OR ○ハンバーグ
○支援
○支援
前編は、以上です。
これから、ライの部屋(おみやげを買った後)の写真を画像板に上げようと、
思います。カレンやライやC.C.、写っていないけど。
△支援
飛び入り支援
後編は、誤字チェックして、後日投下します。
p.s.トーマス卿へ
保管のとき、
493 495 507 509 の順に保管お願いします。
誤字
誤
「おみあげ。」
そう言って袋から、赤、灰、緑の
正
「おみやげ。」
そう言って袋から、赤、灰、緑の
に直してください。
念のためにもう一回、私は○で。
>>512 御錬師卿、GJでした!
学園篇後のこういう風な続きはなかなか良さげですね。
全然遠慮しないな、C.C.wwその方がC.C.らしいがw
かなり続きが気になる部類に入ります!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしましょう!
>>512 GJです!テロ事件の後、眠りに付かなかったライですか。
生活感溢れてますね。…っていうか女性を囲ってますね。文字通り。なんという男の夢。
俺も再度○を推したり。後編を楽しみにしてます!
「紅と銀と碧」の挿絵投稿してきました。
ご覧になる方は、どうぞ。
御錬師卿、GJでした。しっかりちゃっかり大黒柱兼主婦にされてますねw
この後どんな出来事が待っているやら、全力で楽しみにしております。
あと部屋も拝見してきました。3人揃って向かう食卓風景を想像してます。
追記:
瑣末なことですが、ベット→ベッドの修正もお願いすべきかなと。
お久しぶり…になるのかな?またもや病院帰りの管理人です。更新滞ってすみませんでした。
今までの分はただいま全速で作業していますのでもう暫くお待ちください。
>>514 最初に失礼、細かくてすみません。私が見つけたものを挙げておきます
修正候補
>>493 学園でテロリスト襲撃から数ヶ月が経った。 → 学園でのテロリスト襲撃から数ヶ月が経った。
ボロアパート転々と生活していた。 → ボロアパートを転々と生活していた。
>>495 二人の話声が聞こえた。 → 二人の話し声が聞こえた。
取敢ず、余り聞き心地悪い話だが → 取り敢えず、余り聞き心地悪い話だが
>>504 取敢ず、バイト先で貰った、ベーコンと卵で作った、ベーコンエッグとトーストが朝飯。 → 取り敢えず、バイト先で貰ったベーコンと卵で作った、ベーコンエッグとトーストが朝飯。
トーマス卿、お帰りなさい!
病み上がりであまりご無理はなさいませんように。
まずは全力でご本復をとお祈りしております!
>>520 お大事に……お大事にと言った!
保管お疲れ様です。
あまり無理はなさらぬようにお願いします。
しっかり療養してくださいね。
全力を挙げて貴方の快復をお待ちしております!
お帰りなさい、トーマス卿。
まずはご自愛くださいませ。
無理は禁物ですぞ。
一応更新完了。
0030-0493の誤字については、御錬師卿ご自身が提言されたもの以外は保留中です。
スレチですいませんがちょっとだけ。
皆さん、風邪を甘く見てはいけません!私はこの二日間でなぁんと約4kgのダイエットに成功しちゃいました!
全ての住民の皆様、くれぐれも体には気をつけて下さい。
そろそろ失礼します。では。
病気のなか乙です!
お帰りなさいませトーマス卿。
今後もご壮健を願っております。
>>482 他にもライが複数の女性から好意を寄せられている作品はあるのに、何故年下専門卿のだけ名指しして文句いうんだ?
トーマス卿、ご苦労様です。どうかご自愛を。
>>526 かなり年下専門卿の連載を楽しみにしている身として
不穏な流れの元となる蒸し返しは断固反対なんだぜ
>>527 申し訳ない…迂闊な発言で迷惑をおかけしたことを深く謝罪いたします
最初の方を楽しみに読んでてカレンの流れからハーレムが確定したからがっくりきたんじゃね?
最初気に入ってた作品が嫌いな流れに行くのは残念でならないからねぇ
>>526 単発IDだし荒らしだよ。触らないに限る。
カプ表記って意外に難しいと思うのですよ。
連載ものだと特に。
例えばライとカレンが付き合ってる設定だけど、今回はカレン自身は出てなくて、
ミレイとライがずっと一緒にいるSSだと、ライ×カレンだと思うかライ×ミレイだと思うか
はたまたライ+ミレイだと思うか、人によって感じ方考え方は違うんじゃないかなと。
「ハーレムもの」っていうのも、「ライ←複数キャラ」と必ずしもイコールではないのではないかと。
今回の場合は「カプなし」表記が問題…っていうか、引っ掛るんじゃないでしょうか?
多分、最終的なカプを決めずに書いていらっしゃるか、
作中のライは誰にも恋愛感情を持っていないという意味で「現時点ではなし」なんでしょうけど、
とりあえず前に出した情報の「ヒロイン候補は最低四人の予定」(でしたよね?)も毎回添えておけば、
単一カプ好きさんは避けやすくて、より良いのではないかと思います。
ちょっと話がズレますけど、新しくスレに来る方は常にいらっしゃると思いますし、
連載ものを投下される方はカプ表記に限らず、その他の注意書も含めて、
「前回と同じ」などと省略したりせずに毎回つけていただけると嬉しいです。
もちろん好まないものはスルーするのが原則なんですが、
無用のトラブルを避けるためにも、スルーしやすくしてあげる配慮はあってもいいのではないかと思います。
532 :
うにゃら…:2008/10/31(金) 08:19:46 ID:0NrDJtK5
おはようございます。
ゲリラな人です。
投下しちゃいますので皆様、爆撃に巻き込まれないようご注意ください。
タイトルは、「アッシュフォド生徒会の何気ない日常〜誕生日編〜」。
カップリングは、私的にはこれしかないでしょう的な「ライ×ミレイ」。
ジャンルは「ほのぼの」でしょうか…。
本レスは、3レスなので支援は必要ありません。
また、終了レスは入れないので、本レスの最後に《おわり》と入っていたらそこで投下終了となります。
ご注意ください。
ー
533 :
うにゃら…:2008/10/31(金) 08:21:35 ID:0NrDJtK5
アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜誕生日編〜
「誕生日おめでとう、ミレイさん」
僕はそう言ってポケットに入れていたプレゼントを差し出した。
シンプルな飾り紙で包まれた小箱にワインレッド色のリボン。
「えっ…私に?」
きょとんとした表情のミレイさん。
あんましうれしくないのかな…。
そう思ったものの、今更引っ込めるわけにもいかない。
「うん。よかったら貰ってくれないかな。たいしたものじゃないけど…」
「ありがとね、ライ。開けていい?」
その返事にうなづく。
すこしわくわくしているのだろう。
ミレイさんの顔が少しうれしそうな表情になった。
その表情で少し僕は安心する。
丁寧にリボンを解き、飾り紙を開く。
そして中の小箱をあけた。
「あ…」
そこにはかわいらしいくも上品にまとめられたロケットペンダントが入っていた。
それを見た瞬間、ミレイさんの表情が一気に喜びに変わる。
うんうん…。
好きな女の子をこういう表情にする時が一番気持ちいいというか幸せを感じちゃうなぁとか思ってしまう。
534 :
うにゃら…:2008/10/31(金) 08:23:20 ID:0NrDJtK5
「あのさ…よかったら、好きな相手の写真とかをいれるといいよ」
本当は、僕の写真を入れて欲しいのだが、そこまでは言えなかった。
告白してしまえばいいと何度も思ったが、今の関係が壊れるのが怖くて出来ない。
なんて意気地ないのかな…僕は…。
前、バイトの女の子達の矛先をかわす為とはいえ、ミレイさんを婚約者って紹介した時はすごく幸せだった。
もっとも、終わったあとの虚しさと寂しさにブルーになったけどさ。
「もしかして…バイトしてた理由って…」
ミレイさんがそう聞いてくる。
さすが頭の回転が速いなぁ。
「うん。ミレイさんの誕生日プレゼントくらい自分で働いたお金で買いたかったから…」
「そうだったんだ…。本当にありがとね、ライ」
ミレイさんは、喜んでてすごくうれしそうな表情なんだけど、なんか違和感を感じた。
なんと言ったらいいのかな、こう申し訳なさそうな感じがする。
「でもね…」
「え?」
その予感が当たりそうな流れに僕はドキリとした。
なにか拙い事でもやってしまったのだろうか…。
「貰っちゃって言いにくいんだけど、私の誕生日…7月なのよ…」
「え???」
「7月24日なの…。誕生日…」
「えーーーーーっ…」
僕は絶句するしかなかった。
535 :
うにゃら…:2008/10/31(金) 08:25:20 ID:0NrDJtK5
そういえば、他の友人達がミレイさんを祝わないわけがない。
それがないというのはおかしな事だとは思ったけど…。
僕は、その場でがっくりと落ち込んでしまった。
「ふう…」
溜息しかでない。
なんてこったい…。
そんな僕を慰めるかのようにミレイさんが声をかけてくれる。
「でも、すごくうれしかったわ、ライ。いつも身につけて大事にするね」
ああ、ミレイさんのやさしさになんか救われる…。
それにすごく喜んでいるから良しとするか…。
そう思いなおすことにした。
でも、もっとうれしい発言はこの後にあった。
「あのさ…、よかったらだけど…今度、ライの写真撮ってもいいかな?」
「え…」
「だって、ライが言ったじゃないの…。好きな相手の写真を入れたらいいって…」
少し頬を染め、恥ずかしそうにミレイさんが言う。
「あ、えーっと…う、うん、僕でいいのなら喜んで」
舞い上がってしまい、思わずそう答えてしまう。
ああ…なんで…「ぼくで」なんて言っちゃったんだろう…。
すごく後悔してしまう。
でも、そんな僕の気持ちがわかるのだろうか、その後のミレイさんの発言でぼくはホッとする。
「うふふふ…。ライで…じゃないの…。ライがいいのよ」
そう言って微笑むミレイさんを僕は最高に幸せな気持ちで見つめていた。
《おわり》
なんかえらく揉めてる?ようなので業務連絡をかねて
職人の皆様へ
カップリングの表記についてですが、以前改装の際に「または主な登場人物」の記述を追加しており、
必ずしも恋愛を示すものではなくなっております。ということで、今後カップリングの表記についていくつか
変更をすることに致します。
・恋愛要素がない場合は主要人物を挙げる形で。キャラ名は「・(全角中点)」で結ぶ
例 シュナイゼル・ライ ルルーシュ・ライ・スザク
・「無し」は今後なくなる。既存の作品についても、できるだけ
・意図的に隠したい場合に、「???」を用いるのは構わない
例 ライ・??? ライ←???
・表記はこれまでどおり3人まで
現在、これに併せてテンプレ文言を策定中です。31スレ目までには間に合わせるように致しますので宜しくお願い致します。
GJ、お疲れ様です。危なかったあ。
>>535 GJです!
最近ミレイさんの話が沢山読めて嬉しいですw
>>535 うにゃら…卿、GJでした!
毎回毎回、なんて可愛いミレイさんだ!
プレゼント、でも誕生日を勘違い。
しかし好きな人の写真と言われてその当人の写真が欲しいと言うのは結構な勇気がいるよね。
あぁ、何だかとってもいいかんじだ……
貴公の次の投下を全力で待たせていただきます!
540 :
御錬師 ◆u/BSqNBIsk :2008/10/31(金) 15:18:44 ID:fNXOyWjO
出先からの書き込みです。
していただいた、誤字おねがいします。
今日か明日に後編を投下したいと思います。
なんで時間を予告するわけでもなく支援要請してるんだ?
これじゃ、投下タイミングに入れるとはかぎらないじゃないですか。今日明日はPCの前に張り付いてろと?
>>542 支援要請ではありませんよ。よく文章を読みましょう。
どうもこの辺りの時間帯は文脈も読めない奴が定期的に沸くようだな
昔はこんなんじゃなかったんだがなぁ
投下します。支援宜しくお願いします。
昨日の投下した、「紅と銀と碧」の後編のうちの一つ。
「赤と銀と碧〜 ○ ハンバーグ 〜」
を投下します。CPはライカレ
最近増えましたね
提案というよりSS系スレの最低限のマナーの確認として
投下と支援と感想以外は極力、本当に極力、レスしないようにしましょう。最近悪い流行り方をしている投下待機中!とか、作品や職人さんに対する感想や批評とは違う、ただの悪口とか
身に覚えのある方、お願いですから止めてください。住人の皆さんもスルーしましょう
今こうして私が書き込んでいるのもアレなのですが、このレスの後に即消えますので、ご容赦を
支援します
すみません
支援
全力で支援!!
○ ハンバーグ
家に帰ると、カレンと玄関で入れ違いになった。
部屋の状況からして、恐らく、いつもの喧嘩。
C.C.がカレンをからかい、喧嘩になったのだろう。
全く何故毎回喧嘩出来るのだろうか?不思議でしょうがない。
「カレンは?」
「出て行った。」
C.C.はあっさりと言った。
「晩飯は?」
「今日は要らん。」
ふと窓の外を見ると、雨が降ってきた。
「チョット出かけてくる。」
「わかった。」
僕は、傘と貰ってきた物を持ち外に出た。
支援
ジュワイオクチュール・支援
今は小降りだがいつ激しく降りはじめるか解らない。
祖界とゲットーの境目近くの公園に彼女はいた。
「誰っ」
カレンは獲物を睨むような目を向けてきた。
「なんだ、ライか」
少し落ち着いたようだ。
取敢ず、僕達は雨宿り出来る場所を探し、屋根付きのベンチがあったので、そこに腰掛けた。
「食べる?」
持ってきた、袋から、ハンバーグ弁当を取り出す。
「アリガトウ」
カレンはそれを受け取り、食べ始めた。
「ねぇ、あの時、どうして何も言わずに出ていったの?」
いきなりの質問に驚いた。
あの時…学園にテロリストが入り込み、僕がギアスで殺し、学園を脱け出した日のことだろう。
僕は言葉を濁して返した。
支援
支援
風来の支援
「世界は異端者を嫌う。」
「何言ってるの?」
「強すぎる力は主をも滅ぼす。」
「意味解らない。」
「それで良いと思う」
「なんでいつもそうなの?自分独りで背負って、抱えこんで。」
珍しく、カレンが怒っている。
僕は偽りの君しか知らないに。
多分これがカレンの素の性格なのだろう。
僕は決心した。
過去を少し話しておこうと。
支援
支援
支援ーーーん!カムバッーーーク!!
「昔、僕は御家騒動に巻き込まれて、父親と義理の兄二人を殺した。母と妹を守るために。
けど結局守なかった。それで死を望んだ。死ねなかっけど。」
「ライ…そんな過去を、」
「そしてあの時大切なものを守るために。これで全て。脾肉にも死に場所探して、フラついている。」
「これからどうするの?」
カレンが少し寂しげな表情をしていた。
「家好きに使って良いよ。死に場所探しに、チョット出掛けるから。」
「ライ…」
カレンは僕の決意を察してくれたのか、止めなかった。
でも、カレンの頬に一筋の水が流れた。
「早く仲直りしろよ。じゃあな。」
支援
朝も夜も恋い焦がれて支援
少年は闇夜に消た。
その次の週には、アパートは、バベルタワー建設の為取り壊され、その翌月に崩壊した。
そして、ゼロは復活した。
その頃、神根島には、独りの少年が遺跡の中央で眠っていた。
眠る前、彼は一つの願いを残していた。
『平和な世界になるように』
支援
デン支援ド!!
以上で終わりです。
ご支援ありがとうございました。
PS
トーマス卿へ
紅と銀と碧のページがなせか、「進化する空間と不変の時間〜蒼と碧が交わる時〜」
になっています。タイトルは「赤と銀と碧」でこのシリーズの1作目です。
今回投下した作品とのリンクを本文の○ハンバーグの部分に、お願いします。
御錬師卿、GJ
>>568 乙です。うぉ、まさかのトゥルーエンド…!楽しんで読ませていただきました。
錆を含んだライに切なくなる反面、「ハンバーグさほど関係ねぇー」とも突っ込んでしまいました。
残りのピザルートも、期待してお待ちしております。
>>568 御錬師卿、乙でした!
切ねぇ、切ないよ。
そして、この場合は誰もライの存在忘れてないわけだから余計切なく感じますね。
もう一つの選択肢、ピザも期待しております。
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
うーん、偉そうに聞こえますがハッキリ言います
ギリギリなんとかGJと言えなくないレベルです
今挙げる問題点は二つ
第一に、わざとそうしているのかは分かりませんが、それでもやっぱりキャラの描写や台詞が淡々としすぎていると思います
もう少し表現の量と一つ一つの肉付けを増やして、そのキャラらしさをあざといくらいに出してみては如何でしょう?
個人的に、今のままでは作品自体が淡すぎて薄すぎる気がします
第二に、作品自体のボリュームが足りないと思います。一つ目の指摘とかぶるんですが、今回中心のライとカレンの会話もすぐに途切れているので、この話が何を表現したいのか分かりませんでした
もう少し文章を量書きためて、それを構成し直してから投下されては如何でしょうか?
随分偉そうにキツい事言ってしまいましたが、一個人の意見として、あくまで参考程度にとらえてください
今後の上達に期待させてもらいます
乙でした!
感想は、まぁ上の人と同じですね
なんていうか情報が少なすぎると思います
何でライが今さら眠りについたのかわからなかったり
まぁ理解力が無いだけかもしれませんが
次の投下をお待ちしてます
574 :
快風:2008/10/31(金) 23:48:11 ID:o29dXdko
15分後、00:00より投下します。
専任騎士シリーズです。
10レスほどなので支援よろしくお願いします。
支援します
576 :
快風:2008/11/01(土) 00:00:02 ID:o29dXdko
何時の世も、国というものは変化する。
それが良い変化であれ、悪い変化であれとも。
そして、時が経つに連れ建国の理念を、理想を忘れてしまうのもまた…。
政治の腐敗、汚職、それは悪政の症状と言える。
だが、それを治療すべく動く者がいるのもまた事実である。
それがクーデター、革命と呼ばれるものでも……。
支援
578 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:01:43 ID:KmohQeoW
婚儀の場での反主流派のクーデター、そして、花嫁を攫うゼロ。
会場は最早、収拾のつかないパニックであった。
僕は何がどうあろうと本来の職務を、いや、騎士として殿下の安全を守る事を優先するだけだ。
いつゼロの矛先が殿下達へと向けるか分からない以上、一刻も早くアヴァロンへと!
スザクもランスロットを取りに向かった様だ、ここはラウンズと共に構えつつ進む。
「さ、兄上、ここは一先ず」
「だが、天子様を!」
「オデュッセウス殿下、ここは貴方の身の安全が優先なのです。どうか、お願いします」
そう、こんなところで皇族を死なせるわけにはいかない。
シュナイゼル殿下に追従し、逃走を促さねばならない。
なんとか了承してもらい一行はアヴァロンへの道を行く。
「ライ、君に頼みがある」
「は、何なりと」
「アヴァロンに着き次第出撃して欲しい。念には念をね」
「イエス・ユアハイネス」
心持ち駆け足で僕等は先を急ぐのだった。
しえん
580 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:03:36 ID:KmohQeoW
クラブで出撃し、スザクの、会場へと向かったときには全てが終わっていた。
黒の騎士団の新型、藤堂の専用機との抗戦によりフロートを破損し追撃不能だったとのこと。
スザクを、ランスロットに傷を負わせる程のKMFの性能、並びにパイロットの技量。
藤堂鏡志朗、やはり一筋縄ではいかない相手のようだ。
ギルフォード卿が注視するだけの事はある。
スザクへと状況の確認をしながら、今後の戦いを見据えるべく思いを馳せる。
これで黒の騎士団は紅蓮を含め完全にフロートユニットの実用化、そして
戦力の増強を果たしたと言う事なのだから。
ランスロットを収容し中華軍の後を追うこととなる僕等。
とはいえ、このまま戦闘を続けるのは外交上の問題や内政干渉になる。
そのため先行する中華軍をゆっくり追跡するのみ。
偵察艇より送られてくる映像を見て、ゼロと星刻、二人の天才の用兵を見る。
それは戦略と戦略、戦術と戦術の激突。
優れた指揮官同士の奏でる芸術的と言ってよいほどの戦いだった。
常に先を読み迅速に動く陣形、そして環境を利用する戦術、正に見事。
河川の氾濫により完全に有利に立った中華軍を嘲笑うかのように新たな一手を打つゼロ。
彼等の艦もまた切り札たるもの、ハドロン砲を有していた。
そして、一通りの打撃を与え撤退する黒の騎士団。
何れにせよこれは後世の戦史に刻まれるであろう戦いであるだろう。
その現場に居合わせた幸運を誇るだけだ。
自分の身に宿る指揮官の自分が高揚するのを感じていた。
シュナイゼル殿下も同じ様でどこか楽しげだった。
しえん
582 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:05:30 ID:KmohQeoW
「興味深い用兵だったよ。やはり彼等は難敵だね。
不謹慎ではあるが、彼等との駆け引きを楽しみたいと感じる自分がいるよ。
さて、どうやら我々にも舞台に上がるようオファーが来た様だ」
大宦官からの通信を告げられ、読みどおりだと暗に含ませながら立ち上がる。
ならば僕の役目はラウンズの招集だろう。
足早に休憩室へと足を運ぶ。
休憩室への道を歩きながら、彼方にいる人物へと思いを馳せる。
「カレン、捕まってしまったのか…」
そう、先の戦いで紅蓮は出撃していなかった。
黎 星刻操る神虎との戦いで捕虜になったとの報告を受けた。
彼女の身の安全を心配すると同時に、
自分が彼女を討つことが無くなるという事実に安心する。
そしてそれをジノやスザクに話せばどのような反応を見せるのだろうか。
太平洋の一戦から、ジノはカレン、いや紅蓮との再戦を望んでいるらしいからだ。
スザクもまた、同じ生徒会のメンバーを討つ事に思うことがあるだろう。
彼は何かと気にしていたのだから。
ライは知らない。
スザクが太平洋の時に既にカレンに対しての躊躇いがない事を。
そして、捕虜になったと知った時に何を考えたのかも……。
しえん
584 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:07:11 ID:KmohQeoW
天帝八十八陵に陣取った黒の騎士団。
そしてそれを追う黎 星刻率いるクーデター組み。
その後ろを取る大宦官とブリタニア軍。
そう、大宦官からの協力要請を受けた僕等は騎士団と黎 星刻一派を亡き者とするという。
大宦官のやり口は気に入らないがこちらとしてもこの有利な状況を生かしたい。
今のブリタニアにとっての最大の敵といってよい黒の騎士団の壊滅。
ゼロという存在を消す好機を生かすのだ。
ジノとアーニャも一足先に出撃し、殿下の指示により僕も出る。
スザクの姿が見えないが今は一刻も争う、如何に良い状況を作るかだ。
親衛隊と共に出撃する。
「いいか、敵の主力たるフロート機は四機、そして神虎だ。
神虎はヴァインヴェルグ卿が、アールストレイム卿はクーデター組みを狙う。
私は藤堂の機体をやる、皆は他の機体を!
気をつけろ、奴等はエースだ!
各自連携し距離をとって戦え。
他国の内乱などで血を流すことを殿下は望まない、その期待に応えろ!」
「「「「イエス・マイロード!!!!」」」」
「ランスロット・クラブ・コンクエスター、発艦!!」
クラブを駆り出撃、四機ほどの新型量産機、ウォードを率いて戦場へと向かう。
狙うは藤堂鏡志朗、スザクの借りを返させてもらう!
支援
しえん
587 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:08:46 ID:KmohQeoW
「藤堂鏡志朗、まかり通る!!」
空爆機を撃退しながら藤堂は飛ぶ。
専用機たる斬月を駆り次々と屍を築く。
この場で死ぬ事は出来ないのだ、我々は。
まだ自分は奇跡の責任を取っていない以上尚の事だ。
ラウンズの一人を星刻がやっているようなのでこちらは他のラウンズを。
そう思っていると前方よりKMFが。
「あれは、スザク君ではない、ランスロット・クラブ、ライ・アスプリウスが!!」
青き機体、あのシュナイゼルの騎士がやってきたのだ。
しえん
589 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:11:03 ID:KmohQeoW
「藤堂鏡志朗!ここは僕が相手だ!!」
クラブを突進させヴァリスを牽制に撃ちすぐさまハーケンを。
これで討ち取れるとは思わない。体勢を崩せれば!
MVSに持ち変え二本を連結させ突撃。
案の定全てを避けながら彼の敵も刀を抜き突進してくる。
激しい鍔迫り合いを演じる事になる。
一合、二合、三合と切り結び互いに機銃などの撃ち合いをしながら距離をとる。
やはり一筋縄ではいかない強敵だ。
藤堂の機体は様々な武装が組み込まれているようで、
運悪く出くわすガンルゥが杭状のミサイルの様なものが刺さったかと思えば、
輻射波動のように急激に膨張し爆発する。
「随分と多彩な武器をお持ちですね、藤堂将軍。だが!」
この距離よりヴァリスを背中のジョイントパーツを使いハドロンブラスターを放つ。
先程より砲撃してくるガンルゥ諸共狙うのだ。
しえん
591 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:12:56 ID:KmohQeoW
「できるな、このパイロット。流石にシュナイゼルの騎士か」
そう、すべての斬撃は必殺の一撃。
生半可な実力では必死は確実なのだ。
だが、悉くかわし、受け流すランスロット・クラブ。
「この力、スザク君並か!!」
機銃を放ちつつ突進を開始する。
狙うはハドロン砲を撃った隙!
ランスロット・クラブが放った瞬間ギリギリまで引きつけながらすれすれでかわす。
回転刃刀を突きの構えで突進し、自らの奥義を放つ。
一突き、二突き、三突き。
一手目はかわされ二手目をMVSで捉えられ最後は肩に突く。
だがその瞬間。
「くっ!このタイミングで来るか!」
そう、回転刃刀を突き刺した瞬間に、以前一度だけランスロットが使った攻撃。
そう、ハーケンブースターを放ったのだ。
その数4本。何れも誘導式のハーケンが襲い掛かるのだ。
輻射障壁を使い防御するが防げたのはコックピット周辺を狙った3本のみ。
1本が左足を落としたのだ。
支援
593 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:15:00 ID:KmohQeoW
「痛み分けということか、やってくれる!
?蜃気楼、ゼロか!
なるほど、あのプランをか、ならばここまで!」
ゼロの出撃、そして黒の騎士団の地上部隊の総攻撃。
それはあの作戦が発動したということだ。
藤堂はこれ以上の損傷は危険と判断し後方へと下がる。
「朝比奈、千葉。すまない、機体が損傷した、一時後方へ下がる」
「藤堂さんが!?」
「わかりました、中佐、お下がりください」
朝比奈、千葉の援護射撃により下がる。
まだまだやり合いたい所だが、それは先の楽しみとする。
「ライ・アスプリウス、覚えておこう」
新たな強敵の存在を脳裏に焼きつけながら藤堂は下がる。
これからの戦いの苛烈さを思いながら。
しえん
支援
596 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:18:16 ID:KmohQeoW
「くっ、なんて鋭い突きなんだ!」
ハドロンブラスターをギリギリでかわし突撃する。
なんという技術、そこからくる連撃は正に苛烈。
一撃一撃がすべて必殺の技だ、かわし、受け流し、これ以上は無理なため肩へと当てさせる。
三撃目が繰り出される瞬間、ハーケンブースターを放つ。
3本を胸部に集中させ足へと本命を放たせるのだ。
「痛み分けといきたいところだな」
互いに損傷し各駆動系の問題もある、ここは引くしかないか…?
「通信?下がれと?一体……」
アヴァロンより退却の通信が来る、ならば。
「親衛隊各機、退却だ!」
生き残った者たちと共に下がる。
「藤堂鏡志朗、やはり厄介な敵だな」
スザクの師匠というだけの事はある、”奇跡の藤堂”、伊達ではない。
今後の黒の騎士団との戦いにおいて最も注意する必要がある、か。
先の戦いを思い、今の戦いの余韻に浸りつつ下がるのだった。
597 :
対峙2:2008/11/01(土) 00:20:11 ID:KmohQeoW
これから幾度となく刃を交わらせる戦士の邂逅。
彼等がまた対峙する時、最後に立つのはどちらか。
両者が同じ思いを胸に秘めながら立ち去っていく。
これがブリタニアの騎士ライ・アスプリウスと、
黒の騎士団、藤堂鏡志朗の最初の対峙であった。
彼等の出会いが偶然か必然かは、神のみが知る。
しえん
599 :
快風:2008/11/01(土) 00:22:12 ID:KmohQeoW
以上です。
ライと藤堂の戦いです。
スザクにとってのライバルがカレンなら、ライには藤堂をぶつけました。
戦闘はやはり大変だ。上手く書ける人が羨ましいです。
後は中華編のまとめを描き、どんどん話しを進めていきたいです。
感想ご意見お待ちしております。
では、また次回。また見てギアス
>>599 快風卿、GJでした!
カレンが捕まり安心するライ、この一文を見てほっとしました。
やっぱりライからはギスギスした思いを抱いてはいないんだなぁ、と。
藤堂対ライ、なかなか燃えました!
まず、戦闘描写が出来ることが羨ましいなぁ……難しくて無理なかんじなんですゃねぇ。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>599 乙でした。藤堂さんとライバル関係か、これは燃える展開ですね。
次回をお待ちしています。
GJでした
今回は特に文章が安定していて読みやすかったです
戦闘描写ですが、ナイトメアの動きや武器の使い方は分かりやすく描写されていますし、ライと藤堂の台詞や心情も適度な量なのですが、個人的に少しスピード感不足な印象がありました
何故かと考えてみると、恐らくは前半部分の文章を引きずっているからではないかと思います
最初に文章が安定していると書きましたが、安定している分だけ変化が少なく、前半の、なんとなく流れをただ書いているという雰囲気を引きずったまま戦闘になってしまっているのでは?
(此処は詳細に描写されても蛇足に感じたでしょうから、書き方自体は良い量・良い流し方だと思います)
一度明確な線引きを入れる意味で藤堂に視点が移っているのは良かったのですが、すぐにライに視点がシフトしたり、地の文の量が少なかったりと線引きが弱かったように思います
ただ文章自体は本当に安定しているので、極力バランスを崩さず、視点移動した相手の描写や地の文を増やしたりすることで、その安定感に更に場面転換のメリハリをつけた、より素晴らしい文章になるのではないかと
色々長ったらしく語りましたが、文章自体は本当にGJでした
またの投下をお待ちしています
>>600 ここのライはカレンに対しては複雑な感情を持ってます。
ある意味親しかった人間には覚悟がたりないのですが、冷酷なライも抵抗あるので…。
>>601 中華編で思いついたのがこの対決で、これが書きたかったのですが、
実力が追いつきません…。これが今の精一杯。
>>602 ありがたいご意見です。
スピード感…。今後の参考にさせていただきます。
お褒めにいただいたバランスも大事にしていきたいと思います。
>>599 大変面白く読ませていただきました。
シュナイゼルの騎士という実に難しいものをうまくR2のストーリーにからめていく手腕は見事だと思います。
ただ、1つだけ気になった点が…。
台詞で視点分けをやられていますが、それにちょっと違和感を感じました。
一瞬、あれ?とか思っちゃう時があるのとぎこごちない感じがしたもので…。
でもとてもよかったと思います。
GJでした。
次回も楽しみに投下お待ちしております。
605 :
うにゃら…:2008/11/01(土) 16:09:24 ID:YaGe1cFZ
こんにちわ。
ゲリラ投下の人です。
投下しちゃいますので皆様、爆撃に巻き込まれないようご注意ください。
なお、内容は前回投下した「アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜誕生日編〜」のミレイさん視点バージョンです。
感想に「好きな人の写真と言われてその当人の写真が欲しいと言うのは結構な勇気がいるよね。」という言葉を頂き、このアイデアが浮かびました。
ミレイさんは、どういう気持ちで言ったんだろう…。
それで一気に書き上げてしまいました。
だから、内容的にはほとんど変わっていません。
ですので、それが気になる方はスルーしてください。
タイトルは、「アッシュフォド生徒会の何気ない日常〜誕生日編 B面〜」。
カップリングは、もちろん「ライ×ミレイ」。
ジャンルは「ほのぼの」でしょうか…。
本レスは、4レスなので支援は必要ありません。
また、終了レスは入れないので、本レスの最後に《おわり》と入っていたらそこで投下終了となります。
ご注意ください。
606 :
うにゃら…:2008/11/01(土) 16:11:07 ID:YaGe1cFZ
アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜誕生日編 B面〜
「誕生日おめでとう、ミレイさん」
ライがそう言ってシンプルな飾り紙で包まれた小箱を私に差し出す。
ワインレッド色のリボンがかかっているのがなかなかおしゃれだと思う。
「えっ…私に?」
ライが私の為にプレゼントを用意してくれたのはとてもうれしい。
でも、誕生日のプレゼントって…。
そう思ったら、彼の不安そうな顔が目に入る。
思った事がどうやら顔に出ていたみたいだ。
いけない、いけない…。
プレゼントを貰う方がこんな顔してちゃ駄目じゃないかっ。
私は、自分にそう言い聞かせる。
「うん。よかったら貰ってくれないかな。たいしたものじゃないけど…」
すまなそうな顔をするライ。
違うの…。
うれしいの…。
そう言いたかったが、口で言っても意味がないような気がした。
だから、私は行動で示す事にする。
「ありがとね、ライ。開けていい?」
そう聞くとうなづく彼。
私は、少しワクワクしながら丁寧にリボンを解き、飾り紙を開いて小箱をあけた。
607 :
うにゃら…:2008/11/01(土) 16:13:18 ID:YaGe1cFZ
「あ…」
そこにはかわいらしいくも上品にまとめられたロケットペンダントが入っていた。
ああ、なんて綺麗なんだろう。
それに綺麗なだけじゃなく、可愛い感じさえするようなデザイン。
センスいいじゃなの…。
これだったら、普段身につけてもOkだし、おしゃれした時でもつけられるじゃない。
彼のプレゼントをいつも身につけていられる。
つまり、いつもライの事を身近に感じられるという事…。
それはとても幸せな事ではないだろうか。
うふふふ…。
私は、すごくうれしくなった。
でも、次のライの台詞で私の気持ちはトーンダウンした。
「あのさ…よかったら、好きな相手の写真とかをいれるといいよ」
あーーん、もう…。
なんで、「僕の写真入れてくれるとうれしい」とか言わないのよ。
もう…こういう所の押しが弱いんだから…。
私は、少し腹が立っていた。
少し文句でも言ってやろうと思ったが、彼の沈んだ表情を見て気が変わった。
もう・・仕方ないなぁ…。
608 :
うにゃら…:2008/11/01(土) 16:15:08 ID:YaGe1cFZ
「もしかして…バイトしてた理由って…」
そう聞いてみる。
「うん。ミレイさんの誕生日プレゼントくらい自分で働いたお金で買いたかったから…」
予想通りの答えが返ってくる。
わかっていたけど、彼の口からそれを聞くとすごく気分がいい。
とてもうれしくなってしまう。
私の為に…。
なんていい響きなんだろう。
「そうだったんだ…。本当にありがとね、ライ」
そうお礼をいうと彼はすごく喜んでいる。
彼の喜ぶ姿を見ていると私もなんかうれしい。
だけど…。
そう…間違いは正さないといけない。
あー…気分が重くなる。
でも、言わなきゃね。
好きな相手に間違った誕生日で覚えられても困るし…。
「貰っちゃって言いにくいんだけど、私の誕生日…7月なのよ…」
「え???」
「7月24日なの…。誕生日…」
「えーーーーーっ…」
ああ…やっぱり…愕然としている…。
御免なさい…ライ。
ああああ…少しでもフローしないと…。
609 :
うにゃら…:2008/11/01(土) 16:16:56 ID:YaGe1cFZ
「でも、すごくうれしかったわ、ライ。いつも身につけて大事にするね」
そう言うと少し持ち直したようだ。
なんかホッとしているっぽい。
もう一声かな。そんなことを思いつつ、無意識のうちに言葉が口から出ていた。
「あのね…、よかったらだけど…今度、ライの写真撮ってもいいかな?」
そう言ってしまってから、私は自分がなんて大胆な事を言ってしまったのか理解した。
ああああああ---っ…恥ずかしいっ。
「え…」
彼も唖然としている。
う----っ、こうなったら言わなきゃ損だわ。
少し開き直り気味の私。
ええ、言いますとも…。言っちゃいますから…。
「だって、ライが言ったじゃないの…。好きな相手の写真を入れたらいいって…」
あー…言っちゃったよ〜っ…。
言ってしまってからぽーっと頬が火照るのが判る。
あーんっ、ライの顔を見れないじゃないかっ。
こうなると俯くしかない。
「あ、えーっと…う、うん、僕でいいのなら喜んで」
こんなにドギマギして言っているのにライったら判っているの?
私の言ってる意味がどういう事か…。
そう思って彼の様子を伺うと、あー…再び落ち込んでいる。
ふーっ…本当に…しょうがないんだから…。
私は呆れかえるのと同時にそんな不器用なライがとても愛らしいと思う。
母性本能をくすぐられているのかもしれない。
でも、それだけではない。
私は、彼のことが大好きなのだから…。
だから、私は彼の笑顔を見る為にこう言って微笑んだ。
「うふふふ…。ライで…じゃないの…。ライがいいのよ」と…。
《おわり》
GJでした
キャラクターの可愛らしい心情などの描写は楽しくなります
失敗するとリズムが悪くなりがちな一人称のSSですが、セリフ回しと一人称描写とのテンポも組み合わせも上手くまとまっていました
ただ、一つ個人的に思うところは、ミレイにしては可愛らし過ぎるのでは?ということです
ミレイの場合、普段クールというか大人なのだけれど、そこにライの天然が炸裂してアタフタしたり余裕が崩れる
というのが自分の勝手な二人のイメージなので、ミレイにしては心情が乙女思考すぎるかな、と
キャラクターの可愛らしさを描写するのがお上手なために、かえって露骨な萌えに走りすぎているのではと考えてしまいました
偉そうに自分勝手な想像してしまい、申し訳ありません
でも文章自体は楽しく読みやすいので、本当にGJでした
またの投下をお待ちしています
>>609 GJでした!
自分はミレイさんは意外と乙女な所があると感じていたので上の方が言ったことは気にはなりませんでした。
>>610 決してあなたを批判しているわけではないので、勘弁してね!
>>609 うにゃら…卿、GJでした!
所々にあるミレイさんの心情が、こう、何て言うか
……ふひゃって気持ちになりました!
文章も流れるように一気に目を通せて、読み終えてすがすがしい気持ちになりました。
うん、GJでした!
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
五分後から全力を挙げて投下します!
どうもー!
一回の投下より百回の支援、百回の支援より十回の感想
全力です!
ハロウィンネタ書き上げましたー!
一日遅れたけどね!
まえがき
タイトルは「バトルロイヤルハロウィン」です!
注意事項
・特に無し、しいて挙げるならギャグです
まえがき〜あとがきまで最短12レス、アクシデントで増えることもあります
ご了承ください。
あと支援は不要です、携帯とPCを駆使して投下しますので。
「十分後に生徒会主催、バトルロイヤルハロウィンを開催するわよー!」
学園に響き渡るミレイ会長の声に一部を除き乗り気ではない生徒会メンバー
その一部ではない二人の青年は
「ねぇ、ルルーシュ」
「……何も言うな」
「あぁ……頑張れ」
「ありがとう……脱出ルートは全部で30、それをフルに活用して」
「はぁ……なんでこんなことになったんだろう」
昨日
「明日はハロウィンだけど何かイベント案無いー?」
いつもの事だと割り切って仕事を続ける生徒会メンバー……しかし
「ハロウィンかぁー確かお菓子を賭けての子供と大人の仁義なきバトルが繰り広げられる行事だっけ?」
「違うな、間違っているぞ、スザク!
ハロウィンとはそもそもケルト人の一年の終わりが10月31日であり、その夜に死者の霊が家族を訪ねたり
精霊や魔女が現れるとされていた。
そこでこれらから身を守るために仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いていたんだ。
ケルト人をキリスト教に改宗させる策として宣教師が「ケルトの木を伐採する信仰を「ストッーーープ!!!」」……何ですか、会長!」
嬉々として蘊蓄を語っていたルルーシュに制止の声をあげたのはミレイ会長だった。
「話が、長い
「話が、長いわよ!
もっと簡潔に纏めなさい!」
「……カボチャをくりぬきその中にロウソクを立てたお化け蕪、ジャック・オー・ランタン、を作り
魔女やお化けに仮装した子供が「トリック・オア・トリート」と唱えて近所の家からお菓子を貰い歩く。
そして、そのお菓子を持ち寄りハロウィンパーティーを開く。
また、トリック・オア・トリートの習慣は……」
「だから長いって!」
そんな漫才が繰り広げられる中、黙っていた銀髪の青年が口を開く。
「つまり、子供が大人を脅迫するんだね?
そして、それが受け入れられなければ暴力行為も辞さない、と」
「いや……間違ってはいないが」
「……それよ! その発想は無かったわ!」
「「は?」」
二人の青年の声が重なった。
「バトルロイヤルハロウィンよ! こうしちゃいられないわ、早く準備しなきゃ!」
そういって一人走りだしたミレイ・アッシュフォード、彼女の道を阻むものは存在しなかった。
「……そうだった、僕が原因だった」
一人呟く青年の背中には哀愁が漂っていた。
「あぁ、その、なんだ、俺達はあまり気にしていない。
いつもの会長の気まぐれだ、お前のせいじゃないさ」
「……ありがとう」
そう言いつつも明らかに気にしている様子の銀髪のドラキュラに苦笑する黒髪の魔法使い
二人の会話する様子は一人のメイドによりキッチリと写真に収められていた。
「二人ともー!」
40ヤード走4秒2を凌駕するフランケンシュタインが全速力でやって来た。
「後五分か、楽しみだね」
「そう思ってるのはお前と会長くらいだ」
「スザクは逃げ切れる自信が有るんだろうけど、僕たちは……」
「大丈夫だって、君も十分逃げ切れるって」
「ルルーシュは?」
「……」
「何故そこで黙るんだ!?」
「いや、その……」
「「御愁傷様?」」
「ハモるな!」
「……後三分で開始します、その前にルールの確認をします」
聞こえてくる気弱そうな女の子の声に僕たちは耳をすませた。
「もう一度ルール確認をしておくか」
「ルールは守らないとね」
「生徒会メンバーのルルーシュ、スザク、ライ、リヴァル、シャーリーが飴を持って逃げています。
捕まえて飴を強奪してください。
飴は生徒会本部にいるカレンに渡すと数に応じた景品が貰えます」
「ルルーシュ」
「何だ?」
「やっぱりハロウィン関係無い気が……」
「気にするな、俺は気にしないことにした」
「しかし、表向きのルールはあれだけだが……」
「うん、僕たちには更にあるルール……罰ゲームが追加される」
二人は遠い目を、いや、死んだ魚の様な虚ろな目で空を見上げた。
「大丈夫だよ、飴を全部取られたら、だし」
スザクの言葉にとりあえず正気に戻った二人だったが
「だが、これは一度捕まればアウトだろう」
「うん、一応お菓子をバラまいて逃げるっていう手もあるけど……」
「あぁ、普通は守らな……」
「何を言ってるんだい、ルルーシュ。
ルールは守らければいけない、皆もそれは分かってるよ」
「……そうだといいね」
「まもなくバトルロイヤルハロウィン開催です!
じゃあ頼むわよ、ナナリー!」
「はい、えーと……人はぁみんな平等ではぁありません。
ですから、奪い、競い合うのです。
バトルロイヤルハロウィン、開催です……にゃ」
「……ナナリーにあの男の言葉を真似た言葉を……」
「ル、ルルーシュ?」
「フハハハハハ、良いだろう、その挑戦、受けてたつ!」
「なお、生徒会メンバーが飴一部をばらまいた場合、それを先に拾い集めねばなりません
主なルールは以上です、皆さん頑張ってください……」
「しかし、表向きのルールはあれだけだが……」
「うん、僕たちには更にあるルール……罰ゲームが追加される」
二人は遠い目を、いや、死んだ魚の様な虚ろな目で空を見上げた。
「大丈夫だよ、飴を全部取られたら、だし」
スザクの言葉にとりあえず正気に戻った二人だったが
「だが、これは一度捕まればアウトだろう」
「うん、一応お菓子をバラまいて逃げるっていう手もあるけど……」
「あぁ、普通は守らな……」
「何を言ってるんだい、ルルーシュ。
ルールは守らければいけない、皆もそれは分かってるよ」
「……そうだといいね」
「まもなくバトルロイヤルハロウィン開催です!
じゃあ頼むわよ、ナナリー!」
「はい、えーと……人はぁみんな平等ではぁありません。
ですから、奪い、競い合うのです。
バトルロイヤルハロウィン、開催です……にゃ」
「……ナナリーにあの男の言葉を真似た言葉を……」
「ル、ルルーシュ?」
「フハハハハハ、良いだろう、その挑戦、受けてたつ!」
ローブをマントの様にひるがえし走り去るルルーシュ、しかもやたら速い。
その姿がニュースで話題の仮面の男とだぶるのは気のせいだ。
「スザク、ルルーシュが壊れた!」
「あぁ、気にしちゃいけないよ。
ナナリーのことになるとよくああなるよ。
僕も行かなきゃ……一時間後、無事に会えるといいね、今日はユフィと……」
軽く死亡フラグを立てて立ち去ったスザク、たぶんそんなフラグはへし折るだろうが。
「さて、僕も逃げるか」
開始したばかりだからか、まだお菓子を奪おうとする生徒には遭遇していない。
「でも、油断は禁物……ッ!」
横から飛んでくる生卵をよけるライ、飛んできた方向を見ると
「「「「「「トリック・オア・トリート!!!」」」」」」
三十人近くのスポーツクラブに所属する生徒達が木の影から現れた!
……どうやって隠れていたのかは聞いてはいけない。
「覚悟するがいい!」
そう言うが早いが卵を投げてくる……おそらく野球部員
「……見えた!」
マントをひるがえし避けるライ、そこに
「とぉりゃゃゃゃ!」
レイピアを構え突っ込んでくるフェンシング部員
「それに当たるわけにはッ!」
すんでの所で回避に成功し……
「今度はこっちの番だ!」
加速するライの体……一瞬で間合いを詰める。
身構える相手を見ながら……
「戦略的撤退!」
逃げ出したライ
しばらく呆気に取られていた面々であったが
「お、追えー! 逃がすんじゃないぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
(広いところでの一対多は流石に無理だ)
走りながらも思考を巡らす(狭いところならば……時間制限があるのだから正しいかもしれないが……)
校舎が見えてくる
(狭ければ逃げ場がないぶん不利か……いや、逆に考えるんだ)
校舎に突入するライ、辺りを見渡しながら考え続ける
(大人数で行動してるあっちは急な動きにはついて来れない)
階段を勢いよく駆け上がり踊り場へと到達する
(……よし、ここだ)
踵を返すと今まで追ってきていた集団へと向かう
「む、向かってきた!?」
「う、うろたえるな! 所詮は一人、戦いは数だよ!」
「そうだ、この物量を覆せるわけが無い!」
その声を聞きながら駆けるライ、そして
「跳んだ!?」
「空中では身動きが取れまい!」
「ね、狙い撃つ!」
しかし、動揺してるのか卵は命中しない
「お、俺を踏み台にしたぁ!?」
ライは先頭の男の頭を踏む
そして、もう二、三人を踏みつけて階段を後にするライ
「う、うわぁ!」
「あ、危ない、支えるんだ!」
「もうあんなとこまで!?」
「く、まんまとしてやられたか」
階段の上の人が倒れてくるためどうしても下の人は支えなければならない
その隙にライは遠くへと逃げ出していた。
(階段でのバトルは大変危険な行為です、良い子も悪い子も真似してはいけません)
「後三十分か……何とか逃げ切れそうだな」
あまり人気の無さそうな場所を選んで進むライ、気分は某蛇だ。
「そこまでだ、ライ!」
響く叫び声、ライの視線の先には
「……C.C.?」
C.C.がいた、猫耳を付けた。
「何故ここに?」
「いて悪いか? それにハロウィンなんだろ?
魔女である私にはピッタリではないか」
そう言い胸を張るC.C.揺れる猫耳がやたらと愛らしい。
「その猫耳は? 後、さっきの言葉はどういう意味だ?」
「ハロウィンだから仮装に決まっているだろう?
そして後者だが、簡単に言うと、トリック・オア・トリート!」
(何故だ、何故彼女が僕の持つ飴を狙う)
C.C.がこのイベントに参加する意義を模索するライ、その様子を見つめながらおもむろにC.C.は口を開く
「これを見ろ」
どこからともなく出したチラシをライに差し出すC.C.
ある一文を目にしたその瞬間、すべてを理解した。
そう、飴三十個=ピザ一週間分、の文字を目にした瞬間に
「と、言うわけだ、トリック・オア・トリート!
いや、むしろトリート・オア・トリート!」
「強制か!」
「当たり前だ、私はC.C.だぞ?」
そして手を差し出すC.C.、ライは飴を渡すしかないのか!?
「……一つ思ったんだが」
「何だ? 素直に飴を渡しさえすれば私はそれで構わんぞ?」
「いや、このイベントって学園の生徒しか参加できないんじゃ……」
「なっ……」
「いや、だって今日は別に一般解放してる訳じゃないんだし……C.C.?」
ライの言葉を聞き、うなだれるC.C.
心なしか震えている。
「私は……私は……」
「あー、その、そんなに落ち込まなくても……
ピザなら僕が一枚くらい奢るよ」
ライの言葉を聞いた瞬間震えが止まる。
「……三枚」
「……分かった、三枚だ」
「そうか、まぁ景品には及ばんがそれで妥協してやる」
そう言って顔をあげたC.C.の顔には笑みが浮かんでいた。
「っ、君は」
「何だ? 不満か?
だが、約束したのはお前だぞ?」
そう言い残しC.C.は去っていった。
(あれ? これって僕が損しただけじゃ……)
その後の十五分は特に語るべきことは起こらなかった。
ただ、黄色い歓声が何回か沸き上がった、とだけ言っておこうか。
「終了ー! 皆お疲れさまー!
景品交換は終了から三十分受け付けるわよー!」
「やっと、終わったか」
飴の数は気付けば最終的には半分、ちなみにすべて女性から逃げる際にバラまいていた。
流石に一般女生徒を足蹴にするのは気が引けたらしい。
「ライも大丈夫だったみたいだね」
仮装がピッタリな気がするスザクがやって来た。
「あぁ、それで……他の皆は?」
「シャーリーは結構ギリギリだけど逃げ切ったらしいよ、ルルーシュは……うん」
その一言でライは全てを理解した、すなわちルルーシュの敗北を。
「……生徒会室に行こうか」
「……そうだね」
ルルーシュの罰ゲームが軽いものになるといいなぁ、と祈りながら二人は生徒会
室に向かった。
おまけ
罰ゲームを実行するルルーシュ、その罰ゲームの内容とは!?
「く、屈辱だ」
「言葉遣い! ほら、もう一回」
「……屈辱だわ」
「そんなことないよ、似合ってるって」
「そんなこと言われても嬉しく無いわよ」
一人で男女逆転祭……というか女装をするルルーシュ、とそれを見ている生徒会メンバー
「やっぱり……可愛い」
「むぅ、何か負けた気分」
こんなにも女装が似合う男はそうはいないだろう。
(まるで前世から女装をやっていたみたいに似合ってるなぁ)
ちなみに一応生徒会での仕事中限定での罰ゲームであった。
……念のため。
おまけ2
リヴァルの活躍
「よし、ここに隠れてれば見つからないっしょ」
清掃用具が入っているロッカーに隠れる狼男、リヴァル
一時間後
「終了ー!」
「……誰も来ねぇ」
一人項垂れるリヴァルだった。
あとがき
ハッピーハロウィン……には間に合わなかったぜorz
とりあえず過去最長のSSです!
批判だろうが何だろうがバンバン来てください。
では次回も全力を挙げて投下させていただきます!
トーマス卿、
>>614、
>>615は上手く繋げて、
>>617は無視してください
>>625 乙!ひそかに楽しみにしてました。
ナナリーの開始宣言がGJ過ぎるぜ…。「にゃ」って!
>>625 GJ!パロディかくあるべし!本編でありそうなイベントでした!
文章としては句読点が抜けてるのが惜しまれるところですが、
勢いがあるので気にしない(出来ない)かなと。
次回の投下を全力でお待ちします。
>>625 面白かったー!
スザクの体力馬鹿っぷり、ライのとぼけた感じ、暴走一直線な会長、
自ら墓穴を掘るルルーシュ(最初の勢いで早々に体力使い果たしたに違いないw)
みんな楽しくてもう。素敵でした。
シャーリーは、シャーリーは何の仮装を!?
リヴァルはいかにもそういうことやっちゃいそうで泣けました。可哀相な子だw
投下お疲れ様でした!
またの機会をお待ちしております。
>>625 すごく面白かったです!ホントにルルーシュは最高ですねw
こんな風にギャグを書くにはやっぱり勢いでしょうか?
自分も見習わせていただきます
さて自分も21:00頃投下予定です
8レスくらいになると思います、支援があれば嬉しいです
どうもお久しぶり(?)です、ピザーライです
SSの配達に参りました
今回も長編「コードギアス REGAIN COLORS」の続きとなります
それでは注意をよく読んでお召し上がりください
注意
これはR2に「ギアス編」終了時のライを介入させたものです
本編の部分をカットする場合もあります、ご了承ください
支援
第21話「狙われた二人」
「ライ、オレンジがこちらに向かっているらしい。迎撃するぞ」
「オレンジ?・・・・・あぁ、例の・・・・・」
確かルルーシュの話だと彼はブラックリベリオン時にナイトギガフォートレスに乗り、ルルーシュと戦ったらしい。
その後、機体と共に姿を消していたが、向こうが回収していたようだ。
そして、刺客として送り込まれてきた。そう判断するのが正しいだろう。
「どうやらオレンジの他にも数名ここに入ってきているようだ」
「どうする?僕はともかくルルーシュは・・・・・」
相手はギアスのことを知っている。何らかの対策は講じてきているはずだ。
そうなると生身での戦闘はルルーシュには極端に不利となる。
「ライは他の刺客を頼む。俺は準備をするまで時間を稼いでくれ」
ルルーシュの言葉には勝算の色が見られた。
「しかし、スザクがいて助かった。あいつならシャーリーが危険な目に合わせないだろう」
「それなら・・・・いいんだけど・・・・」
ライは何故か嫌な予感がしてならなかった。
しかし、今は目前に迫る敵を排除しなければと頭を切り替えることにした。
支援!
そして、その嫌な予感は的中したのだった。
ルルーシュと別れ、別行動を取っていた時だった。
ライがビルを降りているとふと一階下のフロアにシャーリーがいるのが見えた。
「な!?シャーリー!?」
ライはそう叫ぶとそこから飛び降りるとシャーリーの元へと向かう。
「ライ君!」
「何をやってるんだ。ここは危険だから離れないと!」
「でも、ルルとライ君が」
そうやってシャーリーの手に持っている拳銃に気付き、ライはそれを慌てて取り上げた。
「こんなことは僕がやる、約束したよね?」
「でも・・・・」
「・・・・・っ!?シャーリー!!」
それでも何かを言いかけたシャーリーをライは抱き寄せると横に飛んだ。
バンッ!!
先ほどまで2人がいた場所を銃弾が通り過ぎて壁に穴を開けていた。
すぐにライはシャーリーの前に出て撃ってきた方向を見る。
そこにはスーツを着た何人かの男が立っていた。
「さすが狂王ライと言ったところでしょうか」
「・・・・・ジェレミアと共にここに来た刺客か」
「えぇ、V.V.様からのご命令でルルーシュと狂王ライ、あなたを殺しに参りました」
前方には4,5人の男たちがライとシャーリーに銃を向けている。
支援
「あなたはV.V.様の計画の障害となる。排除させていただきます」
このままでは後ろにいるシャーリーまでも巻き込んでしまう。それは避けたかった。
「この娘は一般人だ。解放してやってくれないか」
「それは出来ません。目撃者は排除しろとのご命令です」
そう言うと男たちは耳に何かイヤホンのようなものを付ける。
(僕のギアス対策か)
ライはそう結論付けると素早くポケットに入れていた咲世子さん特製の煙玉を爆発させた。
「シャーリー!こっち!」
ライはシャーリーを引っ張ってすぐに物陰に飛び込んだ。
向こうもすぐに発砲してきたが、どちらとも当たらなかったようだ。
シャーリーはこの事態に体が震えて動かないようだ。さっきも引っ張ってどうにか走れたのだ。
(無理もないか)
ライはそう考えるとシャーリーが持ってきていた拳銃を構える。
彼女がこれを持っていたのは今の自分にとっては救いだ。
これなら十分戦える。
しかし、ネックはやはりシャーリーがいることでもある。
ここからでは下にも上にも行く道がないのだ。
シャーリーを庇いながら戦うとなると難しい状況ではある。
「ライ・・・・君」
震えるシャーリーがライに縋り付いてくる。
「シャーリーはここにいて・・・・・・大丈夫。シャーリーは絶対に僕が守るから」
ライはそう言うと返事を待たずに物陰から飛び出していった。
支援!
ライが煙から飛び出したのを男たちは見つけると拳銃で一斉に撃ってきた。
それをライは超人的なスピードで走り、物陰に飛び込むとすかさず近くにいた男の1人を撃ち殺す。
そのままライはまた別の物陰に飛び込み、銃弾の雨を防ぐ。
スザク並とまではいかないが、超人的なスピードで男たちが狙いを定められていない。
2人目が殺された時点でもう男たちはライしか視界に入っていないようだった。
徐々にライはシャーリーが隠れている物陰から男たちを引き離していく。
「そろそろかな」
ライは物陰に隠れながら携帯でシャーリーに連絡する。
携帯の着信音がしないか心配だったが、拳銃を撃つ音が響いて聞こえなかったようだ。
『ラ、ライ君!?』
「シャーリー、今あいつらを引き離しているからその内に階段で下に一気に降りて」
『で、出来ないよ』
「大丈夫。シャーリーの運動神経ならすぐだから・・・・・僕が援護する」
『でも、それだとライ君が・・・・・』
「僕は大丈夫・・・・・・だから、僕を信じて」
『・・・・・・・分かった』
そう答えたシャーリーの声は震えていたが、彼女の決意の色は窺えた。
支援
「それじゃあ・・・・1・・・・2・・・の・・・・・3!!」
ダッ!とライとシャーリーは同時に飛び出した。
シャーリーのほうに気が付いた男をライはすぐさま撃ち殺す。
そのまますぐに自分は物陰に飛び込み、残りの2人へと牽制として銃を撃つ。
幸い2人の方はライに気が向いてしまっているためシャーリーに気が付いていない。
シャーリーの方はあと数メートルというところだった・・・・・・しかし・・・・。
「あっ!」
シャーリーは躓くと転んでしまっていた。
恐怖の所為で足が竦んで動けないのを無理に動かしたからだろう。
むしろこの状況下であの距離を普通の学生が走れたほうが不思議だったのかもしれない。
転んだ音に男の1人が気が付いたらしい。
シャーリーの目には自分のほうへと拳銃を向ける男の姿が見えていた。
(嫌っ!ルル!)
バァン!
支援!
「ぐぅっ!」
その声を聞き、目を開けるとライは両手を広げてシャーリーを庇っていた。
先ほどまであんなに遠くにいたのにここまで一瞬で着いたのだろう。
そんな疑問と共にライの脇腹が赤く滲んでいくのが見えた。
「こ・・・・のっ!」
ライは痛みに顔をしかめながらも先ほど撃った男を撃ち殺す。
しかし、そこまでが限界でライは片膝を付いてしまう。
それでもライはシャーリーを庇うように立っている。
「ライ君!もういいよ!私のことはいいから!」
「良くないよ・・・・シャーリーは僕の友達なんだ・・・・・・」
「それに」とライは言葉を続けた。
「もうこれ以上・・・・・大切な誰かを・・・・失いたくはないんだ」
そうやってライは気力で立ち上がるが、どうにもならない。
もう男が目前にまで迫ってきていた。
「この化け物め・・・・・まぁ、いいでしょう。それでは・・・・死んでください」
そうして銃口を向けてくる男をライは悔しそうに見つめる。
銃を持つ手が上がらない。
(守れないのか・・・・・僕は・・・・・また・・・・・・)
母親や妹のことがフラッシュバックのように蘇ってくる。
その姿がシャーリーやルルーシュに変わる。
(嫌だ!僕は・・・・僕は・・・・・誰か・・・・・誰か助けてくれ!)
そう心の中で叫んだ時だった。
支援
「受けよ!忠義の雷!!」
その声と共に上の階から飛び降りてきた人物が男を斬り伏せていた。
その状況にライとシャーリーは目を丸くした。
「ライ卿、遅れてすまなかった」
「・・・・ジャレミア・・・・ゴットバルト?」
目の前にいる人物こそルルーシュを狙ってきた刺客のはずのジェレミアだったのだ。
「何・・・・で・・・・」
「ライ卿を助けろと我が主ルルーシュ様のご命令だったのだ」
どうやら目の前の男からは殺意を感じない、本当のようだ。
何があったのかは分からないが、ルルーシュがうまく事を運んだらしい。
「ルルーシュは・・・・無事・・・・なんですね」
ライの言葉に頷くジェレミアを見るとライは嬉しそうに笑った。
ルルーシュもシャーリーも無事だったことでライの中から力が抜ける。
「よか・・・った・・・・」
そこでライの意識が途切れた。
支援!
『何故ライが狙われた。奴らの狙いは俺一人じゃなかったのか!』
C.C.は目の前の画面に映る怒りに震えているルルーシュを見る。
いつもの冷静さの欠片も感じられなかった。
「ライがギアスを持っているからだろう」
『それが何故知られている。ライのギアスを知っているのは俺やお前ぐらいだろう』
「いや、奴らはライについて知っているだろうな」
『どういうことだ?』
本当のことを話しておかない限りルルーシュが落ち着くことはないだろう。
C.C.はそう判断するとゆっくりと口を開いた。
「V.V.だ」
『今の嚮団のトップか、そいつがライについて知っていたと?』
「あぁ、そうだ」
『だが、どうしてそいつがライについて知っている。面識はないのだろう?』
そのルルーシュの言葉にC.C.は少し目を伏せる。
「あいつにライを会わせたのは私だ」
『何っ!?』
それはライが眠りに付く時のことだ。
C.C.は神根島の遺跡でライの眠りに付かせることをV.V.に任せていたのだ。
あの時はV.V.がその遺跡にいたことやV.V.自身も狂王に興味があったことで了承を得ることが出来た。
しかし、向こうにライの存在を知られてしまうこととなった。
『何故、会わせていた。いや、そもそもいつの話だ』
「それを聞いてもお前には分からないさ。それでルルーシュ、お前はこれからどうするんだ?」
そう言いながらもC.C.にはルルーシュの答えの予想は付いていた。
そして、決めていた。嚮団の最期を見届ける覚悟を・・・・・・・・。
支援
以上です、いかがでしたでしょうか?
とりあえずこれでシャーリーの死亡フラグは回避ということにしました
ジェレミアの登場シーンはやはり最初はカッコイイものにしたかったのでこういった形に
そして、ギアス編での最後のV.V.の登場部分の意味もこちらで勝手に作りました
色々と物語が変わってきましたが、このまま見ていって頂けると嬉しいです
それではまた次の配達で!
>>649 ピザの配達人卿、GJでした! 今回もとても美味しくいただきました!
シャーリーが、シャーリーが生き残った……
ある意味最大の分岐点が発生!
ここからの展開がいよいよ読めないものに!
しかし、嚮団は殲滅するみたいですね。
そしてジェレミア卿が無駄なまでに素敵ですw
今回もお腹が膨れました。
貴公の次の配達を全力を挙げてお待ちしております!
>>649 GJでした!!
やっぱりシャーリー生存は良いもんですね。
次回の投下をお待ちしてます。
さて、自分も投下したいのですが、19レス程度使用しますので
どなたか支援して頂けませんでしょうか?
了解しました。
我が全力で支援しましょう!
支援しますよ
有り難うございます。ではその前に例の如く注意書き等を少々。
タイトル 〜 狂気の片鱗(後編)〜
カップリング なし
前作 〜 狂気の片鱗(前編) 〜 の続きになります。
以下注意点
●黒騎士ルートを準拠してます。
●全体的に暗いです。
●王様ライの性格は自分の考えに依存してます。苦手な方はご注意下さい。
●前回に続き、オリキャラ1名出ます。名前は無いですが、同じく苦手な方はご注意下さい。
では、投下行きます。
支援
〜 狂気の片鱗(後編)〜
謁見の間に戻ったライは一人、皇帝に報告を行っていた。
「ご苦労であった。して……あの者の姿が見えぬが?」
皇帝が相変わらずの鋭い視線を浴びせながら問い掛けると、誰を指しているのか理解したライは、淡々とした口調で返す。
「此処に来る途中で、本来の仕事に戻るよう命じておいた。予定通りだろう?」
「そうであったな」
「しかし、ゼロを模した姿で嘗てゼロであった者を監視させようとは。愉快だが、今後の事を考えると少し頭が痛いな」
「ほぅ。不服か?」
珍しく愚痴とも聞き取れる発言に気を良くしたのか、皇帝は笑いを含んだ口調で問うが、ライは軽く首を振った後、渋々といった様子で答えた。
「趣味では無いだけだ」
その様子が気に入ったのか、皇帝は今度こそ愉快そうに笑みを浮かべた。
ライは、その表情が些か気にくわなかったが、咎めたところで皇帝は意にも返さないという事も、この数ヶ月で十分に理解していた。
「ついでだ、例の報告をしておく」
さっさと立ち去るべきと判断したライは、普段モニター越しに行っている報告を行う。
「今のところ、C.C.がルルーシュに接触しようとした形跡は無い」
それを聞いた皇帝は、両眼をスッと細めると感慨深げに述べた。
「思いの外、慎重であるか」
「ああ、あまり長引くのは避けたい所なのだがな。エリア11では残党狩りも行っていると聞く。その際に捕縛出来れば手っ取り早い。
このままの状態が続くとなると、何れこちらから誘い出す事も視野に入れる必要が出てくるが?」
「その際には御主に一任する。それと、もう一つの件はどうなっておる?」
未だルルーシュの身辺に変化が無いという事を聞いた皇帝にとって、今は恐らくそちらの方が気掛りなのだろう。
支援!
支援の嵐
「そちらも、今のところ動きは無い。だが、杞憂ではないか?」
「そうである事を願っておる」
「そうか……まあ、いい。今回はこんな所だ。しかし、いつもと変わらないな」
「そう言うでない。ご苦労であった」
皇帝からの労いの言葉に対して、ライは静かに頷くと外套を翻して部屋を後にした。
―――――――――――――――――
帝都の一室には、ラウンズ専用の談話室がある。
ライとの拝謁を終えた彼等は、その場所に戻ると、思い思いに寛いでいた。
が、そこでスザクは先程の件について、ジノから追求を受けていた。
「なあ、スザク。だからさっきの態度はどういう事なのか説明してくれよ」
「本当に済まないと思ってる。ジノには感謝してるよ」
友人の豹変した理由を知りたかったジノは、スザクの背中に寄り掛かるかのような姿勢で何度も同じ問い掛けをしていた。
しかし、スザクは謝罪の言葉を繰り返すだけで、一向に理由を話そうとしない。
それに、スザクはこういった事をされると、決まって――重いんだけど――と抗議してくるのだが、余程反省しているのか、その言葉はまだ聞こえてこなかった。
その事に気を良くしたジノは、次第に当初の目的などどうでも良くなってきた。
普段中々取る事の出来ないスザクとの、こういったスキンシップを暫く楽しむべきかなと考えたようで、一向に解放する様子が無かった。
一方で、いい加減身体を支える事の限界に近付いていたスザクは、とうとう根負けした。
「分かったよ。話すからどいてくれないか?」
話すと言われてしまっては仕方ない。
ジノは――はいはい――と言うと背中から離れる。
重荷から解放されたスザクは、肩を二三度揉んだ後、辿々しい口調で理由を話したが、それを聞いたジノは拍子抜けした。
支援
紫煙
「何だそれ?ゼロは死んだんだろ?あれがゼロの訳が無いって事くらい気付くべきだろ?」
「頭では理解していたよ。けど、心がついて行かなくてさ」
ジノの感想は、――呆れた――と言った様子ではあったが、正論を吐かれてしまったスザクは、ぐうの音も出ない。
スザクが少し肩を落としていると、直ぐ傍で聞き耳を立てていたアーニャから、トドメとも言える言葉が飛んで来た。
「でも、時と場所ぐらいは考えるべき」
アーニャは、携帯をイジリながら画面より顔を上げる事無くそう言った。
その言葉に、スザクは俯くと――ごめん――と呟くように謝ったが、傍でアーニャの言葉を聞いたジノが悪ノリした。
「そうそう、アーニャでさえ写真を撮る事は控えてたし――」
「ジノ、それは何かの侮辱?」
その時になって、初めてアーニャは顔を上げると悪ノリしているジノに冷めた視線を向けた。
「いやいや、滅相も無い」
やり過ぎたと思ったジノは、首を左右に振って否定するが、そんな彼をアーニャは無言で見つめ続けた。
―――――――――――――――――
一方、少し離れた場所ではジノの弁明を曲代わりに、ソファーにゆったりと腰掛けていたノネットが徐に口を開いた。
「ビスマルク、あの殿下は一体何物だ?」
しかし、いきなり問われたにも関わらず、ビスマルクは冷静に嘯いてみせる。
「さて?私は陛下より、殿下をあの場にお連れするよう命を受けただけだからな」
彼は、ライの事について皇帝より全て聞かされていた。
それは、同じラウンズと言えども決して話す事など出来はしない事。
何よりも、あの青年が古の王、国是の元となった伝説の王なのだと言う事など、話したところで信じないだろうとも思っていた。
ビスマルクは顔色一つ変える事は無かったが、やはりその程度の言葉ではこの女傑の疑念は払拭出来なかった。
支援
支援
「まあ、今はそう言う事にしておこうか」
まるで、――直に聞き出してやるぞ?――とでも言いたげにノネットは口元を僅かに歪ませた後、快活に笑った。
そんな彼女の様子を横目に、ビスマルクは一人心の内で嘆く。
――いつまではぐらかせるか……。面倒な事にならなければ良いが。
二人がそうこうしていると、その会話が聞こえたのか、未だにアーニャの冷たい視線を背負ったジノが割り込んで来た。
「な、なあノネット。あの殿下の事を話してたのか?」
「何だジノ、もう逃げて来たのか?情けないな」
ノネットが先程の快活な表情そのままに指摘すると、ジノは軽く頭を掻きながら苦笑を浮かべた後、話しを逸らそうとする。
「いや、まあ……あれ?そういえば他の連中は?」
白々しいまでの態度だったが、ノネットは――仕方が無いな――と言った表情を浮かべた後、話しに乗った。
「モニカは部隊の訓練。ドロテアは各エリアの視察に戻ったよ」
「そっか。二人とも大変なんだな」
「おいおい。言っておくが私も忙しい身だぞ?」
ジノの感想には、自分が入っていなかった。
その事に――暇人扱いされては堪らない――と思ったノネットは、釘を刺すように付け加えたが、ジノは尚も白々しい様子で問い掛けて来た。
「あれ?何か任務でもあったっけ?」
「ああ、私はこれからコーネリア殿下の見舞いだ」
あっけらかんとした口調で、そう言い放つノネットを見て、ジノは思わず突っ込んだ。
「それってさ……任務って言えるのか?」
対してノネットは、胸を張ると堂々と答える。
「言えないな。だが、これは私にとっては任務以上に重要な事だ」
まるで――文句あるか?――とでも言いたげなその態度に、ジノは思わずずっこけそうになる。
支援
そんな二人の漫才のようなやり取りを見つつも、問われてはいないが、同じく暇人扱いされるのは嫌だったのか、アーニャが割り込んだ。
「私は、これからナナリー皇女殿下の警護」
ノネットは、アーニャの発言を微笑ましく思いながらも――これは使えそうだ――と思うと、我関せずといった様子でいる男に、再び狙いを定めた。
「なあ、ビスマルク。皆こうして忙しい合間を縫って集まったんだ」
自分に話しを振って来た時点で、ビスマルクは彼女の狙いに気付いていたが、敢えて遮る事はせずに目で続きを促すと、それを認めたノネットは、悪戯っぽい笑みを浮かべながら尋ねる。
「そこでだ、知ってる事を話してくれても良いんじゃないか?」
予想通りの言葉に、ビスマルクは――私は、これから一体どれだけこの言葉を聞く羽目になるのだろうか――と思いつつも、アッサリと受け流す。
「それは理由にはならないな。我々はラウンズだ。ラウンズとは、陛下の勅命があれば何があろうとも馳せ参じるもの。それに、陛下は皆に殿下を紹介せよと私に仰せになられただけだ」
相変わらず堅苦しいビスマルクの返答に、ノネットはつまらなそうな視線を投げ掛ける。
だが、それを受けても尚、ビスマルクの表情は変わらない。
「私を疑いたければ疑えばいい。だが、陛下を疑う事は許さん。例え黒であろうとも、陛下が白と仰れば白なのだ。それを忘れるな」
「しかしな、黒を白と仰るのであれば、お身体を気遣うのも我々ラウンズの役目じゃないか?」
ノネットの発言は、聞きようによっては不敬とも取れるものだったが、彼女の帝国に対する忠誠心は疑いようもない事をビスマルクは知っている。
その為、本来なら追求する事は無いのだが、いい加減攻められ続けるのも飽きてきた彼は、これ幸いとばかりに、ここに来て初めて表情を崩すと似合わない笑顔を浮かべた。
「そんな台詞を、ベアトリスが聞けば何と言うかな?」
すると、その名前を出されたノネットは、彼女にしては珍しく苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべると、
「分かった分かった。忘れてくれ」
そう言うと、降参だとでも言いたげに手を振った。
そんな二人を見ながら――相方を取られた――ジノは、再びスザクに寄り掛かりながら尋ねる。
「暇だよな」
しかし、スザクから返答が来る前に、未だ先程の件を許した気は無かったアーニャが口を開く。
支援!
「スザクとジノを一緒にしないで」
再び投げ掛けられた冷たい視線。
ジノは、彼女を相手に二度と悪ノリはしまいと心に誓いながら、謝罪の言葉を口にする。
「悪かったって。アーニャ、まだ怒ってるのか?」
「別に」
そう言うと、アーニャは半ばソファーに埋もれかけた身体をプイッと横に逸らした後、携帯を弄りながら続ける。
「スザクは覚える事も色々ある。作法についてもそう。今日も私達に合わせられなかった」
アーニャに最早その気は無いのだが、まさか再び追求されるとは思っていなかったスザクは、――参ったな――と言った表情を浮かべると軽く頭を掻いた。
「それに、直にEU戦線に向かう」
すると、続いて語られた彼女の言葉に、この中でただ一人その事を知らなかったジノは驚きの声を上げた。
「えっ?そうなのか?」
「うん。この度の件と一緒に命じられたんだ」
そのスザクの言葉に、ジノはまるで自分の事のように喜んだ。
「そうか!良かったじゃないか!」
戦場に向かうというのに、何をそんなに喜ぶのかと傍目には映るだろうが、ジノはこの中で誰よりもスザクの実力を買っていた。
だが、軍内部には、未だナンバーズに対しての偏見が根強く、ラウンズであるスザクに対してもそれは例外では無い。
ただ、面と向かってそれを言う人間は皆無である。
それは即ち、影口を叩く輩が多いという事だ。
だからこそ、そんな連中にスザクの実力を知らしめる為にも、これは又と無い機会なのだ。
そんなジノの気持ちを分かっているスザクは、友人からの言葉を嬉しく思い――ありがとう――と感謝の言葉を口にした。
その場を暖かかな雰囲気が流れる。
だが、ビスマルクがそれをぶち壊した。
支援?支援!
「枢木。認められたければ戦功を挙げろ」
彼の名誉の為に言っておくが、当の本人にぶち壊そうとする気はさらさら無い。
ビスマルク自身、スザクの事はそれなりに評価しており、発破をかけるつもりでの言葉だったのだが、如何せんその口調は堅苦しい上に威厳が有り過ぎた。
アーニャは相変わらずの無表情だっが、ジノは何とも言えない複雑な表情を浮かべ、ノネットは思わず額に手をやりながら嘆いた。
――全く、言い方ってもんがあるだろう……。
だが、スザクにとって、それは有り難い言葉に聞こえたようだ。
「Yes, My Lord!」
スザクは明確な意思を宿した強い瞳でそう答えると、それを見たビスマルクは静かに頷いた。
すると、気を取り直したジノは、スザクの背中を軽く叩いて再び激励の言葉を送り、アーニャはそんな二人を記録する。
ノネットも、心配したのが馬鹿らしくなったのか軽く笑うと、祝いの言葉を送った。
仲間からの一通りの祝辞が終わると、ふと当初の話しを思い出したジノが一人愚痴をこぼす。
「じゃあ、暇なのは私とブラッドリー卿だけか」
が、再び指摘された。
「違う。ナイトオブテンもスザクと一緒に行く」
「あらら、それは――」
先程とは一転して、哀れむかのような表情を浮かべたジノは、辺りを見渡した。
スザクがそんなジノの様子に首を傾げると、代わりにノネットが答える。
「枢木。同僚の事を余り悪く言いたく無いが、あいつの噂は色々と聞いているだろう?気を付けろよ」
憂いを帯びた表情でノネットはそう忠告すると、室内を見渡し終わったジノが疑問を口にした。
「で、そのブラッドリー卿は?」
「さっき、何か嬉しそうな顔をしながら出て行った」
アーニャの発言に対して、不審に思ったビスマルクが問う。
支援
「それはいつ頃だ?」
すると、アーニャは少し首を傾げて思い出すかの仕草を見せた後、こう言った。
「ジノが逃げた頃?」
その言葉を聞いた瞬間、彼等は同じ事を思い起こすと共に、押し黙ってしまった。
その頃と言えば、丁度、ノネットとビスマルクがライについて話していた頃だ。
不意に一同の頭の中に、先程のライとルキアーノのやり取りがよぎった。
全くもって嫌な予感しかしない。そして、不幸にもこういう時の予感というのは、大抵当たる。
沈黙を打ち破るかのようにノネットが問う。
「なあ、あいつまさかとは思うが――」
すると、何時になく真剣な面持ちでジノが応じる。
「ちょっとヤバいかもな」
アーニャも携帯を弄るのを止めて呟く。
「殿下、ピンチ?」
すると、悲鳴にも似た声でスザクが叫ぶ。
「ヴァルトシュタイン卿!!」
皆、一様にライの身を案じていた。
それと同時に、スザクを除いた彼等は、幾らルキアーノでも流石に皇族相手に無茶はしないだろうとも思っていたが、如何せん相手はブリタニアの吸血鬼との異名まで持つ男だ。
ハッキリと断言出来ない。
しーえん
――あの男の前で、二度と挑発だけはしてくれるなっ!!
仲間からの言葉を聞きいたビスマルクは、心の中でそう叫んだ後、勢い良く立ち上がると出口に向かって一目散に走り出した。
だが、彼等と違って、ビスマルクのそれはライの身を案じての行動では無い。
ライの伝え聞く所業と、何よりもギアスの力を知っている彼にとって、危険なのは寧ろルキアーノの方だった。
そんなビスマルクの行動を見たスザクも、すかさず後を追う。
スザクの場合は、純粋にライの身を案じて居ても立っても居られなかったからだ。
二人の突然の行動に呆気に取られていた3人は、勢い良く扉が開閉する音を聞いて我に返った。
「……さて、それでは後を追うとしようか」
そう言ってノネットはソファーより立ち上がると、軽く背伸びをした後、出口に向かって歩き出した。
だが、そんな彼女を見てジノが問い掛ける。
「あれ?お見舞いは?」
ビスマルクが向かったのならば大事にはならないだろうと思っていたノネットは、その言葉にクルリと振り向くと、心底嬉しそうな笑みを浮かべた。
「無論行くさ。だが、土産話の一つでも、持って行って差し上げたいからな」
そう言って歩き去るノネットから呆れ顔で視線を移したジノは、未だに携帯を弄っているであろう同僚に声を掛ける。
「なあ、アーニャ。私達も行こうぜ……ってあれ?」
が、先程までそこに居た筈のアーニャの姿はいつの間にか消え失せて、慌てたジノが出口を見た時、
「記録する」
「ハハッ!それは良いな」
そこには、ノネットと会話しながら並んで歩くアーニャの姿があった。
「おいおい、ちょっと待ってくれよ!」
そんな二人の姿を見たジノの悲痛な叫びが、室内に木霊した。
―――――――――――――――――
支援こそ我が忠義の証
皇帝への報告を終えた後、嚮団へ戻るべく謁見の間より退出したライは、そこで待ち構えていた一人の男、ルキアーノ・ブラッドリーに声を掛けられた。
「これはこれは、殿下。お待ちてました」
ライの姿を認めたルキアーノは、優雅に腰を折りながら愉悦を含んだ口調で語り掛けたが、ライは全くの無表情で応じる。
「私は待たせた覚えは無い」
「ご冗談を。あのような熱烈な視線を向けておいて、今更それは無いのでは?」
その言葉に、ライはまともに付き合うのは馬鹿らしいと結論付けると、無視するかのようにルキアーノの脇を通り過ぎようとした。
「おっと」
だが、その声と共に、ルキアーノはライの行く手を阻むかのように立ち塞がると、再び間近でライの姿を観察する。
――おやおや、これはまた何とも華奢な皇子様だ。
だが、先程とは打って変わって、ルキアーノからの値踏みするかのような視線を受けても、ライが表情を変える事は無かった。
「何のつもりだ?」
「殿下に興味があるんですよ。少しお付き合い頂けませんかねぇ?」
そう答えたルキアーノの口元が妖しく歪む。ライが先程見せた殺気が、ルキアーノを刺激していたのだ。
あれはどう考えても戦場を知る者が纏うもの。だが、それは皇族だからと言って特段珍しい事では無い。
コーネリアのように自ら戦陣を駆けるような、武勇の誉れの高い皇族も居るのだから。
しかし、ライと言う皇族の名前は、ルキアーノ自身初めて聞いた名前だった。分からない事だらけの謎の皇子。だが、それが余計にそそるのだろうか。
その為、逃がすまいと思い咄嗟に取った行動だったのだが、それはするべきでは無かった。
――下らない。そんな事で私の邪魔をしたのか。
次の瞬間、視界からライの姿が消えると同時に、ルキアーノの世界は反転した。
しえん
油断していた訳では無い筈だった。。
先程の件で、ライが只者で無い事ぐらいは感じ取っていた。
だが、改めて間近で見たライの体格は、どう考えても自分より劣るものだった。
誤解の無いように言っておくが、相手を外見で判断する事の愚かしさはルキアーノも知っている。
しかし、それを差し引いたとしても、ライの身体は華奢過ぎた。それこそ、女と見間違う程に。
それ故か、ほんの少し心の片隅で舐めていた。
その時になって、初めて己の慢心に気付いたルキアーノだったが、時既に遅く彼の視界には天井が映っていた。
「がっ!?」
同時に、ルキアーノは背面に強烈な衝撃と痛みを感じ、その時になって初めて自分が投げ飛ばされたという事を理解した。
それは一瞬の出来事で、受け身を取る暇さえ無かったルキアーノは、呼吸さえままならない。
すると、痛みで顔を苦痛に歪ませているルキアーノの視界に再びライの姿が映る。
「無様だな」
全く感情を感じさせない表情のままライが告げると、その言葉を聞いたルキアーノは、相手が皇族だという事も忘れ、怒りの赴くまま懐に忍ばせた短刀に手を掛ける。
が、全て見透かしていたのか、華奢な身体のどこにこんな力があるのかとも思えるような腕力で、ライはアッサリとその腕を捻り上げた。
「ぐあっ!?」
そして、彼の代わりに素早く短刀を手に取ると、その剣先をルキアーノの喉元に向ける。
ルキアーノは身動きを取る事も出来ず、屈辱から来る憎悪に顔を歪ませながらライを睨みつけるが、その時、不意に――パキンッ!――と乾いた音が聞こえた気がした。
ライの一切の表情を消した白磁器の様に白い顔、その口元に亀裂が走ったのだ。
それがゆっくりと広がってゆく度に、ルキアーノの聴覚にあの音が響き、自身を見つめる蒼い瞳に光が宿る。
やがて、音が完全に鳴り止んだ時、ルキアーノの視界に居たのは、最早、人形などと形容する事等出来ない、死笑を浮かべたライの姿があった。
その余りの変貌ぶりに、ルキアーノが声を失っていると、ライはその壮絶な笑みを絶やす事無く問い掛けた。
しーえーんー
「さて、下郎。覚悟は良いか?」
それは、数多の戦場を渡り歩いて来たルキアーノをもってしても、思わず肌を粟立せずにはいられない。
そんな底冷えするかのような響きを持っていた。
「貴様の勇気は褒めよう。だが、私の行く手を阻んだ行為は、許せるものではない。その事については、それ相応の対価を払ってもらおうか」
「対価……だと……?」
最早、敬語を使う余裕など今のルキアーノには無かった。
だが、ライはそんな彼を咎める事無く言い放つ。
「貴様の命だ」
「お、脅しのつもりかっ!?」
「脅し?まさか――」
ルキアーノの問いに対して、そんなつもりなど毛頭なかったライは、心底驚いたようで瞳を大きく見開いた。
その態度に、本気で殺そうとしている事を感じ取ったルキアーノは、悲鳴にも似た思いを抱く。
――奪われるだとっ!?この私がっ!?
この時、ルキアーノは本能的に感じ取った。こいつは断じて皇族では無いと。
そんなルキアーノの思いを余所に、ライは再び笑みを深めていく。
それは、最早人が浮かべて良い類のものでは無かった。数多の戦場で奪い続けて来たのは、何もルキアーノだけでは無い。
ライ自身、その手で奪い続けて来たのだ。狂気をその身に纏いながら。
そう考えると、この二人は似ていた。だが、二人を知るビスマルクに言わせれば似て異なるもの。
己の快楽を求めるがあまり、自ら望んで狂っていったルキアーノ。その狂気は普段から消える事は無い。
その為か、それは傍目にも分かりやすく近づく人間は限られる。
対照的に、大切な二人を護る為に狂わざる負えなかったライ。その狂気は、普段は鳴りを潜めており傍目には分からない。
しかし、分かった時にはもう遅いのだ。故に、最も恐ろしいと言える。
ライがルキアーノの喉元に短刀を突き立てようとしたその時、
「殿下っ!!」
一帯に大きな声が響いた。
その声に、軽く舌打ちをしたライが振り向くと、そこにはビスマルクとスザク、二人の姿があった。
支援
―――――――――――――――――
スザクの目の前には、異様な光景が広がっていた。
ライの横顔。嘗ての優しさを帯びた柔和なそれは狂気に歪み、まるで楽しむかの如く目の前の命を摘み取ろうとしていた。
――ライ、止めるんだ!君はそんな事をしてはっ!!
そう思い今直ぐ傍に行って止めようとしたが、身体がそれを拒んでしまう。
――ギアス――
その忌むべき呪いがスザクの行動を阻害した。だが、彼のせめてもの抵抗か。
逃げたしたい衝動を必死に押さえ込み、何とかその場に留まり続けると、同時にスザクの心に黒い感情が沸き上がる。
それは、この呪いとそれを掛けた嘗ての友、ルルーシュに対して。
そんなスザクの思いを余所に、ビスマルクの声に気付いたライが、ゆっくりとした動作で振り向くと、その表情を見たスザクは思わず言葉を失った。
スザクの目に映ったのは、一転して邪魔をするなと言わんばかりの憤怒の表情を浮かべ、あの時以上の覇気を纏ったライの姿だった。
今のスザクはライが豹変した理由を知るよしも無い筈なのだが、
――違う。彼は俺の知ってるライじゃない!
スザクは咄嗟に理解した。何故、ライがここまで変わってしまったかという事を。
ライもまた、皇帝が持つそれに支配されているのだと。
だが、これがライのもう一つの顔だと言う事までは、予想の範疇に入ってはいなかったようで、スザクはギアスに対する憎しみを更に深めていった。
スザクが、ギアスの呪いと必死に戦っている時、他のラウンズも遅れながら到着したが、同じくその光景を見て唖然とした。
支援
「おいおい、本当かよ」
有り得ないと言った様子で呟くジノを余所に、
「……………」
ノネットは剣呑な表情を貼付けると、無言のまま事の成り行きを見送っていた。
一方で、アーニャは相変わらずの無表情でカメラのシャッターを切る。
「一体、何をなさるおつもりですか!?」
明らかに怒気を含んだ口調でビスマルクが問い掛ける。
だが、ライはその言葉に落ち着きを取り戻したのか、スッと先程の無表情に戻した後、今だ憎悪を露にしているルキアーノに対して、事も無げに問い掛けた。
「別に?只の戯れだ。なあ、ブラッドリー卿?」
――只の戯れ――
その言葉は、ルキアーノにとって今まで浴びせられた事も無い程の屈辱だった。
――奪ってやる!!こいつの大切な者をっ!!
心の内でそう誓いながら、射殺さんばかりの視線を浴びせるが、ライは全く動じる事が無かった。
「兎に角、止めて頂きたい。我々ラウンズの命は皇帝陛下の物。いかに殿下といえども――」
そこまで言いかけたビスマルクの言葉を、ライは短刀を床に突き立てると、キインッ!と言う音と共に遮った。
そして、スッと立ち上がると、未だ床に身体を預けているルキアーノに視線を移す事無く、無言でその場を立ち去って行く。
「ルキアーノ。無闇に殿下を刺激するな」
ビスマルクは、憎悪に取り憑かれたかのような表情で居るルキアーノに、忠告とも言える言葉を告げると、ライの後を追うようにその場を後にした。
―――――――――――――――――
支援…
スザクが、ビスマルクと共にその場を去って行くライの姿を、唇を噛み締めながら見つめていると、不意に背後より声を掛けられた。
「枢木。お前はあの殿下と知り合いなのか?」
驚いたスザクが慌てて振り向くと、そこには何時になく真剣な表情を浮かべたノネットの姿があった。
「……何故、そう、思われるのですか?」
「お前の態度を見ていて何となくな」
「…………いえ、知りません。殿下とは、今日初めてお会いしました」
一瞬言葉に詰まったスザクを、ノネットが見逃す事は無かった。
――間違いなく何かを知っているな――と直感したが、問い詰めた所で恐らく無駄だろうとも思った。
何よりも、他人のプライベートな話しに首を突っ込む事は、褒められたものでは無い。
しかし、彼女生来の面倒見の良さから来る事なのか、放っておく事も出来なかった彼女は、せめてもの警告の言葉を送る。
「私から一つ忠告しておく。殿下には近付くな」
「えっ!?」
何故と言った表情を浮かべるスザクに対して、ノネットは表情を崩す事無く告げた。
「あれを見ても分かるだろう?ヤバい気配がプンプンするんだよ。こう見えても私の勘は確かだぞ」
そして――私は、少なくとも関わり合いにはなりたくない――と付け加えると、一転して――土産話が無くなったな――と快活に笑うと、足早にその場を後にしてしまった。
何はともあれこれ以降、ノネットがビスマルクを追求するという事は無くなり、彼の肩の荷が降りた事は確かだ。
そんなノネットを余所に、スザクは向き直ると、小さくなって行くライの後ろ姿を悲しげな表情を浮かべたまま見送った。
―――――――――――――――――
支援
カノン・マルディー二は悩んでいた。他ならぬ主君の考えに、である。
突然現れた異母弟に対して、シュナイゼルは何ら興味を示さなかったからだ。
だが、機情の長という存在には興味を示したようで、それについてはカノンに指示を下した。
その後、皇族達の話し合いはお開きとなり、廊下を歩くシュナイゼルの後ろをカノンは静かに従っていたが、彼の主君があの言葉を口にする気配は一向に無い。
やがて、シュナイゼルの執務室の前まで来た時、居ても経ってもいられなくなったカノンは行動に移した。
「殿下、先程の件の続きですが、念の為にライ殿下の事も調べておいては如何ですか?」
頼まれたのは機情の長の事についてのみで、その事を少々不思議に思ったカノンは付け足す様に尋ねたのだが、返って来た主の言葉に耳を疑う。
「彼の事は放っておいていいよ」
「っ?ですが――」
「放っておくんだ。いいね?」
有無も言わさぬ口調で告げられてしまい、カノンはそれ以上何も言う事が出来ず、
「……畏まりましたわ」
そう返す事しか出来なかった。
だがその時、シュナイゼルの瞳が紅い縁取りに彩られていた事を、カノンが気付く事は無かった。
カノンの言葉を聞いたシュナイゼルは、静かに微笑んだ後、満足したのかそれ以上何も言う事は無く、再びカリグラの件を頼むと、扉の奥に消えていった。
「殿下は一体どうされたのかしら……」
カノンは自室に戻ると、その時の様子を思い出し一人ぼやいた後、再び考込む。
が、一向に答えが出る気がしなかった。
――考えていても仕方ないわね。
そう思い立つと、今は命じられた通りの事をするだけと気持ちを切り替えると、受話器を手に取り何処かへ連絡を取り付けた。
支援
暫くして、カノンに呼ばれたであろう一人の男が現れると、開口一番、シュナイゼルからの頼みを実行に移す。
「急に呼び出して済まないわね。機情の長について調べて欲しいの。手配はこちらの方からしておくわ」
機情という言葉に男は一瞬片眉をピクリと動かしたが、次には何事も無かったかのように問い掛けた。
「どれ程潜る?」
「最深度までお願い」
「これはまた、随分なお願いだ」
カノンからの要求に、男は大層驚いた様子で目を丸くした。
そんな表情をする男を初めて見たカノンは、新しい発見に内心喜びながらも、それを決して表に出す事はせずに話しを続ける。
「表層には恐らく何も無いわ。無理を言ってる事は分かるけれど……」
申し訳なさそうに告げるカノンに対して、男からの返答は何とも歯切れの悪い言葉だった。
「よりにもよって機情か……」
「あなたのそんな自信の無い台詞を聞いたのは久しぶりね」
男とはもう長い付き合いになるが、カノンは彼から弱音とも取れる言葉を聞いたのは本当に久しぶりだった。
だが、男は特に気にした様子もない。
「最近、機情の動きが妙でな。以前とは比べ物にならない程ガードが厳しくなってるんだ」
「それはいつ頃から?」
「あの噂が流れた頃からだ」
珍しく肩を落として自信無さげに語る彼を見て、カノンは――そう――とだけ答えると暫しの間押し黙った。
嫌な予感がしたのだ。男の背後で死神が嘲笑っている。そんな錯覚さえ起こしかねないような予感が……。
しかし、機情に潜り込むなどという危険な任務は、この男以外では不可能だろうと思っていたのも事実だった。
何よりも、こういった任務は初めてでは無かった。
だが、その度に彼は帰還を果たし、有益な情報をもたらしてくれた。長年に渡って、カノンを影で支えてくれた重要な存在。
支援
――彼の強運を信じるしか無いわね。
そう意を決したカノンは、後にこの時の自分の決断を後悔する事となるのだが、彼に対して――お願いするわ――と告げた後、
――これは個人的な事だけど――と前置きをした後、もう一つの頼み事をする。
「潜った際にライという人物ついて何か分かれば、それも引き上げてくれないかしら?」
これがカノンがシュナイゼルからの信頼を得た一面でもある。
何よりも、シュナイゼル自身は天才と呼ばれる部類の人間であり、そんな彼に対して、ただ従うだけの人間では、信頼を得る事など不可能なのだ。
主君の命には絶対忠実。ただし、必要に応じて独断で行動を起こす事もある。
全てはシュナイゼルの為であり、その為ならば例え意に反した事だろうと行う。
それが結果として主を、強いては帝国を助ける事となった事は多々ある。
「ライ?それは誰だ?」
「特一級の人物だとしか言えないわ。それと、その名前は口外無用よ?」
自身の内に未だに拭えぬ不安感を払拭するかの如く、ワザと戯けた様子で口元に人差し指を当てて釘を刺すと、男はそんなカノンの仕草を見て苦笑しながらも静かに、しかし力強く答えた。
「Yes, My Lord」
信頼する男からの頼もしい言葉に、カノンは最後に妖艶な笑みをもって答えた。
しかし、これがカノンが見た彼の最後の姿となった。
三日後、カノンの執務室の電話が鳴ると、電話口より男の声が流れた。
「国是には……触れるな」
今にも消えてしまいそうな声で、男はカノンにそう伝えた後、電話は途切れた。それがカノンが聞いた男の最後の言葉となった。
全ての役者は出揃った。歯車はその速度を増して行く。
コードギアス 反逆のルルーシュ L2 〜序章〜 完
―――――――――――――――――
支援
次回予告だそうです。投下しますか?
→はい
いいえ
銀色の仮面が笑う。
『租界外縁部ニ出ス……カ』
それは罠。
「はい。食い付く可能性は、現時点では最も高いかと」
だが、そうと分かっていながらも、彼女達はそこに飛び込むしかない。
「ライ、私達に力を貸して」
一世一代の作戦。
「ルルーシュ、迎えに来た。私は味方だ」
獅子の牙をすり抜けて、それは成功する。
「思い出した。俺は……俺が、ゼロだっ!!」
再び目覚めた漆黒の魔神。
「C.C.……あいつは、ライはどうした?」
当然とも言える問いに、魔女は言葉を濁す。
「何故此処に居ない?捕まっているのか?」
目覚めたばかりの魔神は、苛立ちを隠す事無く問い掛けるが――
「……あいつは死んだ」
返って来たのは信じたくない言葉。
「あいつの分も、俺は……俺はっ!!」
左腕を失った魔神の反逆が始まる。
「面白くなりそうだな」
迎え撃つは、灰銀色の若獅子。
次回 コードギアス 反逆のルルーシュ L2
〜 TURN 01 魔神が目覚める日 〜
支援
以上で投下終了です。
支援ありがとうございました。
最後に猿が出たけど、終了宣言の時で良かった……。
シュナイゼルはギアス済みかww
GJでした次回も楽しみに待ってます
ライカレ厨卿、GJ&乙でした
ラウンズたちの会話に和みましたが後半の急転直下振りが凄いです。
あのルキアーノを一蹴し恐怖すら抱かせるライの静かなる狂い方の表現が凄かったです、
屈辱を味合わされたルキアーノは今後ライにどのように絡んでくるのでしょうか、
このまま黙っているキャラでは無いですからね。
とまれ次からは本編に入るようですのでが続きに期待させていただきます
>>697 乙&GJです。ライの狂気がひしひしと伝わってきました。
さてこれからどうなるか、続きをお待ちしてます。
さて、0:00頃から久しぶりに投下します。
本文・あとがき合わせて14レス分あります。
>>697 ライカレ厨卿、GJでした!
シュナイゼルには既にギアスがかけられており
生身の戦闘でテンさんを圧倒するライ。
しかしながらイイ具合に狂気が滲み出てますね。
次回予告が想像をどんどん膨らましていきます!
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
ではそろそろ投下します。
作者:余暇
タイトル:てるてる坊主
カップリング:ライ+C.C.
ジャンルはほのぼの、かな?
あとがきも含めて14レスあります。
支援
sien
『てるてる坊主』
アジトのラウンジで休憩中、玉城が部屋に入ってきた。彼の体は雨に濡れていた。
「あーあ、やんなっちまうぜ。いつまで降り続く気なんだよ。」
タオルで頭を拭きつつ、玉城が愚痴をこぼす。今日でもう四日目だろうか、このところずっと雨が降り続いていた。
カレンから聞いた話だと今は梅雨と呼ばれる時期で、一年で最も雨が降りやすいそうだ。
「でも今は梅雨なんだろう?雨が降って普通なんじゃないのか?」
「そりゃそうだけどよぉ、たまにはお天道様の光でも浴びねえと体がふやけちまいそうだぜ。お前だって毎日ジメジメした中を動きたくねえだろ?」
「うーん、確かにそうだな。布団も湿気を含んで気持ち悪いし、窓を開けたら雨が部屋に入ってくるから空気も入れ換えられない。」
玉城の言うことも一理あるな。恵みの雨ならまだしも、こう何日も降られると気持ちが沈みがちになる。そろそろやんで欲しいかも。
「あーあ、早くやんでくれねえかなあ。」
「それは僕も同感だ。でもこういうのは自然任せで、僕たちに何かができるわけじゃないしな。」
「そうだな、せいぜいおまじないとかその程度だな。」
おまじないか。迷信かもしれないが、何もしないよりはましかも。
「なあ、玉城。そのおまじないにはどういうものがあるんだ?僕は記憶がないから何も知らないんだ。良かったら教えて欲しい。」
「ああ、そうだな。雨がやむおまじないといやあ……。」
何か言いかけた玉城が、その動きを止める。
(何も知らねえってことは……。ククク、少しこいつで遊んでみるか。)
何だ、玉城が不敵な笑みを浮かべている。何を考えているんだ。
sien
「実は、日本には『てるてる坊主』という習慣があるんだ。」
「てるてる坊主?何だそれは?」
「家の軒下に人を吊るして、そいつが雨がやむよう一心不乱に祈るんだ。」
「軒下に人を吊るす!?」
僕は驚いた。たかがおまじないで、そこまでしなきゃならないのか?
「しかもそれをするのは、一家の長または組織の重要なポストに就いている男だ。
雨の神を説得するには、それなりの地位にいる者でないと神に対して失礼であるという言い伝えもあるほどだからな。」
「そ、そうなのか。でもそれだと、黒の騎士団ではゼロということにならないか?彼も一応男だぞ。」
そう。黒の騎士団のリーダーはゼロ、つまり彼がてるてる坊主になるということになる。ここで仮面にマント姿のゼロが、軒下に吊るされる姿を想像してみる。
……シュールだ、これはあまりにもシュールな光景だ。いや、誰がやっても一緒か。
「いや、重要なポストにさえ就いていれば、必ずしもトップである必要はない。だから作戦補佐であるお前でも問題はないぜ。
いやむしろ、お前の言うことなら雨の神だってすんなり聞き入れてくれると思うぜ。何しろお前は、フラグ一級建築士だからな。」
「フラグ?建築士?何だそれは。」
「まあ気にするな。とにかくやってみろよ。そんでもって、さっさとこの雨を上がらせてくれよ。なっ、頼むよ。」
玉城が僕の前で手を合わせる。「頼む」と言われても、そんなことをして本当に効果があるかどうかわからないし、僕だって上から吊るされるのは決して気分のいいものではないが。
「ん?そんな所で何をしているんだ?」
僕が悩んでいると、C.C.がラウンジに入ってきた。
「おっ、いい所に来てくれた!お前からもライを説得してやってくれよ!」
「説得?何の話だ?」
玉城がC.C.に近寄り、そっと耳打ちする。すると彼女がニヤッと笑った。
「ほう、それは面白い。よし、私に任せろ。」
「よし、頼むぜ。」
二人がヒソヒソ話を終えた後、C.C.が真剣な眼差しで僕を見た。
「ライ。お前は作戦補佐として、部下に心意気を見せねばならん。」
「こ、心意気?」
何故急にそんな話になるんだ。
「雨は人の心を陰鬱にし、気力を低下させる。そんな状態で戦闘を行っても、ブリタニアに反逆できると思うか?いや、無理だろうな。」
何だか話が大きくなってきた。まさか反逆の話になるとは思わなかった。
「だがゼロの場合、悪天候をむしろ喜びそうだが?それを利用した作戦もお手の物だろうし。」
「あのな、今私がしているのは、あの童貞坊やの話ではない。一般隊員の気持ちになってみろ、こんな雨続きの中で気分が高揚すると思うか?」
「だがいざ戦闘になればそんなことも言っていられないし、みんな本気になってくれると僕は信じている。」
「むう、至極もっともなことを言いおって。本当にかわいげのない男だ。」
C.C.が不機嫌そうに頭を掻いた。やはり彼女も、雨続きでストレスがたまっているのだろうか。
支援
支援
「お前の言い分ももっともだ。だが組織を引っ張る立場のお前が体を張れば、下の者はそれを意気に感じ、なお一層励んでくれるとは思わんのか?
そして組織の団結力がアップすれば、ゼロの進む道も切り開きやすくなる。ゼロの片腕ならば、それくらいやってみせろ。」
C.C.が一気にまくし立てる。確かにそうかもしれない、そうかもしれないが……。ダメだ、哀愁漂うゼロが軒下に吊るされる光景が頭に浮かんでくる。
このシュールな光景の主役が僕になるなんて、考えたくもない。
「それに、これがきっかけで記憶が戻るかもしれんぞ?記憶探しの一環だと考えれば、たやすいものだろう?」
「………!」
そこで記憶を持ち出すのか、君は。僕が「記憶探し」というキーワードに弱いのを知っているくせに。とても何かを思い出すとは思えないのだが、万が一ということもある。
それに、本当に団員の士気向上につながるのであれば、ここは作戦補佐として恥を忍ぶのも大事かもしれない。そうなれば、結論はただ一つだ。
「わかった。少し恥ずかしいが、記憶と黒の騎士団のためだ。やってみよう。」
僕は決心して、ソファから立ち上がった。
(よっしゃ!いいぞC.C.!)
(ふっ、私は魔女だぞ?少々手こずったが、これくらいはお手の物だ。)
玉城とC.C.が何やらアイコンタクトを取っているのが気になるが、決めたものは仕方がない。とにかくやるしかないだろう。
「なあ、二人とも。具体的にどうすればいいのか僕にはわからない。色々教えてもらえないか?」
「ああ、協力するぜ。そして見事に雨を退散させてくれ。」
「お前の雄姿、この目で見届けてやろう。」
こうして、僕は二人の協力のもと、てるてる坊主になることとなった。
支援
「………。」
そして僕は今、アジトの近くにあるビルの軒下に吊るされていた。体を覆う大きな白い布、胴体に括りつけられたロープ、どこからどう見ても僕はてるてる坊主…なのだろうか。
「うむ、どこからどう見てもてるてる坊主だ。」
「自信持てよ、ライ。結構イケてるぜ。」
C.C.と玉城が僕を後押しする。「イケてる」と言われても、こんな姿で風に吹かれて揺れているのは、どう考えてもおかしいのだが。これで本当にいいのか?二人に言いくるめられていないだろうか。
「さて、それでは祈りを捧げてもらうか。」
そんなことを考えていると、C.C.が話を進めだした。
「祈り?」
「そうだ。雨がやむよう、祈れ。玉城に言われただろう?一心不乱に祈るものだと。だからお前もそうしろ。」
「祈れったって、どうすればいいんだ?」
そうだ、僕は祈り方なんて知らない。一体どうしろって言うんだ。
「よし、ではまず俺が手本を見せてやる。よく聞いておけよ、大事な呪文だからな。」
玉城は一つ咳払いをすると、大声で叫んだ。
「おおー、あーめよー、やみーたまーえー♪」
シンプルな祈りの言葉だ。だがやはり恥ずかしいぞ、それは。
「さあ、言え。」
妙にニヤニヤしながら、C.C.が言う。
「あ、あのさ。恥ずかしいし、よくわからないから、最初は二人も一緒にやってくれないか?」
「ふっ、残念だがこの祈りは男性限定…」
「よし、いいだろう。俺たちも協力しよう。」
「何だと?」
僕の願いを拒否しようとしたC.C.の言葉を遮り、玉城があっさり受け入れてくれた。もちろんC.C.が不機嫌そうな顔になったのは、言うまでもない。
僕としては玉城の返答は嬉しいが、彼女を怒らせたのは得策ではないぞ。
支援
「おい、貴様。私にあんな恥ずかしいことを言わせるつもりか?随分といい度胸をしているではないか。」
低い声で、C.C.が玉城を威圧する。明らかにご機嫌斜めだ。
「べ、別にいいじゃねえか。そんなに長くはならねえよ、こいつが慣れてきたら俺たちはやめるから。」
「そういう問題ではない。私はこいつをからかったら面白そうだから、貴様に付き合っただけだ。そんなくだらんアドリブに私を巻き込むな。」
「お、おいっ!」
C.C.の言葉に玉城があわてた。「からかう」、「アドリブ」、それらの単語から真相が見えてきた。もしかしたらとは思っていたが、やはりか。
「玉城……。」
僕が呼びかけると、玉城はビクッと体を震わせ、ゆっくりとこちらへ視線を移した。
「騙したんだな?そしてずっと僕を見て遊んでいたのか。」
「い、いや〜、ばれちまったか。けどよ、結構楽しませてもらったぜ。じゃ、じゃあな!」
玉城はあわてて逃げだした。
「あ、こら待て!せめて縄をほどいて…って何をしているのかな、C.C.?」
気がつくと、C.C.が後ろから僕の体を思い切り引っ張っている。ちょうどブランコを引っ張って勢いをつける要領で…って、まさか!
「よーし、行ってこーい。」
「こ、こらー!」
セリフ棒読みのC.C.が、勢いよく僕の体を玉城目がけて押し出した。僕はグルグル回転しながら、玉城に体当りをした。
「ごはぁっ!」
玉城は勢いよく吹き飛び、視界から消えた。そして僕は相変わらず回転しながら、前後に揺れていた。うぅ、何だか気持ち悪くなってきた。
「ふむ、なかなかの威力だな。」
「……どういうつもりだ、C.C.?人の体を何だと思っている?」
「ああ、お前が玉城に『待て』と言うから、足止めをする手伝いをしてやっただけだ。もっとも、吹き飛んで姿も形も見えなくなったがな。」
もう少し文句を言ってやりたかったが、目が回って気持ち悪かったため、これ以上何も言う気にならずにただ揺られていた。
支援
しばらくすると、ようやく揺れが収まって視点も定まってきた。まだ気持ち悪いが。
「なあ、頼む。このロープをほどいて降ろしてくれないか?」
だがC.C.は、何も言わずに僕を見ている。彼女の性格を考えると…アレか、アレをご所望なのか。僕はため息をつくと、彼女に告げた。
「わかった。ピザのLセットを頼もう、これでいいな?だから降ろしてくれないか?」
するとC.C.はニヤッと笑った。
「よくわかっているではないか。私に指摘される前に先手を打つとは、少し見直したぞ。だが残念だったな、まだお前を降ろすわけにはいかん。」
「……何故?」
「まだ雨が降っているではないか。お前はこの雨がやむまで降りることはかなわんぞ。」
C.C.から飛び出したのは、少し意外な言葉だった。
「あれ?てるてる坊主が人を吊るす行為というのは、嘘ではなかったのか?さっきの祈りの言葉がでたらめというだけか?」
「いや、人を吊るすわけがないだろう。本当は布やティッシュで作った人形をてるてる坊主と呼ぶ。軒下に吊るすのは本当だがな。」
やっぱり嘘じゃないか。最早僕が吊るされている理由などどこにもない。
「C.C.、今すぐに僕を降ろせ。何ならピザをもう一枚追加してやろうか?」
「言っただろう、まだ雨がやんでいないと。今のお前はてるてる坊主だ、布の代わりに人で作った大きなてるてる坊主だ。もし拒むなら、この状態のまま回転させてやろうか?
酔って苦悶の世界でのた打ち回りたいなら、希望通りにしてやるぞ?」
「……いえ、おとなしくてるてる坊主の務めを果たします。」
「お前は物分かりが良くて助かる。最初からそうすればいいんだ。ああ、ピザの件は忘れるなよ?」
やっぱりピザは食べる気なのか。だがグルグル回されてはたまらないので、僕は何も言わずに雨がやむのを待つことにした。
支援!
それからしばらく過ぎたが、雨はまだやむ気配がなかった。
「おい、てるてる坊主。務めはどうした?一向にやまないではないか。」
「いや、そう言われても。そもそも、どうすればいいのかわからないんだが。」
本物のてるてる坊主は人形だし、仮にこの場に本物がいたとしても、「どうやって雨を止めるのか教えて欲しい」なんて尋ねることもできないし。
それ以前に、おまじないとは非科学的なものじゃないか。それで天候を変えられるなら、誰も苦労しない。
「まあ私にもわからんし、所詮はまじないや迷信の類だというのは知っている。だが、お前にただ何もせずに黙っていられては、私の退屈しのぎにならんだろう。
だから雨雲を説得するなり何なり、何か面白いことをしろ。」
「……君の退屈しのぎのために、僕はこんなことをさせられているのか?何か他にすることはないのか?ゼロをからかうなり、退屈しのぎなんていくらでも…」
「ダメだ。」
僕の主張を、C.C.は一言で退けた。
「別にあいつに飽きたわけではないが、お前の方がからかっていて面白い。お前の顔を見ていると、どうもいじめたくなってしまうのだ。『好きな女ほどいじめたくなる』というやつだな。」
「僕は男だ、それでは男女が逆じゃないか。それに、『好き』だなんて冗談はやめてくれ。」
「ふっ、冗談か。」
一瞬、C.C.が寂しげな表情をした。
「C.C.?」
「何でもない。ほら、早くこの雨を何とかしろ。日が暮れるぞ。」
またC.C.が僕の体を揺らし始めた。頭が揺れて気持ち悪い。
「わかった、わかったから揺らすのだけはやめてくれ。」
さて、どうしたものだろう。この状態から解放されるには、本当に神頼みでもしなければならないのだろうか。
支援。ごめん。寝る。あとは任せた。ここまで読んですごい面白かった。明日また感想書く。
支援
とりあえず支援参加
ならば全力で支援を仕る
「えーと。もうそろそろ上がって欲しいんだが、何とかならないのか?でないと、僕はいつまでもこの状態のままなんだ。助けると思って、頼む。」
今、僕は雨雲を説得している…つもりだ。自然現象を一人でどうにかできるとは思っていないが、何もしなければまた脳を揺さぶられる。
だから恥ずかしいのを承知で、こうして雨雲に語りかけていた。正直、顔が熱い。
「くくく……。それで頼んでいるつもりか?何と尊大で、上から目線な物言いだ。とても他人に物を頼む行為とは思えんな。おっと、相手は人ではなかったな。」
腹を抱えて、C.C.が笑った。
「それは君にだけは言われたくなかったな。少なくとも、君よりは頼もうという意思は見せたつもりなんだが。」
「ふん。自慢ではないが、私は人に下げる頭など持ち合わせてはいないのでな。」
「本当に自慢にならないな。そして自慢ではないと言いつつ、ふんぞり返っているのは何故だ?」
「細かいことは気にするな、私は気にしない。ほら、早く何とかしろ。そしてもっと私を楽しませろ。」
そう言うと、C.C.がまた僕の体をグルグル回し始めた。
「まっ、待て!わかったから回すんじゃない!」
時計回りに回された反動で反時計回りに回転しつつ、僕は頭を巡らせる。
ていうか、何故こんなことで知恵を絞らなくてはならないんだ。もっと他に使い道があるだろうに。
それからしばらくの間、僕は必死の思いで雨雲を説得した。だが無情にも雨はやまず、僕の心の中に虚しさと恥ずかしさが降り積もるばかりだった。
そしてC.C.は、悪戦苦闘する僕を見てずっと笑っていた。
支援
sienn
「つ、疲れた……。」
一時間ほどたった頃だろうか。ようやく雨が奇跡的にやんでくれ、僕はほっとした。
非科学的なので説得が通じたとは思わないが、少しは努力が報われたと思いたかった。
「おお、やんだではないか。てるてる坊主の務めを果たしたこと、褒めてやろう。とは言え、予報では夕方前には天気が急速に回復すると言っていたがな。」
その言葉を聞いて、僕は愕然とした。
「つまり君はこうなることを知っていて、ずっと僕で遊んでいたのか?」
「だから言っただろう、雨がやむまでの退屈しのぎだと。」
何を詫びるでもなく、C.C.がさらっと言ってのける。羞恥心と戦った僕の努力は何だったんだ、今までの恥ずかしい記憶をすべて消去したい気分だ。
「とにかく、すぐにここから降ろしてくれ。これ以上恥ずかしい思いをしたくない。」
「やれやれ、もう少し見ていたいのだがな。まあいい、十分楽しんだから降ろしてやろう。」
そう言うと、C.C.が僕を縛っていたロープに手を伸ばした。彼女の目線の高さ、僕の腰の上辺りにロープの結び目があり、彼女は僕の後ろから結び目をほどき始めた。
彼女がロープをいじるたびに、僕の体が大きく揺れる。
「むう、揺れるからやりづらい。少しじっとしていろ。」
「無茶を言うな、この状態でじっとしていられるか。」
「本当にかわいげのない奴め。ならば、動きたくても動けないようにしてやろう。」
するとC.C.は前に回り、僕の腰に腕を回して僕の体を固定した。だがその体勢だと、その…当たるのだが、胸が。しかも、絶対口には出せない場所に。
silen
支援
「ちょっ、C.C.!」
「よし、これなら動けまい。」
C.C.はニヤリと笑い、再びロープをほどき始めた。揺れるたびに、体に柔らかいものが当たる。僕は恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうだった。
「あ、あのさ。この体勢は色々とまずいだろう。」
「くくく、恥ずかしがることはないだろう、純情な奴め。これも役得だと思え。」
この人、絶対に確信犯だ。僕を恥ずかしがらせるために、こんなことを。
「よし、ほどけてきたな。……ん?」
ふと、C.C.が動きを止めた。そして僕の顔を見ると、妖しげな笑みを浮かべた。何かまた、ロクでもないことを言われそうな気がする。
「実は少し心配していたのだが、杞憂だったな。安心したよ。」
「な、何の話だ。」
「正直な話、お前は女に興味がないと思っていたのだがな。今、お前が正直に自己主張してくれたおかげではっきりしたよ。やはりお前も男ということだな。」
何だ、さっきから何を言っているんだ。そう言えば、さっきから胸を押し当てられたままだが。……あっ、まさか!
「ふっ、今さら気づいたか。だが照れなくてもいいぞ、当然の反応だ。私も、正直な男は嫌いではないぞ?」
「や、やめてくれ!早くほどいてくれ、これ以上恥をさらしたくない!それと、あまり密着するな!」
僕は少しでも彼女と距離を取るために、彼女の腕の中でジタバタした。
「おいおい、暴れるな。そんなに欲求不満か?」
「ちがーう!!」
結局ロープがほどけるまでの間、僕はしっかりとC.C.の腕に固定されていた。
動物的本能には逆らえない時があるということを、身をもって知った瞬間だった。
sien
「こんなの、あんまりだ……。」
ロープがほどけた後、僕は地面に突っ伏していた。もう、今日あった出来事をすべて忘れてしまいたかった。
「くくく、実に見ごたえのある羞恥プレイだったな。満足した、礼を言うぞ。」
「それもふんぞり返って言うことじゃないな……。」
上から見下ろして僕に話しかけるC.C.に、僕は文句の一つを言う気力も残っていなかった。
そしてC.C.は、何かを思い出すように言った。
「おお、そうだ。さっきので何か思い出せたことはあったか?『実は自分は正真正銘のてるてる坊主でした』とか、『三度の飯より羞恥プレイが好きだった』とか?」
「そんなわけあるか。残念ながらというかやはりというか、何も思い出せていない。」
むしろ変なことを思い出さずに済んで、嬉しいくらいだ。
「むう、そちらの方が面白かったのだがな。まあいい、雨も上がったことだし、今から記憶探しに行くぞ。」
そう言うとC.C.は、僕の手を引っ張って歩き出した。
「記憶探し?これも君の退屈しのぎか?」
「いや、半分はお前自身のためだな。そしてもう半分は、退屈しのぎかな?」
彼女の答えに、僕はため息をついた。
「なあ、君にとって退屈しのぎとは何だ?僕をからかうためのものか、それとも単に退屈だからか?」
するとC.C.は、いたずらっぽく笑いながら言った。
「お前と一緒にいたいから、とでも言っておこうか。」
「……そんなに僕をいじめたいのか。」
「ふっ、今はそれでいいさ。今は、な。」(そんな理由だけで、あそこまでスキンシップを図るわけがないだろうに。どこまでも鈍い奴だ。)
そう話すC.C.の表情は、どこか不満げだった。
ちなみに、雨の中に吹き飛んだはずの玉城は、翌日何事もなかったかのようにケロッとしていた。
曰く、「俺は不死身だし風邪もひいたことがない」とのことだった。
支援
支援
玉城がいうと問答無用の説得力がwww
支援
翌日、僕はゼロの部屋にいた。雑談をしているうちに、自然と昨日の話になった。
「そうか、そんなことがあったのか。まったく、あの魔女には困ったものだ。」
ゼロは大きなため息をついた。
「しかしお前もお前だ。簡単に玉城たちの口車に乗せられるとは。」
「いや、面目ない。てるてる坊主を知らなかったから、本当にそういうものだと思い込んでしまって。」
そう言いつつ、昨日想像したてるてる坊主姿のゼロが、今目の前にいるゼロの姿と重なった。そのあまりのおかしさに、僕は思わず吹き出してしまった。
「な、何だ!何故私の顔を見て笑う?私の姿が、そんなにおかしいか!」
事情が呑み込めないゼロは、自分の姿を笑われたと勘違いして怒りだした。
「ごっ、ごめん。そうじゃないんだ、てるてる坊主になった君と目の前にいる君の姿が重なって、それがあまりにも…プフッ。ハハハハハ。」
彼には悪いとは思ったが、まさか自分の笑いのツボに入るとは想定外だった。そしてみるみるうちに、ゼロが不機嫌になっていく。
「ええい、腹立たしい!誰かいないか、すぐにライをてるてる坊主にしてやれ!」
すると部屋の扉が開いて、二人分のてるてる坊主セットを持ったC.C.が現れた。
「また雨が降っている。今日は二人がかりで止めてもらおうか。」
「……って待て!何故私までやらねばならん!」
すると、C.C.がゼロの耳元で何か囁いた。
「いいのか?咲世子が書いた、お前とライが出てくるいかがわしい小説の内容を、ナナリーに事細かに話しても?」
「なっ!?や、やめろ、それだけは!」
急にゼロがあわてふためいた。彼女に何を言われたんだ。
「では、わかっているな?」
「し、仕方がない。ライ、付き合え。お前に拒否権はない、これは命令だ。」
「ええっ!?またアレをやるのか、冗談じゃないぞ!」
「うるさい!こんな恥ずかしいこと、一人でやっていられるか!二人でさっさと終わらせるぞ!」
結局僕とゼロは仲良くてるてる坊主にされたが、その日の予報は大外れで、雨は一晩中降り続けた。
そのため、僕たちは一晩中風雨にさらされて風邪をひいてしまったのであった。
支援
以上です、支援ありがとうございました。
最近ネタが尽きかけで困ってました。いや、ちょこちょこ書いてはいますけど、なかなか納得できなくて。
人間てるてる坊主のヒントをくれたのは、某日常ゆるゆるマンガの辛辣な三女です。
>>738 余暇卿、GJでした!
てるてるライ……なんかポンチョ着てるイメージが浮かびました。
玉城のノリが何とも言えないw 不死身の玉城、違和感が無ぇwww
C.C.の胸が当たっているのは……うわぁお!
ラストのてるてるゼロは似合いすぎて吹いたwww
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
>738
「よーし、行ってこーい」にやられました。
あの声で再生されます。真顔でライアタックをかますCC。
白と黒のてるてる坊主が吊るされる様は想像するだに情けないw
笑わせていただきました。
>>738 絵面がリアルに想像できて笑わされてしまいました。GJです!
あくまで「ゼロ」であって「ルルーシュ」じゃないところもツボですね。
あの演説口調で文句たれつつ吊るされるのかwww
それにしてもギアス世界の腐女子たちの筆力って、どの作品でもパネェw
一度読んでみたいような、激しく読みたくないような…
>>738 オハヨウゴザイマシタ。
GJ!!何度も噴き出したww
玉城とC.C.の息が合ってるのか合ってないのかわからないコンビが楽しいです。
余暇さんというと、ライカレのイメージが強かったんだけど、C.C.も上手いなぁ!
ゼロのてるてる坊主はシュール過ぎるww
もう一度、GJ!
4時15分くらいに投下しようと思います。
まえがき あとがき含めて10レス分あります。
なにとぞ支援の方お願いします。
支援・・・、全力で!!!
ではそろそろ
続編三話目
一応シリアス系でタイトルどおり、騎士団カレンルートから特区日本の失敗ifからの続き。
カプは常にライカレのつもりですが、今回はカレン出てきません。
だいたいライ視点。
本編と違い、ロイドがトリスタンの開発も行ってたりと本編とやや矛盾していますが、そこは暖かい目でスルー願います。
俺式ロスカラ続編〜騎士団カレンルート〜 第3話
今日で輻射波動砲の最後の調整。機体の名前は暁となっているものの、量産する暁のためだけではなく、紅蓮に後付けする飛翔滑走翼の実験も兼ねているため、形としてはグレンに近いものだった。
場所はインド洋沖の無人島で警備の無頼もたったの4機。
現在、ブラックリベリオンでの勝利によりブリタニアの勢いがさらについてきていて、そのため爵位と引き換えに寝返る地方領主などがたくさん出てきている。
そんな中ラクシャータといった特1級戦犯はブリタニアに寝返るのにこの上ない貢ものになってしまうため、研究やシュミレーションは堂々と建物の中で行えるが模擬戦などの試験はとても難しいのである。
なので、前回の飛翔滑走翼の飛行試験同様 襲われたら逃げ場のない孤島でやらざるを得なかった。
カチッと僕がボタンをおすと、鉄の塊は立方体だったのにぶくぶくとふくらみ、湯気をだしている。
「左腕部異常なし。」
そして、人差し指と中指で別のボタンを少しいじり、鉄塊と少し距離をあけもう一度親指で丸いボタンを押し込む、するとすごい広さに輻射波動砲が拡散し、一気にそこにあったはずの塊はぐにゃぐにゃになり地面に赤い水たまりを作っていた。
―すごい………
これが僕の率直な感想。
この起動性とこの火力 ヨーロッパ戦線でのランスロットの戦闘データと比べてテストの段階では性能的に互角以上。
これから先の騎士団に戦力強化とルルーシュ奪還が心踊るくらい楽しみで仕方なくなる。
sien
「ライく〜んまだテストは終わりじゃないわよ〜」
とラクシャータから通信が入ってきた。
「あの白い円の中から500メートル上昇してからもう一度モードチェンジして、あのバッテンの上にある鉄の塊をロックしてから撃ってみてちょうだい。」
「了解」
そう言って僕は暁を上昇させてゆく
しかし、途中で緊急事態を告げる警報が鳴り出した。
どうやら試験の情報が漏れて、ブリタニア軍がこの試験場に奇襲を仕掛けてきたようだ。
そして、すぐに若々しい声の中にどこか揚々とした若干場違いな警告が聞こえだした
「こちらはナイトオブ3ジノヴァインベルグ率いる航空部隊である。エリア11において特1級戦犯にあたるラクシャータの逮捕と、その研究中のナイトメアの放棄が当方の要求である。12時まで待つ。全員武器を捨て降伏せよ。」
「まずいな…」
いくら試験を襲われる可能性があるとしても、ラウンズといったスザクレベルのパイロットまでくるとは想定していなかった。
―ラクシャータと新型の暁が目的にしては高く買いすぎだ、特区日本で死んだ事になってるはずの僕が生きていることを知っているやつがいるのか?
いや、一斉葬儀に参加できなかったスザクですら僕の墓石に花束を送ってきた。
だが、C.C.がルルーシュの安否が分かるように、僕との契約者がまだ教団にいてそいつが、教えたという可能性もある。けれど、それ以前に帝国で僕にそこまで評価をしている人なんていないだろう。
それとも僕は関係ないとしたら、近々ランスロットタイプのナイトメアの量産試験がされるという情報があったので、それの実戦試験という線もあり得る。
現に、飛行型のランスロットのような、サザーランドとは全然違った形の機体がある。それにグロースターの飛行型6機とナイトメアと同じ大きさくらいのフォートレス一機という一個中隊がある。
普通の戦闘機もあるものの、武装の少ない航空機も多々見られた。これらは戦闘記録用の航空機か?
しかしそれではラウンズの事が説明つかない。実戦試験の保険としてラウンズを使ってるという事だろうか?
ラウンズとはそんなヒマ人なのか?
支援
わからない。
けれど、グロースターより性能で劣る無頼4機と僕の機体で、ラウンズの航空部隊を相手にしなければならない現状は変わらない。
僕は急いで急降下し、ベースに戻ってからラクシャータさんに先ほど考えた事を伝えた。 けれど、彼女はそんなに焦る訳でもなく、むしろのりのりといった感じだ。自分が作った機体をそこまで買ってくれた事が嬉しくて仕方ないように思えた。
「大丈夫よ〜あんたとその子があれば〜。ゲフィオンネットも搭載済みだし。
それに、最後に実験するつもりだったのは輻射波動砲弾っていってハドロン砲を輻射波動で再現したようなものなの。
一番負担のかかる拡散型の輻射波動ですら予想を下回る負担しかかからなかったんだから、出力は少し落ちるけど戦力差はすぐに縮まるわ〜」
実地試験が実戦試験になったのがとても嬉しいようだ。 僕は補給中の暁先行試作機に乗り込み、作戦を考えた。12時まで、あと3分。僕が出した答えは相手の目的がわからない以上、研究チームはデータの持ち帰りを早急に行わせ、
ガンルゥ2機に研究施設の警護、残りの2機は森林地帯に潜伏させて、僕の援護に回す事にした。この状況で一番効果的なのは強襲である。
僕は12時になる前に敵軍に向けて突撃をかけた。しかし向こうは完全に戦力差で押し切れると考えたのか固まってヴィンセントとグロースターを前におしたてて進軍してきた。
最終試験するつもりだった輻射波動砲弾のボタンをおしてみる。
轟音と共に、赤黒い光の塔が敵の機体を一気に飲み込んでいった。
どうやら固まっていたグロースター4機を一瞬で消し去ってくれたようだ。
すごいな、これで出力が7割か。
しえん
僕は相手が態勢を整えるまえにその場から一気に強襲をかけハーケンを放ちグロースターに命中させる。
その機体を盾にするように回り込み背中のミサイルポットで敵全体に攻撃をかけた後ゼロ距離でコクピットを射撃し最後のグロースターに狙いを定めた。
普段なら、ライがコクピットにゼロ距離射撃などすることはないのだが、今はそこまで余裕がないのだ。
ヴィンセントやあのフォートレスにはミサイルがあたるとは思っていなかったが、牽制にはなったし最後のグロースターを中破させることにも成功した。
あらかじめ距離は詰めておいたので直線的に進み敵機の手前で進路を変えるという動き方でフォートレスの砲撃や巨大ハーケンをなんとかかわし、わずかな射撃とフェイントで森の方に追い込み無頼に留めをささせた。
残りはヴィンセントとラウンズの機体の二機。戦闘開始5分もたたずに敵のグロースター6機を撃破したライと暁0式の活躍に、ラクシャータは歓喜の通信を送ってきた。
「へ〜やるじゃんあのパイロット。」
と、この戦場でのトップ 3の文字を背負うジノは楽しそうに呟く。
支援
しかし、ここで海中から敵機の反応があり無頼の反応が一つ消えた。
もちろん海から上陸部隊が上がり、研究施設を抑えようとするのも想定範囲内だったので、すぐさま積み込んでいた特殊な対水中雷撃弾を海中に放ち無頼全機に海岸線へ向かいすでに上陸した部隊を討たせる指示をだした。
目の前には、大型戦闘機とナイトメア。態勢も整っていてこの2つをどうにか離したいが、今度は僕が研究施設を守らなければならないため、動き回るのではなく、正面から攻撃を仕掛けざるをえなかった。
とりあえず、ヴィンセントを狙い、トリスタンの動きを見るつもりで攻撃しようとした瞬間、機体に大きな衝撃が走った。
今まで、飛行機のような機体が人型のナイトメアに変形して僕の機体に蹴りを決めたのだった。
「お仕置きタイムだ」
今まで早いだけで小回りがきかなかった機体がいきなり最高の起動力を備えた最悪のナイトメアへと変わってしまった。
「ちぃっ」
一か八か、攻撃をもらいのけぞりながらワイドレンジの輻射波動砲を態勢を整えることもせず二機の相手がいた場所へ放ってみたが、既にトリスタンはヴィンセントを抱えて移動していたようだった。
「ライくん、これはランスロットの量産型の試験と思ってたけど違うわ!向こうのさんはあの可変ナイトメアトリスタンと、ヴィンセントの両方の試験よ。こっちはあと15分で片付くからそれまであの二機がんばって!」
やはりワイドレンジの輻射波動のエナジー消費は激しい。あと十五分戦う上で、あれはもう使わないほうがよさそうだ。
しかし機動力も高い上に、射撃武器であるハーケンは射出後に若干の方向修正ができ、白兵戦用のMVSの間合いはこちらよりはるかに長い。
ライが操縦している暁の白兵戦用の武装は小太刀と左腕の輻射波動。
1対1の状況に持っていこうとするライは小回りの利く小太刀型のMVSで敵の攻撃を受け流して、輻射波動を叩き込むといったスタイルから取り入れた武装だ。
しかし現状は2対1で、トリスタンの鶴嘴状のMVSだけなら防ぎきれるもののヴィンセントの援護射撃がおまけに付いてくる状況。
無駄な動きを一瞬でもとれば、それが命取りになり兼ねない。
「そこっ」
ヴィンセントの斬撃をかわし、暁のハーケンで右腕に持ったMVSごと破壊に成功したので、こちらからトリスタンに攻撃をかけた。
ライの右手から薙ぎ払うように迫るMVSの間合いの内側に入り、小太刀で受け流したあと、さらに左からくるであろう一撃に備えた。
しかし、ヴィンセントからの射撃が暁に当たり態勢を崩してしまったので、トリスタンにそこの瞬間を狙われたもののなんとか切断されたのは左足だけで済んだ。
あのヴィンセントは弾を外せば、トリスタンに当たるのにも関わらず射撃をしてきた。
この二機は連携が上手というわけではない。トリスタンには弾丸をかわす自信があったという事なのだろう。
左足を切られるということは、機体のバランスが崩れて操縦が難しくなるのと同義であるが、ライは怯まずにもう一度間合いを詰めた。
的にならないように不規則な動きで自分の間合いをとる。
無駄に動くため、エナジーの消費は激しい。これで決めるというラストスパートである。
そしてライはなんとか暁の左腕でトリスタンの頭部をつかむことに成功する。
勝った。 頭ならパージできないため、熱を中枢部まで伝えられる。撃破したも同然。カチッとライはボタンを押す
「こりゃまいったな〜」
とトリスタンの頭部が熱で頭部が膨れ上がっているにもかかわらず、3の文字を背負うラウンズはこの状況ですら楽しんでいた。
次の瞬間、トリスタンは自分のMVSで自分の頭部をためらいもなく切断した。
思いもしてなかった行動に対処が遅れ、ライの乗る暁は右足も切られてしまう。
支援
あの通信から何分経ったのだろう
コクピットの中は蒸し暑く、パイロットは汗だくになりながらもバイクに乗るように席にまたがり、鋼鉄の巨人を動かしながらも他の部隊に指示を出している。
ただ巨人といっても、ライのナイトメアの両足はトリスタンの大きい鶴嘴状のMVSで膝からしたを切り落とされているので、もはや人の形はしていなかった。
対する敵機もトリスタンの頭部はなくなり、ヴィンセントは右腕がなくなっている。
けれど、2機のナイトメアの相手をしながら地上部隊の指揮をとる。また、先ほどの読み違えにより、ライの乗るナイトメアは極力長い時間動けるような行動を選ばなければならない。
しかも普通の指揮官を相手にしているのではなく、帝国最強の12騎士の一人と新型量産機を相手にしながらとは、明らかにただのテストパイロットでは済まされないほどの異業である。
それどころか黒の騎士団の双璧と言われていたライが生きている事を暗示する戦いでもある。この戦闘データがスザクのもとに届けば、間違いなくぼくが生きていることに感づくだろう。
そして、ランスロットの生みの親、ロイド伯爵が設計したであろうヴィンセントがいるため、その可能性は極めて高い。
それに、たとえこの場をしのいでも今後我々の身は今まで以上に危うくなるし僕自身も中華連邦内での行動に制限がかかる可能性がある。
やっかいすぎるよラウンズ……
支援!
その少年はただ刻々と時が過ぎるのを望むものの、あまり時間は経っていなかった。
ここ二、三日のテストで暁はきっちり操縦できるようにしたし、
日本でも無頼に乗ってカレンや卜部さんと一緒に石鹸工場やら兵器工場などを襲撃していたので、そこまで勘は鈍っていないつもりだ。
けれど、一秒が一時間に思えるほど大変な時間に感じれる。それほどまでに気を抜けない相手なのだ。
トリスタンは変形をうまく使い、緩急をつけ一瞬で間合いをつめたりして攻撃し、ヴィンセントは直線的な攻撃に射撃を絡めくる。
味方機がラウンズでなければ簡単とまではいかないものの倒せる戦力だが、それはどうしようもない妄想の世界。
あと1分で終わるという時にいきなりヴィンセントが突撃してきた。
トリスタンは僕の回避方向にすぐに動けるようにと見せかけて、僕がヴィンセントとに突撃した時にも対応できるように位置どったみたいだ。
これこそ、ゲフィオンネットのチャンス。
僕はヴィンセントより遅いスピードで後退し、ある程度引きつけてから一気に右に曲線をつくりながら距離をあけた。
やはり、トリスタンはハーケンを合わせて出す射撃の準備は行っていて、あのまま直線で進んだであろう場所に光の太い光線が走っていた。
好機と言わんばかりにヴィンセントと距離をつめるとトリスタンは僚機をカバーするように前、ヴィンセントは逃げるように後ろに動く。
「想定どうり!そこだぁっ!!」
猿さんか
猿ですね
ここでゲフィオンネットを放つと二機同時にうごかなくなった。「よし、ようやく終わった。」とひと息つきながら、右手に装備した小太刀でコクピットに留めを刺そうとするとトリスタンは変形し、暁0式の右手は空を切ってしまった。
ゲフィオンネットで動きを封じ込めたと思ったら変形ができ、向きや機体の位置は動かないものの、そこから砲撃を放つことができたようだ。
幸い、かろうじて反応できたので、損傷は右腕がもっていかれただけですんだ。
とどめにワイドレンジで二機まとめて攻撃して撤退した。
ラウンズ撃破とまではいかないが撤退に必要な時間を十分に稼ぎ、追撃を不能にするダメージをトリスタンたちに与えた。
僕の暁は潜水艦に着艦するのも大変なくらい損傷していた。無事だった部分は胴体と輻射波動のついた左腕とコクピットだけ。それでもって、エナジーもちょうど着艦してすぐに底を尽きるくらいぎりぎりの戦いだった。
それに、ライにはあのラウンズがなんとなく手加減していたような感じを受けた。そもそも奇襲なのに降伏勧告に、その上五分以上の戦闘準備をさせてくれたのは、明らかに僕らの想像出来うる目的に反する行為である。
どちらにせよラウンズから逃げ延びたのはいいが、これからは間違いなく日本周辺の海域の警備は強化される。
これでルルーシュを奪還しなければ戦力を一気に上昇させることはできなくなった上、こちらのナイトメアに対して今まで以上に戦力を割いてくるかもしれない。
それにいくら僕のことを知っている人がブリタニア軍に少ないからといっても今回の件で港が警戒しない可能性は低いだろう。
そんなことを考えていると連鎖的に彼女のことも思い浮かんでくるので、ぼそっと呟いた。
「はぁこれでまた、日本に当分戻れなくなっちゃった。」
そうしてライは、ひと月前まで暮らしてたアパートにカレン宛の手紙を出すことを決めたのだった。
――所変わって中華連邦基地内部――
「あら?何をかいていらっしゃるの?」
「あぁ手紙だよ。」
ライは話しかけてきた神楽耶に目もくれず、手紙の上のペンを走らせる。
「あっ、さては、カレンさん宛てのラブレターですね?」
と神楽耶は笑ってみせた
「べっ、別に、そんなんじゃないよ…」
ライは自分の考えていることを、神楽耶に見透かされたのがなぜか悔しくて見栄をはってしまう。
名字のないライは血液検査ででた日本の皇族という結果から皇を姓として名乗っている。
義理ではあるものの神楽耶とは血がつながっている兄として中華連邦では接してきた。
仮の妹であるが、どこか本当の妹に似たような雰囲気をっている神楽耶にだけは、恋愛事情においてとやかく言われることは恥ずかしかったのだ。
「じゃあ、黒の騎士団としての正式な書類としてみんなに見せるべきですわ。」
ぐぅ…と、ついつい怯んでしまう。
そこを神楽耶は見逃さず、ライの机にあった文書をひったくった。
そこには、ただこちらで起こった事実の記録と最後の最後に『最後に愛してる』とだけかが書かれていた。
神楽耶は怪訝そうな顔をして首をかしげる。
ライにとっては一応はラブレターのつもりなのだが、書いてあることは相手を口説いたり、自分の抑えられない愛を述べるものではなかった
カレン宛に書かれている手紙なのは間違いないが、最後の文を恥ずかしがった理由としても神楽耶には何かもの足らないのだ。
ライが本気ではないが手紙を取り戻そうと手を伸ばしてくる。その手から逃げている最中、彼女が見たモノでやっと満足がいった。
神楽耶の見たものは封筒。その封筒にはライが半年間日本で活動する際に使った偽名宛とアパートの住所まで書いてある。
「カレンさんと同棲なんて、お義兄様もずいぶん手がはやいことですわね〜」
ライは音が聞こえる様なスピードで顔を真っ赤にしたまま何も言えなくなってしまった。
それから神楽耶はたまに帰ってくる咲世子だけでなく、意味を理解できぬであろう天子様にも自分の兄が女と同棲してた事をべらべらと話すのだった。
天子様は案の定、はてなという顔をしていたが、神楽耶が同棲する者の夜の営みについて話そうとした瞬間、護衛としてその場にいた星刻にものすごい形相で睨まれた。
大宦官に『無礼者!』などといろいろ言われながらも神楽耶を止めた事は、たとえ もう一度記憶喪失になっても忘れられないだろう。
咲世子は咲世子で、
「アッー!そんな…私式ロスカラ続編でカレン様じゃなく、ライ様が捕虜になるスザライルートが…騎士団編ゼロルート続編のライルルが…」
とかライには理解できない言葉を発しながら地面に臥していた。
以上です。
すいません途中さるでした
今回は完全に妄想の戦闘です。
トリスタン試作型とヴィンセント試作型対ライの暁です。
なんか本編最後の方でルルカレならまだしも、ジノカレとか言われてるのにカチンときてライとジノをライバル関係においてみました。
ロスカラやってから、この板の住人としてライカレしか考えられないのは自分だけではないはずw
次回はやっとR2の話の中の騎士団と合流します。
766 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/11/02(日) 17:50:16 ID:ZuF8NNFD
そうだジノカレは許せない。俺もライカレ派です。つつぎ楽しみにしています。
>>765 B.B.卿、乙でした!
いきなりの輻射波動の使用で敵を減らす。
ロスカラっぽくてGJだったと思います。
戦闘の後のほのぼのはいい!
より癒し効果が高まる気がします。
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
P.S.私的にはライナナのほうが好き
>>765 乙です。
読み始めて、戦闘メインだったので「前話読んだっけ?」と保管庫に行って、確認・納得して読み直しました。
妄想の戦闘という事ですが、いやいや良かったですよ。オリジナルの戦闘シーンを表現できる人が羨ましいです。
戦闘後の日常シーンもグッドでした。戦闘時の緊迫感もいいですが、日常のほのぼの感が特に自分は好きなので。
神楽耶にお義兄様と呼ばれるライ 多くの人が考え付く設定かも知れませんが、実際にSSで見たのは初めてなの
ではないでしょうか? 素晴らしい!
次回も期待してます。 GJ!
さて、8KB程度 6レスですが支援は可能でしょうか?
支援
支援よろしくお願いします。
こんばんわ、投下の際にはキッチンタイマーで投下間隔を計っている『184』です。私生活においても
何かと便利です。
タイトル :ロスカラさん 第7話 ベイエリアでの戦い
カップリング:千葉←ライ←カレン
ジャンル :コメディ? ユル〜いキャラで再構成もの
キャラの言動が、ほぼギャグです。(各自がギャグ漫画にありがちな特技や思考を持ってたりします)
5〜3頭身キャラが出て来る四コマ漫画を楽しむ感覚で、読んでもらえれば幸いです。
初期状態からライの千葉中尉への好感度は、やや高目に設定してます。その為ゲーム本編と違い、
いきなり「凪沙さん」と呼んでます。
再構成ものなのにゲームの流れ(順序)が多少変わってます。(仙波大尉と合流済みです)
本文に4レス使用予定。前書き・後書き含めて6レスなので、ユル目の支援をお願いします。
それでは、タイマーを2分30秒にセットして、スタートぉ!
支援
ロスカラさん 第7話 ベイエリアでの戦い
『今の日本解放戦線に、確たる武力は存在しない』
間違いではないだろう。四聖剣の二人と合流できたと言っても東堂中佐を含め後三人の捜索活動
に時間を取られ、ブリタニア軍に攻撃を仕掛ける事などできないのだから。
今回のキョウトの支援は、今までとは趣の異なる物だった。軍資金よりも逃亡資金と言う方が、しっ
くりくる流体サクラダイトを積んだタンカー。これで中華連邦に亡命しろと言うのだ。
「今回の件で、キョウトは我々を見限ったのではないでしょうか?」
片瀬少将から亡命の話を聞いた後、僕は仙波大尉と話をしていた。亡命の件は、キョウトから提案
されたらしいが、それに易々と乗ってしまった事で『戦う意志なし』と見られたのではないか。そして、
そのまま中華連邦に厄介払いする気なのではないか。その気もない相手に、いつまでも支援を続け
る程キョウトもお人好しではないだろう。
「流体サクラダイトは、手切れ金という訳だな。少尉?」
「そうです。キョウトからすれば――」
取引先の零細企業に再就職を斡旋。しかし、再就職先が毎月ちゃんと給料を支払うかは不明。だ
が退職金は払ったし、君はもう我社とは関係ない。だから、今後はお金を借りに来ないでくれたまえ。
最初の内は「両手に華」とばかりに浮かれていたけど、恋人が二人もいたら出費もかさむ。最初の
彼女に魅力を感じなくなった事だし、手切れ金を渡して別れよう。
――みたいな?
「なあ、少尉。ワシは例え話だと理解しているが、皆が皆そう思うとは限らないぞ? ホレ、後」
「え? わわっ! な、凪沙さん」
仙波大尉の言葉に後を振り返ると、凪沙さんが腕を組んで立っていた。
「・・・」
「い、今のは別に僕の経験とか、そういう訳じゃなくてですね・・・」
「別に少尉の女性問題とか、それが元での金銭トラブルとかそんな事に興味はない。仙波大尉、出
撃準備急ぎましょう」
そう言って、格納庫の方へスタスタと去って行ってしまった。明らかにムッとしていて、取り付く島も
なかった。凪沙さんの中で僕は、『女と金に、だらしが無い男』になってしまったのか!?
支援
「あ〜 このまま中華連邦に渡るのか僕は・・・」
今僕は脱出用のタンカーの甲板上、無頼のコクピットの中に居る。一方仙波大尉と凪沙さんは、
『ギリギリまで港でタンカーの脱出を援護し、東堂中佐の合流を待つ』との事だ。結局、凪沙さんの
機嫌は悪いままだし、このまま学園や黒の騎士団の皆とも離ればなれになるかと思うと憂鬱だ。溜
め息が出たところで、通信が繋がった。
「何だ、ゼロか・・・」
「何だとは、ご挨拶だな。亡命前からもうホームシックか? だから、早く戻って来いと――」
「あー、はいはい。そんな嫌味を言う為に連絡して来た訳じゃないんだろ?」
「フッ、まあな・・・」
ゼロは、座標データを送信してきた。それを見るとタンカーの進路上に爆薬を示すマークが点滅して
いる。これは!?
「ライ、そのタンカーからすぐに降りろ!」
ピンときた。ゼロはタンカーを囮にするつもりだ。僕は
「ふざけるな!」
と、叫んで無頼を艦首へと走らせた。港からマイクロ弾による攻撃が開始される。そして、港に残っ
た解放戦線のメンバーとブリタニア軍との間で戦闘が開始された。
「ライ!お前という橋渡し役が居ながら、片瀬は我々と戦う道を選ばず、中華連邦に逃げ出す道を選
んだ。戦わない軍人に何の価値がある!?」
「だからと言って、敵もろとも自爆を強要する事はないだろ」
僕らの会話は途中からオープンチャンネル、更に港のあちこちに設置されたスピーカーまで使ってい
るから話の内容は敵味方に筒抜けだ。『自爆』という単語に港全体がどよめく。そして、自爆に巻き
込まれる事を恐れ、敵(ポートマン)はダイブを中止する。味方の方でも、下船しようとする者とそれを
押し留めようとする者で小競り合いが起きている。そんな状態でも強引にタンカーは動き出した。
いや、だからこそか。片瀬少将が吼える。
「我々は自爆する気などないぞ、なんとかしたまえ少尉! 私は必ずや中華連邦に渡り、いずれ再
起を果たすのだ!」
「フッ、クロヴィス政権下ですら目立った成果を上げられなかったあなたの『いずれ』は、いったいどれ
だけの経費と時間が掛かるのか。いや、そもそも本当にその日は来るのですか?」
「ぐっ、ぬぬぬ・・・」
ゼロの指摘に片瀬少将は、顔を真っ赤にして唸る事しかできなくなった。
支援
マイクロ弾による攻撃は相変わらず続いているが、ダイブを中止したポートマンは仙波大尉と凪沙さ
んに狙撃され、その殆どはダイブ不能状態(強硬に行えば、コクピットに浸水等各部不具合が発生)
のようだ。艦首に到着した僕は、座標データと照合し水中の爆薬に狙いをつける。こんな至れり尽く
せりで、僕が狙撃に失敗する訳がない。
「東堂の捜索を打ち切り、自分だけは安全な場所に隠れる。そんな男にいつまで従っている。お前も
逃げ出すのか?!」
「違う!」
叫びながら、アサルトライフルのトリガーを引く。爆発により巨大な水柱が上がった。初動の早さが幸
いし、それはタンカーから充分離れた場所だ。余波の影響で大きく揺れるが、幸い航行には支障は
なさそうだ。
「ならば、乗れ! 黒の騎士団は弱者の味方、戦う意志のある者、戦う力のある者を見捨てはしな
い。東堂らの捜索も我々が引き継ごう」
正面から弾丸のように強襲艇が向かってくる。僕は無頼をジャンプさせ、スラッシュハーケンを使い
強襲艇に取り付いた。
「おかえり、ライ」
「カレン・・・ ああ、ただいま」
支援
強襲艇は、ポートマンを巻き込み敵本陣につっこむ。ハッチが開き、中から紅蓮弐式を始めとする黒
の騎士団のKMFが飛び出す。珍しい事にゼロの無頼は、この中にはいなかった。どうやら、別の場
所から指揮に専念しているようだ。
「パイロットが乗り込む前にナイトメアを海に叩き落せ! ライとカレンは親衛隊を押さえてくれ! 他
の者は解放戦線と協力して本隊を挟撃、退路を確保しろ!」
「「了解!」」
「全力で片瀬を追い出――逃がせ!」
戦闘時においてパイロットの騎乗の有無は、肌で感じ取る事ができる。奥の角付きのグロースターに
パイロットの気配を感じ、最優先で叩く事にする。まだ起動途中のその機体に突進する。
「ええい、起動前に! 私にナイトメア戦で――きゃん!」
タックルでコンテナに叩きつけると、敵パイロットから前半の勇ましさとは裏腹に可愛らしい悲鳴が上
がる。そのギャップに僕は――
「何、やってんの! ライッ!」
カレンの怒声に、萌える暇も与えてもらえませんでした。何と言うか勘が良すぎだ。僕は頭を左右に
ブンブン振り、気を取り直した。そして、苦し紛れに放ってきたスラッシュハーケンを間一髪でかわす。
「危ない、危ない。頭を切り替えないと・・・」
紅蓮弐式がスラッシュハーケンで、萌えな敵(さっきの悲鳴は可愛かったなぁ「ライッ!」はい!ごめ
んなさい)のアサルトライフルを弾き飛ばす。更に攻撃を仕掛けようとしたところで、撤退命令が出た。
エナジーの残量もそろそろ気になっていたところなので、ナイスなタイミングだ。タンカーに攻撃をして
いた敵部隊も、こちらの戦闘に徐々に加わりその数を増していた。
「目的は充分果たした。消耗戦になる前に全員撤退だ!」
タンカーは無事出港し、中華連邦に向かって行った。
(おまけ)ダールトンとギルフォード
「ひ、姫さ ガバ、ゴボ、防衛線、ゲベ、ガバ、ゴボ、ブクブクブク・・・」
「殿下、うぉ、お守、ガバ、しろ、ゴボ」
二人仲良く、海に叩き落されていました。
以上です。
片瀬の扱いに悩んで悩んで、結局中華連邦に行ってもらいました。どれだけの期間、悩んでたかと
いうと第1話投下以前に、早くも悩んでいたような・・・
さて、今回は元々一つの話として書いていたのを長いので、切りのいいところで区切りました。
なので、次回作はお待たせする事なく投下できるかと思います。
では最後に、今回の支援者と前回感想をくださった方々に感謝です。ありがとうございました。
支援
>>779 GJ!今回も笑わせていただきました。ネリ様がかわいいwそしてカレンが怖いよw
そしておまけの二人wwこの人たちはネリ様に「脆弱者が!」と罵られるといいよ。
次回も楽しみにしています。
東堂の東って藤じゃなかった?
>>779 184卿、GJでした!
例え話が結構分かりやすいw
……ギャップっていいね!
ギルとダールトンが微妙に情けないのもユルユルでイイ!
あと、そんだけ悩んだのなら少将も浮かばれるでしょう……死んでないか。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>782 保管庫ですでに修正されているという摩訶不思議
>>782 その通りです。指摘ありがとうございます。
藤堂さんのファンの方、申し訳ありませんでした。
トーマス卿、修正した物をメールで送りますので差し替えをお願いします。
(タグをまた、使わせてもらいますので。あと、何故かタイトルが6話になっている)
KOUSI卿どうかしたのかな?
>>786 Eが抜けてますよ。
まあ今日も祝日で休みだし、あの方の都合もあるでしょう。
KOUSEIです。前回の続きを投下します。
全部で14レス(予定)です。
投下は幸せ!
支援します
○ロイ・キャンベル。
0025-0417参照。
○クラブ・コンクエスター
0007-0290参照。
○ライ
0012-0009参照。
○青い聖騎士(パラディン)
0022-0188参照。
○紅月カレン
0025-0417参照。
○アーニャ・アールストレイム
0028-0037参照。
○ジノ・ヴァインベルグ
ナイトオブラウンズのナイトオブスリー。ロイの同僚であり、親友。
名門貴族出身で幼少から世間知らずとして育ってきたが、ロイと出会ってから一般市民の生活に興味を持つようになり、今ではある程度の社会常識は持っているもよう。
また、一人称は“私”だったがロイ、スザクと一年間俗な場所巡りをしたせいで、いつの間にか“俺”が主流になった(“私”を使わなくなったわけではない)。
ロイとアーニャ。ナナリーとスザクの仲を影ながら応援している。ただ、その応援の仕方(特にアーニャに対する助言)は色々と間違っている。
性格は陽気で明るいが、いざという時には冷徹になれるというのがロイの評価。
支援
○シーン9『気持ちの問題』Aパート
某日早朝。エリア11の政庁、最上階。
ナナリー総督の執務室がある場所、その隣の部屋に、ロイ達ラウンズは揃っていた。
部屋には天井から一つのモニターが吊るされており、四人はその前で跪いていた。
『今回の行政特区。ナナリーより、全て聞いた』
モニターには、一人の男の姿が映し出されていた。
白髪の特徴的なロールカット。齢50を越えながら見るものに戦慄を与える眼光。歴戦軍人のようにいかつい肩。
シャルル・ジ・ブリタニア。
ブリタニア帝国の最高権力者。皇帝陛下その人である。
『そして、お主らからの報告書も読ませてもらった。しかし、直に言いたい事はあるか?』
相手に威圧を与える口調で、シャルルはモニターの前で跪く四人の騎士に問いかけた。
四人の騎士。ロイ・キャンベル、枢木スザク、ジノ・ヴァインベルグ、アーニャ・アールストレイムは赤い絨毯の上で恭しく頭を垂れるだけで、何も答えなかった。
『何も無い、と言う事か?』
シャルルは更に問う。ここにきて、リーダー格のジノが口を開いた。
「恐れながら申し上げます皇帝陛下。今回ゼロを取り逃がした責は、ナイトオブゼロの報告書にもありました通り、我々ラウンズにございます。ですので、全ての失態の罰は――」
『だから、ナナリーには過失は無い。そう言うのだなナイトオブスリーよ』
「……はい」
ジノは額に冷や汗を滲ませて、更に頭を下げた。モニター上のシャルルは鋭い眼光を全員の騎士に浴びせ続けた。
『責は我々ラウンズが取る。なので、ナナリーには今まで通りエリア11で好きにやらせよ。お主らの言いたい事はそれに尽きるのだな?』
「……」
ジノ達は無言だった。それを肯定と受け取ったシャルルはなにやら熟考し、小さく頷いた。
『分かった。ではそういう事にしよう。ナナリーにはこれまで通り、エリア11の総督を任せる。そして、お主らラウンズも、責があるというのなら、そのエリアで責を挽回できるよう励むと良い』
何人かがその言葉に意外そうな顔をして、チラリと自分たちの主を見た。しかし、すぐにまた恭しく頭を下げた。
「はっ、ありがとうございます」
支援!
『だが、お主らにはナナリーの補佐をしてもらいつつ、一つ任務を申し渡す。来月、我が息子オデュッセウスと中華連邦の天子との挙式が決定した事は知っておるな?
お主らラウンズにはエリア11の補佐はさておき、この挙式の間、オデュッセウスとその付き添いであるシュナイゼル両名の護衛を言い渡す』
「護衛、ですか?」
ジノが顔を上げ、後ろの三人は頭を下げながら互いに視線を合わせた。
――ここにいるラウンズ全員がこの地を一時的にとはいえ離れる? 行政特区が失敗してこのエリアは混乱しているというのに?
『不服か?』
しかし、どんなに不満や疑問があったとしても、断るという選択権は彼らナイトオブラウンズには無い。
「イエス・ユア・マジェスティ。その任務謹んでお受けいたしま――」
「皇帝陛下。恐れながら」
ジノの型通りの言葉を遮ったのはナイトオブゼロ、ロイ・キャンベルだった。
ジノは驚き。
アーニャは困惑。
スザクは怪訝。
同僚三人のそんな視線を一身に浴びながら、ロイはそれを意に介さず、一歩進み出た。
『なんだ、ナイトオブゼロよ』
「現在、エリア11は報告書でも述べさせていただきました通り、混乱の極みにあります。したがって、文官だけでは手に余る事も起こりうるかと」
シャルルは黙ってゼロの名を持つ部下の言葉に耳を傾けていた。ロイは続けて言った。
「ですので、このエリア11には念のため一人はラウンズを残留させたほうがよろしいかと考えます。どうかご一考を」
『……』
シャルルは頭を下げるナイトオブゼロの見据え、しばし考え。
『よかろう、では、お主らで中華連邦で護衛を担当する三人を決め、任務にあたるがよい。これで良いな? ロイ・キャンベルよ』
「はっ」
ロイの返事を最後に通信は切れた。
○
早朝という事もあってか、政庁の廊下にある自販機ルームに人はいなかった。
空調もまだ目を覚ましていないらしく、廊下には冷たい朝の空気が流れていた。
「お前、やめてくれよああいうの。寿命が縮む……」
「同感……」
先ほどの皇帝陛下との通信。そこでの行動について、スリーとシックスの名を持つ同僚に文句を言われたロイは、自販機の下から缶コーヒーを取って苦笑した。
支援
「でも、何も四人全員が中華連邦での任務にあたる必要はない。君たちだってそう思っただろ?」
「まぁ、それはそうだけどな」
ジノはため息交じりに缶コーヒーをすすった。そしてぼやいた。
「でも、何も直に言わなくてもいいだろ? シュナイゼル殿下に口ぞえしてもらってもいいわけだし」
「ジノ。それ、本気で言ってるのか? それなら僕達は何のための皇帝陛下直属なんだ」
「……そうだな。お前の言う事はいつも正しいよ」
「ところで」
アーニャがオレンジジュースの缶を爪を使って開けながら話を切り出した。しかし、何回やってもあけられないようなので、ジノが横から手を伸ばしてあけてやった。
「ありがと。でっ、誰が中華連邦に行くの?」
「僕とアーニャ、そしてジノさ」
「ああ、その方がいいだろうな」
ロイの提案にジノは同意した。アーニャも否定はしなかった。しかし、
「待ってくれ」
ロイの隣でソファに座っていたスザクが真剣な表情で言った。
「僕はエリア11には残らない」
「えっ……」
その言葉に、三人は一瞬呆然とした。
「む、無理しなくていいよスザク。君は総督の傍についていてくれ」
ロイがそう勧めても、スザクは首を縦に振らなかった。
「いや、譲らないよ。僕はゼロを追って中華連邦に行く」
「スザク。何言ってるんだ……。一体、僕が何のために陛下に進言したと――」
「好きにさせれば」
そう言い放ってロイの言葉を制したのは、オレンジジュースを飲み終えて、缶を乱暴にゴミ箱に放り込んだアーニャだった。
アーニャはその眠たげな瞳でスザクを一瞥した後、ロイに言った。
「いたくない人が残るのは、結局誰も残らないのと同じ。違う?」
「……」
全くの正論だったので。ロイは何も言い返せなかった。
「となると……残るのはロイだろうな」
ジノは横目でロイを見た。ロイはその視線に困って、スザクを見た。
「……いいのか、スザク?」
「ああ」
「本当に?」
支援
「ゼロを倒さない限り、ナナリーの願いは叶わない」
「でも、それでもさ、スザク……」
ロイは諦めきれずに訴えた。
「君はナナリー総督の傍にいてあげて欲しい。行政特区が失敗してあんなに落ち込んでおられるんだ。こんな時こそ、幼馴染の君が……」
「だけど、適材適所で考えるならロイ。やはり君が残るべきだろう。この中で、戦闘力と、混乱したエリア11に対応できる政治的センス両方を持つのは君しかいない。
……それに、僕が一人だけ残ってもローマイヤとケンカして、かえってナナリーを困らせるだけのような気もするしね」
「まぁ、スザクの言う事ももっともなんだが……」
ジノは、今回のスザクに、理屈では反論できない事を理解しているようだった。
だが、理屈では無い感情でロイ、ジノ、アーニャはスザクに残ってほしかった。
行政特区の失敗以降。ナナリーの落ち込みようは凄まじかった。いや、表面上はいつも通りなのだが、ふと、総督としての仕事の合間に酷く疲れた表情をするようになった。しかもそれは、今にも事切れてしまいそうなほど、弱々しい顔だった。
「……」
だからこそ、三人はスザクが残るのを良しとしたのだ。三人はそんなナナリーを励ませるのは一人だけだと思っていたのだ。
「とにかく。僕は中華連邦行きを譲る気は無い」
スザクは睨みつけるように同僚を見回した。そこには、テコでも動かないという決意が見て取れた。
結局、中華連邦行きのメンバーはスザク、ジノ、アーニャとなり。ロイはエリア11に残留という形になった。
○
ロイ達が朝っぱらから自販機コーナーに険悪なムードを漂わせている頃、ナナリーはまだベットの中にいた。
そして、夢をみていた。
一年前のあの夢。
ナナリーの活動が本格的に始まったあの日の夢だ。
当時、ナナリーはブリタニアで、何かがしたいとあがいていた。
兄を失い。友を失い。場所も失った。それは自分が何もしなかったせいだという考えに至り、何かをしたいという欲望にも似た衝動にかられた。
贖罪のつもりなのかもしれない。とナナリーは思った。兄に守られ続けて、自分は何もしなかったという罪。それを少しでも償っていきたいと。
(何か私のできる事を、何か私に出来る事を……)
ナナリーは自分に問い続けた。
支援!
そして、問い続けた結果。ナナリーはブリタニアのブリタニアらしさに目を向けた。
ブリタニアでは一定の価値観において、一度弱者と決め付けられれば、その人の人生はそれまでだった。障害者しかり、被征服者しかり、貧困者しかり。
弱肉強食。ブリタニアが唱える国是であり真理。
そしてその真理の犠牲者は、今なお増え続けている。
(それではいけない……)
ナナリーはいままで過ごしてきた境遇もあり、ブリタニアの弱肉強食を完全に是としない、皇族内でも珍しい存在だった。しかし、それを是としないのはいいとして、だからなんだという話になる。
ナナリーがなんと思おうが相手は国是であり、太刀打ちできるものでは決してなかった。しかし、ナナリーは動こうと決めた。たとえそれがどんな小さな事でもやらないよりはきっとマシだと考えた。
(でも、どうすればいいのかが分からない……)
そこで、まずナナリーは護衛のアーニャに相談してみた。他に相談し易い人がいなかった、というのもあるが、アーニャはブリタニアに来て初めて、仲良くなってくれた人だった。
それに、アーニャは、かつてアッシュフォード学園でナナリーと仲良くしてくれた友達と雰囲気がとてもよく似ていた。だから、というわけでも無いのだが、ナナリーはほぼ無条件にアーニャを信じていた。
相談されたアーニャは、真剣にきいてくれた。そして、言った。
『私は役に立てそうに無い。……でも、文官じゃないけど、優秀で、皇女殿下の力になってくれそうな人を知ってる』
そして、彼女は数日後にある人を連れてきた。
ナナリーの住む宮殿の応接室に通されたその人は、過去の忘れられない感覚を思い起こさせる人だった。
「殿下。連れてきた」
「あ、あなたは……」
ナナリーはその人を通じて伝わってくる“音”を聞いて、驚きを隠せなかった。
――また来たよ、ナナリー。今日は何の折り方を教えてくれるんだい?
そう言って、足しげく通ってくれた、あの人。
兄の友人。スザクの友人。カレンの恋人。生徒会の仲間。
そしてなにより、ナナリーがルルーシュと、スザクの次に好きだった人。
(生きて、生きていた……?)
良かった。良かった良かった!
支援
目が見えなくても涙は流れる。顔と心が熱くなる、込み上げる。
なぜ、あの人がブリタニアに? なぜこの限られた者しか入れないこの場所に? そんな疑問など、この時のナナリーにはよぎりもしなかった。
「ああ、ライさ――」
「ロイ・キャンベルと申します」
部屋の入り口で跪いた男の言葉は、ナナリーの期待を大きく裏切るものだった。
「えっ……」
「お初にお目にかかります、ナナリー皇女殿下。ナイトオブゼロを拝命して数ヶ月あまりの間、ご挨拶に伺わなかった無礼をお許し下さい」
「ロイ、キャンベル……?」
ナナリーは肩透かしをくらったような気分になって、目の前にいるであろう騎士に気の抜けた顔を向けていた。
「殿下。ロイはあまり評判は良くないかもしれないけど、その実力と能力はシュナイゼル殿下のお墨付きで……」
ナナリーが怪訝そうに潜めた眉を、違う意味に受け取ったのだろう。アーニャは急いでフォローを入れた。
「あ、いえ、そういう事ではありません」
ナナリーは顔を赤くして顔を振った。
「ただ、足音が、その……私とお兄さまの大切な人に似ていたものですから、驚いてしまって……」
「足音?」
ロイ・キャンベルと名乗った男が、不思議そうに首を傾げた。
アーニャは「あぁ」と頷いて、ロイに説明した。
「殿下は足音で人を判別できる。結構正確」
「へぇ」
ロイは純粋に驚いたようだった。
ここで、ナナリーはロイをずっと部屋の入り口で跪かせている事に気が付いた。
「あっ、すみません。どうぞ中へお入り下さいキャンベル卿」
「はっ、失礼いたします」
そして、ナナリーは客人をテーブルに促した。
「おかけ下さい」
ロイは一礼してから、アーニャは特に何もせず席に腰掛けた。
それを見計らって、ナナリーの侍女がお茶を運んできて、三人の前に丁寧に置いた。
「わざわざ来ていただき、ありがとうございますキャンベル卿」
すると、ロイはスッと手を前に出した。
「どうかロイと呼び捨てになさって下さい皇女殿下。親しい友人はスザクを始め、そう呼びます」
「あ、はい。ではロイ……さん、と」
「……」
支援!
「ロイ。殿下にはこれが限界。これ以上の要求は下手をすればいじめになる」
「いじめって……。僕はそんなつもりは微塵も……」
「殿下をいじめたら、ダメ」
アーニャに睨まれて、ロイは困った顔をした。
「……分かったよ。了解」
(……)
この間、ナナリーはずっとロイの声や口調に集中していた。
(口調が少し違う、仕草も……でも声はそっくり……)
ナナリーは目が見えない代わりに、耳の良さには自信があった。
そして、ロイという人物が出すあらゆる音を聞く限り、やはり、あの人ではないかという疑問が無制限に増大していった。
(試してみよう……)
どちらにせよ、客人を迎えていつまでもモヤモヤとした感情を抱き続けるのは失礼と言うものだろう。
違うなら、違うとハッキリさせる必要があった。
ナナリーはそう決意して、気分を落ち着かせるために小さく呼吸をした。そして、微笑んだ。
「ロイさん。あなたの事はスザクさんに聞いています。どんな状況になったとしても、私のために動いて下さる方だと」
「イエス・ユア・ハイネス。もちろんです皇女殿下。私の忠誠は皇帝陛下とその皇帝陛下が愛するブリタニアと皇族の方々に捧げております。それはもちろんナナリー皇女殿下も例外ではございません」
そして、ロイは優しい声で言った。
「つまり、私はナナリー様の盾でもあります。いざという時にはお守りいたします」
やっぱりあの人の声と似ている、そう感じてナナリーは顔を赤くしてしまった。
そういえば、一時期兄ルルーシュの帰りが遅く、その事を、あの人に相談してみた時も、同じような事を言われた。
「大丈夫、心配しなくていいよナナリー。ルルーシュと、それに」と言って彼は言葉を止めた後、
――ナナリーは僕が守るから。
ナナリーは自分が回想に浸っている事に気付いて、胸中で首を振った。
「あ、ありがとうございます。それに、アーニャさんからも、あなたの事はよく聞いています」
「はは、何と言われているのやら」
「悪い風には言ってない。多分……」
「ええ、とても素晴らしい方だと聞いています。これからよろしくお願いします」
ナナリーはさりげなく手を差し出した。ロイは反射的にその細い手に自分の手を重ねた。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします殿下」
支援
握手を交わし、ロイは手を離そうとした。
「?」
しかし、ナナリーは手の力を緩めなかった。いや、むしろ強めた。
「殿下?」
振り払うわけにもいかないのだろう。ロイは困った様子でナナリー声をかけた。
「あの……」
ナナリーはおずおずと尋ねた。
「あなたはロイさん……なんですよね?」
「へっ?」
ロイは質問の意味を理解しかねたのか、一瞬呆気にとられたようだが、
「あっ、イエス・ユア・ハイネス。私はナイト・オブ・ゼロ。ロイ・キャンベルです」
ナナリーの心の中に暗い落胆の色が広がった。なぜなら、この手を繋ぐという行為によって、ロイが嘘を付いていないと言う事が分かってしまったからだ。
「そう、ですよね……」
ナナリーは力なく、手を離した。
しかし、ナナリーはすぐに気を取り直した。
忙しい中わざわざ来てもらった客人を、これ以上個人的な気持ちに付き合わせては迷惑だろう。と思ったのだ。
「実はロイさん。アーニャさんから聞いておられるかもしれませんが、あなたに頼みたい事がありまして……」
「これ」
いつの間にか、アーニャがナナリーの机に置いてあった書類を持ってきていた。
「ええ、話は聞いています。では、拝見させていただきます」
ロイは書類を受け取って、目を通し始めた。
それは、文庫ぐらいの厚さがある書類だったが、ロイは流すような速さで目を通した。これは別に、何割かを省いて読んだというわけではなく、ロイの速読が成せる技だった。
約五分間。少女二人は大人しく待っていた。
「……戦災孤児向けの援助基金。戦傷病者戦没者遺族への援助改正案。帝国内の名誉ブリタニア人への公的扶助指針案。それにスラムの教育整備ですか」
「素人考えですが……こういうのが実現できれば良いなと思いまして」
「なるほど、なるほど……」
ロイはひとしきり頷いた後、人に気付かれない程度に小さくため息をついた。しかし、耳の良いナナリーにはそれが聞こえた。
「結論から申しますと、確かに素人考えですね。それにこれは計画書ではない。ただの感想文です。こうしたい。ああしたいという想いは伝わりますが、提示されているそこに至るまでの手法に現実味が無さすぎます」
「……」
辛口コメントであったが、その通りだったのでナナリーは何も言えなかった。
携帯が猿った、支援
「このままシュナイゼル殿下にお見せしていたのですか?」
「はい……」
もっとも、見せた所で「気持ちは分かるけどねナナリー。君はもう少し勉強をしてみるべきだよ思うよ」と、遠慮がちに言われただけだった。
その時、隣にいた、副官のカノンが補足した。
「ナナリー様のやりたい事は理解できますわ。ですが、その私たちが理解している事と、ナナリー様が成しえたい事が必ずしも同義とはらないのが人の性です。
ですので、こういう計画書を正式に申請として提出する場合、その目標へ到達する経緯を現実的に、かつ第三者にも分かりやすく示す必要があります。
そうしなければ、ナナリー様の目指す目標が、捻じ曲がった理解をした者が歪曲した段階を踏み、結局はその目標をナナリー様とは違うものにしてしまう可能性があります」
つまりは、多くの人に関係する何かをしたいと思うのなら、多くの人が同じ認識を持って進めるような指針や段階目標をしっかりと作らなければいけないという事だ。
しかし、この時点では、ナナリーはこうしたいという最終目標のみを強調し、そこに到達するための段階ごとの計画を欠いた。
その指針・段階作りをシュナイゼル達に手伝ってもらうという選択肢はナナリーには無かった。帝国宰相とその副官は一年を通して業務に忙殺されており、ナナリーとの面会時間も、本来ならただでさえ貴重な睡眠や休息にあてる時間を割いて作ってくれたのである。
スザクに頼むという選択肢もあったが、彼と会うといつも慣れないラウンズの仕事が忙しそうなので、頼みにくかった。
しかし、ナナリーにはどうしても、賢い人物の助けや指導が必要だった。
そして、今日来たのがアーニャ曰く「初めての仕事でも、すぐに慣れる。だから、スザクに比べれば多分暇」のロイ・キャンベルだった。
しかし、今回ロイに見せたものは、シュナイゼルから言われた後、ナナリーなりにその指針・段階目標を加えてみたものだったのだが、“シュナイゼル殿下のお墨付き”のロイからしてみれば、勉強不足・感想文の域を出ないものであったらしい。
「なんと申しますか。さぞかし、シュナイゼル殿下もお困りだったでしょう……」
「……」
ナナリーはドレスのスカートを無意識にギュッと握った。
「ロイ……」
ロイの腕を、アーニャがつついた。
……ミスった……支援
「んっ、何?」
「言いすぎ。皇女殿下いじめたらゆるさない」
「いえ、いいんですアーニャさん。事実ですから……」
「話は最後までお聞き下さい皇女殿下。それにアーニャも。確かに、このままではダメですが、だからこそ僕に協力を頼んだんのではないのですか?」
ナナリーが俯かせていた顔をハッと上げた。
「ロイさん。では」
ロイはニッコリと笑った。
「殿下。あなたが叶えたいと思っている内容は実に的を得ていますし、何よりブリタニアに必要だけど足りない事です。あとは、僕がしっかりと形にしましょう。いや、形にするお手伝いをさせて下さい」
そしてロイは、ナナリーに協力する事を約束してくれた。
ナナリーは嬉しかった。ナナリーが唱える思想に共感を示してくれた貴族は、ブリタニアに来て以来初めてだったからだ。アーニャだって、別にナナリーという友達に協力してくれているだけであって、決してナナリーの唱える思想に共感してくれているわけでは無いのである。
「ありがとうございます。ロイさん」
「殿下。先ほど僕は少し厳しい事を言いましたが、あなたは、こういう事に向いていますよ。僕が保証します」
そして、ロイはその書類を抱えて立ち上がった。
「では、とりあえず今から、これを僕なりにもう少し詰めてみたいと思います。明日にでもまた打ち合わせしたいと考えますがいかがでしょうか?」
「はい、私はどうせ暇ですので、ロイさんに合わせます」
「ロイ。私に何か手伝える?」
隣のアーニャの言葉に、ロイは手を振った。
「いや、君はナナリー総督の護衛だろ。君は君の任務をするんだ」
「でも……」
「適材適所さ。そういえばナナリー皇女殿下、先ほど暇とおっしゃいましたが、本当に暇ですか?」
「えっ、はい。暇です」
「そうですか。では、しばしお待ちを」
すると、ロイは懐から携帯電話を取り出し、どこかにかけた。
しばらく待ち、相手が出ると、ロイはパッと笑顔を作った。
「あっ、ローマイヤさん? こんにちは、僕です。ロイです。ちょっとお聞きしたいのですが……」
と言ってロイは電話越しに何かを尋ね、ペンを取り出し、頷きながらメモを取った。
「ありがとうございます。このお礼は後日にでも。ええ、はい、失礼します」
支援
そして、ロイは携帯を切ると、テーブルの上の何かが書かれたメモ用紙をアーニャの前にスッと移動させた。
「ナナリー皇女殿下。僕の友人に、殿下の目指すものの参考になりそうな本を聞いてみました。お暇でしたら、読んでみてください。きっと参考になるでしょう。本のタイトルが書いてあるメモはアーニャに渡しておきますので」
「あっ、はい。分かりました」
「では、ひとまずこれで失礼いたします」
と言って、ロイは立ち上がり、一礼した後、部屋を出て行った。
部屋には少女二人が残された。
「言ったとおりでしょ」
「えっ、何がですかアーニャさん?」
「ロイの事。彼、優しいから。きっと殿下に協力すると思った」
ナナリーは友人の言葉に驚いた。アーニャと知り合ってそんなに長くないが、それでも他人の事を、優しい、と評価するような人物ではないと思っていたのだ。
「……」
「? なに?」
ナナリーの困惑した表情に気付いたのか、アーニャは怪訝そうに聞いて来た。
「あっ、いえ、アーニャさんがそうやって他人の事を言うのも珍しいな、と思いまして……」
「そう?」
「はい、そうです」
「……」
「もしかして、好きなんですか。ロイさんの事?」
アーニャの体がピクリと震えたのをナナリーは感じ取った。そして、アーニャはしばらく黙った後、
「……ち、ちがう」
珍しく呂律の回らない友人の顔が見れなくて残念だ、とナナリーは思った。
「違うんですか?」
「……」
アーニャは答えなかった。
ここにきて、ナナリーは無性に申し訳ない気分になった。
「あの、アーニャさん。ごめんなさい。変な事聞いてしまって」
「……別に構わない。正直、私も分からないから」
「えっ、じゃあ、やっぱり好きかもしれないんですか?」
積極的なナナリーに、アーニャは意外そうな視線を向けた。
「……皇女殿下。もしかしてこういう話好きなの?」
「好きです」
即答だった。
支援!
支援
実際ナナリーはこういう話が大好きだった。
ただ、兄にこんな事を話すと「ナナリー。他人の情事に興味を抱くのはあまり感心しないな」と注意されてしまうので、黙っていただけである。
その兄にしても、あの兄と大変仲の良かったシーツーとの関係に、ナナリーは大きな興味を抱いていたものだ。なにせ、自分の義理の姉になるかもしれない人物なのだから、その興味も一押しだった。
「……」
ワクワクが弾けそうなナナリーの顔を一瞥して、アーニャは俯いた。それは、呆れているのか、話すのを恥ずかしいと感じているのか、それ以外の感情なのか、ナナリーには判断しかねた。
結局アーニャは、「図書館。行く?」と、これで話はお終いと言わんばかりに席から立ち上がった。
○
朝日の眩しさを肌で感じて、ナナリーは体をベッドから起こした。
懐かしい夢、と言うにはまだそれほど月日が経っていないが、ナナリーは遠い昔のような気がした。
(……私は、嫌になっているのだろうか)
気分は落ち込んでいる。夢にみた頃と比べればそのモチベーションとも言うべきものはかなり低下していると思う。
行政特区日本の失敗。
あのあと、シュナイゼルからも、励ましの通信が届いたが、やんわりと少し急ぎすぎたね、と言われてしまった。
それはナナリー自身も思う。でも、
(急ぎすぎなのは分かっていた。困難な事だとも分かっていた。分かっていたのに……)
それでも、いくら先走りでも、急ぎすぎでも、こちらが誠意をぶつければ理解してもらえると思っていた。本気で思っていたのだ。
支援
ナナリーは歩き出したこの道を止まろうとも、引き返そうとも思わない。ただ、この道が果たして自分に進む資格があるのか、また、自分はこの道を歩き終える事ができるのだろうか。
不安は尽きない。そして、今現在、その不安がナナリーの心に言いようの無い暗い影を落としている事も事実だった。
無理も無い。ナナリーはまだ15歳。心身共に成熟には程遠く、弱々しい。就任早々あんな失敗をしてしまってケロリとできるほど、ナナリーの神経は図太くは無い。
『ナナリー様。起床のお時間でございます』
介護者兼侍女のノックがした。
「はい、入ってください」
しかし、ナナリーの気分はどうあれ、ナナリーの選んだ道は、いつも通り彼女に一日と仕事を与えるのだった。
○『気持ちの問題』Aパートおわり。Bパートに続く。
支援!
投下終了です。
こんな時間なのに支援ありがとうございます。感謝です。
投稿ご苦労様でした!
>>819 KOUSEI卿、GJでした!
皇帝に意見を述べたロイの度胸が凄い。
あの顔と声を前にしたら普通無理だよね。
エリア11に残ることを拒むスザク、ゼロを理由にしてますがロイのことも有るんだろうなぁ、と勝手に想像しました。
ナナリーの感覚を見るならばやはりロイはライ、しかし……
忠義の漢が待ち遠しい。
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
KOUSEI卿、乙であります。支援!
とうとう中華編に入りましたが、ロイは残りますか。
これからどのように展開していくのか楽しみです。
そして、そして遂にカレン捕縛イベント!!
はたしてどうなるのでしょう?カレンは真実に気づくのでしょうか?やはり再会の鍵はオレンジ?
次回も楽しみにしています。
823 :
うにゃら…:2008/11/03(月) 13:04:13 ID:PdSCfa23
こんにちわ。
ゲリラ投下の人です。
投下しちゃいますので皆様、爆撃に巻き込まれないようご注意ください。
流れ的には前回の「誕生日編」の続きになります。
気になる方は、読んでいただけるとうれしいです。
タイトルは、「アッシュフォド生徒会の何気ない日常〜迷走編その1〜」。
カップリングは、「ライ×ミレイ」。
本レスは、4レスなので支援は必要ありません。
また、終了レスは入れないので、本レスの最後に《おわり》と入っていたらそこで投下終了となります。
ご注意ください。
824 :
うにゃら…:2008/11/03(月) 13:05:31 ID:PdSCfa23
アッシュフォード生徒会の何気ない日常〜迷い編その1〜
「あーっ、かわいい〜っ。会長っ、それどうしたんですか?」
シャリーが目敏く私のつけているペンダントにチェックを入れる。
ライからもらったあのロケットペンダントだ。
「うふふふ、いいでしょ?」
ついつい自慢したくなる。
ライが私の為にくれたプレゼント。
とても大切なもの。
あれ以来、肌身離さず持っている。
「本当っ、すっごくいいですね。もしかして婚約者からのプレゼントですか?」
「え?!」
私は、そう聞かれて言葉を失った。
「さすが伯爵家の方ですよね。センスいいなぁ。
私もこういうの欲しいなぁ…」
聞こえよがしに声のトーンを上げてそう言いつつ、ちょろちょろとルルーシュの方を見ている。
シャーリーとしてはルルーシュを牽制するつもりで何気なく言ったつもりだったのだろう。
だけど私にとって、その言葉の意味は現実を再認識させるだけの楔でしかない。
そう、私は…ライとは……。
この時、私はシャーリーの言葉を否定する事も出来ず、泣き出しそうになるのを我慢することしか出来なかった。
825 :
うにゃら…:2008/11/03(月) 13:07:05 ID:PdSCfa23
この出来事があってから、私はライとの関係に深入りしないようにしなければならなかった。
これ以上、彼の事を思ってはいけない。
私のライへの思いは、決して実現しないもの。
なぜなら、卒業したら私は他の人と結婚するのだから。
だから、私はペンダントを外した。
貰った時、私はこれを絶対外すことはないと思っていたのに…。
ふと、鏡を見る。
あれ、何で泣いているんだろう。
鏡に映る私は、まるでこの世の終わりを見てきたかのように絶望に打ちひしがれて泣いている。
ああ、笑わないと。
だってこれからアスプルンド伯爵と会うのに…。
そう思って無理やり笑ってみる。
ああ、なんて不恰好な笑顔なんだろう。
しっかりしなきゃいけない。
そう、アッシュフォード家の為にも。
そう思って自分を奮い立たせようとする。
でも、それ以上にアッシュフォード家の家名が重く圧しかかってくる。
今までそれが重いとか負担だとか思ったことはなかった。
そういうものだと思っていたから。
なのに、今、私はそれに潰されそうになっていた。
826 :
うにゃら…:2008/11/03(月) 13:09:01 ID:PdSCfa23
最近、ミレイさんの様子がおかしい。
話したりはするものの、なんかはぐらされている感じだ。
それにプレゼントしたペンダントも最近していないみたいだし…。
やっぱり、迷惑だったのかな。
そういう思いが頭を掠める。
その時だった。
「どうした?らしくないじゃないか…」
ルルーシュが僕に声をかけてきた。
「なんでもないよ、ルルーシュ。大丈夫だ」
そう言って無理やり笑ってみせた。
「おいおい、その顔でなんでもないといわれても余計心配させるだけだぞ」
呆れ顔でそう言われてしまう。
そんなに酷い顔してるんだろうか。
「悩みがあるなら相談しろよ。何かできることがあるかもしれないだろ?」
少し照れながらそう言ってくれるルルーシュ。
そうだよな。
僕は一人じゃない。
僕の周りには、大切な友人たちがいるじゃないか。
一人で抱え込んでみてもしょうがない。
そう思い、僕はミレイさんの事で気になっていることをルルーシュに相談することにした。
そして、恥ずかしかったが僕の彼女への思いも話した。
なぜなら、その思いがあるからこそ、僕はここまで悩んでいる。
だから言わないわけにはいかなかった。
827 :
うにゃら…:2008/11/03(月) 13:11:11 ID:PdSCfa23
真剣な表情で僕の話しを最後まで聞くと、ルルーシュは僕を見据えて言った。
「ライ、お前はどんなことがあっても、彼女の傍にいて彼女を守ると誓えるか?」
いきなりの言葉に僕は言葉を失った。
「ど、どういうことだよ、いきなり…」
いきなりのルルーシュの言葉に、僕はわけがわからない。
混乱気味な僕をルルーシュはじっと見つめた後、ゆっくりと話し出した。
アッシュフォード家の事、そしてミレイさんの婚約の事を…。
僕は、ただルルーシュの話を聞くだけで精一杯だった。
思考がまったく働かない。
でもそんな状態ではあったが、なぜルルーシュがああいう事を最初に聞いてきたのか理解できた。
「ライ、悪いことは言わない。最初に言った覚悟がないのなら諦めるんだ」
ルルーシュは最後に冷たくそう言うと、立ち尽くしている僕を残してその場を去った。
僕は、その後姿を呆然と見送る事しか出来なかった。
僕は…僕はどうすればいいんだ。
その時の僕は、まるで出口のない迷宮に落されたような心境だった。
《おわり》
828 :
うにゃら…:2008/11/03(月) 13:14:46 ID:PdSCfa23
うわー…。
すみません、誤字です。
本文のタイトルが「迷い編その1」になっています。
正確には「迷走編その1」です。
申し訳ありません。
おぉ、なかなかの急展開!
>>828 うにゃら…卿、GJでした!
この二人の関係、無性に哀しい気持ちが込み上げてきますね。
ミレイの気持ちといい、ライの知った事といい……
凄く続きが気になってまいりました!
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただけますか!?
>>828 シリアス展開GJ!です。続きが気になります。そして、卿のミレイさんへの愛ゆえにでしょうか?
驚異的な投下ペース! (本スレだけで7作)もう一度GJ!
さて、総レス数6レスなんで支援をお願いしたいのですが・・・
支援
久しぶりに支援します。
静かな夜なんで心配でしたが、支援よろしくお願いします。
分割しなければ、ギャップ萌えのネリ様も溺れる?忠臣二人も生まれなかった。
前夜に引き続き、こんばんわ『184』です。二晩続けて投下なんて、もう二度とないかもしれない・・・
タイトル :ロスカラさん 第8話 シャーリーと銃口?
カップリング:ライ←(カレン&井上)
ジャンル :コメディ? ユル〜いキャラで再構成もの
キャラの言動が、ほぼギャグです。(各自がギャグ漫画にありがちな特技や思考を持ってたりします)
5〜3頭身キャラが出て来る四コマ漫画を楽しむ感覚で、読んでもらえれば幸いです。
初期状態からライの千葉中尉への好感度は、やや高目に設定してます。その為ゲーム本編と違い、
いきなり「凪沙さん」と呼んでます。
ベイエリアでの戦闘後の話です。既に仙波大尉と合流済みです。
本文に4レス使用予定。前書き・後書き含めて6レスなので、ユル目の支援をお願いします。
静かな夜をぶち壊せ!
支援
ロスカラさん 第8話 シャーリーと銃口?
「よ〜 おかえり、ライ」「元気にしてたか?コノー」「わ〜 ライ君、帰って来た〜」
古巣(黒の騎士団)に戻った僕を皆は歓迎してくれた。肩や背中をバシバシ叩かれたり、ヘッドロッ
クをした上で頭をグリグリのクシャクシャにされた。
「ライ!」
「カレン! おっと」
人混みを掻き分け、カレンが抱きついてきた。僕の胸に顔を埋める彼女の頭をそっと撫でてやる。
「ヒューヒュー。熱いねぇ〜 次はチューか?チューするのか? ぐはっ!」
小学生みたいに囃し立てる玉城を、顔を埋めたまま後ろ足で蹴り飛ばすカレン。相変わらずの雰囲
気に苦笑いしながら回りを見ると、凪沙さんと目が合った。しかし、プイッとそっぽを向かれてしまっ
た。嫉妬してくれたのなら少しは嬉しいのだが、彼女の場合ラブシーン?に免疫が無くて単に照れ
ているだけというのもあり得るので、何とも判断が難しい。
(後で探りを入れて、前者ならフォローしとかないと・・・それはそうと・・・)
「良く戻ってくれたライ。C.C.と井上なら別件で出張っていて留守だ」
欠けている物を感じていた僕に、ゼロが的確に答えてくれた。
「フッ、二人に会えなくて寂しいか?」
「ああ、それは勿論――ってぇーー!!」
背中に激痛が走る。カレンに力一杯抓られた。背中がジンジンする。
「そうか♪ 今後の事で話がある。ライ、司令室に来てくれ。カレン、ライを借りるぞ?」
「こんなチャンス、滅多にないのに・・・」
「非常に大事な話だ」
「分かりました・・・」
ゼロにキッパリと言われ、カレンが渋々僕から離れる。しかし、チャンスって・・・
「皆も疲れただろう、もう休んでくれ。ああ玉城、騒ぎたい気持ちも分かるが宴会は暫くお預けだ。
解放戦線の人達の気持ちも考えろ」
「気遣い感謝する。我々はあくまで――」
「承知している。まずは藤堂中佐との合流、その後の事は中佐の判断しだいと言うことで」
支援
『今後の事で話がある』という事で司令室に来たのだが、先程からゼロは一言も話しかけてこない。
「〜〜♪」
しかも何故か、僕の隣に寄り添うように座っている。それどころか段々こちらに体重を預け、しなだれ
掛かってきた。
「あの、重いんだけど・・・つっ!」
今度は太腿を抓られた。
「ごめん、冗談。井上さんは重くないです」
「! どうして・・・?」
ビクッと反応するゼロ。やっぱり、ゼロ=井上さんなんだ。C.C.の可能性も僅かにあったのでホッと
する。
「こんなに密着していて、気付かない筈ないでしょう? さ、仮面を取って顔を見せてください。あと、
理由も説明してくれますね?」
「ええ♪」
作戦直前にゼロが負傷したと、C.C.から連絡が入った。ゼロ不在では士気に大きく影響する。その
為、急遽影武者が必要になった。以前のキョウトの時の様に、ゼロの仮面と衣装を着てただ立って
いれば良いという訳にはいかない。今回は戦闘があるのだ。要所要所で指示をする必要がある。
しかし、始めから影武者を想定していたのなら兎も角、あらかじめ声を録音して準備などしている訳
が無い。それでゼロの声を再現する為に、【声真似】の技能を持つ井上さんに白羽の矢が立ったの
だという。
(あらゆる事態を想定して、数十パターンもの作戦データが入力されたパソコンがあったとはいえ、
見事にゼロになりきったな井上さんは・・・)
それに今回に限って、あの白カブトが出てこなかったのもラッキーだった。
「それで、ゼロは?」
「C.C.が付いているから大丈夫。それよりも――」
ブルブル震える井上さん。
自分の言動に沢山の人の生死が掛かっていたと思うと震えが止まらない。ゼロの肩に掛かる責任
の重さに潰されそうになった。だから――
「抱きしめて、震えを止めて・・・」
こんなに、弱々しい井上さんは初めてだ。僕は彼女をギュッと抱きしめた。こんな体勢だから井上さ
んが、ペロリと小さく舌を出している事に気付ける筈もなかった。
支援
やがて、井上さんが潤んだ瞳で見つめてきた。
「ねえ? して、キス・・・欲しいの」
「い、井上さん・・・」
そんな目でそんな事を言われたら、僕はもう・・・
「駄目だ!」ガ ン ッ ! 「つ〜」
「「何(だ)?!」」
大きな音に我に返り発生源の方を見ると、執務机の下からC.C.が頭を擦りながら出てきた。
(頭をぶつけたな)(ぶつけたわね)
「あ〜 ゴホン。被写体の商品価値が下がる。それ以上はダメだ」
片手にカメラを持っている。また、盗み撮りをしていた様だ。軍人とゼロのコスプレ女のツーショットっ
て、需要があるのか?
「C.C.、何故ここに? ゼロはどうした」
「そうよ、何で居るのよ? やっと二人っきりになれて、これからって時に・・・」(ブツブツ)
「ゼロなら信用の置ける奴に、家まで送らせた。だから、大丈夫だ(多分・・・)それより、ライ。
感謝して欲しいものだな。お前の貞操を守ってやったのだから・・・」
「え? わわっ!」
僕の着ていた軍服は、いつの間にかシャツのボタンが全部外されズボンのベルトも緩められていた。
あのまま雰囲気に流されていたら、僕が井上さんに食べられていたのは間違いないだろう。
「ぼ、僕、もう帰ります。そ、それじゃ、お疲れ様でした〜」
「ああ〜ん、ライく〜ん」
僕は着衣の乱れもそこそこに、司令室を飛び出した。慌てるあまり、司令室の近くにいた新顔の団
員に見られたのにも気付かなかった。
「ゼ、ゼロは男色家!? いや美少年キラー!? 両刀使い、軍服フェチ、カオスだ! 何と言うカオ
ス! さすがは、ゼロ! はーっはっはっはっは」
支援
支援
(おまけ1)ゼロ負傷とランスロット本作戦不参加の真実
海中に爆薬を仕掛け終えたゼロ=ルルーシュであったが、慣れぬ肉体労働でとうとうダウンしてしま
った。幸いあらゆる事態を想定して作戦は立ててある。データもパソコンに入力済みだ。後の事は、
C.C.経由で井上に任せる事にした。
ルルーシュに学生服を着せ、肩を貸して付き添っていたC.C.だったが途中で面倒臭くなった。道端
に彼を置き去りにし、よりによって近くにいた軍人(枢木スザク)に押し付けた。
スザクが『人が倒れている。虫の息だ』と聞かされ、慌てて行ってみるとそこに居たのは親友だった。
「君を死なせるものか!」とばかりに特派につれて行くと、ただの過労だと分かった。ホッとして
「それじゃ、家まで送ってきます」とルルーシュをおぶって出て行くスザクの頭には、作戦開始時刻
の事はスッポリ抜け落ちていた。
(おまけ2)シャーリーとヴィレッタ
前日にブリタニア軍人ヴィレッタ・ヌゥからルルーシュが『黒の騎士団に関与している』と吹き込まれ、
彼を尾行していたシャーリー・フェネットであったが、途中で見失ってしまい仕方なく学園に帰って来
た。するとなんと校門の所で、そのルルーシュをおぶったスザクと遭遇した。聞けば道端で倒れてい
たと言う。部屋まで運んでもらい、看病は自分がすると申し出た。
「すまん、シャーリー。迷惑を掛けて・・・」
「ううん、気にしないで」(疑ってごめんね、ルル。こんなヘナチョコなテロリストがいる訳ないもんね)
「シャーリー?」
「あははは。何か安心したら、涙が出てきちゃった。変なの」
「あんな情けない男が、黒の騎士団の筈がない・・・貴重な時間を返せ!」
シャーリーを尾行、途中まで様子を窺がっていたヴィレッタは、汚名返上の為の独自調査を一から
やり直す事にし、その調査対象からルルーシュ・ランペルージを除外する事にしたのだった。
支援
以上です。
今回の支援者と前回感想をくださった方々に感謝です。ありがとうございました。
ネタバレになるので前書きには書けませんでしたが、井上さんの特殊技能【声真似】再登場でした。
元ネタは萌は文化卿の「寝起きドッキリ」からです。2話の時点では、あってもなくても関係なさそうな
スキルでしたが『井上ゼロ』の為の布石だったのです!な〜んて
では、次回をユルユルと待つべし!(一行も書けてないんだけどね)
>>844 ユルユルGJ!
ライ、黒の騎士団におかえりー!
井上が万能すぎるw
おまけが平和だw それは疑うのがバカバカしくなるわけだなww
寄りによってディートハルトに見られてどう誤解を解くのか先行き不安な予感
>>844 GJ!ユルユルでいいなあ、この世界は。
ディートハルトに勘違いされて、ゼロはどうなっちゃうんだろう。
そしてスザク、作戦をすっぽかすなよwさらにヘナチョコテロリストってww
次回をお待ちしています。
さて、0:40頃から小ネタを投下します。
前書き・本文・あとがき合わせても4レス分なので、支援なしでも大丈夫かな?
184卿GJでした
相変わらずユルイわりに蝶修羅場な騎士団が面白いです
神出鬼没なC.Cもかっこいい事言ってる割りに虚弱なゼロもヤキモチやきな
カレンも初登場の割りにいい感じに暴走してるディードハルやらキャラの
ユルさがいい感じですね。
あとスザク親友のためとはいえ作戦忘れんな、というか特派の人々も止めろ
ヴィレッタさんもシャーリーも何気にヒデェよ、こんなんばっかかブリタニア
という感じでいい感じに緩々な卿の次回の投下をユルユルとお待ちさせていただきます
ところで今回の最萌は頭打ちつけて痛がってるC.Cだと思いました。
>>844 ユルユルにGJ
このシリーズ大好きだwww
特にこのシリーズの井上さんが良いです
ええ、素敵です
机の下から出てくる時に頭をぶつけたC.Cに萌えたwwww
次回も期待しています
>>844 184卿、GJでした!
ユルユル感が心地いいw
無駄にアットホームな騎士団はやはり良いものだw
あれ? 限りなく優しい世界に近いな、これw
貴公の次の投下を全力でユルユルしながら待っています〜
遅くなりましたが、GJでした。
本当にリラックスして読めました。井上さんが只者じゃないね。やっぱり。
シャーリーの方は本編と違って幸せに生きていてくれそうなので良かったと思います。
さて、
>>846卿の投下が終わって感想を書いたら自分も投下しようと思います。
さて、そろそろ投下します。小ネタは初めてなので、うまくいったかどうか。
作者:余暇
タイトル:夜のカオス
(注意)
・タイトル通り、ものすごいカオスです。
本文は2レス分です。その後、あとがきもつけます。
『夜のカオス』
その日の夜、僕は部屋のベッドの中で、眠れない時間を過ごしていた。
「困ったな、眠れない。明日も早いのに、どうすればいいんだ。」
と、その時だった。
「フゥフハハハハハ!」
「なっ、何だ!?」
不気味な笑い声がしたかと思うと、部屋の天井に穴が開いて、ゴンドラに乗ったロール髪の男が降りてきた。
あの姿はまさか、ブリタニア皇帝!?
「眠れないと言うのはぁ、貴様だなぁ?」
「ちょっ、皇帝陛下!何故こんな所にいらっしゃるんですか!」
「ふっ、ほぉんの気まぐれよぉ。」
「気まぐれ?気まぐれで何故こんな馬鹿騒ぎを起こすんですか!」
ここに皇帝が来るのも驚きだが、今何時だと思っているんだ。
「パンパカパァン!おぉめでとう!貴様はぁ、このわし直々にぃ眠れるまで面倒を見てやろう。ていうかぁ、今気まぐれで決まったのだぁ!」
「……だから、何でもかんでも気まぐれで事を起こさないで下さい。」
実はこの人、かなりお茶目なのか?
「そぉれではぁ、ひぃつじが一匹ぃ〜。ひぃつじが二匹ぃ〜。」
「ちょっと陛下、唐突過ぎますって!何故予告なしで羊を数えだすんですか!」
まだ布団をかぶっていないのに、羊を数えられても困る。あ、これってお茶を出した方がいいのか?
「あの、陛下。今お茶をお出ししますので…」
「むぅ、羊では眠れぬと申すかぁ。そうかぁ、昔話が良いのだな?」
「だから話を聞いて下さい!」
ダメだ、まったく話が噛み合わない。
「むかぁし昔ある所にぃ、若い二人の男女が住んでおったぁ。」
結局僕は、皇帝から昔話を聞かされていた。どうやらお茶はいらないらしい。
「その男はぁ、女にベタ惚れであったぁ。何とかして気を引こうとぉ、ある夜、男は女の寝所に忍び込んだぁ。」
あれ?何だこの話、もしかして年齢制限ありですか?
「『おぉ〜、いとしのマリアンヌゥ〜。』」
「……って、何故お二人の馴れ初めの話を聞かされないといけないんですか!」
「なぁんだ、これからいいところなのにぃ。ふふふ、恥ずかしいのか?まぁだまだ青いのぉ、大人の世界にはぁ、それはもうピン…」
「みなまで言うなあ!」
ええい、年寄りの馴れ初め話は何故かいやらしいと聞いていたが、本当だったのか。
「ふむ、仕方がないのぉ。」
「そんな心底残念そうな顔をしないで下さい、聞かされる身にもなって…」
その時だった。朝を告げるニワトリの鳴き声が聞こえ、空が白み始めた。
「おおっと、もうこんな時間かぁ。若者よぉ!わしはもう帰るが、気落ちせず今日も励むがよい!では、まぁた来るぞ。オォール・ハァーイル・ブリタァーニア!」
すると皇帝は、ゴンドラに乗って帰っていった。ゴンドラが去った後、天井は静かに元の姿に戻った。穴が開いた跡は、まったく見えない。
「一体何だったんだ。……って、一睡もできていないじゃないか!皇帝のバカ野郎、もう二度と来るなー!」
結局その日の授業はまともに受けることができず、ずっと居眠りしてしまったのであった。
以上です、皇帝大爆走の巻でした。
余暇卿GJでした
とりあえず何処から突っ込んだらいいのかわかりませんがあの声で例の羊が
云々言われて眠れる人間は居ないですよマジェスティww
なんともカオスな話でした、卿の次回の投下をお待ちしています
いきなり吹いたw
>>854 余暇卿、GJでした〜!
ちょっと来てほしい気もするぞwww
というかどんだけ暇人だ、皇帝wwwww
やっぱりギャグはいいねぇ……そしてこの短さでここまでの笑い、ヤヴァイw
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
余暇卿、GJでした。
皇帝がいたら、そりゃ寝れないし、追い出すのも難しいですよね。
とりあえず、ルルーシュたちももしかしたら眠れなかったかもしれないと勝手に妄想。
さて、あと10分ほどしたら投下したいと思います
どうも、お久しぶりです。
たぶん、もう覚えている方はいないだろうと思いますが、またよろしくお願いします。
さて、今回は随分大昔に予告した、「キューピッドの日の災難」の続きの
「Knight of V.V.」というよく分からないものを投下したいと思います。
以下注意
・今回はプロローグみたいな形なので「?」と思う人が多いかもしれません。
・V.V.は…出て来ないです。名前だけはでますが
・カップリングは・・・あえて言うなら ライ×マリアンヌ。無しと言って良いくらいだけど。
・しばらくSSを書いてなかったので、出来は最悪です。自分の中では。
・本編の方は4、5レスで収まると思います。数回の支援をお願いします。
一応、次におおまかなあらすじを書かせてもらいます。予想以上に長くなったので
うざいなぁと思う方はスルーしちゃってください。
お待ちしていました、今こそが支援のとき
あらすじ
行政特区日本成立前からライとカレンは恋仲(保管庫0004-0912「告白の時」より以下それに続いていきます)。
そんな時、ミレイは「キューピットの日」の開催を宣言。
もし、他の生徒に帽子をとられればライとカレンはルール上別れることになってしまう。
ライはカレンに「絶対向かえに行く」と約束する。
始まったキューピットの日。ライはミレイの巧みな作戦により生徒たちによって捕まえられ、
生徒会室に連れて行かれてしまう。
そこで、ライはミレイの想いを知る。
キューピットの日は終わり、カレンはミレイがライに告白したのを知る。
ライを問い詰めているうちに怒りを抑えきれなくなり、「大嫌い」と言ってしまう。
ライはこの事件をきっかけに騎士団の信頼を失う。
そんな中、現れた敵「ナイトオブテン」。
黒の騎士団はほぼ全滅状態になるが、そこでライが月下に乗って登場。
整備が整っていない状態だったが、ルキアーノと相打つ。
ライはカレンの腕の中で永遠の眠りにつく。
彼の死をきっかけに、カレンはある決意のもとゼロと共にブリタニア本国に旅立つ。
一方、アーカーシャの剣では、死んだはずのライがV.V.の騎士として生きていたのであった。
次より、本編です。
支援
Knight of V.V.
0、未来の戦い
天空に機械の騎士たちが舞い、怒りや憎しみ、嫉妬、悲しみ…さまざまな感情をぶつけ合いながら
戦う。
かたや王の為に。かたや平和を望み、愛する人を救う為に…戦う。
ひとつ、またひとつ、騎士たちは散っていく。
モニターに『LOST』という文字が点滅する度に、ただそれだけが彼らの命の消滅を意味する。
一騎のサザーランドが破壊された。
乗っていた騎士は、先日結婚したばかりだった。子供の出産日も決まっており、これから幸せの時を刻んでいくはずだった。
一騎の暁が爆散した。
彼には、幼い弟と妹がいた。なかなか遊んでやることが出来なかった。この戦争が終われば、
必ず休暇をとり、旅行に行くと約束していた。
彼らはここで死ぬはずではなかった。
なぜなら世界は平和だったから。黒の騎士団とブリタニア帝国の争いは終わったのだから。
しかし、世界に再び争いが起きる。白き王によって―――
戦場を紅き鬼が駆け抜ける。
黒き王――ゼロの騎士、ナイト・オブ・イレブン 紅月カレンは、今まさに敵の本陣に突撃をかけていた。
彼女は戦争を終わらせたかった。だから、彼女は白き王を討つ。それがたとえ彼女の最愛の人でも…
しえん
――――――――――――――
大アヴァロンで指揮を執っていた白き王は苛立ちを隠せずにいた。
先程から、戦況が自分達に不利な流れになりつつあるからである。
オペレーターの男が、叫ぶ。
「キンメル卿の部隊、全滅! 右翼より敵部隊! 数は・・・8機!」
「正面の主力部隊、紅蓮を止められません!」
その報告に王は舌打ちした。
「ビスマルクの部隊をまわせ! 主力部隊は引き続きジェレミアに指揮をとらせろ!」
イエス ユア マジェスティ とすかさず男は返答する。
その様子を、白き王の騎士であるマリアンヌは口元は緩ませながら静観していた。
その表情は、わが子を見る母のように慈愛に満ちているように見える。
やがて、マリアンヌは王に話しかける。
「少しいい?」
王を司令室の隣にある一室に手招きする。王は無言で彼女の手招きに応じた。
支援
―――
部屋に入ってからも、王は椅子に腰をかけ携帯用のモニターで戦況を確認していた。
「随分と機嫌が悪いのね」
白き王は、戦局を移す画面から視線を変えずに答える。
「そういうあなたは、随分機嫌が良さそうだ。こんな状況で・・・」
「あら、そう? これでも危機感は抱いてるつもりだけど?」
マリアンヌはそういうと、王に自分の腕を絡める。
柔らかな感触を腕に感じると、王は少し頬を赤らめた。その姿は、先程まで険しい目つきで部下に命令をしていた
指揮官とは思えないほどかわいらしいと、マリアンヌは思った。
「それで、どうするの?敵の・・・紅蓮だっけ?たぶん止められないわよ。ほかのラウンズもまだ残ってるし。」
「わかってる。だから頼みがあるんだ」
王は彼女の腕をどかし、あるものを手渡した。
「これは・・・」
それは今まで数多の戦いを共にしてきた白き王の愛機の起動キー。
「僕は今回、王として、完全に指揮に回ります。だからあなたには僕の代わりに戦線にでて欲しい」
「私が彼女と戦っていいの?あなたが・・・」
「僕は、臆病なんだ。カレンとは戦えない。だから・・・」
白き王は椅子から立ちあがり、マリアンヌと向き合う。
「V.V.が命じる。我が騎士マリアンヌよ、我に変わり、黒の騎士団を・・・カレンを・・・倒せ」
『殺せ』とは言えなかった。王の中にはまだ情があったから。
「Yes, your Majesty・・・」
マリアンヌはそう呟くと、王の・・・彼の頬を優しく手で触る。
彼女はわかっていた。王がこの戦いでどれほどの苦痛に耐えていたのかを。だから騎士として、
そして、彼を愛する一人の女として。
王とその騎士の唇はほんの一瞬の間、重なった。
―――――――――――――――
しえん
敵のウォードを破壊したところで通信が入った。ゼロからだ。
『カレン、まもなく敵のアヴァロンが見えるはずだ』
「わかっています・・・」
それは、つまり『彼』もすぐそばにいるということだ。カレンの顔に緊張がはしる。
カレンは一度彼を失った。永久の別れ。彼は死んだのだ
しかし、現実には彼は生きていた。それはカレンにとって最悪の再会だった―――
突然、彼女のまわりにいた護衛の暁が破壊された。
目の前には、紅蓮やランスロットと同じエナジーウイングを装備した蒼いKMF。
その機体はまちがいなく『彼』の機体だった。
カレンはすかさずオープンチャンネルを開きその機体に向かって叫ぶ。
「ライ!ねぇライなんでしょ!!」
しかし、その問いに答えたのは『彼』ではなかった。
「残念だけど、人違いみたいね!」
蒼いKMF――ランスロット・クラブ・アルビオン――は二丁の可変式ライフルを紅蓮のコックピットめがけ打つ。
カレンは不意をつかれたものの、その正確「すぎる」射撃を輻射波動で防ぎ、すぐさま反撃にでようとするが…
「消えた!?」
クラブの姿はそこにはもうない。
「何処に行った?」
そう呟いた瞬間、青い閃光が目の前を横切る。遅れて紅蓮のコックピット内に響く警告音。
紅蓮の装甲に傷が入る。カレンは敵の姿を追おうとするが、また見失ってしまう。そして閃光がまたあらわれる。
閃光、警告音。閃光、警告音……
カレンはクラブの動きについていけなかった。機体性能の差はほとんど無い。相手の技量が一枚も二枚も上手なのだ。
だが、カレンも類まれない才を持つもの。その動きが見えなくても直感的…第6感が働いた。
「下から…」
閃光は再び走ったときクラブのMVSをカレンは紅蓮の爪で受けとめた。
相手はその防御に驚いたのか距離をとる。
緊張感を保ちつつもふっと息を吐いていると、今度は相手からオープンチャンネルで通信がはいってきた。
「なるほどねぇ。なんでV.V.が私に頼んだのかわかったわ。彼じゃあなたに勝てないもの」
先程は気づかなかったが、乗っている相手は女だった。
しかし、カレンにとってそんなことどうでもよかった。『彼』でないのなら相手など関係ない。
「V.V.?違う。彼の名前はライ。V.V.なんて名前じゃない!」
「ライという人物は死んだの。今の彼は神聖ブリタニア帝国、第99代皇帝『V.V.』よ。
あなたの望む人物はもうこの世にいない」
カレンが大声で叫ぶ。その事実を否定するために。
「そんなことない!私が彼を取り戻す!!だから…」
紅蓮の右腕に赤黒い光が集約されていく。
「そこをどけぇええええ!!」
放たれる輻射波動。だが、クラブはいとも簡単にそれをかわす。まるで、輻射波動がどのタイミング・場所に発射されるか
「わかっていた」かのように。
攻撃を回避後、マリアンヌも声をあげる。彼女にも譲れないものがあった。
「いいわ。だったら教えてあげる。彼がどれほどの想いで戦っているのかを!」
クラブは二対のMVSを構え、青き翼を広げ、紅蓮はその右腕に全てをのせ、赤き翼を展開する。
蒼と紅。二つの閃光が空を支配していった。
しえん
後にこの戦いは、A fight of the lie King――偽りの王の戦い――と呼ばれ、
黒の騎士団とコーネリア軍、ナイト・オブ・ラウンズの
反帝国軍に2度目の大打撃をあたえる結果となる。
なぜ、白き王「ライ」は自らをV.V.と名乗り、戦争を起こしたのか。
そもそも、ルキアーノ・ブラットリーとの戦いで死んだ彼がなぜ生きているのか。
それを知るには、時計の針を半年ほど遡らせなければならない・・・
しえん
以上で終わりです。
すいません。最後のミスで、6レスになってしまいました。
ナイトオブラウンズのカレンとクラブ・アルビオンを早く書きたかったので投下できてそこだけは満足です。
支援ありがとうございました!!
GJ、お疲れ様でした。
えー容量が規定に達しましたので新スレ建ててきます。
ポタラ卿GJでした
なにやらいきなり話が飛んで最終回付近まで来ているのに吃驚しました
マリアンヌやビスマルク等原作では死んでいるキャラも出てきて次回の
展開が読めません、とても楽しみです、卿の次回の投下を心よりお待ちしています
ところでこのままだとライがルルーシュやナナリーを我が子と呼ぶ日が来るのでしょうか?
DS版を想像した私はダメな人です
>>873 ポタラ卿、乙でした!
過程を! もっと過程を!
凄まじい展開に私の頭の理解が追い付いていない気がする。
あと、散っていった人達の死亡フラグに吹いたのは私だけですか、そうですか。
続きというか前というか、とにかく大変気になります!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>876乙です
ポタラ卿、大変わくわくする内容ですな!
期待して待ってます
469KBですので誰か次のスレ立てる準備をしてくだされ。私はこれからバイトに行くんで
883の誤字はスルー推奨orz
■埋め埋めSS(ハロウィン)■
埋めるにはまだ早いかなーと思いつつ、新スレはたってるんだし動きもないようなので投下してみる。
本文2.5レスの小ネタです。
ハロウィンに向けて賑やか平和萌え話を書いていましたが、到底間に合わない事に気付き、
その中から捨てるつもりだったネタを拾って短いのを書いてみた。
……それでも当日中には間に合わなかった。
そして書く前から微妙だと思っていたネタは、書いてみてもやっぱり微妙だった。
そんなイタいSSですが、まあ、穴埋めにならいいかーと投下してみる。
軽ーく読み捨ててください。
でも、注意書は必読なんだからね!
読まなくて、嫌な思いしたって自業自得なんだからっ!
■注意■
・虫注意!
・微グロ注意!
・強引落ち注意!
・想像力は控え目に!
■よいことライのやくそく■
(ひ)危険を感じたら3レス目は飛ばせ!
締めの文ものってるけど、そんなの気にするな!
せっかくのハロウィンだからと、お祭り好きの会長を擁する我が生徒会は、
ティーパーティーを催す事になった。
「今日は、ナナリー様に手伝っていただいたんですよ」
ポットを手にした咲世子さんがそう告げると、室内は、俄然賑やかになった。
「どれ?どれよ?」とリヴァルが騒ぎ、「すごいや、ナナリー!」とスザクが誉め、
「ナナちゃんえらーい!」とシャーリーが感嘆の声をあげて、
「頑張ったね、ナナリー」とルルーシュが優しく微笑む。
「スコーンとガトークラシックです」
注目が集まるテーブルの前で、にっこりと笑いながら咲世子さんがリヴァルの問いに答えた。
どちらも、とても美味しそうだ。
「そんな……お手伝いした内に入りません。スコーンは生地をこねただけですし、
ガトークラシックに至っては仕上げの粉砂糖をふっただけです」
謙遜するナナリーを、皆が口々に誉める。
「スコーンの生地って、バターと粉をなじませるの結構大変じゃなかった?意外に疲れるのよね」
僕にとっては、カレンがスコーンを作ったことがあるのが意外だ。
「凄い、です。美味しそう」
言葉少なだけど、普段はあまり積極的に発言しないニーナにとっては最大の賛辞だと思うよ。
「綺麗に焼きあがっている。スコーンは素朴な焼き菓子だが、シンプルだからこそ奥が深い。
初めての作ったとは思えない出来上がりだよ、ナナリー」
立て板に水でベタ誉めのルルーシュ。確かに綺麗に焼き上がっているけど、……君って本当にシスコンだよね。
「すごいや、ナナリー!」 待て、スザク。それ、さっきも言ってなかったか?いや、らしいんだけどね。
「でも、本当に咲世子さんの言う通りにしただけで……、大したことはしていないんです」
誉められて気恥ずかしいのか、うっすらと頬を染めたナナリーはとても可愛らしかった。
「ナナリー様はとても筋がよろしくて、すぐにコツを飲み込まれました」
「咲世子さん……っ!」
ナナリーは咲世子さんの言葉にますます顔を赤くする。
「ちょっと、ライ。貴方は何か言うことないの?」
ミレイさんに促されて、僕もナナリーに言葉を告げた。
「綺麗にできてて、どっちもすごく美味しそうだよ。
チョコレートケーキの模様も、くっきり浮かんでいていいね」
「ありがとうごさいます。ライさん」
誉められ過ぎてばつが悪かったのか、少し緊張していた表情が緩んだ。
緊張した顔より、笑顔の方が何倍も可愛いと思う。
「模様ねえ……」
ミレイさんがポツリと呟いた。
どうかしたんですか?ミレイさん?
ハロウィン向けのお菓子に蜘蛛の巣模様は定番ですよね?
別にそんな複雑そうな表情をする理由はないと思うんですが?
「ねえ、咲世子さん。どうしてこの型で焼いたの?普通に大きなラウンド型でもいいじゃない?」
ああ、形の方ですか。
確かにハロウィンにしては可愛い感じかもしれないと、僕は改めて四ツ葉の形に並べられたケーキを見た。
「昔の癖で、つい……。やはり、変でしょうか?
気が付いた時には既に焼き初めていたものですから……」
「うーん?変ってほどでもないけど、ちょっとシュールよね」
「……?そうですか?」
咲世子さんは不思議そうな顔をした。
僕も不思議だ。
確かにハロウィンにハート型は可愛すぎるかもしれないけど、シュールってことはないんじゃないかな?
「ミレイさん、何がシュールなんですか?」
こっそりと、咲世子さんやナナリーに聞こえないように聞いてみる。
「え?判らないの?」
「はい」
判らないのが意外という顔だ。でも、本当に判らないのだから仕方がない。
「ハートは愛情をあらわすでしょう?」
僕はゆっくり頷く。
「そこに蜘蛛の巣ってちょっとエグくない?しかも、今回はハートを半分にカットして食べるわけだし……」
「???」
すみません。判りません、ミレイさん。
ハート型をカットっていわゆる失恋?でも別にエグいとまでは思いませんけど……。
「……男の子には言いにくいんだけど、その、蜘蛛って命がけじゃない?色々と」
色々?何が?
「蜘蛛って交尾に失敗すると雌が雄を食べちゃうでしょ!文字通り!
もー!女の子にこんなにこと言わせないでよ!」
──その日、僕は人間に生まれたことを感謝した。ていうか、ミレイさん!
蜘蛛の巣模様一つで、そんな突飛な発想しないでくださいっ!!
■めでたし、めで……たくねーよっ!■
微妙なネタは埋めに投下するに限るよね……。
今回はまだ、ちょっと早い気がするからビクビクものだけど。
最初はもう少し生徒会メンバーの様子とか、ナナリー萌えーな感じとか、引きの演出なんかも
ねっとり書くつもりだったけど、こんなオチのSSでナナリーカワユス!を主張してもなーとか、
強引では無くなるけどグロい想像を喚起するようなのはやめた方がいいよなーと思ってこの形に落ち着きました。
生徒会メンバーには一通りしか触れてないし、入れる必要あるのかって感じですが、
元々はまったり平和な、ささやかで、欲張りな日常が書きたかったので……。
(「ヒカリ」良かったよね!ロスカラ好きとしては、あそこにライいたらって思うよね!?)
ぬるいから大丈夫だとは思うけど、もし気分悪くなっちゃった想像力豊かな方がいらっしゃったらすみません。
それでは、またノシ
次はマトモなネタを投下したいです。
<<888
想像してしまった・・・。
>>888 乙……でした……
……カマキリは成功したら食べられちゃうよね。
うん、タイトルの意味を言葉ではなく心で理解した。
……とりあえずテンション上げよう!
ナナリー、凄いよ、ナナリー!
そして可愛さが半端じゃない!
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
>>888 最初の注意書きが念入りだったので、どんなに凄まじい描写があるのかとドキドキしながら読んでいきましたが、
とってもソフトな感じだと思いましたよ。(てっきり、井上さんがライを食べてしまう話クラスのものを想像したのだが…)
ランボー4を観て麻痺しているのかしらん?
>>888 乙!
え、そんなに怖い想像にはならなかったよ? 覚悟して挑んだせいか、まったく平気でした!
ついでに埋めSS投下します。2レス
・ライナナ
・正しい意味でヤマなしオチなしイミはなし
・一期の黒の騎士団ルート前提でまったり
・ナナリー誕生日SSの没ネタをリサイクルだZE
秋のお茶会の賑やかだ。瑞々しい旬の果実、暑さを離れて使用されるようになったオーブンから取り出
される焼き菓子、ティースタンドに溢れるようなお供を載せて、主役となるのは最高の季節を迎えたセイ
ロンの茶葉だ。
兄が手ずから淹れた紅茶を一口飲み、ナナリーはにっこりと笑みを浮かべた。
二杯目はミルクティーで、砂糖を少し。何度も席を共にするうちに僕も覚えてしまった。ナナリーに
好き嫌いはないけれど、特に好きなものはルルーシュが把握している。切り分けるケーキが他より少し
大きかったり、特別な日に食卓に上ったりする。ささやかな変化の積み重ねで僕はナナリーを知っていく。
日は沈み、風に当たりたいと言ったナナリーに付き合って、僕はクラブハウスを出た。
過保護なルルーシュはあれこれと僕に細かく注意し、最後にすごい目で睨んだ。ふんわりと肌触りの
よい膝掛けを持って彼女の車椅子に駆け寄るとナナリーは小さく笑った。
「心配症なんです。お兄様は」
どうやら先ほどのやり取りはすべてばれていたようだ。視線を合わせるためにナナリーの前に屈むと、
彼女は慰めるように僕の髪を撫でた。ナナリーは時々、何もかも分かっているんじゃないかと思うことが
ある。僕やルルーシュがしていることも、カレンやスザクが秘密にしていることも。彼女の前では隠し事
なんて無意味なことに思える。
閉じられた瞳よりも触れる指先で彼女は世界を識る。
夜の庭へ僕たちはゆっくりと歩きだした。厳しかった残暑も十月に入れば気配は遠くなり、人も動物も
少しずつ到来する冬への準備を始める。虫の声に耳を澄ましていると、ふわりと鼻先を甘い匂いが掠めた。
「あ、金木犀……。もうそんな季節なんですね」
匂いの正体をナナリーは僕に教えた。ナナリーの示す方向へと足を進めていくと、オレンジ色の小さな
花が地面に星を撒いたように散らばっていた。
昼間にも同じ場所を通っていたはずだが、僕は気が付かなかった。夜の方が強く香るのだろうか。
それともナナリーが一緒に居るからだろうか。
ざわりと風が木を揺らして、星のような花がまた落ちてきた。ナナリーの髪にも花が絡む。
「ナナリー、髪に」
僕は声をかけてからそれを取ろうとしたが、白いてのひらに止められた。
「そのままでいいです。――いい香り。お兄様にも教えてあげたい」
闇の中に金木犀の香りは一層強く立ち上った。
-----------------------------------------
以上で終了ー。
そろそろロスカラ2の制作発表でも出てこないもんかなと期待しつつ。
「注意書は過剰なくらいがいい」派なので、逆方向で期待した方がいたらすみません。
大丈夫な方より、駄目な方に配慮した方が良いと思うのですよ。
カマキリもクモも実際には成否はあまり関係ないみたいです。
何回かは成功していて、体力が落ちてきたところで……という場合もあるようですね。
まあ、中には必須条件な種も存在するようです。肉食の虫コワス。
でも、逆に猫だとメスは毎回相当痛いらしいので、その辺はお互い様ということで……。
(痛みの刺激で排卵するので必須で、しかも一回で排卵するとは限らないらしいです)
>>894 キンモクセイの描写が、タイトルも含め詩的で好きです。
視力が悪いせいか、目にとまるより香りで開花に気が付くことが多いので、妙に共感できました。
ケーキの大きさとか髪に落ちた花の行には、ナナリーとルルーシュが
互いを思う気持ちが感じられて、ほっこりしました。
傍らで見守るライとも、時間が積み重なっていく感じがして、
この穏やかな時が少しでも長く続くことを願わずにはいられません。
優しいSSを読ませていただき、ありがとうございました!
>>894 GJでした!
あれ? 涙が出てる。
何故だろう、少しも悲しく無い、そして口元が緩んでるのに……
読んでいて微笑みを与えてくれる
心の暖まるSSをありがとうございました。
貴方の次の投下を全力を挙げて待たせていただきませう。
>>895 何回か読み返してると、ライを食べるナナリーという非常に愛らしい光景が浮かんできました。
……俺は何を言ってるんだ?
>894
やわらかで、詩情のあるすてきな小品ですね。
>ささやかな変化の積み重ねで僕はナナリーを知っていく。
いいフレーズだなあと思いました。
日常の積み重ねが宝物であるライの状況を思うと、とても沁みます。
そろそろ埋めますか?
いいですね
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901 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/11/05(水) 07:27:04 ID:X7Be0133
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埋めるか
残ってると新スレ使われねえからな
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すまんあと頼む
埋めます
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埋め。
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参加します
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みんなでやればすぐさ!
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うめてみようか?
935 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/11/05(水) 10:21:59 ID:V1+43bWi
誰か、アニメージュのバックナンバー買う方法教えてくれ。
CCのケツポスター欲しいのだが。
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埋めネタ考えてたけど形になってないぜ!
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>>935 ケツポスターはヤフオクで450円!
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「心の隙間、埋めてあげるっ…」
とカレンに言われたい…。
うめめ〜♪
うめ〜♪
うめ
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全力を挙げて埋めるんだ(・ωひ)
「私に心の隙間を埋めてほしいだとぉ?
この童貞坊やが、いい気になるんじゃ…」
「ピザ、1週間分だ」
「仕方ないな・・・。私でよければ埋めてやろう」
「さぁ、みんなーっ。埋めるわよぉ〜っ。
埋めに参加しない人は、罰ゲームが待ってるんですからねぇ♪」
ミレイさんがそう号令をかけたら、一気に埋まるような気がするのは気のせいかしら。
うめめ〜♪
「知ったことか! 俺は埋めなきゃいけないんだ!」
うめ〜♪
「えーと、埋めて欲しいんだよね?」
シャーリーは恥ずかしそうにそう言った。
「初めてだから、優しく教えてね、ルル」
「わかってるさ、シャーリー。そう、そうすればいいんだ」
「うん…。ルル、私、がんばって埋めるね」
「抱き締めたいなぁ、ナナリー!
まるで眠り姫だ!」
という電波が飛んで来た、埋め
「誰も居ないな、よし」
「塵も残さん! 行くぞ! 浄破滅焼闇! 闇の炎に抱かれて、馬鹿な!?」
ガチャ
「……何をやってるんですか、シンクーさん?」
「……」
「…埋める…もくもくと…埋める」
「アーニャ、何やってんの?」
「優先命令・・・スレ・・・埋めるの…」
「わかった。僕も手伝うよ。二人でがんばって埋めよう」
こくっ。
アーニャは少し頬を染めてうなづいた。
「ここを埋めればいいのね」
「そうらしいぜ。このスレ埋めるの手伝ったら、主役のSS書いてもらえるってよ」
「がんばるわよぉ〜っ」
「おおーっ、燃えてんじゃねぇかっ、井上っ」
「そういう玉城だってヤル気満々じゃないのっ」
「当たり前だぜ。ギアスの影の主役は、俺よっ。
俺がいなけりゃ盛りあがらねぇからな。へへっ」
「まぁ…そういう事にしといてあげるわ」
「ナナリー様、なにやら皆さん張り切って埋めていらっしゃるようです」
「そうみたいですね。皆さんの活気あふれる声が聞こえます」
「本当に楽しそうですね」
「咲世子さん、私たちも埋めるの手伝いましょうか…」
「はい、ナナリー様。がんばりましょう」
埋め埋め〜♪
うめ
埋め
>>203 咲世子さんが有能ぶりを淡々と発揮していて、こそばゆい嬉しさを感じました。
先生、いい人!スザクのこともちゃんと受け入れている感じがして嬉しい!
ミレイ会長の『凶器になりうる胸』にぎゅー!は、ただただ羨ましいですな。
あの胸に埋もれる権利が与えられるというなら、私も是非生徒会のお仕事を手伝いたいです!
役に立てるかどうかは判らないけどw
ただ、ここはリヴァルの描写が欲しかった気が。彼なら私以上に羨むこと間違いなしですからね!
『救世主(メシア) が 生まれた 日』とか、おまけのNEWアイテム案内とか小ネタも効いてるなあ。
特にNEWアイテムがつぼった!w
そして、ツンデレいいよ!ツンデレ!ルルーシュだけどw
ナナリーにたしなめられてションボリしたんだろうなとか、ラストのマジへこみと八つ当たり?といい、
ルルーシュが間接的な感じでいい味出してると思いました。
頑張れ、ルルーシュw
埋め。今、何KB?
「なぁ、カレン、俺らも埋めるの手伝わないか?」
馴れ馴れしくジノが私に近づいて言う。
あーっ、うざいなぁ…。
そんな事を思っていたら、ライが一人で埋めていた。
「あーっ、ライっ、一緒に埋めよう〜♪」
私は、ジノを無視してライの傍に駆け寄った。
「うっうっうっ…カレン〜っ」
しゃがみこみがっくりとなるジノ。
かわいそうに思ったアーニャが頭をなでなでしている。
「アーニャ・・・お前だけだよ。わってくれるのは…」
だが、そういった瞬間、アーニャもライのところに駆け出していってしまった。
「おーーいっ、俺の立場は〜っ」
アニメ版ならいざ知らず、ゲーム版では、ジノ、君に勝ち目は無いよ。
489kB
>>216他
一つ一つは短編ながら多数の投下お疲れ様です。
ミレイさんがメインヒロインのSSは貴重なので楽しみではあるのですが、
キャラよりネタや萌え設定重視の作風は、キャラ感の違いだとは思っても微妙な気分になる時があります。
その為『私的にはこれしかないでしょう的な「ライ×ミレイ」』には、ちょっと別の意図を感じて萎えました。
あと、多分、書きあげてからほとんど間を置かずに投下していらっしゃいますよね?
三点リーダーの変換ミスがあると、多用されているだけに気になります。
一作の中に三点リーダー、全角中黒・半角中黒が混在していた時は、
ひょっとして、まったく見直ししてないんじゃないのか?と思ってしまいました。
前後のSSを見ても、使い分けしているわけでは無さそうですし、パッと見ただけで気付けると思うのですが…
P系のフォントだと判りにくい事がありますので、もし普段P系のフォントをメインで使用されているなら、
チェックの時だけでも他の書体に変更することをおすすめします。
「ふーっ、埋めるのって結構大変なんだね」
スザクが汗を拭きつつルルーシュに話しかけた。
「そうだな。ここまで大変だとは思わなかった。計算とは違うな」
広がる埋めスペースを眺め、そう返事をするルルーシュ。
「あのさ、ルルーシュ・・・」
「なんだ?ライ」
「ルルーシュも埋めるの手伝ってよ。見てるだけじゃなくて・・・」
「そうだよ、ルルーシュ。労働の汗は、尊いよ」
「ふんっ・・・。俺に汗臭いのが似合うと思うか?」
「「……」」
僕とスザクは二人でうなづきあった。
そして、ルルーシュを穴へ叩き落す。
「な、何をするッ」
「がんばれ…」
「あははは…じゃあね」
「おいっ・・・お前らーっ・・・」
ルルーシュの遠吠えを聞きつつ、僕ら二人は別の穴を埋めに向かったのだった。
ロスカラ2に、ロスカラ終了後の後日談的な番外編とかあるといいな。
例)行政特区日本で、カレンとの甘い新婚性活
ギアスの暴走克服後の、真ネリ様ルート
C.C.と世界を巡る、ピザ食べ尽くしの旅(ルート不明)
スマン。最後のはのりだ。
梅
>961
ありがと。うめ
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492kB
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980までは埋めなくては。
>>468 カレンとジノとのやりとりが笑える!漫才やってるのかよ!みたいなw
どういうつもりなのかイマイチ推し測りにくいジノのカレンへの好意がいい感じです。
カレンがルルーシュや騎士団、学園を思う気持ちもよかったし、好きな男と言われて
兄→ゼロの流れになるのもアニメのカレンっぽくて好きです。
一つ気になったのは、カレンがセレブなホテルに落ち着かない様子が好まないというよりは、
ものなれない感じにとれた事。少しばかり首を捻りました。
カレンは性格的にそういうところを好きじゃないだろうし、イライラするとは思いますが、
『場』そのものは、シュタットフェルト家のお嬢様でもあったので、慣れているんじゃないかと…
それにしても、カレンとライとの再会がどうなるのか、その時のアーニャの反応は?
ついでに、ミニルルーシュは今のカレンを見てどう思うんだ?といろいろ先が楽しみです。
他のSSの感想も夜、落としにくるつもりだったけど、埋まりそうだなw
これぞ我が忠義の証
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SS
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感想乙。他の感想も書いて欲しいが、残レス数はともかく、容量がいっぱいになりそうだ。埋め
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生め
「あの……アールストレイム卿?」
「アーニャ」
「えと…アーニャ様」
「アーニャ」
「………アーニャ」
「なに、ライくん?」
『ニック ネーム』
「学校では、身分は関係ないってジノが言ったはず」
「そうです……そうだけど、いきなり呼び捨ては難しいです……難しいよ」
「じゃあ別の呼び方を考えて」
「え……僕が?」
「そう」
(別の呼び方…つまりは愛称か?なら可愛らしさを追求して『あにゃ〜ん』……って何で僕がナイトオブラウンズのニックネームを真剣に考えているんだ)
「まだ?」
「えっ…えーと…うーんと………アーニャたん?」
「………」
(うわーっ!すべったー!)
「それでいい」
「へ……いいんです…いいの?」
「うん」
後日……
「おはよう、ライくん」
「おはよう…………アーニャたん」
「ホワット!?」「今ライは何て言ったんだ!?」「アーニャたん!?」「まじかよ!」「ライもこちら側だったのか」「うちゅう の ほうそく が みだれる!」「ライたん!」「ライサンダー!」
「うう……アーニャたん…やっぱり元の呼び方に戻したいんだけど」
「だめ」
「ライ卿!今すぐアレを埋めろ!」
「わ、なんですかジェレミア卿」
「埋めるはそちらデシタ!」
「えええ、何でこっちにも?」
「だからこいつを埋めろと言うのだ!」
「同志ライ!埋めるのはそっちだろう!」
「埋設!埋没!隠滅!」
「クローンは盤上へ帰れ!この、オレンジ!」
「……って、どうして誰も居なくなっちゃうんだよ……」
985 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/11/05(水) 14:17:38 ID:gQppU79E
梅
うめ
うめ
うめ
うめ
うめ
うめ
992 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/11/05(水) 14:29:24 ID:gQppU79E
績め
うめ
うめ
ume
うめ
産め
998 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/11/05(水) 14:38:31 ID:gQppU79E
楳
膿め
宇目
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。