ギャルゲ・ロワイアル 作品投下スレ5

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756名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/03(金) 22:53:33 ID:PUOEn8FI
757名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/03(金) 22:54:10 ID:uTIk+u9f
 
758心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 22:54:12 ID:MNxiIAda

 全長2m、重量約60kg、口径20mm。
 それはライフルというにはあまりにも大きすぎた。――まさに鉄塊。
 そもそもこれは銃座に据えつけて撃つものであり、腕に抱えて撃つことは想定されていない。
 もっとも献身を使えば抱えて撃つことはできるが、腕に抱える状況に陥ったらそのままそれで殴ったほうが早い。
 60kg近い鉄塊から振り下ろされる一撃はさぞかし強力だろう。
 だがあくまで献身は撃った後の反動による照準のぶれを押さえ込むために使用するのに留めよう。
 ネリネはデイパックから九十七式自動砲の予備弾薬を手に取りそれを眺める。
 通常の拳銃の弾丸とは遥かに超えるサイズを持つ20mm弾。
 その銃口から発射される銃弾は装甲車程度ならいともたやすく貫通する威力を持っている。
 人に向かって撃てばどこに当たろうと確実にひき肉になるだろう。

 ネリネは木に立てかけてある献身に視線を移す。
 永遠神剣と呼ばれる魔力を持った武器。
 七位の位階を冠する『献身』以外にも永遠神剣は存在している。
 神社で交戦した千影が持っていた剣もそうだ。
 古代の儀式用の短剣にも思えるそれにネリネは献身を遥かに凌ぐ魔力を感じていた。
 そうあの時――楓の銃弾とネリネの一撃は確実に千影を捉えていた。
 トウカのように銃口からの射線を見切って回避したとは思えない――
 いや、あのタイミングではどんな身体能力を持った者でも回避できない間合いだった。
 だがあの瞬間千影は一瞬の内に数メートルを移動した。
 ありえない……あの動きはありえない。

『千影を確実に仕留めたと思ったらいつのまにか避けられていた』

 こう表現するより他に無い。
 他人が聞いたら何を言ってるかわからないだろう、ネリネ自身あの瞬間何が起こったのかわからなかった。
 催眠術だとか超スピードだとかそんなものでは断じて違う。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったのである。
759心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 22:56:19 ID:MNxiIAda
 恐らくは――あれが千影の持つ永遠神剣の力。
 それから感じる魔力の波動は献身よりも高位の位階を持ったものだろう。
「だけど……人の身でどこまで扱えるものでしょうか?」
 千影は並外れた魔力を持っているがそれは人という範疇の中でのこと、
 魔王の娘たるネリネとは魔力の総量に絶対的な開きがある。
 あの不可思議な力の連発は確実に寿命を縮めるだろう。
「まあ私とて魔力が封じられている今では条件は同じだろうでしょうが」
 あの戦いの最中、気がついたことがある。
 献身を千影の肩口に突き刺した時、僅かであるが自身の魔力が回復したのである。
 そして千影の神剣の魔力を求める献身――ここで導き出せる仮説。
 魔力を持った人間及び永遠神剣の所有者を献身で殺すことで魔力の回復が計れるのではないか?
 そして献身を通して流れ込む永遠神剣の気配、おぼろげに感じる四つの気配。
 一つは千影が所持している永遠神剣のものだから、あと三つの神剣が存在することになる。

「永遠神剣を持った相手に献身で白兵戦を挑むのはいささかハイリスクですが……やってみる価値はありそうですね」


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 小町つぐみ――トウカと共にネリネが復讐すべき人間の一人。
 トウカと違った意味で苦戦しそうな相手である。
 身体能力は常人よりも少し上と言ったところだろうが真に厄介なのは冷静さと機転の良さ。
 あの女は殺し合いに乗った二人を前にして、臆することなく行動を共にしようと言ってのけた。
 博物館でもネリネと音夢だけで行動させるように誘導していた。
 もし、あの時自分が罠に嵌っていたら確実に音夢に殺されていただろう。
 きっと彼女にとって襲撃にトラブルあった際、仲間割れを起こしてどちらかが死ぬことは織り込み済みだったのだ。
 外見とは裏腹に短絡的で直情的な音夢はつぐみの思惑に気づくはずもなく、
 そしてネリネ自身、動けなくなった音夢を見て好機とばかり止めをさした。
 完全につぐみの手の平で踊らされていた。
「はじめてですよ……この私をここまでコケにした人は……まさかこんな結果になろうとは思いませんでした。許しません……絶対に許しません人間風情が……」
 真紅の瞳に憎悪の炎をたぎらせ呪いの言葉を吐く。
760心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 22:58:02 ID:MNxiIAda
「落ち着いてネリネ……冷静にクールにです……そう水でも飲んで落ち着きましょう」
 昂ぶった感情を抑えるため水分を補給しよう、そう思いネリネはデイパックを開ける。
 デイパックから白い半透明のビニール袋が顔を覗かせていた。

「――少し、臭いますね」
 半透明の白いビニール袋に収められた丸い物体。
 ネリネはビニール袋を外に出す。西瓜のようにずしりとした重みが手に伝わる。
 袋の隙間からほんのりと腐敗臭を漂わせ、朝倉音夢が顔を覗かせていた。
「よいしょ……っと」
 袋から音夢を取り出して両手に抱え、眼前に持ってくる。
 紫がかった土気色の肌、だらしなく半開きととなった口、白く濁った眼、ドス黒く変色した切断面。
「私もあなたもまんまと乗せられてしまいました。どうですか今の気分は?」
 頬を持ち、キスをするぐらい近い距離に音夢を近づけそっと語りかける。
「人の心はなかなか見えないものです。音夢さんは何か見えますか?」
 体積が十分の一以下になってしまった音夢は何も答えず焦点の合わない瞳でネリネをじっと見る。
「うふふ、その目では何も見えるわけありませんよね」
 意地悪なサディスティックな笑みを浮かべ、ネリネは嘲笑う。

「だから――見えないものを『視る』方法を教えてあげましょう」


 くちゅ


 ネリネの陶磁器のような白く細い人差し指が音夢の左目に突き入れられる。
 指は眼球と眼窩の骨の間を滑り、眼底部に達する。
 ぷるぷるとした触感が指に伝わる。
「古代の巫女やシャーマンは神や悪魔などこの世ならざるもの、そして人の心を見るために左目を潰すという風習があったそうです」
 眼窩の骨に沿って円を描くようにネリネはゆっくりと指を回す。
「残された右目で現世を覗き、失くした左目で幽世を覗く……」
761名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/03(金) 22:59:02 ID:FMwCS2Fc
762心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 22:59:40 ID:MNxiIAda

 くちゅ
 くちゅくちゅ
 くちゅくちゅくちゅ

 指をリズミカルにグラインドさせ音夢の眼孔を犯す。
 音夢の眼球がネリネの指の動きに沿ってくるくるまわる。
 くるくる、くるくるとまわる。

 くるくる、くるくる

「どうして『左目』を潰す必要があるのか、なぜ『右目』ではなく『左目』なのか」

 くちゅくちゅくちゅくちゅ……ぶつっ

 ネリネはさらに中指を突き入れる。
 中指を入れた拍子にぷちぷちとなにかが千切れたような音がした。
「いまとなってはそれを確かめる術はありませんが――」

 ぶつっ……

 そして親指。
「とりあえず古代の儀式に則り、『徴』を刻むとしましょう」

 ぶちっ……ぶちっ……ぶち……

 親指と人差し指と中指で白い眼球をつかむ。
 視神経がぷちぷちとちぎれる感触を指に感じながらゆっくりと引き抜く。
 真っ暗な眼孔から白い筋を引かせ、ピンポン球ほど大きさの眼球が露になる。
「どうですか音夢さん、何か見えますか?」
 音夢は答えない。
「その眼で人の心は見えますか?」
763心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 23:01:29 ID:MNxiIAda
 音夢は何も答えることなくぽっかりと空いた穴でネリネを見つめていた。
「死んでからもこうして辱めを受ける気分はいかがですか?」
 当然音夢は答えない、虚しい。
「はぁ……興が削がれました。もういいです」
 ネリネは無造作に白い塊を茂みの中に投げ捨てた。
 もう一度音夢の顔を見る。

「…………?」
 ふと、半開きとなった音夢の口の奥に何か見えた。
 ネリネは指を使って口をこじ開け舌の上に乗っているそれをつまみ出す。
「花びら……ですか?」
 ひとひらの淡いピンク色の花弁。
 しかし――
「桜の花びら……? でも桜なんてどこにも……」
 この島にやって来てから桜の木は見かけていない、にもかかわらず桜の花びらがここに存在する。
 そしてもう一つ不審な点、この花びらから僅かであるが魔力が感じられた。
 これは一体何を意味するのだろうか?
「ここで考えてもしょうがないですね。さて……休憩もここまでとしましょうか」
 ネリネは桜の花びらについて考えることをやめ、音夢を再びビニール袋に包みデイパックに戻した。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 移動する準備を終えてネリネは立ち上がり、大きく背伸びをする。
 花びらは気になるので一応持っておくことにした。
 相変わらず切った足首や右耳、打撲したところは痛むが行動に支障をきたすほどでは無い。
「これからどうしますか……」
 禁止エリアはB-4とE-3、現在地はD-4とD-5の境あたりのはずだ。
 博物館に戻るべきか?
 つぐみが生きている以上、音夢が死んだことは放送で把握しているはず。
 つぐみが博物館に戻る可能性はゼロではないが低いだろう。
764心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 23:02:53 ID:MNxiIAda
 結局、放送前に朝倉純一に絶望を味合わせることはできなかったがまあいい、どうせ殺すことには変わりは無い。

「一旦博物館まで戻るかそれとも……」
 地図を開き次の目的地を考える。
 近くに参加者が潜伏していそうな施設は二つ、ホテルと学校。
 だが博物館につぐみが戻っている可能性も捨てがたい。

「うーん……迷いますね」
 ネリネは次なる獲物を求め再び歩みを進める。
 全ては愛する稟のために。


765名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/03(金) 23:03:31 ID:uTIk+u9f
 
766心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 23:04:03 ID:MNxiIAda
【D-4 南部 /1日目 昼】

【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 9/2+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10】
【所持品2:支給品一式  トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5、九十七式自動砲 弾数2/7】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 朝倉音夢の制服及び生首(左目損失) 桜の花びら】
【状態:肉体的疲労小・魔力消費中、腹部に痣、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:博物館、ホテル、学校のどれかに移動する(行き先は次の書き手に任せます)
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す(出来る限り単独行動している者を狙う)
3:ハイリスク覚悟で魔力を一気に回復する為の方法、或いはアイテムを探す
4:トウカを殺し、楓の仇を討つ
5:純一に音夢の生首を見せつけ殺す
6:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
7:亜沙の一団と決着をつける
8:桜の花びらが気になる
9:稟を守り通して自害
【備考】
私服(ゲーム時の私服に酷似)に着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。


※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
永遠神剣の自我は消し去られている。
魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
魔力持ちの敵に突き刺せば、ある程度魔力を奪い取れる


767名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/03(金) 23:04:21 ID:FMwCS2Fc
768心のかたち、愛のかたち ◆VtbIiCrJOs :2007/08/03(金) 23:05:23 ID:MNxiIAda
以下の魔法が使えます。
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー  回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト     回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。



※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首は音夢の制服と一緒にビニール袋へ詰め込みディパックの中に入れてます。
※魔力が極端に消耗する事と、回復にひどく時間がかかる(ネリネの魔力なら完全回復まで数日)という事に気が付きました。
※トウカと、川澄舞(舞に関しては外見の情報のみ)を危険人物と認識しました。
※千影の“時詠”を警戒。ただし“時詠”の能力までは把握していません。
※魔力持ち及び永遠神剣の持ち主を献身で殺せばさらに魔力が回復する仮説を思いつきました。
※ある程度他の永遠神剣の気配を感じ取れます。
※桜の花びらは管理者の一人である魔法の桜のものです。
769 ◆A6ULKxWVEc :2007/08/04(土) 23:24:42 ID:SnWD/01C
病院に到着した土見稟は蟹沢の姿が見えないことに失望していた。
自分が病院を出ている間にすれ違ったのだろうか?
分かれてからかなり時間がたっていたし、病院に来る気があればもう到着しているはずだろう。
それとも───最初から病院に来る気なんて無かったんじゃないか?

ガリッ

彼は無意識に首を掻きながら考える、
そもそも何故俺はいきなり病院で襲われたんだ?

ガリッ

咽から血が出るのも構わずに掻き毟る。
もしかして奴等は誰かに唆されて?

ガリッ

誰に?俺が病院に居ることを知ってる人間は蟹沢しか…
…ッ!俺は何を考えてた?蟹沢がそんなことする筈無いじゃないか。

ガリッ

もしかしたら彼女は今頃神社で楓やネリネ、亜沙先輩を殺してるんじゃ───?
俺はやっぱり神社に向かうべきだったんじゃ…
分からない、首の痒みが思考を妨げ、ただ疑心のみが募る。
(もう考えるな!とにかく放送を待ってから行動だ!)
そう自分に言い聞かせるが、一度生まれた疑心は消えてくれなかった。
それでも時は経ち、放送が流れ始める。

芙蓉楓の名が呼ばれ、蟹沢きぬの名は呼ばれなかった。
770 ◆A6ULKxWVEc :2007/08/04(土) 23:25:26 ID:SnWD/01C

学校で道具をそろえた蟹沢きぬは今度こそ病院に向かって急いでいた。
結局彼女が見つけたのは地図と時計、コンパス、それに自衛用の金属バットだった。

道具を探している途中、彼女の大切な友人達、伊達スバル、鉄乙女、霧夜エリカ、アルルゥの死を知ったが、それでも彼女は泣かなかった。
───少なくとも本人は泣いていないつもりだった。
「泣いてない、泣いてないもんね…」
誰に聞かれるとも無く呟く彼女の頬には透明の滴が伝っていたが、それでも彼女は泣いてないもんね、と繰り返し呟いていた。

涙をぬぐい立ち上がった彼女は止まらない。
もしかしたら稟はもう病院には居ないかもしれない。
少し休んで体力を取り戻してから向かっても遅くは無いのかもしれない。
それでも彼女は疲れた体に鞭を打って病院へと向かう。
稟も、アセリアも、瑞穂もよっぴーも…ついでに土永さんもまだ生きているのだ。
失ってしまったものはとても大きかったから、もう二度と後悔しないように、彼女はバットを引き摺りつつも病院への道を急ぐ。
771 ◆A6ULKxWVEc :2007/08/04(土) 23:26:37 ID:SnWD/01C


放送を聞いた稟は何も考えまいと原付に跨り、アクセルを全開にして走り出していた。

「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」
楓が死んだ?楓が、殺された?
『ずっと一緒に居てね』
幼い頃の約束も
『稟君が幸せなら、私はそれでいいんです』
自分に向けてくれる笑顔も全て───失ってしまった。

にもかかわらず、蟹沢の名は呼ばれなかった。
やはり蟹沢が…?
いや、誰かに襲われて、怪我をして動けなかった可能性もある。
はっきりと分かることは一つ、自分は病院に戻るべきではなかったのだ。
せめて蟹沢と合流できれば意味はあった。
だが蟹沢は現れず、ただ時間を浪費しただけだった。

楓を失ったことへの悲しみ、自分への怒り、蟹沢への疑心。
全てを抱え込みがむしゃらに疾走していた稟は、血塗れのバーベナ学園の制服を抱え、金属バットを引き摺っている蟹沢を見つけた。
そしてその瞬間。
神王にも魔王にも凡人にも成れたはずの男は───鬼に成った。
772 ◆A6ULKxWVEc :2007/08/04(土) 23:27:38 ID:SnWD/01C
【F-5 住宅街 北/1日目 日中】

【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:投げナイフ1本、金属バット】
【所持品:竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-、地図、時計、コンパス】
【状態:精神高揚。両肘と両膝に擦り傷。左手指先に切り傷。数箇所ほど蜂に刺された形跡。疲労極大。】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:土見は何に怒ってんだ?
2:稟と合流後、博物館へ急ぐ(宮小路瑞穂達と合流)
3:ゲームをぶっ潰す
4:よっぴーと合流したい。

【備考】
※仲間の死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。
773 ◆A6ULKxWVEc :2007/08/04(土) 23:28:11 ID:SnWD/01C
【土見稟@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:麻酔銃(IMI ジェリコ941型-麻酔薬装填)】
【所持品:支給品一式x2、投げナイフ一本、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、拡声器、
     麻酔薬入り注射器×3 H173入り注射器×2、炭酸飲料水、食料品沢山(刺激物多し)】
【状態:L5発症。背中に軽い打撲。頚部にかなりの痒み(出血中)。腕に痺れ。酷い頭痛】
【思考・行動】
基本方針:参加者全員でゲームから脱出、人を傷つける気はない。 但し殺人者は例外。
1:L5発症
2:蟹沢きぬに対する怒り
3:第一回放送の内容を知りたい
4:神社へ向かう(ネリネ、亜沙がいれば救出)
5:ネリネ、亜沙の捜索
6:もう誰も悲しませない

【備考】
※シアルートEnd後からやってきました。
※L5発症しました。
※倉成武を危険人物と断定
※稟の乗っている原付車の燃料は残り僅かです。
※稟は第一回放送を聞き逃しています
774代理トウカ ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 18:58:49 ID:Fhr6tA5J
神社へ行くはずの救急車は停止していた。
それはさほど珍しい光景ではない。
今この時間は島のいたる所で悲しみの声が上がっているのだろう。
無論この救急車に乗っている集団にも悲しみの知らせは届いていた。
相沢祐一と大石倉人の両名が死んだのだ。
しかし、それだけなら問題なく救急車は動いていたであろう。
彼らには神社へ急いで行かねばならない理由があるのだから。
だが、今回のケースは少しばかり勝手が違う。
読み上げられた死者の中にあるべき名前が入ってなかったからのだ。
その人物の名前は水瀬名雪。

「ウソ……名雪さん……生きてるの?」

あゆは思わず両手を口元に当てて驚きの声を上げる。
あゆは瞳にメスを突き立て殺してしまったと思い込んでいたが実際のところは生きていた。
片目を失明という重傷を負っているものの白鐘沙羅に保護され、現在も存命中である。

「遠野さん……これって……」
「ええ」
「………………俺は一人で神社に行く。 お前等は道を引き返して名雪を見つけろ」

顔を見合わせ喜ぶ圭一と美凪。
しかし武は二人とは変わって神妙な面持ちでここで別れることを提案した。
もちろん圭一等も神社に行って土見稟を阻止するチームと名雪を捜索、保護するチームとに分割するのだということは分かっている。
しかし何故二人ずつに別れるのではなく三人と一人なのかということが分からなかった。

「どうして武さんだけ一人なんですか?」
「まず、あゆは当事者だから当然名雪の捜索に回ってもらう。 圭一、お前は大石って刑事のこともあるだろうから一緒に行ってやれ。
 それに途中誰かに襲われる可能性もあるから二人のお守りも兼ねてもらう」
「私は……どうしてででしょう?」
775修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:00:45 ID:Fhr6tA5J

あゆと圭一に関しては三人とも容易に予測がついた。 
しかしなぜここで美凪までも名雪捜索のチームに組み込まれるのかは三人には理解ができなかった。
人数配分を逆にしているのではないかとさえ思う。
道中誰かに襲われる『可能性のある』名雪捜索チーム。
神社で土見稟との戦闘が起こることが『ほぼ確定している』神社チーム。
常識的に考えて神社では稟との対決は避けられない以上神社に行くチームに人手を多く割くべきなのだ。
だから神社に行くチームの方が三人ならまだ納得行くかもしれなかった。
しかし武が提案したのは全く逆の人数配分。
提案した武本人以外は一様に首をかしげている。

「俺一人の方が身軽でいい。 いざって時に逃げるなら一人の方が楽だからな」
「私……足手纏いですか?」
「……有り体に言えばな。 お前やあゆのような非戦闘員は邪魔になる。 かといってお前にバット持って戦えって言うわけにもいかない」」
「武さん、その言い草はあんまりだ」
「いいんです、前原さん。 武さんも本気で言っている訳ではないでしょう」

美凪は武が言外に含んだ意図を察知しおとなしく引き下がることにした。
たとえ実際に戦場に立つことは無くとも自分を危険な目に合わせたくないのだろうという気持ちはひしひしと伝わってきた。
776修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:01:58 ID:Fhr6tA5J

危険な役目は全て自分に任せろ。
仲間が傷つくくらいなら自分が傷ついた方がマシ。
それはとても倉成武という人間らしい考え方であった。
倉成武という人間を知るものに聞けば、誰もがあいつならそう言うと口をそろえるだろう。
しかし武の本音――自分でも気付いてないが――は別のところにある。
率直に言えば怖いのだ。
圭一が、美凪が、あゆが、いつか裏切って自分に牙を剥いて襲ってくる妄想が先ほどから武の頭を離れない。
それは土見稟に打たれたH173によるもの。
雛見沢症候群と呼ばれる雛見沢独特の風土病を病院での稟との戦闘時に発症させられたのだ。
雛見沢症候群、それを端的に説明するなら他人が信用できなくなり、最後には自身の喉を掻き毟って死んでしまうおそろしいもの、と言える。
無論武とてそのことを忘れていたわけではない。
病院で倒れていた稟を保護したとき荷物の検査はしたし、その中に麻酔銃や麻酔薬、H173という見たことも聞いたことのないものも見つけた。
あのとき稟に打たれたが麻酔であるかH173であるかは武には分からなかったものの、どちらを打たれたにせよキュレイの免疫能力を信じていたので放っておくことにした。

武は致死率85%以上のウイルス、ティーフ・ブラウをも瞬く間に治すキュレイウイルスのキャリアだ。
キュレイ、それは人類の永遠の命題である不老不死を体現するもの。
人間の寿命を司るテロメアを永遠に回復させ続け、同時に各種身体能力、再生能力、免疫能力を異常なまでに高める。
たとえH173、そして雛見沢症候群がウイルス性だろうが細菌性によるものだろうが関係ない。
キュレイは体内の異常の全てを飲み込み全てを喰らい尽くす。
そのはずであった。
しかし、この島ではキュレイウイルスの影響は著しく制限されている。
そのためH173の侵攻を許してしまっていることに武本人は気づいてない。
これはキュレイの力を過信した武のミス。
この島ではキュレイもH173の症状を浅い程度に留めておくことしかできないのだ。

「ですから前原さん、私たちは一刻も早く水瀬さんを探して武さんの援軍に駆けつけましょう」
「……分かった。 武さん、すぐに駆けつける。 あゆ、いいな?」
「う、うん……」
777修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:02:52 ID:Fhr6tA5J

どこか歯切れの悪い返事をするあゆは複雑な気分であった。
相沢祐一は、大切な人は死んでしまったけどもう一人の大切な人は生きていた、それはいいことだ。
けれど他人の差し金とはいえ大石、乙女の両名の命を奪ったのは紛れも無く自分。
そして名雪にも死んだと思っていたほどの重傷を負わせていたのである。
死んだ大石と乙女の遺体に会って、生きていた名雪に会って、どうすればいいのか悩む。
謝って、許してくれるだろうか。
いや、許しはしないだろう。
何故ならあゆが大石や乙女や名雪の立場なら決して許したいとは思わないからだ。
そして大石の知人である圭一も許しはしないといっていた。
死ね、地獄の業火に焼かれろ、あの世で詫び続けろ、あゆの想像の中の名雪等が次々とあゆに罵声を浴びせる。
そしてあゆはそれにじっと耐えるしかないのだ。
ホイホイ人を信じた自分が馬鹿だったから、騙された自分が悪いのだから謝ることはできても許されることは無い。
もしも相沢祐一が生きてこの場にいれば、どういう行動を取っていただろう。
あゆを庇ってくれただろうか、それとも名雪と一緒にあゆを責めていただろうか、分からない。
けれどあの三人と祐一のことを考えると悪い考えしか思い浮かばないのだ。
いっそこのまま死んでしまいたい。
それがあゆの本音である。
けれど自分には自殺する勇気はないし、誰かの手にかかるのもまた怖かった。
自分を守ってくれた乙女、一見怖そうな人だったけど実は優しかった大石、二人を殺した事実はあゆにとって耐え難いものとなっている。
そんなあゆの内なる心の領域を読み取ったのか美凪は優しく声をかけた。

「あゆちゃん、怖いの?」
「え…………うん」

武たちは知らない。
土見稟は神社へ向かってないことを。
水瀬名雪はすでに白鐘沙羅に保護されていることを。
彼等の会話のほとんどが無駄なものになっていることを。
むしろ心配するなら自分等の身の回りであることを。
778修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:03:55 ID:Fhr6tA5J

「怖くても逃げちゃ駄目。 一番怖いのは罪から目をそらして生き続けることだから。」
「……」
「逃げるのは簡単。 けど今逃げたら後で一生後悔する」

武たちは気づいていない。
近くに自分等を襲う機会を窺っている狼がいることを。
狼が武器を片手に少しづつ接近していることを。
そして今、狼が4人への攻撃を開始したことを。

「だからあゆちゃん。 あなたは――」

美凪が全ての言葉を言い切ることはできなかった。
投げられたダイナマイトが爆発したのだ。
爆発したのは救急車の助手席の2メートルほど手前。
凄まじい火炎と爆風が救急車の助手席側の窓ガラスを激しく叩きつける。
幸い距離が離れていたため爆風が窓ガラスを割ることは無かった。
しかし、窓ガラスに叩きつけられた爆風と救急車のすぐ近くであがっている炎は車内の人間を混乱させるには十分だった。

「ひ……うわあああああああ」
「あ、バカ!?」
779修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:05:14 ID:Fhr6tA5J
圭一の警告を聞かずに真っ先に車からあゆが飛び出した。
それを見逃す襲撃者ではない。
元々ダイナマイトは車の真下に投げ入れ車内の人間の一網打尽を狙ったのだが力加減を誤ったのだ。
だが襲撃者は自らの失敗にくよくよせずにすぐに次の作戦に切り替える。
近くでダイナマイトが爆発すれば中に乗っている人物が驚くのは明白。
ならば慌てて車外に出てくる人間が必ずいるはず。
そんな人間を木陰から銃で狙い撃ちすることに決めたのだ。
すぐに救急車を発進させてこの場を離脱する可能性も考えられたが顔も見られてないし、ダイナマイトの損失も一本で済むので安いものである。
結果は見てのとおり。
救急車の後部からあゆが出てきたの見て笑いながら銃を撃った。
狙いを定めて一発であゆの右足を打ち抜くことに成功。
引き金を引いた瞬間、あゆの右足に穴が開き血が吹き出るのを見て、女は笑みをこぼした。
襲撃者は咲耶。
咲耶は商店街で医療品などの物資の補充を手早く済ませ移動した。
武器は手に入らなかったがあくまで目的の品は手に入ったのでそれは良しとした。
そして千影や衛ら残った姉妹も全員健在でいることに喜びつつ、軽い足取りで新たな獲物を探すべく島の中央部へと向かっていたのだ。
そこで見つけた救急車。
救急車なんてけったいな車に乗っている人間などそうそういない。
咲耶は車に乗っているのが先ほどの四人に間違いないと思っていた。
そして何故こんなところで車を止めているかは分からないが、これは絶好の襲撃のチャンスだと判断したのだ。

「うあああああああああああああ! 痛い、痛いよぉ!!」

地べたに這いつくばり、足を掴みながら叫び声を上げるあゆ。
咲耶はそんなあゆを追撃することはしなかった。
救急車に少なくとも四人の人間が乗っていることは咲耶も知っている。
だからこそこのままあゆののたうち回る姿を眺めるだけにしているのだ。

「あゆ!!」
780修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:06:13 ID:Fhr6tA5J

何故なら、このようにあゆを助けようと新たな人間が車内から出てくるのは容易に想像が付くからだ。
圭一が足を押さえて暴れるあゆ助けるべく救急車から飛び出す。
しかしそんな圭一の行動も全て咲耶の予想済み。
あまりに予想通りに物事が進むことに笑いを噛み殺すのに必死だった。
今度は圭一へと銃の照準を向けた。
もう一人くらい炙り出すために急所は避けて撃つことにするか。
そう考えた咲耶は今度も足を狙うべく引き金を引く。
轟音と共に放たれた銃弾は圭一の足を貫くことは無く後方の木を穿つだけにとどまった。
狙いが外れたことに安堵しつつ、圭一はあゆを抱える。
咲耶もそのまま救急車の中へとお持ち帰りになるのを許すはずは無い。
更なる銃弾を繰り出すべく再び圭一に狙いをつける。
今度は外さないよう面積の広い上半身へ狙いをつけた。
轟音とともに再び放たれた銃弾。
咲耶のS&W M627PCカスタムから発射された弾丸は圭一の肩へ命中した。
皮膚を抉り筋肉を引き裂く痛みに堪えつつ、それでも圭一はあゆを抱えて救急車へと入ることに成功する。
再び救急車の中へと入られてしまったが、咲耶にはなんの問題も無い。
それならダイナマイトをもう一度使用すればいい。
デイパックから新たなダイナマイトを取り出す咲耶。
それを見ていた美凪が咲耶の行動を察知して咲耶のいる方向へ手榴弾を投げた。
咲耶のすぐ近くに転がる手榴弾。
その武器は映画でも何度も見たことあるし、ダイナマイトという似たような爆破系の武器を持っているので咲耶はそれがなんなのかすぐに分かった。
黒いパイナップルから慌てて遠ざかる。
もし一瞬でも判断が遅ければ、蛋白質の塊が一つできあがるところだ。
ほどなくして爆発する手榴弾。
新たな木陰に隠れつつ、爆風で暴れる髪の毛を抑えて咲耶は苛立たしげに舌を打った。

(やってくれるじゃない)
781修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:07:27 ID:Fhr6tA5J
咲耶はダイナマイトを取り出しつつも、これ以上の戦闘の継続は危険だと判断した。
もとより数の上では不利なのは明らかだったし、件の集団からは必要なことは聞きだしてる。
敵に手傷を負わせることにも成功したし、これ以上戦闘を継続するメリットはない。
最後にもう一発ダイナマイトをかまして撤退することに決めて導火線に着火しようとする。
しかし、導火線に火をつける動作は途中で中断せざるを得なかった。
いつの間にか咲耶の左斜め前方に男が立っていることに気付いたためである。
男は自らの獲物である永遠神剣『求め』を鞘から抜き放ち、咲耶目掛けて突進している。

(銃は……間に合わない! ダイナマイト……近すぎる!)

すでに銃でもダイナマイトでも危険なほど近距離に接近していた男に対応すべく、咲耶もダイナマイトをデイパックに入れ、地獄蝶々を構えた。
男――武は圭一があゆのために飛び出るよりも前に、咲耶の死角である救急車の運転席側から密かに車外へ脱出していた。
そして美凪の投げた手榴弾の爆発と同時に一気に咲耶へと距離を詰めていたのである。

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」

裂帛の気合とともに放たれた倉成武の袈裟斬りを咲耶はなんとか受け流すことに成功する。
男と女、加えて年齢の差は身体能力の絶対的な違いをもたらす。
咲耶がまともに刀で受けるのは明らかに危険だ。
距離を開けて銃やダイナマイトで戦うべきなのだが、武もそれは重々承知している。
なんとかして距離を取ろうとする咲耶に対し、果敢に接近戦を仕掛けていく。

「前原さん、あゆちゃん!」
「ぐっ……俺は大丈夫だ。 先にそっちを見てやってくれ」
「はい。 あゆちゃん、治療しますからおとなしくしていてください」
「うぐぅ……痛い、痛い、痛いよ。 足が、足がぁぁぁ」
「ちょっと傷を見せて……これなら大丈夫です。 二人とも弾丸は完全に貫通しています」

武が咲耶と戦っている間、救急車に戻った圭一等は怪我の治療を始めていた。
幸い救急車の中なので必要な道具はほぼ全て揃っている
弾丸が完全に貫通していることを確認して美凪はまずあゆの治療からすることにした。
782修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:08:18 ID:Fhr6tA5J

今も武と咲耶は戦い続けているのだろう。
外からは剣戟の音が時折聞こえてくる。

出血の止まらないあゆの足を些か乱暴に止血したあと、消毒をする。
あゆはさらに痛そうな顔をするものの、途中で止めるわけにはいかないので申し訳ないと思いつつ消毒を続けた。
消毒が終わったあとはこの状況では考えられないような正確さと丁寧さと速さであゆの足に包帯を巻く。
最後に痛み止めの薬を飲んでもらった。

「終わりました。 薬を飲んだから眠くなるかもしれないけど我慢してくださいね」
「う、うん……ありがとう」
「次は前原さんを――」
「遠野さん、こっちは自分でやっといた」
「……痛みに堪えて頑張ったで賞」
「い、いやこの状況でお米券は……」
「はい、冗談です。 それではここから出てしまいしょう。 幸い武さんが足止めしてくれてますから」
「そうだな。 またダイナマイトなんか投げられたらたまらないからな」

3人は何の障害もなく車外に出ることができた。
安全な場所に美凪たちを誘導しつつ、ふと圭一は武が戦っている方向に目をやると戦いはまだ続いていた。

『地獄蝶々』と『求め』、二つの世界でも指折りの銘刀と銘剣は二つの剣が斬り合うたびに火花を散らせ美しく輝く。
真上に上った日輪の光を受け、雄々しく光を放つ『地獄蝶々』。
一太刀ごとに星のきらめきを連想させる『求め』。
本来なら相見えるはずのなかった異世界の二つの剣は負けじと互いの体をぶつけ合う。
圭一たちは二人の戦いに魅了されるのを抑えることができなかった。
もしもこの戦いがルール無用の殺し合いでなく正式なルールに則った試合なら圭一たちは惜しげもなく二人に拍手を送っていたであろう。
しかしながら武器の強度に関しては完全に互角の戦いであった戦いは、持ち手の身体能力によって大きく左右されていた。
斬り合いが何合か続けられていた今、勝負の行く末は武に完全に傾いている。
先に述べた身体能力の差、そして離れて距離をとることを考え続けている咲耶と前へ前へと進むことしか考えていない武。
気持ちの上でも消極的になってる咲耶に勝利の女神が微笑むはずはないのである。
咲耶がこれまで持ち堪えていたのは運が良いとしか言いようがない。
783修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:09:33 ID:Fhr6tA5J

「はあっ!」

気合いの入った武の声。
真上に大きく剣を振り上げ、そして十分な溜めの後に振り下ろす。
今までの攻撃とは明らかに違う気迫。
繰り出される大振りの一撃、それは真向唐竹割りだ。
これが決まればまず間違いなく標的を真っ二つにすることができるであろう。
使い手は素人といえど永遠神剣の名は伊達ではない。
咲耶もそれは分かっているのだろう。
あれほどの勢いをつけられた一撃は刀で受けることも受け流そうとすることも自殺行為に等しい。
刀を構えることもなく回避することのみに全身全霊を費やす。
これだけ大振りの一撃ならまず間違いなく攻撃の後に隙が生まれる。
最大の隙とは最大の攻撃の後に生まれるものだ。
その隙を叩けばいい。
当たれば武の勝ち、外せば逆に咲耶最大のチャンスが訪れる。

神速の斬撃が咲耶の正中線をなぞる様な軌道を描く。
剣を振り下ろす武。
避ける咲耶。
一瞬、世界が光に包まれる!

「くっ!?」

それはどちらの声であったのか。
必殺の一撃は必殺とは成り得ず、空気と地面を切り裂いただけであった。
武の攻撃は外れたのだ。
外れたと言ってもそれはまさに紙一重。
咲耶は背筋が凍るのを抑えられない。
あと米粒一つほど距離が詰まっていれば間違いなく剣線は咲耶の体に届いていただろう。
そして振り下ろされた一撃の威力を物語るように、土が舞い上がり咲耶の頬を剣風が吹き付ける。
しかし今ここで咲耶に最大のチャンス――待ちに待っていた最高の機会が訪れた。
784修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 19:10:37 ID:Fhr6tA5J
「もらったわ!」

あれだけ大振りの一撃をから即座に体勢を立て直すことなど如何に達人であろうと難しい。
刀をそのまま横薙ぎに振るう。
咲耶の逆転勝ち、そう思われたその瞬間、武は次の行動に移った。
武は躊躇うこともなく剣を両手から離し、肩を咲耶に向かって突き出す。

それはあらかじめ武が考えていた次善の策。
もしも先の一撃が外れた場合、そのまま速やかにタックルへと移行するという策。
振り下ろした剣の勢いをそのままタックルへの一撃へと変換して体重移動を行う。
これを避けられたら武にはもう次の手はない。
だから、全身の筋肉をただそれだけを為すためにフル稼働した。
咲耶の攻撃よりも早く武の渾身のタックルが咲耶の体に吸い込まれる!

「あああああああああああああああ!」

咲耶が吹き飛ばされるような勢いで後方の木に叩きつけられる。
いや、ような、ではない。
咲耶は吹き飛ばされた瞬間、間違いなく空を飛んでいた。

「がはっ!?」

全身がバラバラになりそうな激痛が咲耶を襲う。
意識が持って行かれそうになるのを必死にこらえながら、咲耶はそれでも刀を構え防御の姿勢をとる。
しかし武は追撃することなく咲耶から離れていった。
回収した『求め』とあるものを肩に担いで。
武の肩に担がれたそれを見た瞬間、咲耶の顔面は蒼白になる。
武が担いでるもの、それは咲耶のデイパックであった。
咲耶は吹き飛ばされた瞬間、手からデイパックが離れていたことにようやく気づく。
785修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:33:40 ID:Fhr6tA5J
銃と刀、主な武器は今も咲耶の手にある。
しかし、銃を撃つのに必要な予備の弾やダイナマイトなどはあの中だ。
咲耶にとってあれを奪われることは事実上の戦力の半減。
ここで弾を惜しんでは元も子もない。
咲耶は銃を構え、必中を心掛けて二連射した。

「ぐおっ!?」

一発の銃弾が武の脇腹を捉えた。
しかし武の走る勢いは止まらない。
そのまま近くの木陰に身を隠し、まんまと咲耶のデイパックを奪取することに成功した。

「武さん!」

さらに美凪とあゆを比較的安全な場所においてきた圭一までもが加勢に加わろうとしている。
咲耶は撤退を選択せざるを得ない状況に追い込まれる。
しかし、タックルのダメージも抜けていない今は撤退すらも難しい。
咲耶はまさに絶体絶命の窮地に追い込まれた。





「頑張った方だけど、これで終わりかな」
786修正版(前編) ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:34:25 ID:Fhr6tA5J
戦いの一部始終を覗いていた良美はそう思った。
実は咲耶が救急車に乗った一団を襲撃する前から佐藤良美は救急車のすぐ近くにいたのだ。
といってもどうしてここにいるのかと聞かれれば良美は上手く答えることができない。
良美が覚えている最後の記憶は放送で霧夜エリカの名前が呼ばれたこと。
自分がそのことについてひどく悲しんでいたこと、それだけであった。
それからのことは良美も覚えていない。
気がつけば良美は藤林杏の死体のすぐそばではなくこんなところにいた。
ただ、放送からある程度時間が経っていることから、良美本人が瞬間移動したわけではないようだ。
頬には涙を流した感触が残っている。
おそらく悲しみのあまり自暴自棄になって走り回ったのだろう。
脳がそれを覚えていないのは対馬レオと霧夜エリカの死に耐えられなかったから、と良美は考えていた。
それはともかく、良美は圭一等のすぐ近くで戦いの様子を最初期から窺っていた。
戦っているのが因縁ある圭一であることには若干驚いたが、それでも良美のやることは変わらない。
いつものように役に立つ人間や集団には無害を装って溶け込み、必要ない人間や自分にとって都合の悪い人間は排除するだけ。
今回は圭一たちがいる以上もちろん後者だ。

咲耶が最初にダイナマイトで武たちを襲撃したとき、当然良美は漁夫の利を狙っていた。
しかし今現在の良美の武器は残り3発しか入ってない銃と錐のみ。
仮に運良く弾丸一発につき一人を仕留めることができたとしても殺せるのは三人。
残った二人と戦うのに錐は有効な武器とは言えない。
かといって迂闊に出ていくことはあまりにも頭の悪い考えだ。
咲耶が頑張って頭数を減らしてくれることに期待したのだがこれは期待外れの結果になった。
787代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:36:10 ID:Fhr6tA5J
結果は見ての通りだ。
咲耶はデイパックを奪われるという最大の愚を犯した揚句、窮地に陥っている。
仕方なく今回は静観を決め込むことにした方が賢いと判断した。
しかし、こうもおいしいシチュエーションを逃すのは良美にとってあまり気分のいい話ではない。
もしも咲耶がもう少し頑張って敵の一人や二人仕留めてくれれば、あるいは良美の装備がもう少しマトモであったならば、良美はすぐにでも戦いに参入していたであろう。
ちょうど今良美が身を潜めている場所は咲耶と共に武たちを挟撃することが可能な位置なのだ。
正反対の位置から同時に襲撃されてはいかに人数がいようと恐れることはない。
そう、良美にとってこれは絶好のチャンスなのだ。
しかし――

(せめてあと一つ、状況を決定的に変える何かが欲しいんだけど)

そう、良美には武器が足りない。
咲耶は今にもやられそうな雰囲気。
これでは望み通りの戦果を得ることなど夢のまた夢。
あと一押し、良美が戦いに参入する理由となり得る最後のピースが足りないのだ。
やはり静観するのがベストか、良美がそう思ったとき――最後のピースとなり得る存在が現れた。

「あゆちゃん! 見つけた!」

普段の彼女を知る者なら決してそれは彼女の声だとは思わないであろう。
何故なら、それほどまでに彼女の声は毒々しく、怨嗟の色に染め上げられていたのだから。

「な、名雪さん!」
788代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:37:04 ID:Fhr6tA5J

あゆは新たな二人の登場に驚きを隠せなかった。
現われたのは水瀬名雪と白鐘沙羅。
撤退を決めていた咲耶はもちろん武と圭一も思わぬ人物の登場に立ち止まる。
なぜ図書館にいたはずの二人がこの場にいるのか?
答えはやはりと言うべきか先ほどの放送だった。
沙羅は放送で恋太郎の死を知った。
双樹に続き恋太郎もまた失ったのである。
その悲しみはいくら言葉を重ねようと表現できるものではない。
三人はいつも一緒。
三人で一人。
三人で幸せになろう。
そう誓い合った二人が死に、沙羅はこの世に一人ぼっちになったのである。
できるなら世界が終わるまで恋太郎の死を悲しんでいたかった。
遺体でもいいから二人にもう一度会いたい。
だが、沙羅に悲しむ暇はなかった。
水瀬名雪の後を追うのに夢中だったからである。
名雪も放送の直前に目を覚まし、放送を一字一句違えずに聞いていた。
放送を聴き終えた名雪はしばらく呆けた顔をしていたものの、
「あゆちゃん、あゆちゃん……!」
そう言うとともに突然外へ飛び出したのである。
恋太郎の死を悲しんではいたいが、重傷を負った名雪を放っておくこともできない。
それにやっと出会った初めての人間と別れたくない気持ちもあった。
結局、沙羅には名雪を追いかける以外の選択肢はなかったのだ。
そして名雪から気絶していた理由、怪我をした経緯などを聞きつつ、当てもなくあゆを探す名雪について行くことにしたのである。

それは良美の願いを叶えるために現れたのだろうか。
はたまた単なる偶然なのか。
どちらにせよ良美が願っていた決定的に状況を変えるものがこの場に出現した。
特に手がかりがあるわけでもなかった名雪のあゆ捜索はこうも短時間でターゲットを見つけることに成功したのだ。
789代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:38:11 ID:Fhr6tA5J

「ごめんね……名雪さん。 謝っても許してもらえるなんて思ってないよ。 だけど、ごめん……」
「謝る? 今さら何を謝るの? 大石さんと乙女さんを殺したこと!? 私も殺そうとしたこと!?」
「……」

あゆは何も言い返すことができない。
佐藤良美の差し金とはいえ大石と乙女の二人を殺したこと、名雪を傷付けたことは事実なのだ。
あのときの記憶が思い出したくもないのに色鮮やかに蘇る。

槍を構えながらゆっくりとあゆ達の方へ歩みを勧める名雪。 
沙羅もまた銃を取り出しいつでも撃てるよう構えた。

「謝る必要なんてないんだよ……。 許すつもりなんかないんだからね!!」
「ひうっ!」

その一言とともに一直線に突撃をしてくる名雪。
体格に合わない槍を装備した上半身はいささか不安定だが、それでも抱えて走るだけなら何の不都合もない。

「沙羅ちゃんも手伝って!」
「ええ!? ちょ、ちょっと、待ちなさいよ!? 本当にあの子がみんなを殺したの?」
「死んじゃえええええええええええええええええ!!」

沙羅にはあゆのような臆病そうな少女が人殺しをしたとは信じられなかった。
また咄嗟のことなので手伝ってといわれても瞬時に対応することができない。
念のために銃を構えておいたが、それでも撃つつもりは全くと言っていいほどなかった。
だが、沙羅の反応も無視して名雪はあゆを目指してひたすら走り出す。

「名雪ちゃん!」
「さ、佐藤さん!?」
790代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:39:28 ID:Fhr6tA5J

名雪を呼び止めたのはこのイレギュラーを待ち望んでいた佐藤良美。
名雪は横から呼ばれたことに驚くものの、それが佐藤良美であることに気付き、安心した。
良美はあゆと名雪の会話のやり取りを聞いて、あることを思いついたのだ。
二人の会話と態度から察するに、名雪はあゆが大石と乙女を殺したのだと勘違いしている。
その答えは半分正解で半分間違い。
確かに毒を飲ませたのはあゆ本人だが、飲ませるよう指図したのは良美本人だ。
しかし、名雪に真実を教えてやる必要はない。

「小屋に戻ったら大石さん達が……あゆちゃんがやったの?」
「そうだよ、佐藤さん! あゆちゃんは私の目の前で二人を殺して、私も殺そうとしたんだよ!」
「乙女先輩をよくも……許せない……名雪ちゃん、あゆちゃんを殺すのを手伝って!」
「うん!」
「私は他の人を抑えておくから、名雪ちゃんはあゆちゃんを!」
「分かったよ!」

こうして哀れな操り人形が一体完成した。
手駒にするには少し時間がかかるかと思ったが、名雪は良美本人も拍子抜けするほど簡単に良美を信じてくれた。

それほどまでに名雪のあゆに対する憎しみは強い。
他人を信じることの難しいこの島において、無条件に信頼できるこの島に来る前からの友達という存在。
その友達に裏切られた。
信じれる仲間や祐一を失った今、名雪の心にあるのはあゆへの復讐のみ。
強く信じていた分だけ裏切られた憎しみもまた大きいのである。

「違います」

静かな、けれど芯の通った美凪の声が辺り一帯の空間に心地よく響く。
震えるあゆを抱きかかえながら美凪は事の顛末を説明する。
誰もが足を止めて美凪の声に耳を傾けた。

「大石さんと鉄さんを殺したのはあゆちゃんじゃないです。 犯人は佐藤さんです」
791代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:40:41 ID:Fhr6tA5J

そう言って佐藤良美を指差す。
これも良美の想定の範囲内、そして越えるべき最大の難所だ。
名雪やあゆのような当事者があの状況を正しく理解するにはよほど頭が切れないと難しい。
しかし、第三者が客観的に起こった出来事について分析すれば簡単に真実にたどり着ける。

「嘘よ! あの場にいない佐藤さんがどうやって二人を殺せるの!?」

名雪の心は揺るがない。
名雪は確かに大石や乙女の断末魔の表情を見た。
そしてその場にいたのは佐藤良美ではなく月宮あゆ。
名雪に重傷を負わせたのもあゆだ。
佐藤良美はあのときあの場にいなかった。
名雪はあゆこそが犯人であるという絶対的な確信がある。
だから美凪の声は名雪の凍てついた心に何の影響も及ばなかった。
しかし、次の声には名雪も動揺せざるを得ない。

「毒だ! 大石さんと鉄さんが食べた食べ物か飲み物に毒が入ってれば説明がつく」
792代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:41:32 ID:Fhr6tA5J
今度は圭一が叫ぶ。
あゆを許すつもりはまだ毛頭無いが、佐藤良美というある意味圭一が一番出会いたくなかった脅威がそこにいる。
まだ猫をかぶっていた時の良美の言葉を思い出す。
対馬レオと霧夜エリカという人物を探していることを。
そしてレオは前回の放送時に、エリカは今回の放送時に死んだことを。
人を殺してまで二人を守ろうとしていた人間が守るべき対象を全て失ったとき、その人間はどうする?
今まで何をしていたのかと人を殺したことを悔やむ?
そのまま人を殺し続ける?
自暴自棄になって自殺する?
答えは良美の目を見れば分かる。
良美の目は絶望に染まっているか? ――否。
後悔の念に囚われているか? ――否。
良美は天使の微笑を見せていた。
そう、それはとてもとても素敵な笑み。
大切な人が殺されたとは思えないような、むしろこれから何かめでたいことがあるかのような笑みを浮かべている。
あれはきっとまだ良からぬことを企んでいる証拠に違いない。
圭一はそう思っていた。

「そ、それは……」

名雪は良美の目にもはっきりと分かるほど動揺していた。
同伴している沙羅も例外ではない。
毒――犯人が現場にいなくても人を殺せる魔法の道具。
確かに毒を用いれば良美にも大石たちを殺すことが可能だし、飲み物を飲んだ瞬間に血を吐いたことにも説明がつく。
名雪が信じていたものがまた一つ崩壊する。
名雪は恐る恐る良美のほうを見た。

「さ、佐藤さん……」
「ち、違うよ! 私毒なんて飲ませてないし、持ってもいないよ!」
793代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:42:50 ID:Fhr6tA5J

良美は突然犯人扱いされたことに驚き、必死で否定する。
もちろんそれは演技。
声を荒げてそれは違うと反論するより、こういう態度のほうが人は信じてくれる。
しかし名雪も良美の言葉を鵜呑みせず、疑わしい視線をぶつけてくる。

(ここからは正念場ね……)

造られた表情とは裏腹に良美の頭はフル回転していた。
いかに圭一たちを論破して名雪の自分への信頼を固いものにするか。
今この場にいる全ての人物の注目が良美に注がれている。
生半可な理屈ではこの場にいるあゆを除いた六人もの人間を騙し通すことはできない。
迷えば迷うほど状況は良美に不利に傾く。
できるだけ早く、そして完璧な理論を構築しないといけない。
先ほどのあゆと名雪の会話のやり取りから少しでも多くの情報を拾い出す。

「第一、名雪ちゃんのその怪我はどうしたの? あゆちゃんがやったんじゃないの?」

大石と乙女のことはおいて、確定している事実を名雪に突きつける。
名雪は包帯の巻かれた自分の顔に手をやった。
再び名雪の心が揺れ動いたのを確認して、そのまま良美は畳み掛けるように続けた。

「私が毒を飲ませた? そうね、毒なら私にもできるかもね。 でも現実を見て! 名雪ちゃんを傷つけたのは誰?」
「騙されるな! 佐藤さんは同じ学校の生徒だって平気で殺す人間なんだよ!」 
794代理トウカ◇4JreXf579k:2007/08/06(月) 20:44:13 ID:Fhr6tA5J
名雪は何がなんだか分からなかった。
今も続いている良美と圭一の舌戦はもはや名雪の耳には入っていない。
良美の言うことにも、圭一の言うことにも納得できるものができる。
それ故に何が正しくて何が間違いなのか分からない。
一体何を基準に信じればいいのか。
名雪の心はメトロノームのようにせわしなく揺れている。
名雪の視線もまた名雪の心と同じようにせわしなく辺りをキョロキョロと見回す。
そして名雪は『真実』を見つけた。

「咲耶……ちゃん?」
「え?」

今まで蚊帳の外にいた人物に急に視線が集まることになる。
名雪の目に留まったのは咲耶。
この殺し合いが始まって名雪が初めて出会った人物である千影。
その千影が探していた人物の外見に合致する人物が今まさにこの場にいるのだ。

「咲耶ちゃんだよね?」
「……ええ、そうだけど?」

咲耶は一つの希望を抱いた。
この島で自分の名前を知っている人物は限られている。
厳島貴子を殺したときに第三者に聞かれていたか、愛する姉妹から聞いたかのどちらかしかない。
そして厳島貴子を殺したとき、周りには誰もいなかった。
ならば、答えは一つしかない。

「私、千影ちゃんに会ったよ!」
「本当に! いつ? どこで?」
「千影ちゃんとはこの次の放送の時間に神社で会う約束をしているよ!」

ついに探していた姉妹の情報を得ることに成功した咲耶は、この島に来て初めて心の底から笑うことができた。
795サプライズド・T・アタック(修正版):2007/08/06(月) 22:47:46 ID:Fhr6tA5J
サプライズド・T・アタック(修正版)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1173506458/745-788
796名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 02:50:35 ID:z6wWWqVj
ああ、すいません
編集中にサプライズド・T・アタック(前編)
を二つ作ってしまいました
wiki管理人様、いらっしゃいましたらサプライズド・T・アタック(前編) の方を削除していただけますでしょうか?
(前編)の片方の()が半角になってる方を削除してください
分かりにくいかもしれませんがよろしくお願いします
797名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 02:51:09 ID:z6wWWqVj
誤爆しちゃった
798名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 19:56:09 ID:y0ISZ2Z/
がお
799名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/10(金) 00:16:02 ID:6SwBzP7y
ギャルゲ・ロワイアル 作品投下スレ6
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800名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 01:05:47 ID:le9622Mx

800

801名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/17(金) 16:10:52 ID:pJsi49Bj
     _/   /``       、 ヽ\
     , ´    ′      、 ヽ ヽ,ヘ
.    /     |       ,ト7lヘ、 } ,!リ、|
.   ,イ/  \,.-l  i.  l: / ト,イ゙リ V/ハ
  //      )ヘ. ',  トハ. /jハ /'ー┐
. /      '/ー-', ヽ  \ `¨,,´   _ノ        
 {.    //,/`ー-ゝ(`i丶 _\     ,ハゝ
  \ ,' /\ __    1 i { ____,/い.ヾ,._
.  / ヽ/    ) `ヽw'| ト、 ゝj  r'/ /,ノ } ' ,
 (  {   /   ノ | | _ゝ.,ゝ┴ヽlJ i |  ',   アニメはありません
  ヽ. V /ヽ  /  l |        ヽ l   ',
.  {`ゝ/   ノ /     !|        V_   ;
   ヽY /, '       リ          h.\  ;
   ,>'7{ ̄`\    !     、       、ゝ ヽ,'
  /`,ハ. \__,)   !      ヽ     ヽ} ハ
 `ヽ/ ヘ.    /l:.   i        '、      y′',
  /ハ  \_,/l. l::.  丶.      ヽ  _. ' \ 、
  ` ! l| /  ! ` 丶   ` ‐-  _. -\      ヽヘ
     ヽリ、{   ヽ   ';.  _ ‐ ¨   | \    j }
           〉 _ i:. ´        |  丶   /
           ,./ ´  !::.        j     `¨´
        ,  ' /   /:.         j
     ,. '   /   '           {
   , '     /              ヽ
802名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/17(金) 16:17:06 ID:pJsi49Bj

                    __ _
                 /: : : : : ヾ: : `ヽ
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               l从_i.:.:lャrtァメ/イィチァ!.:}ハ     
              /o ツ!.:.l     ,  /イ"\    
             /ヽ、/ i.:.:ト、 -‐ /:/ヽ/}.     
             {:.  \:::. ヾミ、 `ァ イ/;ツ / ∧      
            l::.. ::. . `k:.  V 'YV"  Y /::::ハ
            l::  __:.___:', |  :{: . . l.::レ'  ̄ ̄l
            〈゚:f'´  __〕>― 、,ィニ二ゝ=―イ     大体つよきすキャラは不遇過ぎる
            {{ヽ_ィ≦ '"´ ̄ ̄ ̄      ..::::〉     私だってもっと活躍したかった
             〉(〃,   _/-―― -  ___ ;イ
            〈//ヽ/r'"´     _,ィ'"´ ヽt=ソ
            /フ7 火-‐‐r― '"´:::::l::   .:::l
 _______ { /l l  ..:::|::    :::::l::   ::::l
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V:::..| l.... :::::::l::    ::::l::    ::::l\
            ヾ、:l .l:::::::::::::',:.    :::l::   :::::l  \
               \ \:::::::::ヽ:    ::l::  ::::::l    \
                ゝ、`ー--ヽ     :::|::  :::::|.    \
                 `ー---‐ゝ==彳==彳       \
803名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/17(金) 16:20:13 ID:pJsi49Bj
           _,.ーヽミヽ、_,.
          __, ‐'´;;;;;;;;      '´;;;`ヽ、
         ,r' ;;;;;;;;;;;;      ;;;;;;;;;;ヾ;;;;ト、
        ノク;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ;;;;;;;;;;;i、
        ノ;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;(;;;;;;;;;;;;;;从;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ
        /;;;;;;;;│;;;;;;;(;;;;,;;;;;;ヘヽ;;;;;;;_;;;;i;;|;;;;;;!
         イ;│;;;;《;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;;ハ从;;;;;;;;i;;;|;;;!
          ! ;;イ;;;; 从(({;;;;/ 二ヾヽヾ;;;;;i;;|;;r
         |{'ト;;;; ゞ!ラ (;|! '´_ヒソ7 ヾ;;|`);;i;;;|
          ヽヾ 、 ,.ヽj     ´ イ;;;ン;;;;i;;;;;|   鉄先輩なんてまだマシな方です
                };;; `      /;;;;;;;i;;;;; |    私なんて鳥に負けたんですよ?
           ソ;;;;ゝ ー'  /;/;;;;ソ;;;;;; |
             │;;; i;;;;;`  イ /;;;; /|{ ;;;;; i
            从;;;;;;/!;;; ノ  |ソ;;/l イゞ; |
           ,.r'´イ|从r{ゝ  /;;;'-! ,}   ` ヾ、
         r'〈ヾヽ人ヽ| {   _ソ { / __,-== "´>、
         | ヽ{` ゞ、ヽ|,/´==レ'"´,.rー'´フ'´ }
         /  } `=r-r-==ニ二ニノ´ /   !
        /  /   k__{       ヽ レ   r、n,|{、
        /   /   /イ |        }{    } ンヒ! ヽ
       /  /   / / |        ノ    |ヾシ| ハ
       ノ  {   ハ   !       /     ヽ、/! {ヾ、、
      /ヒ== =ヽ }    |      /ニニ=-、.___| !ハ}、
      \/´ ̄ヽ〉|    |   ー==7 ̄``-、__,.l i } リ
       /   |' |、  r!__,. -―'´    /     } |
804名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/17(金) 16:23:21 ID:pJsi49Bj
  /                       _''.\
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   /                      ゝ_ヽ`1     ヽ
  ./                 、    -く    ′    ゙ゝ
  ,;l i  .,   ./    ,   i   _ ヘ ,  い..゙ハ          .i
.. / /  ./ ,  ,;!    ‖  ,!  r'';,.N.i .l l. V           .|
. レ.| / 」l ノ ./|! i    、 i'゙l j i i.ヽn . ぃ ! .N,           .ぃ
  | イ ,! !i.l .| ! ! .l .N  |│.ヾ !ヘ ヽヾ  \           N  まぁまぁ二人とも
. |.N .| .!|.| i | iヽ. ll、l.|  .!.| h.ヽヽ .!.;,ヾ  `     ,rー-、. {|   その分カニが無念を晴らしてくれるって
. ||│! |.| l i | /ヽ.lヽ1.  !.l. 〔_>ヾ;;. `+ゝ\'ヽ、    X~ 、゙、.|.|
  | |. !. ||. !.! | b N;ヾ;,  .l  Tン,,タ,,;i`!!!!!!ア ^| ,、 !丿彳 | i
   .レ| | | | ! i_>,iiii;;,,ヽ、 〈^l. !, '"  ゞ‐ノ .`  .|l. | |  ノ丿,/
   ‖..、ヽ| i ヽi` _ゞ-ゝ、,. 'i ヽ!゙        hi  「 ./ /
    i |ヽ `  `i,      ゙ヽヽ ′        .| l  .|''" │
    ヽ ヽ ヘ、'、 i,    i  `゙          j |  .|   .!、
       `ヘl `1ゝ.:、  .<             !.l , l   /i丶
        ` .l. i \         _     ,,:|| i |.i、、ノ .//_>‐ 、__
           l i.  ヽ、 ー―‐‐''''"    / | |i | `! ゙;、ノ/  ゛'''ー.. い;,..__
           !.l 、 |,. \        /   l/l  |   .〉 -;,,、_   、;;\
           .l i;,  ;,.  \    _,, '´   /,'.| .|   .//  `''-、、 `\\ミ;;;;;;;;
            '1i;, ヽ    Tーイ     /  ヽ   /ノ1 1   //   \\ \\_  
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805名無しくん、、、好きです。。。
    ,、-‐''" ̄`'ー、,
   // ,´-'''''''‐-、 `‐、
  /         ヽ、」、lヽ、
 /    ヽ ヽ、    ヽ+l+xyx、
i´   l   ヽ ヽ、_,ゝヽ  ヾfy fy`○、,
{    ヽ ヽx''´,.,ィニ‐ヾヽl`fy,ヽ○、``
'、 l '、',xヽ \ヽ, トノ::)`i`リ i`y!ヾ`    (ボク今にも死にそうなんだけど……)
 l ヽヾ、{fうヾ‐ヾ  `~(つl l リl○、
  ヽ、ヽヽヽ-' 、  ,.、   /l リ  !ヾ
   ヽ`fyl(つ  <ノ , ' !l/リ_____
     ○,、 i`i'r‐-イ  リr,ー、     r=
    '"!`lW'//´‐ ,__/   `‐、 /「
       ,イヽ  l' /__,、-‐'´=彡'ニヽll


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ギャルゲ・ロワイアル作品投下スレ6