「やらないか?」
「やるかーッ!」
結構な時間が経過したというのに、私はいつまで筋肉勝負を辞退しなければならないのでしょう。
「そんな立派な筋肉持って、筋肉の持ち腐れしようなんざ……俺が許しても、筋肉が許さねぇぜ!」
「筋肉筋肉うっさいです! そもそも、この筋肉偽者ですよ! 防弾チョッキですよ! 人工物ですよ!
中に、横紋筋も平滑筋も心筋も詰まってません。あるのは筋繊維ではなくアラミド繊維とかそんなのです!」
「そうかもしれねぇ……だがな、偽物が本物に敵わないなんて誰が決めた!
俺はあぐらを掻いてる場合じゃねえ、偽物に凌駕されてないことを、俺が証明しねぇといけないのさ!」
「では私の負けで。勝者筋肉オリジナル。世界筋肉連盟認定、ワールド筋肉グランプリ優勝が決定しました」
「いよっしゃーーー!!」
馬鹿が勝利の雄たけびを上げた。
やれやれ、さっさとこうすればよかった。いい加減移動しよう。
「ボス狸に勝ったぞー!」
「ちょっと待ったぁーーー!!」
誰がボス狸か! 双七くん家の狐といい、何故私を狸呼ばわりなんです!
「なんです、その不名誉な呼び方は!」
「なにって……お前、俺に負けただろ、だから、称号をつけてやったんだよ」
なんですかそのルールは! あの神父も予想だにしない新ルールの追加が始まってますよ!?
「そんなルールがありますか! というか開始二時間で新ルール追加しないでください!」
「いいじゃねぇか、こっちはいきなり呼ばれてんだ。俺や仲間でやってるバトルのルールも、付け加えさせてもらうぜ」
そんなの主催者に言いなさい。というか仲間とやってるバトル?
「なんです? ケンカか何かですか?」
「学校でランキング制のバトルをやっててな。毎日、血を血で洗うバトルが繰り広げられてるのさ。うなぎパイでな」
うなぎパイで!? 浜松銘菓で戦ってどうするんです!?
「それで、負けた奴は称号をつけられるのさ。しかも、一度負けたら、次に負けるまでその称号は変更無しだ」
「それでは私は」
筋肉は、にやっと笑い。
「ずっとボス狸さ」
「うああぁぁああーーっ!そんなん耐えられますかあぁぁーっ!」
こいつ殺す! そんな称号、知ったことじゃないですが、こいつを血祭りに……待てよ。
「ちなみに、あなたの称号は?」
「アジア最強のグッピー」
「よう、グッピー」
「うああぁぁああーーっ!しまったああーーーっ!!」
勝った。ナイス、面白い称号をつけた人。
「ちっ……まぁいい。戦利品に、この筋肉は貰っていくぜ」
「どうぞご自由に、せいせいします」
あげると言ったのに、なぜかこちらを向いて睨みつけてくる筋肉、ではなくグッピー。
「てめえ……筋肉なんて湯たんぽにもなりませんよ、それよりさっさと俺ごと無駄な筋肉は消えてくださいよ、とでも言いたげだなぁ!」
なんとも見事な言いがかり。いや、実際そうなんですけどね。
「筋肉のプライドが傷つけられたぜ。俺の支給品と交換だ、嫌でも貰ってもらうぜ」
「それで気が済むなら。こちらとしては大助かりです」
「まあ、俺もまだ確かめてないからな。筋肉関係だったらなかったことにしてくれ」
いりません。なにか強力な武器でも入っていないでしょうか。
目の前のグッピーが、豪快にディパックに手を突っ込み―――ぬちゃっと引き抜いた。
「てけり・り?」
「「うあああ、なんじゃこりゃあーーーーっ!!!」」
黄色っぽい目玉が一つのスライムが喋ってるーーー!?
「なっ、もしやこれも孔明の、いえ、筋肉の策ですか!? おのれ筋肉、侮りがたし筋肉!
はっ……まさか、これは鍛えすぎて、逆に筋肉が溶けたという人間の末路ですか!?」
「こんな末路でたまるかあああああ!!」
あ、あまりのことに混乱してしまいました。
しかし、こんな馬鹿げた生き物は見たことがない。
人妖……というより妖怪だと言われてようやく納得できるような生物。
しかし、こんな妖怪はいるはずがない。
元々、スライムとは近代になって創作された存在。
実際にいるならば、そういう妖怪が歴史に残っているはずだが、それがないということは、存在もしないのだ。
ならば、キキーモラ同様……いや、キキーモラも元の精霊が存在するのだから、完全オリジナルの人造妖怪なのか?
(チェルノボグでも、こんなものを作れるかどうか。しかも、それを支給するなんて……)
私達を拉致した敵は、どれほど巨大な組織なのか。
少し眩暈がするが、反逆理由が筋肉チョッキとはいえ、すぐに方針を二転三転するつもりはない。
「こいつはやべえな」
グッピーは、自分のディパックから出てきたバケモノを奇異の目で見つめている。
――当然だろう、彼はおそらく、普通の人間なのだから。
普通の人間は、人妖を理由なく忌み嫌う。人妖と知った瞬間に、害虫を見るような目を向ける人も少なくない。
連日、神沢市の外で人妖に石を投げ、罵声を浴びせ続ける人々。こんな馬鹿でも、そういう根元は――
「見ろよ、筋肉がまったく無いぜ。俺の筋肉を少し分けてやらねえとな」
違いますねこいつ、筋肉の人妖ですよ絶対。
昔々、虚弱体質の子供達に「さぁ、僕の筋肉をあげよう」と分けて配った心優しい妖怪の子孫ですよ。
人妖能力名「キンニクマン」とか、そんなの。
いる訳あるか! いてたまるか、人妖なめんな!?
ええい、ウラジミールといい、グッピーといい、体格の良い人間はスットコドッコイばかりですか!?
「なあ、こいつでいいか?」
「嫌ですよ、そんなナマモノより無機物ください」
ていうかディパック大丈夫ですか? そんな軟体生物同梱だと中身粘液たっぷりでは?
銃とか入っていても、動作不良起こしてそうで―――
「ッ……!」
「なんだ!?」
空気が震えた。この爆発は……かなり強力な爆弾。TNTか何か?
「やべぇ、こんなことしてる場合じゃねえ! 鈴、理樹―――!!」
「あっ、ちょっと……待ちなさい!」
キキーモラを伸ばすが、グッピーに追いつく前に射程が限界に達してしまった。
「仕方ないですね……」
主催への反抗を決めた以上、加藤先生や会長と合流するのも有効な手のはず。
双七君は……生きて会えたら、まあ良かったと思う程度でいいでしょう。
彼は、甘いところがある。ここで、生き残れる確立は高くはない。
「ヘタに、人を助けようなんて思わず隠れて……なんて、してないんでしょうね」
彼との付き合いは、本当に短い。それでも、どういう人間かはわかっている。
困っている人を助けることを、どんな状況でも当たり前のように実行しようとしてるだろう。
ともかく、あのグッピーを追おう。その先で戦闘しているのが、知り合いでないとも限らないのだから。
「……はて?」
足あとを追い、人が通った跡を追跡する。
間違いなくグッピーが通った形跡を追っているのだけど。
爆発音があった方角は、こっちだったろうか?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「は、放して……お願い、だからぁ……」
荒い息遣いが伝わり、俺の理性を溶かしていく。
抗おうとするだけ無駄だと、心の中の悪魔が囁く。
やめろと、娼館に着くまで堪えるべきだと天使が……
あれ!? どっちも同じかよ! ちょっとしっかりしろよ俺の理性!
「ぁ……は……」
先ほどまで少年だと思っていたときはなんともなかったのに、今はものすごくかわいく見える。
「っ……ゃめ……っ」
せつない声を上げるなと思ったら、ああそうか、俺さっきから胸揉んでるもんな。
小振りだけと、鍛えてるのか、ちょっと引き締まってる感じが――
違うって、揉むのをやめないと! なのに、俺の指は脳からの命令を無視して揉み続ける。
よし、ここは何か話して落ち着こう。
「お、お前さ。なんであんな取り乱してたんだよ」
ファルの優しい言葉も聞かないほど取り乱して、何かあったのか気になっていた。
だけど、返答は俺を払いのけようと暴れることで返された。
「なっ、お前!」
「嫌だ……嫌だぁぁぁ!!」
くそ、こいつ結構力が強いぞ。
胸を揉むのを止めて、両腕を押さえても、このままじゃ跳ね除けられる。
「動くなッ!」
「ひっ!?」
ナイフを首に近づけると、一瞬振るえ大人しくなった。
恐怖からか、涙と混ざり額からは汗が流れている
……って、ただのレイプ魔にしか見えないぞ俺!?
「お、落ち着けよ! なんだよ、後ろめたいことでもあるのか!?」
びくっと震える少女。なんだ、この怯え方?
ナイフを突きつけられている恐怖なのか、俺が襲おうとしていることに対する恐怖からなのか?
もしかして、すでに誰かに襲われたのか。それとも……
「やめてよ……お願い、もう暴れないから……!」
「どうして逃げてたか言えって。悪いことでもしたのか?」
ただ、それにしても余裕が無さ過ぎる。
そう。出会ったときから、この子は何かに怯えていた。
あはは……あんまり、信じたくないけど、思い浮かべないようにしてたけど。
俺まで嫌な汗が出てきたが、出した答えを突きつけてみよう。
「お前……だれか、殺したのか?」
絶対に逃がさないよう、強く押さえつける。
「違う……違う! 死んでない、死んでるわけ無い! あんな簡単に、人が死ぬわけ無い!」
やっぱり殺したのか? 煩悩と戦ってる場合じゃなかったのかもしれない。
「詳しく話せよ。言わないと……同じ目にあわせてやるぞ」
内容知らないのに、同じ目に合わせられるわけ無いけどさ。
でも、少女は震えながら……告白を始めた。
娼館に、最初に殺された人と同じ制服の子がいたらしい。
このみの知り合いかだろうか?
愛佳という少女は、そこで――え、マジで? やっぱそういうところなんだ――パヤパヤ(少し違う)していたらしい。
ああ、俺もファルさんと……などと妄想しかけているのを、次の発言で現実に引き戻された。
ほんの僅かな時間離れて、戻ってきた時には……愛佳の首輪が電子音を鳴らしていたという。
「そ、それで……愛佳ちゃんが近づいてきて……ぼ、僕……叩いた」
「……そっか」
「ぁ、僕……逃げたら、足を掴まれて、それで……それで……!」
もう聞かなくても想像は付く……なんてこった。
「……殴ったのか?」
「ぅ……ぁぁぁ……! あんなに、怯えてた! 僕から、優しい言葉をかけたのに!
それで、信用してくれたのに……顔まで、女の子の顔を、僕…ぁ…!」
もう、俺は掴んでなかった。
それでも、目の前の少女は逃げようともせず、目を真っ赤にして泣いていた。
……それを見て、かわいいなぁと思う俺は最低なのかもしれない。
だけど、今なら……自然とできそうなんだ。
「ぅ……ぁ!? んんっ……ぁ」
目の前の少女の唇を奪った。
ああ、柔らかいなあ。
言葉に見られたら、首を切断されても文句が言えないな。
なんて、そんなこと言葉はしないけど、良くても振られるよな。
「ふぁ……んむ……はぁっ……」
キスも深くなって、胸を揉む手も止まらない。
いいよな、ここまで来たらもう……もっと、触りたい。
もっと、そう……直接!
「はッ……やぁっ、だめ……!」
ジャージのジッパーに手をかけ――
「鈴、理樹ーッ!」
――うわッ、誰か走ってきた!?
「ふぁ?……きゃあああッ!!?」
「う、嘘だろっ!?」
悲鳴をあげるのも当然だ。暗くて良く見えないが……近づいてくる男は、死体を持ってる。
ムキムキの筋肉質の男の死体……その上半身以外、首までもむしりとられていた。
首や手が本来ある場所、そして下半身から……妙な液体が漏れている。血が、流れている――本当の死体だ!
「くっそぉ!!」
ナイフを男に向ける。
このナイフ、普通のナイフと大きく違うところがある。
ナイフの刃を……銃弾みたいに飛ばせるんだ!
スペツナズナイフ。その刀身が、筋肉に向かって飛んでいく。
「なんだよ、ち、ガッ――!」
命中したらしく、男は悲鳴をあげて動かない。
「早く、逃げるぞ!」
「えっ、あっ――!」
少女の手を無理矢理引っ張って走る。
「殺されるぞ、あの殺人鬼から逃げないと!」
「う、うん――」
後ろを振り返ることなく、俺と少女は襲撃者から逃げた。
しばらく走って……追いかけてくる気配がないので、止まって物陰に隠れた。
「追って……きてないな」
死んだのか、怪我で動けないのかもしれない。
とりあえず、危ない奴から逃げれたのを確認して、ようやく息を整ええる。
「……ごめんな」
隣で、同様に息を切らしている少女に謝る。
ナイフで脅して、泣いているところを唇を奪った。
襲撃を受けなかったら、その先までやっていた。
罵声を浴びせられるのも仕方がない。それでも今は謝らずにはいられなかった。
「……いいんだ。おかげで、少し落ち着けたし……今、助けてもらったからね」
思いがけない、優しい言葉だった。
あのまま続けてたら、こんな言葉をもらえなかっただろうな。
「そ、そりゃあ、初めてはもっと、ロマンチックなのを夢見てたけどさ」
「えっ、悪いことしたな。あんなナイフで脅したの、忘れたほうがいいよ!」
「無茶言わないでよ……」
しかし、ファーストキスだなんて。
俺も始め男だと思ったし、あんまり男にモテないのかもな……よく見たらかわいいのに。
悪いことしたな。何か手伝えることはないかな?
「……これからどうすんだよ、お前」
「……娼館に戻るよ。僕は、見ないといけないと思うから」
愛佳って子のことか。
あのまま逃がしてあげたほうが、良かったのかもなと思ってしまう。
俺だって、さっきの路地に戻って死体が一つ増えてたらと思うだけで怖いのに。
絶対死んでるだろ、その子……死体を見たら、また泣くかもしれない。
その時は、またキスしたら……ファルに不謹慎だって怒られそうだな、
でも仲間、だからな。慰めてやらないと……いや、キスじゃなくて普通にさ。
ファルの破れたスカートから覗く足を見て、娼館で楽しいことがあれば、なんて思ったのが遠い昔みたいだ。
その頃、そこで人が死んでたっていうのに……最低なのかもな、俺は
そうだ。今は、こんなことを考えてる場合じゃなかったんだ。
真面目なファルに、ふしだらな気持ちを抱いていた俺が恥ずかしいよ。
欲望に流されて、娼館で女の子と楽しいことを始めたら、それを狙って殺されるかもしれない。
そうなったら、相手の女の子も巻き添えにすることになる。
そうなりそうな出来事が、今さっき起きたばかりだ。
この殺し合いを行う空間で、そういった行為は――キス程度に抑えたほうがいいかもしれない。
……それに。
そういうことを出来なくても、みんなと仲良くなることは、悪いことじゃない。
ずっと一緒に行動していたらファルとも、こいつとも、良い関係になれるかもしれない。
楽しいことは、脱出した後でもできる。
言葉たちと合流したら、他の子となんて無理だし……ここから脱出した後、連絡を取り合えばいい。
そのためにも、守ってあげないと……なんて、力で負けてる俺が言えることじゃないか。
「それじゃあ、僕行くよ」
「あっ、待てよ。俺の仲間も娼館にいるんだ。俺も一緒に行かないと、色々まずい」
ファルは娼館に着いてるかな? 愛佳って子の死体を見つけてたら、怯えているかもしれない。
「ありがとう、何から何まで迷惑かけて……」
「いいよ、キスのお礼代わりだよ」
「そ、そっちからしてきたんじゃないかぁ……!」
真っ赤になってる。うわ、こういう女の子も好みかも。
なんというか、落ち着く。ボーイッシュで、話しやすいせいかもしれない。
「そういえば、名前聞いてなかったな。俺は誠、伊藤誠だ」
「まこと……へぇ、凄い偶然だね。僕も真だよ。菊地真っていうんだ」
そういえば、名簿にいたな。漢字は違うけど。
「そっか。じゃあ、まこと同士、がんばってここから脱出しよう」
「そうだね。……愛佳ちゃんの分も、生きないと」
なんだか、このみが無事か心配になってきた。
友達かもしれない子が死んだと知ったら、不安にもなるだろう。
放送とか言ったか? それが流れる前に、見つけてやりたいな。
……このみとも、仲良くなりたいからな。
その前に、真とも仲良くなろう。
キスしたとはいえ、やり方がマズイ。
もっと打ち解けたほうが、脱出に向けて協力しやすいはずだし。
やましい気持ちなんかない。ただ、友人になりたいなと思っただけだ。
――迫ってきたら、断れないけどな。
二人のまことは、娼館へと向かう。
誠はよこしまな気持ちを抑えて(?)ファルと会うために。
真は自分の罪を見つめるために。
とはいえ、これからどうなるかは神にすら知る由も無いこと。
誠が、誠なりにではあるが自分を御しているとはいえ、それがどれだけ持つことか。
フカヒレ同様に制限でもかかっていて、そのために自分を抑えられているのかもしれない。
それでも、本人がどうしようとも変えられない「遺伝子」の段階から女を欲する呪いの血脈を止めることなど出来ない。
当人達も知らない、世界、刹那、誠が遠くない血縁者であることすら入り口に過ぎないほどに。
「贄の血」「神宮司の力」と違い、何の力も無い血脈でありながら、女を狂わす魔性の血なのだから。
すでに、真は無理矢理キスされたというのに
「ああ、泣いてる僕を慰めてくれるなんて良い人だな」と悪い印象など微塵も抱いていない。
多少スケベな人だ、という程度。それ以上に、自分を女の子扱いしてくれたことが嬉しくてたまらないのだ。
これからも、女性を無意識に尽くさせるのか、それが原因で女性を、自分自身の運命を終わらせてしまうのか。
ファルのような女に利用されるのか、そもそもファルですら伊藤誠という存在を操りきれるのか。
それ以前に、無残に死んでしまうのか。
それは、きっとどんな神にも予想も付かず……だからこそ、彼はここにいるのかもしれない。
【B-2 スラム街 黎明】
【伊藤誠@School days】
【装備:スペツナズナイフの柄】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品0〜2】
【状態:健康、性欲鎮静】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いには乗らない
0:一線を越えるのは、ここから脱出してからでも遅くないよな?
1:自分の知り合い(桂言葉、西園寺世界、清浦刹那)やファルの知り合い(クリス、トルタ)を探す
2:真と娼館に。それまでに、もっと真と仲を深めたい。
3:信頼出来る仲間を集める
4:主催者達を倒す方法や、この島から脱出する方法を探る
5:このみを心配。ついでに仲良くなりたい。
6:巨漢の男に気をつける。
【備考】
※どの時間軸から登場かは、後続の書き手氏任せ
【菊地真@THE IDOLM@STER】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、未確認アイテム1〜3】
【状態:恥ずかしい、罪を見つめる決意】
【思考・行動】
基本:ともかく、愛佳のことを直視する。
0:初めて、奪われちゃった……
1:愛佳に会いに、娼館に戻る。
2:誠さんは優しいなぁ……少しスケベそうだけど
3:巨漢の男に気をつける
【備考】
※誠も真も、襲ってきた相手が大柄な男性であることしか覚えていません。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「スペツナズナイフ、ですか」
グッピーに追いついたときには、すでに事は終わっていた。
スペツナズナイフ。強力なスプリングによって、刀身を飛ばすことで標的をしとめる奇襲用の武器だ。
グッピーは、おそらく私と会ったときのように、不用意に近づいたのだろう。
そして―――
「また、筋肉に助けられちまったな」
「当たり所が良かったんです。筋肉があっても心臓なら死んでます」
まぁ、たしかに鍛えているというだけのことはある。
胸に刺さったナイフは、筋肉に阻まれ大した怪我ではなかった。
包帯もないので、ろくに治療も出来ない。とりあえずは水で傷口を洗うだけでも大丈夫だろう。
「それで、グッピーを襲った……グッピーが、かもしれませんが、その人は?」
「さあな。弱い筋肉を持った男と、良い筋肉を持った女……それしかわからねえ」
うわぁ、本気でわかってない。筋肉でしか判別できないんですか?
「じゃあ、その人たちのことはともかく、というかこれについて激しく聞きたいんですけど」
脇で、さっきからうごめいている軟体生物……と、その棲家。
「なんで筋肉チョッキの中にスライムが入ってるんです!」
「こいつに足りないものが何か……わからないお前じゃないだろ?」
「……筋肉?」
にやっと笑い。
「これで、こいつも完璧だぜ」
「てけり・り♪」
馬鹿だ。
「うわ、なんか、筋肉チョッキ……表面がぬっとりしてますよ?」
「それでいいのさ。筋肉っていうのは、湿り気を帯びてこそ筋肉なんだぜ?」
リアルすぎるわっ!
ごめんなさい、ウラジミール。二次ヲタのあなたを終わってると罵ったけど、現実も終わってました。
「さて、世話になったな」
「どこに行くんです?」
傷口を洗うため、脱いでいた服を着るグッピー。
その脇に抱える、リアルな筋肉からはみ出る軟体動物が、果てしなくキ・モ・イ。
「ああ、今気が付いたんだが……ここは爆発した場所じゃねえ」
「今更ですか」
かなり早い段階から方角が間違っていたことに、今まで気が付かなかったらしい。
「とりあえず、そっちに行こうかと思うんだが……どっちだっけ?」
「はぁ……」
仕方ない。こうなれば、乗りかかった船です。
「グッピー」
「やめろよそれ……」
「もし、これ以上今回のように筋肉を傷つけたくないなら……私に従ってみませんか?」
グッピーの目つきが険しくなった。
「そりゃあ、どういうことだ?」
「あなたは、それなりに力自慢なのはわかります。けど、それは結局人間レベル。
私の知ってるだけでも、指二本で挟んで、机を持ち上げられるくらいの馬鹿力の持ち主はいますから」
「マジかよ。俺以外にもそんな芸当が出来る筋肉の持ち主がいるのか」
こいつ、上杉先輩の親戚じゃないですよね? だいだらぼっち亜種のきんにくぼっち? キモッ!
「それと、正直に言って、誰か見つけるたびに「理樹、それとも鈴か!?」だと、そのうち怪我じゃ済みません。
その筋肉が、支給品の破壊力のテスト用に鍛えているのなら別ですが?」
「んなわけあるか。俺の筋肉は、理樹たちを守るためにあるんだよ」
誰かのために。多分、私がサーシャを想う様に、大切な人のために。
それを考えれば、ここにサーシャがいない私は、まだ幸せなのかもしれない。
「だから、その時まで筋肉を温存できるよう、私が知恵を貸します。
あなたの行動を制限するつもりはありません。ただ、頭を使う場面では私に任せてください」
「なるほど……俺は筋肉担当って訳か。だが、お前の指示がとても聴けたモンじゃ無い時はどうする?」
「それはもちろん、そこで協力関係は終了です。相手がクズかケダモノでなければ、無茶なことは言いませんけど」
「ちなみに、クズかケダモノなら?」
「さあグッピー、そいつの目玉を抉り出せ!」
「うあああーーーっ! そんなんお前がやれーー!」
半分冗談ですけどね。やるときは、私がやりますよ。
その後、グッピーは一応の了承をした。
「それでは行きましょうか。めくらめっぽう探すより、何か動きがあった場所を探すほうが、誰かには会うでしょう」
それが、あまり友好的な人物であるとは限らないけれど。
「その前に、この筋肉と支給品の交換がまだだったな」
「てっきり忘れてるかと思ってましたよ……うわ、なんですこれ?」
真っ赤な棒……いえ、槍? うわ、ちょっと湿っている。
「ゲイボルクっていう槍らしいぜ? どうだ、それで?」
「……すみません、説明書ありますか?」
ゲイボルク……その名前を、グッピーは知らないらしい。
説明書を受け取り――ああ、これも湿ってる――読む。
『宝具ゲイボルグ。アイルランドの大英雄、クー・フーリンの持つ呪いの魔槍。
魔力を込めて、真名『刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)』を投擲の際に唱えることで、相手の心臓を必ず貫く。
ただし、その特性上制限を加えさせてもらう。詳細は使って見てのお楽しみだ』
確かに、霊刀妖刀は実際存在する。
神の遣いの八咫烏だっているのだから、神話の人物やその武器が、実在しても驚きはしない。
この説明書の内容が本当なら……筋肉チョッキの兆倍はアタリ支給品だろう。
ただし、私に魔力なんて無い。もちろんグッピーにも筋肉しかない。
加藤先生の師匠である鴉天狗という老人は、神通力を使うという。多分その類の力のことだろう。
それに、説明書なのに詳しい内容を書かないとは何事ですか。
ああ、でも私が主催者だったとしても書きませんね。そっちの方が楽しいですし。
なるほど、たしかに筋肉チョッキは他人事なら死ぬほど楽しい。ははは、絶対殺す。
通常の武器としても破格の代物なのでしょうが、私にどれほど扱えるのか。
一応の訓練は受けているが、一流の使い手には及ばないだろう。
ナマクラ刀を持った会長に、名刀を持った私が挑んでも負けるように、担い手の力量が大事なのだから。
とりあえず、脇に筋肉スライムを抱えたグッピーには使えないし、私が貰っておきましょう。
だが、こんな支給品があるということは、チェルノボグ以上の組織では、という想像すら甘いものになってしまう。
少なくとも、八咫烏同様に、神話上の武器を持っていてもおかしくない妖怪が裏にいることになる。
八咫烏は、国会に議員を送り込むなど政治にも関与をしていたし、あの神父も有能な部下に過ぎないのだろうか。
まぁ、そちらはこの際置いておこう。
とりあえず、表の主催者であるあの二人を殺すかどうにかして脱出。
本国には、この槍のような支給品を送れば、今回の件を帳消しにしてもらえるかもしれない。
後は、八咫烏にでも話をしてみればいいだろう。
「よっしゃ、行こうぜ」
グッピーが先頭を歩く。
「てけり・り!」
「なんだよダンセイニ。てめえ、筋肉を手に入れた途端、俺に指図しようってか?」
「方角が違うんですよ、グッピー」
スライムは、それを指摘したかったのだろう。中々知能は高いようだ。
ていうかダンセイニが名前ですか? スライムのくせに、良い名前してますね。
「……なあ、ボス狸取り消すからよ。グッピー止めねぇか? そもそもアジア最強の、がないじゃねーか!」
アジア最強だろうと、グッピーの時点で駄目だと思います。
それに、それならまず聞かないといけない。
「そうですね。だったら、まずは……お互いの自己紹介が必要ですね」
【C-2 スラム街路地 黎明】
【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】】
【所持品:支給品一式、不明支給品0〜1】
【状態:健康、胸に刺し傷】
【思考・行動】
基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出
0:ボス狸と行動。筋肉担当。
1:理樹や鈴らリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。
2:爆発があった場所に行ってみる。
3:ひゅう……なんとか筋肉をわけてやれたぜ。
4:筋肉には世話になりっぱなしだな
5:筋肉紹介の必要があるな。
【備考】
※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
※現在、マッチョスーツ型防弾チョッキを、中にいるダンセイニごと抱えています。
※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。
※真人のディパックの中はダンセイニが入っていたため湿っています。
【ダンセイニの説明】
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備:【ゲイボルク@Fate/stay night[Realta Nua]】
【所持品:支給品一式、不明支給品0〜2、スペツナズナイフの刃】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:打倒主催
0:アジア最強のグッピーと行動。頭脳担当。
1:神沢学園の知り合いを探す。強い人優先。
2:爆発があった場所に行ってみる。
3:自己紹介の必要がありますね。筋肉の紹介はいりません。
【備考】
※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。
先端の金属錘は鉛製です。
※真人を襲った相手についてはまったく知りません。
※ダンセイニを人造の妖怪、もしくは生物だと思っています。
※八咫烏のような大妖怪が神父達の裏に居ると睨んでいます。
【ゲイボルグの説明】
ランサー、クー・フーリンの宝具。
その性質上、制限がかけられている。
詳細は不明。