「かすみおねーちゃん」
「もう、こんな所にいたのね」
「探したわよ」
「ごめんね、ごめんね」
「ううんいいの・・・・・でも宗則君は男の子でしょ?」
「うん・・・・」
「じゃ、もう泣かないの!!
光ちゃんがよけい心配するじゃないの
いい、もう絶対光ちゃんを泣かせたらダメよ!!」
「うん、わかったよ」
「じゃ、約束ね」
「うん!!」
久しぶりに見た昔の夢。
あの時は私も中学生だったんだなぁ・・・・
あれからもう9年かぁ・・・
どうして今更あんな夢を・・・・・
でも、もう9年もたったのね・・・
その間に私も大人になって
彼も・・・・・・
って私もまだまだ子供ね・・・・
私って何時になったら大人っぽくなれるのかなぁ・・・・
と、カレンダーを見る
カレンダーには二つの○が・・・
一つは先週有った国語のテスト。
先週いっぱいその採点作業でおわれていた。
でも、いろんな考えがあって参考になったなぁ・・・・
で、もう一つが今日・・・そう24日に印が付いている
今日はクリスマスイブ
何で、私この日に印を付けたんだろう?・・・・
街はカップルでいっぱい
私も彼と一緒に・・・・・
って無理よねぇ
だって、私は先生、彼は生徒だもんね・・・・
そんなこと叶うわけないのに・・・
どうして私は・・・・
trrrrrr
そんなことを考えてると唐突に電話がかかってきた
今はとても電話を取る気にはならない・・・・
「はい、麻生です只今電話にでることが出来ません」
「あっ、陽ノ下ですけど、いないんなら・・・・」
えっ光ちゃん?
「あっ?光ちゃん。華澄だけど今日は何か用かしら?」
陽ノ下「あっ、華澄さんいたんだぁ・・・
よかったぁ」
陽ノ下「ねぇ華澄さん今日暇?」
「うん・・・・暇だけど」
一瞬、彼のことが頭をよぎる。
彼と今日過ごすなんて無理なことなのに・・・・・
それに・・・・・
陽ノ下「そう、よかったぁ。
今日、昔みたいにみんなでクリスマスパーティしよっかなって」
「みんなって!!?」
陽ノ下「うわぁ、びっくりしたぁ・・・もう華澄さんいきなり大声出さないでよぉ」
「ごめん、ごめん・・・・で、誰が来るのかしら?」
陽ノ下「ううん、今思いついたの・・・取り敢えず琴子・・・あっ水無月さんは来るって」
「へぇ、水無月さんが・・・・大学入試の方大丈夫なのかしら?」
陽ノ下「今日は気晴らしだって・・・・」
「へぇ、じゃ、私もお呼ばれしちゃおうかなぁ・・・・」
陽ノ下「じゃ・・・じゃぁ宗則君も誘っといて貰えないですか?
私今から部活なんで」
「うん、わかったわ」
うん、これで今日彼を誘う口実が出来たわ
そして意気揚々として受話器を取る
「あっ、宗則君?」
宗則「あっ、華澄さん。
今日は何かなぁ?」
「えっとね、・・・・そう光ちゃんがね
みんなでクリスマスパーティーしようとか言ってたんだけど
私たちもお呼ばれしたから行かない?」
宗則「うん、良いよ」
「じゃぁ、今から迎えに行くね」
宗則「えっ、でもまだ早いんじゃないの?」
「ふふふふ、お姉さんは色々買いたい物があるんだけどなぁ
もしかして一緒に来てくれたら何か買って貰えるかも知れないんだけどなぁ・・・・」
宗則「あっ、行く行く!!」
「じゃあ、後30分くらいでそっち行けると思うから・・・・」
宗則「うん・・・じゃぁ待ってるから・・・・」
宗則「うわぁ・・・・何か今日の華澄さん気合い入ってるなぁ」
「そうかなぁ?」
宗則「うん、その格好で街にでるの?
まるでどっかのお上りさんだよ・・・・」
「そうかなぁ?
じゃ、しょうがない一回どっかで着替えるか・・・・」
宗則「どっかって?」
「そうねぇ駅のトイレとか・・・・・・」
宗則「なんか女子高生みたいだね・・・・」
「そうね」
宗則「もう、歳考えなよ・・・・」
「なによぉ、私だって十分若いわよぉ!!」
宗則「ごめんごめん冗談冗談」
宗則「じゃ、今日だけ女子高生だね」
「そうね・・・・宗則君と同じ歳に見えるかしら?」
宗則「まず、無理だろうね・・・・」
「もうまた・・・・・」
宗則「はははは、冗談だよ」
宗則「でも、そんな服よく持ってたね?」
「うん、私の一張羅・・・・
私くらいの歳になるとね友達がぼちぼち結婚するんだぁ・・・・
だからこの前親友の結婚式の時に思い切って買っちゃったぁ」
宗則「へぇ・・・」
「うわぁ。何か街はクリスマス色一色だね・・・・」
宗則「そうだね・・・」
「舞佳いないわよね・・・・」
宗則「ん?」
「いや、なんでもないの・・・・舞佳に見つかったらまた冷やかされるわね」
宗則「でも、そこら中カップルだらけだね」
「そうね・・・・そりゃ今日クリスマスだもん・・・・」
宗則「僕達二人もそう見えるのかな?」
「さぁて、どうかしらねぇ?」
カップルかぁ・・・・
やっぱりそう見えるのかな?
今まで考えてもなかった
と言うか、なるべく考えないようにしてた。
私と彼とはタダの先生と生徒。
プライベートでも私は昔よく遊んだ近所のお姉さんでしかないはず・・・・
昔はあんなに小さかった彼が
いまでは私の方が小さく見える・・・・
それくらい彼は大きくなったのだった。
なんだか彼の背中って大きいのよねぇ
別にこれと言って背が高いわけじゃないけど
なんだか頼りがいがあるのよねぇ
年下に頼るってのも変な話だけど。
何だか今ではあの「かすみおねーちゃーん」とか言って
駆け寄ってくれてた頃が懐かしい。
そんな感じもする・・・
宗則「どうしたの華澄さん?」
「ん?何でもない・・・・」
そう言うと彼の腕を抱きしめた
「さっ、行こっか?」
宗則「い・行くってどこへ・・・」
「アレ、言わなかったけ?
今日は私の買い物につき合わせるって」
宗則「あっ、そう言えば・・・」
その後、私たちはブティックで洋服を見たり
喫茶店で談笑したりした。
「受験生なんだし、本屋で参考書でも見よっか?」
とか冗談を言ったときはさすがに空笑いしてたけど・・・
そして日も傾いてきていよいよ光ちゃんの家に行く時間となった。
「じゃ、もうそろそろ光ちゃん家行こっか?」
宗則「そうだね」
光「あっ、ごめんなさい。
なんだか琴子用事出来ちゃったみたいで」
光「だから、二人だけで行ってきてくれないかな・・・」
「光ちゃんはどうするの?」
光「私は、いいよ・・・琴子じゃ来ないんじゃしょうがないし・・・」
宗則「そっか・・・・じゃあな。光」
光「これで良いんだよね、琴子・・・・」
「ん、光ちゃんなんか言った?」
光「ううん、何でもないよ。華澄さん、今日がチャンスだよ」
そして、光ちゃん家を後にしていざ考えてみると
今からどこ行くか決めてないことに気付いた
宗則「で、どこ行こうか?」
「そうねぇ・・・・・そうだ!!お姉さんに任せなさい!!」
宗則「ねぇ、華澄さんここって高いんじゃないの?」
「大丈夫よ。今日はたくさんお金持ってきてるんだから。私のおごりよ」
宗則「そんなわけには行かないよ・・・・。自分の分は自分で出すよ・・・。」
と、ここはひびきのタワーの展望レストラン。かく言う私もここでご飯食べるのは、
私の就職祝いの時家族と来て以来である。
でも、正直ここって高いのかな?
???「お客様、ワインの方はいかがなさいますか?」
「え・・・えっとこのボルドーフランスって言うのを・・・・」
???「って、華澄じゃない!!何してるのこんな所で?」
「あっ、舞佳ぁ!!貴方こそこんな所で何してるのよ」
九段下「私はバイトよバイト。今日なんて人手が足りないみたいで・・・・。」
九段下「そんなことはどうでも良いのよ。・・・・・って、少年!!」
宗則「あっ、舞佳さん・・・・・いい加減名前覚えて下さいよぉ。」
「アレ、二人顔見知りだったの?」
九段下「えぇ、宅急便のバイトで数回彼の家に・・・。」
九段下「それよりも、私の方がびっくりよ。彼ってひびきのの生徒でしょ?ははぁん・・・そう言う訳ね。」
「そう言う訳ってどう言うわけよぉ。」
九段下「って長話しちゃったわね。私仕事中だから。後、今日の戦績は逐一報告すること。良いわね!!」
そう言うと舞佳は疾風のように去っていった。
そして、舞佳がすぐに戻ってきた。
九段下「お待たせしました。こちら1940年物のロマヌンコンティでございます。」
「私、そんなの頼んでないわよ?」
九段下「いいのいいの。伝票はボルドーにしておくから・・・。少年はオレンジジュースで良いわね?」
そう言って、有無を言う暇も与えず舞佳は去っていった。
宗則「・・・・一体何だったんだろう・・・・?」
「さぁ・・・・」
「まぁいっか。取り敢えず乾杯しましょうか?」
宗則「そうしよっか・・・」
「じゃ、私の彼氏代理補佐見習いに乾杯!!」
宗則「なんだよ、それ・・・・」
「あら、彼氏補佐代理見習いじゃ不満?」
宗則「・・・・そんなこと無いけど・・・・」
「じゃ、しのこの言わずに乾杯する!!」
そして、二人の時間はゆっくりと流れていった
宗則「なんか場違いな感じしない?」
「気にしない気にしない。それに大人になったら慣れるわよ。」
宗則「そんなモンかな?」
宗則「でも、光も今日来れば良かったのに・・・・」
「あれ?光ちゃんの事が心配?」
宗則「心配って訳じゃないけど・・・こんなおいしい物食べられるなら・・・」
「以外に今頃伊集院さんの家のクリスマスパーティーに出てたりして・・・」
宗則「光はそんな奴じゃないよ・・・」
「あら、ヤケに光ちゃんの肩持つのね?」
宗則「そんな訳じゃないよ。アイツとはつき合い長いから・・・」
宗則「って華澄さんもそっか・・・」
「そうね・・・・でも何か羨ましいなぁ」
宗則「えっ、何が?」
「貴方と光ちゃんよ。幼なじみっていいなぁって」
宗則「華澄さんも幼なじみじゃない(笑)」
「やっぱり、ただの幼なじみか・・・・」
宗則「えっ、何か言った?」
「ううん、何も・・・・。もうこんな時間ね・・・・・出ましょっか?」
「ふぅ、随分暗くなっちゃったわね」
宗則「そうだね・・・」
「私も、生徒をこんな時間まで引っ張り回すなんてとんだ不良教師ね・・・」
宗則「そうかもね・・・・」
「でも、こう言うのも良いわね?」
宗則「えっ?」
「みんなでクリスマスパーティーってのも良いけど、こうやって二人だけのクリスマスってのも・・・」
宗則「そうだね。」
「そう言えば昔にもこんな事がなかった?」
宗則「えっ?」
「昔、夜遅くまで帰ってこなかった時があったじゃない?私が心配になって探しに行ったら山道で迷子になってて・・・・」
宗則「あぁ、あの時ね・・・。何か懐かしいなぁ」
「あの時はホントに心配したんだから・・・」
宗則「ごめんなさい・・・・。」
「で、もう泣かせないって言ったのにその三日後に泣かせるんだもんなぁ」
宗則「引っ越しのことは俺のせいじゃないよ〜」
「冗談よ冗談・・・・・。でも、ホントにもう泣かしちゃダメよ。」
宗則「うん、もう絶対泣かせないよ・・・」
「あら、頼もしいわねぇ・・・」
宗則「だいいち、光ももう高校生なんだし泣かないと思うよ」
「あら、女の子ってそんなに強くないわよ。私だってタマに泣きたくなるし・・・・」
宗則「そうなんだぁ・・・・」
「そうそうだから・・・」
宗則「もう〜、華澄さんも心配性だなぁ・・・」
「あら、そう?」
宗則「うん」
「お姉さんはいつまでたっても貴方達のことが心配なのよ。貴方達は弟と妹みたいなもんだから・・・・」
宗則「そうなの?」
「でも、今日は・・・・・先生でもお姉さんでもなかったら・・・・」
宗則「えっ?」
「ううん、何でもない・・・・もうそろそろ帰らないと、おばさん心配するわね」
宗則「え〜」
「もう、これ以上私を不良教師にするつもり?」
宗則「そうだね・・・」
そしてほろ酔い気分で家に帰ってくると
留守電に光ちゃんの伝言が入っていた。
ところでどうして光ちゃん今日いきなり来れなくなったんだろう?
・・・・・・もしかして私のことを思って・・・・
<END>