「強いて言えば―――――」
その時、闇から差し込む月光が逆行となり誠を照らし出す。
その中で誠は一言を放つ。
「――――あの地平の向うからあいつの影が俺を呼ぶんだ」
「…………………………」
渚は声が出なかった。
唯一つ渚が思ったことは
『伊藤さんなら、きっと何とかしてくれます』
その根拠の無い自信が渚を包んでいた。
誠は渚を一度流し見ると、刀をそっと鞘に戻す。
その時高い金属音がなる。
鞘と唾の反響音だ。
その反響音が鳴り止むと同時に、電車は目的の駅へと付く。
伊藤誠と古河渚。
はそっとホームへと降り立つ。
二人の未来。
伊藤誠の直感は、どう転ぶのか。
二人の運命の歯車は、絡み合って大きく動き出す。