白河ことりファンクラブ15学期

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151D.C.I.F.作者 ◆zRMZeyPuLs
#最終話 「Dream〜新しい未来〜」

いつ以来だろうか。この夢を見るのは。
「久しぶり・・・」
その少女は昔とちっとも変わっていない。
「やっぱり姿が変わらないんだな・・・」
純一は14年間、この夢を見ていなかった。その少女は昔は祖母だった。
「さくら・・・夢の中は幸せか?」
通常の感覚の持ち主なら気づかないだろう。しかし、魔法使いの端くれである純一はさくらだと瞬時にわかった。
「ここには苦しみがないや・・・だから楽しいこともない・・・。」
さくらは非常に穏やかな表情であった。
「婆ちゃんはもうそこにいないから・・・お前が出てきたんだろう?」
祖母は純一が桜を枯らした際に花びらとともに消えたらしい。だから今までこの夢は見なかった。
「僕は魔女、自分一人でなんでも出来る。・・・はずだったのにな・・・」
「・・・さくら、お前は今"この世界"に存在するのか?」
しばらくの沈黙。月夜は変わる事無く2人を照らしている。
「今・・・"正しき未来"に・・・」
「そうか。だけどな・・・俺は自分が住んでる世界が、自分の答えが間違ってるとは思ってない!!」
それは静かな怒りからだった。すると、動くことのなかった月は傾き始める。
「えへ♪残念、最後のチャンスかと思ったのに・・・」
しかし、内心納得してるような感情を読み取ることの出来る口調だった。
「お前の世界はここだ・・・戻ってこいよ・・・」
「わかってる・・・お兄ちゃんがこの夢を見るのはもう無いと思う・・・。」
月は沈み、陽の光が差し込んでくる。
「じゃあね・・・また、春に会おう・・・」