1 :
名無しくん、、、好きです。。。:
きっとこのスレも光スキーな誰かが頑張って埋めてくれるはずです!
表スレとは違った楽しみ方が出来ればいいな!
じゃ後宜しく!チャオ!
2 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 13:48:21 ID:XPpsR+Ai
やったー人生初の2ゲットだー…長かった…
3 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 13:49:13 ID:XPpsR+Ai
そして続けざまに3
4 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 13:53:10 ID:XPpsR+Ai
4
1は立て逃げかよw
これからあと2時間レスが付かなかったら光は俺の嫁だな
阻 止
残念光は俺の嫁だ
6 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 15:20:59 ID:j23OMeH1
それも違うな
これからあと30分レスがつかなかったら光は俺の生涯の伴侶だ
8 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 17:47:42 ID:fqdljexy
9 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 17:54:11 ID:ZvHab726
裏スレの次スレ?
じゃあ俺3つ全部使おっと。
即死回避しとくか。
おもしろいからw
11 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 21:39:49 ID:B78M7ORV
キャハハー(^O^)チンコ花火厨オジサンID変えながら自作自演キンモーイ(プゲラッチョ
キャハハー(^O^)チンコ花火厨オジサンID変えながら自作自演キンモーイ(プゲラッチョ
キャハハー(^O^)チンコ花火厨オジサンID変えながら自作自演キンモーイ(プゲラッチョ
キャハハー(^O^)チンコ花火厨オジサンID変えながら自作自演キンモーイ(プゲラッチョ
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キャハハー(^O^)チンコ花火厨オジサンID変えながら自作自演キンモーイ(プゲラッチョ
キャハハー(^O^)
12 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/03(土) 23:39:47 ID:sNC1JkU8
華麗に12ゲト
13 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/04(日) 21:16:57 ID:DlZGj4tk
キャハハー(^O^)チンコ花火厨オジサン自分で十二げとなんてキンモーイ
14 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/04(日) 23:47:32 ID:DsxGhs+C
キャハハー(^O^)チンコ花火厨オジサン自分でチンコ花火厨なんてキンモーイ
15 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/11(日) 18:29:34 ID:Td65jVcI
age
16 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/16(金) 22:59:34 ID:xvPPQpi8
age
他スレより転載
プロローグ
「うれしいなあ……。」
桜が満開の中央公園で、陽ノ下光はまた同じ言葉を繰り返した。
「また会えるなんて……。」
光の頬は、ちょうど舞い散る花びらの色に染まっていた。
うっとりと景色を眺めるその瞳は、とても優しそうに見える。
左目の下に付いている泣きぼくろが少し寂しがりの印象を与えるが、
小さな鼻と口を含めた顔立ちは快活そうで可愛らしい。
いつも前向きでいる。そんな太陽の明るさを滲ませた女の子だった。
「光から聞いてどんな男かと思ってたけど……なんだかパッとしない感じだったわねえ。」
その横で水無月琴子が串団子を片手に言う。腰まで伸びた綺麗な髪と切れ長の目を持つ和風美人。
18 :
名無しくん、、、好きです。。。:2006/06/17(土) 00:55:43 ID:HQdvGTAV
晴れの日曜日、中央公園は家族連れや友達同士で賑わい、遠くを雑誌の撮影隊らしき一団が歩いている。
光と琴子もその風景のひとつとして桜の根元に腰かけ、二人でちょっとした花見をしているところだった。
「ねえ光、彼のどこがそんなに好きなの?」
実物を目にした今、琴子にとってはそれが少なからず疑問だった。
幼い頃に引越していった彼(主人公)と、光は先日のひびきの高校入学式で7年ぶりの再会を果たしたのだ。
「……優しいところ、かな。」
光が目をふせてはにかむ。その瞳は彼のことを話すときのいつもの瞳だ。それを見つけて、
琴子は無駄かなと思いつつさらに訊ねてみる。
「優しいねえ……例えば、どういうふうに?」
「そうだな、人から何か頼まれると断れないっていうところとか。」
「……ただのお人好しじゃない。」
「そんなことないよー。」
光がちょっとふくれて見せたとき、びゅうっと春の強い風が吹いた。
花びらが降る。
「……じゃあ、光はもう陸上やめるの?」
琴子は話題を変えた。
「え、なんで?」
「ほら、言ってたじゃない。中学生の頃。」
「……ああ。」
光が思い出したように枝を見上げる。
――まだ知り合って間もないとき、琴子はあんまり熱心に走る光を見てどうしてそんなに
一生懸命なのかと訊いたことがあった。
『一緒に遊んでるときはね、よく「競走だ!」って言って急に走って行っちゃったんだ。
私はいつも置いてけぼりにされて……それで、そのまま○○○(主人公の名前)君は
引越していっちゃって……だから、そのときの気持ちがあるから陸上を始めたんだって……そう思うんだ。』
あの日も、いつもの眼差しをしてそう語っていた。
今更走ったところでどうにもならないというのに、「それでも走っちゃうんだよ。」
と笑いながら。
「ううん、やめないよ。」
「……どうして?」
「もともと体、動かすの好きだし……それにね!」
光はパッと、うれしくてしょうがないという表情を浮かべた。
「○○○君、陸上部に入るんだって! まだ小さい頃みたいに二人でかけっこだね。
えへへ、うれしいなあ。」
「……ハイハイ……。」
ちょっと胸焼けを感じながら、琴子はにこにこした光の横顔をわれ知らず目を細めて見つめていた。
麗らかな春の陽ざしに桜はふわふわと幸せな色合いをして、そこにいる全ての人を祝福しているように見える。
光の高校生活は、そういう景色で始まった。
#1 修学旅行
「着いたー! 着いたよーっ!」
函館空港の出口に、平均より1オクターブ高い女の子の声が響く。
カラフルなリングや宇宙人らしきキャラクターグッズを身に着けたその女生徒は、
まるで命拾いをしたかのようなほっとした様子を見せている。
子供の頃から少しも変わっていないだろうと思わせる、あどけない天真爛漫な表情だった。
「……でも、これってやっぱり美幸のせいだよね〜……。」
ひびきの高校の女生徒はすっかり茜色になってしまった空を見上げる。
しおりに書かれた予定では、今頃五稜郭公園を回っているはずだった。
「そんなことはありませんよ。」
横から気遣う声がかけられた。
おっとりした雰囲気のその少女は分けた髪の束をあごの下で結ぶという変わったヘアスタイルをしていて、
バッグにカエルのキャラクターらしきぬいぐるみをぶら下げている。
>>22の続き
「でも、飛行機の車輪が下りなくて、この時間まで着陸できなかったんだよ。
これってゼッタイ美幸の不幸のなせるわざだよ〜。」
宇宙人グッズの女の子は応えた。まるで不幸に遭うのが自らの日常であるというようだ。
「でも、こうして着いたのですから。」
「しかも、そのあと燃料漏れが起こって、もうちょっとで墜落するところだったんだよ〜。」
「……まあ、こうして無事なのですから。占いでも大丈夫と出ていたじゃありませんか。」
「あ、そ〜だよね。あのとき美帆ぴょんが言ってくれなかったから、みんなもっとパニックになってたよー。」
「それに、函館の一番の見所は夜景なのですから。楽しみですね。」
「あ、そっか! うん、そーだよね! 一緒に見よーね、美帆ぴょん!」
「はい。」
2人が笑顔で向き合い、友情を確かめ合ったその時――
「うわっ! なんだ!?」
「牛だ! 牛がっ!」
>>23の続き
どこかの車から逃げたらしきホルスタインが蹄の音を立て信じられない速さで走ってくる。
生徒たちがあわてて身を引いていく中、ホルスタインはまるで最初から狙っていたかのように
自らの不幸を自称していた女生徒に激突した。
「寿さんっ!!」
女生徒はぽーん、とビニール人形みたく飛ばされ、さらに、
偶然落下地点にあったマンホールに吸い込まれていく。
ドシーン! という音が、穴からくぐもって聞こえてきた。
「大丈夫!?」
生徒の群から光が飛び出す。
黒い穴から、すっと白い手が伸びる。
そして、ちょうど光が駆けつけたとき女生徒がはい上がってきた。
「ねえ大丈夫!? ケガは!?」
「はにゃ〜……だいじょ〜び、だいじょ〜び……。」
女生徒は目に回しながら答えた。
>>24の続き
「こ、寿さん……。」
「あ、ねえ! 先生と、それと、救急車呼んできてくれないかな!?」
「で、ですか……。」
カエルグッズの少女は戸惑った表情を見せる。
「あの〜……美幸のことならおかまいなく〜。こういうの、慣れてますから〜……。」
「そういう問題じゃないよ! きっとひどいケガ……あれ?」
光は目を疑った。あれだけの惨事に遭ったにもかかわらず、
服が汚れている以外は全く外傷がないのだ。
あっけにとられている光の横で、カエルグッズの少女が声をかけていた。
「……寿さん、やはりこれからは私が前もって1日の出来事を占ったほうが……。」
すると、女生徒はおびえたように目を見開き、
「そんなの聞いたら美幸、部屋から一歩も出られなくなっちゃうよーっ!!」
絶叫した。
>>25の続き
「もうほんとビックリしたよ。」
光はお湯に肩までつかりながら琴子に向かって言った。
2人はホテルの露天風呂に入っていた。白く温かな湯けむりと黒く冷ややかな夜空の空気が
まざりあい、交互に肌に触れ、光は屋外の醍醐味を感じていた。
「あれが噂に聞いてた寿さんだったんだね。」
その行くところ常に不幸がつきまとうというアンラッキーガールの噂は学校中にとどろいていて、
一部では『小公女』なんて言われている。
突如起こった停電で結局函館の夜景を見ることはできなかったのだが、
それが彼女のせいかどうかは光にはわからない。
>>26の続き
「……いい気持ちだね〜琴子。」
光は顔をほころばせながら、ぱしゃりとお湯をすくう。
滴がすうっと腕をすべりおりていき、入ったばかりだというのにもう肌が綺麗になってきた気がした。
「ええ。」
琴子は目を閉じ、くつろいだ表情で応えた。
「……ところで光、明日はどうするの?」
「明日?」
「自由行動でしょ。」
「うん、そうだね。」
「……何もしなくていいの?」
琴子が瞳を開き、静かに向けてくる。
>>27の続き
「何も……って?」
「つまり――」
『なあ、お前たちは明日の自由行動どうするんだ?』
垣根の向こうに、坂城匠のよく通る声が聞こえてきた。男湯に入ってきたらしい。
『どうするって、適当にぶらぶらするんじゃないのか?』
もう少し低い声が答える。おそらく純だろう。
『はあ。同じぶらぶらするのでも相手が男か女かじゃ全然意味が違うだろ。修学旅行といえば、
終わったあとにはたくさんのカップルが生まれているという高校生活最大のチャンス、
まさに実りの秋なんだよ。』
……いつもならここで純が「くだらん」とか言い返すのだが、今回は何故かそれがない。
(そういうことよ)
琴子が声を落として光にささやく。
(誘ったりとかしてみれば?)
(そんな……いきなり言ったら……)
光はうつむきながら、湯の表面にさざ波をたてる。
(案外大丈夫だと思うけど……ま、私は別にどっちでもいいんだけどね)
『馬鹿なこと言ってないで、お前らも早く入れよ』
――!
>>28の続き
主人公の声に、光の胸がとくんと鳴る。
「………。」
隠すように体を抱いて、光は身を縮めた。
垣根があってお互いに見えないのに、裸でいるのが恥ずかしい気持ちになる。
その様子を琴子はやれやれという苦笑いで見ていた。
『そう言う主人公はどうするつもりなんだよ?』
匠の声とともに、ちゃぷん、とお湯につかる音がする。
『どうって、俺は別に……』
『俺見たんだけど、お前最近また光ちゃんと話すようになってるじゃないか。
何かあったのかなあ?』
『い、いいだろ、そんなこと……』
『お前が誘わないんなら、俺がアタックしてみようかなー?』
『な……!』
『あはは! ウソだよ〜ん。あいにく俺はもう予約が入っててね。
それにしても、随分ムキになるなあ。お前やっぱり光ちゃんのこと……』
――!?
『そ、そんな訳ないだろ!』
………。
>>29の続き
視線を落とした光の横で、琴子が垣根に向かって「莫迦」とつぶやく。
『はいはい。お前はそれとして、純はどうなんだ?』
『純はないだろ、そういうの……』
『あれ? なんか顔が赤いぞ純?』
『な、なんでも、ない……』
『あ〜! お前ひょっとして〜……』
『え、まさか……純、そうなのか?』
そこから、急にぼそぼそと声が小さくなって聞き取れなくなる。
(……)
(……)
光と琴子は何故か微動だにしない。
『へー! まさかお前がねえ』
突然、匠が感心するような声を上げた。
『がんばれよ、純! 応援するぞ!』
『……あ、ああ……』
『……そうだ。○○○(主人公)、純のために協力してやれよ』
『え?』
『だからさ……』
また、声が小さくなる。
>>854の続き
(………)
(………聞こえないわね)
琴子がぼそっとつぶやく。
『──というわけだ』
『わけだ、って言われてもな……』
『なんだよ、さっき応援するって言っただろ。純のためにひと肌脱いでやれよ』
『……そうだな。……よし。純、まかせとけ!』
『……す、すまん○○○』
『よーし、決まり! じゃあ餞別として、俺の持ってるデータを提供してやるよ。
まずは光ちゃんから』
(え……?)
『陽ノ下光、誕生日は……まあ、この辺はお前も知ってるよな。身長157センチ、
体重44キロ。スリーサイズは上は82・57・84』
──!!光は硬直した。
かあぁっと顔に血が集まる。匠の言った数字はとても正確だった。
>>31の続き
『ははは』
匠のからかうような笑い声が聞こえる。
(………)
○○○はどんな反応をしているんだろう。どう思ったんだろう。
どうしようもなく恥ずかしい方で、そんなことが気になってくる。
光は自分の体をちらりと見てみた。
胸が小さいだろうか。去年測ったときからここだけサイズが変わっていないことに、
実はちょっと胸を痛めていた。やっぱり、もっとグラマーなほうが好みなのだろうか。
「まったく……!」
(こ、琴子やめてっ!)
怒鳴ろうとしていた琴子を、光はあわてて止めた。聞いているなんて知られたら、
それこそ顔も見せられない。
『……お前、どこでそんな情報仕入れるんだ?』
主人公の、どこかうしろめたそうな声がする。
>>32の続き
『へへー、それは企業秘密。えーと、じゃあ次は水無月さんだな』
「──!?」
琴子が硬直する。
『水無月琴子、12月2日生まれのAB型。好きなものは日本茶と和菓子、侘び寂び風流。
嫌いなものは辛い食べ物、コーヒー、西洋文化、無意味な横文字。身長166センチ、
体重47キロ。スリーサイズは上から86・58・84』
すらすらとそらんじる匠の声が響く中、琴子は頬を赤らめながら微動だにしない。
(……こ、琴子……?)
『あはは、純なやつー』
匠の笑い声。
「……ゆ、ゆ、ゆるせないわっ!!」
(琴子やめてーっ!!)
垣根を蹴倒して乗り込んでいきそうな琴子を、光は必死に引き止めるのだった。
『けっこうグラマーだよな』
>>33の続き
──はあ。
のぼせてちょっとふらふらしながら、光はホテルが用意していた藍染めの浴衣に着替えた。
パジャマも持ってきていたのだが、折角なのだからちょっと気分に浸りたい。
「じゃあ光、私ちょっと家に電話入れてくるわね。」
そう言って、琴子がひと足先に更衣室を出ていく。光もしばらくして、
鏡の前で着付けをチェックしたあと外に出た。
赤いカーペットが敷かれた通路は反対側が一面ガラス張りになっていて、
その向こうに日本式の庭園が広がっている。光はなんとなくそれを見ながら部屋へと歩いていた。
「……あ、光。ちょうどよかった。」
声に振り向くと、そこには同じ浴衣姿の主人公が立っていた。
「あ、な、何?」
訊きながら光はさっきの露天風呂でのことを思い出して、
また頬に血が集まっていくのを感じていた。
>>34の続き
──だ、大丈夫だよね。湯上がりのせいだって思ってくれてるよね。
そう思いつつ光は、頬にぽんぽんと手をあててみたりする。
「実はちょっと話したいことがあるんだけど……今時間あるかな?」
「うん、いいよ。何?」
「……場所、変えないか?」
言って、主人公は周りを気にする仕草をした。
「……別に、かまわないよ。」
光がやや緊張して応えると、主人公は「じゃあ。」と背を向ける。
そして2人は通路を抜け、庭園へと出た。
そのとたん、湯上がりにはちょうど涼しい風が吹いてくる。
夕闇の中で庭木は影絵のようにあって、灯籠や飛び石が青白く浮かび上がっている。
小さな堀に満月には少し足りない月が映っていた。
>>35の続き
「それで、どうしたの?」
光が訊ねると、主人公はゆっくり振り向く。
浴衣を着たその姿がなんだかいつもより凛々しく見えて、光はちょっと、どきりとした。
「……明日さ、自由行動だろ?」
「あ、うん、そうだよね。」
「それでさ……。」
言ってから、主人公は頭をかく。
「……一緒に、回ってほしいんだ。」
──え?
「あ……いや、だめならその、しょうがないんだけど……。」
「そんなことないよ!」
光は大急ぎで言った。
「そんなことないよ、一緒に回ろ。」
「……いいか?」
「もちろんOKだよ、嬉しいなあ。」
──ホントに、嬉しいなあ……。
光はにこにこと、自分の気持ちを正直に顔に出してしまう。
>>36の続き
主人公は、
「よかった。それで頼みたいことがあるんだけど。」
「? 頼みたいこと?」
「ああ。こっちが本題なんだけど……実は、水無月さんを一緒に誘ってほしいんだ。」
「え……?」
光は目を見開いたまま固まった。
「琴子を……?」
「ああ。頼む!」
主人公が手を合わせてくる。
「………。」
──私を誘ったのは、琴子を連れ出してほしいから……?
そう思ったとき、胸がきゅうと痛くなる。
「……○○○君は……。」
「え?」
「ううん! ……なんでもないよ。」
──○○○君は、琴子のこと……。
そのとき、光は夜の空気が肌寒くなった気がした。
>>37の続き
「……いいよ。ちゃんと誘うね。」
「ホントか? よかった、恩に着るよ。」
そう言う主人公の顔を、光はまっすぐ見られなかった。
「……あのさ、琴子はちゃんと誘うから……私は、一緒じゃなくていいんじゃないかな?」
すると、主人公はこめかみの毛を触った。
「いや、それだとちょっと……困るんだ。」
「気にしなくていいよ! 大丈夫だって、上手く説得するからさ……。」
その場にいたら、自分はきっと耐え切れなくなるだろう。
「いや、やっぱりここはダブルデートの形を取ったほうがいいと思うんだ。」
「……ダブルデート?」
「ああ。純をいきなり水無月さんと2人きりにするのはまずいと思うからさ。」
「………。」
光は主人公を見返す。
そして、明るい表情を取り戻した。
>>38の続き
──そういうことかあ……。
「純君って、琴子のこと好きだったんだね? あのとき話してたのはそれだったんだ。」
「……あのとき?」
「ううん、何でもない! こっちの話!!」
「匠はアイデアなんだけど、俺も実行委員のときとか、あいつに気を遣わせちゃったからさ、
何とかしてやりたいなって思うんだ。じゃあ悪いけど、頼むな。」
「了解、了解!」
光は額の横に手を翳した。そして、えへへと笑う。
「君ってさ、やっぱり優しいよね。」
「そんなことないよ。……これは俺にとっても……。」
「何?」
「いや、何でもないよ! ……じゃ、よろしくな。」
「うん!」
光はこくりとうなずいた。
>>39の続き
光たちの頭上に、鐘の音が響く。
「これがあの時計台かあ! お洒落な建物だよね〜!」
光は大きな声で感心してみせた。
「そうだよなー!」
主人公がそれに同調する。
「ね、琴子っ?」
「な、純っ?」
光と主人公は、同時に自らの友人を振り返った。
「まあ、そうかもね。」
「あ、ああ……。」
隣り合う琴子と純がそれに応えた。
それっきり、しんとなる。
朱色の屋根をした札幌の時計台は、欧風の建築で風情であったが、
実際そこまで大げさに感動するほどのものではない。あるとすれば、
TVや写真で見ていたものがこうして目の前にあるといった感覚だけだ。
琴子がさっきから、光に何かを促す視線を送ってくる。光はそれを見ないようにして、
かわりに主人公とアイコンタクトをとった。──移動。
>>40の続き
「じ、じゃあ次はどこに行こっか?」
光が言ったとき、琴子が「なんですって」という表情をする。
光はやはりそこから目をそらし、ガイドブックに視線を落とした。
その向こうでは主人公が、立ち尽くしたといった感の純に何ごとか囁いている。
「そうだ、羊ヶ丘! クラーク博士を見に行こうよ!」
「そうだな!」
「悪いけど、外国人に興味は無いわ。」
琴子が強い口調で言う。
「ここからは二組に分かれましょ。穂刈君、私とでいいかしら?」
「えっ!?」
純の体がびくんと震える。
「いいわよね?」
「こ、琴子っ、折角なんだからもうちょっとみんなでいようよ! ねっ?」
「……光、ちょっと。」
琴子は光を呼び、「失礼」と、主人公たちから少し距離をとった。
>>41の続き
(光、いい加減覚悟を決めたらどうなの?)
琴子がもどかしげに言う。昨夜光が持ちかけたとき、
琴子は「いきなり誘う勇気がないから、私をダシに使いたいのね。」と言って引き受けた。
光もあえて、その誤解を解かず今に至っている。
(だって、まだ早いよ……)
そう言い返しながら、光は主人公たちのほうを見る。主人公に肩を叩かれながら、
純は鉄柱のようにびくともしない。
すぐ2人きりにするのはやばいと思うんだ。
朝、待ち合わせたロビーで主人公はそう言ってきた。その肩越しに見える純は今と全く同じ様子で、
上手く場をほぐす必要がありそうだった。
(だからもうちょっとつきあって! お願い琴子!)
(……しょうがないわねえ)
琴子は言葉通りの重い溜め息をついた。
>>42の続き
ちょっと休憩しようということで、光たちはショッピングモールのフーズエリアにいた。
「……?」
琴子が困惑した表情で周りを見ている。
円いテーブルを囲んだ4人は、全員、緑茶を飲んでいた。
「……どうして?」
「だって琴子、コーヒーとか嫌いでしょ。」
「そうだけど、それにしたって……。」
「あ、そうそう! 水無月さんって和菓子も好きだって聞いたんだけど……匠に。
でさ、中でも1番って何かな?」
訊ねた主人公に、琴子は目を返す。
「はあ? なんであなたが私のことを聞いた──」
「い、いいんじゃない琴子! 私も知りたいな〜!」
光が援護射撃をすると、琴子は紙コップを少し揺らしてみせる。
「……そうねえ、強いて挙げるならやっぱり上生菓子の類かしら。」
「上生菓子? なにそれ琴子?」
「ほら、職人が色つきの餡などを使って花の形を模したりした一口大のあれよ。」
「ああ。」
「やっぱり茶席のお菓子だし、今の季節なら公孫樹[いちょう]、月夜、秋桜[コスモス]……
そんな名前が冠せられてそれぞれの店から独自のものが出されるわ。
職人の技と感性の粋でもあり、何より季節の風景をお菓子に仕立てるのは恐らく我が国だけよ。
日本人の細やかな手と心が表れているひとつの好例だと思うわ。」
琴子はうっとりとした表情で言ったあと、お茶をすする。
>>43の続き
「へ〜、そうなんだあ。」
「だってさ純! ほら、どう思う!?」
「あ、ああ……す、すごくいいと思う。」
純は琴子をやたらまっすぐ見つめてしまって言う。
「あ、ありがとう……。」
「ねえねえ! じゃあ穂刈君の好きなものって何かな?」
光がお見合いの席の保護者のような反射を見せる。
「え? お、俺は……」
「ほら、純!」
「あ、その……。」
純はうつむいてどぎまぎしたあげく、
「……お米、かな。」
「………。」
「……米か……。」
随分とコメントしにくいものを言った。
>>44の続き
「とてもいいと思うわ。」
「えっ!?」
光と主人公が同時に琴子を見る。
「日本人はやっぱり米よ。パン食なんて邪道だわ。だいたいあんなもの、
熱量ばかり高くて腹持ちも悪いし。」
「ああ、そうなんだ。お米じゃないとどうも力が入らなくて。」
「そうよねえ。」
琴子と純がうんうんとうなづき合う。
──会話が弾んでる。
光は話を続ける2人の様子を眺めていた。
「──へぇ。穂刈君の家って花屋さんなの。」
琴子が目を見張る。
「あ、ああ……。」
純は照れくさそうにうなずいた。
光は「当たりが出た!」という顔で琴子に振り向く。
>>875の続き
「琴子、植物とか好きだから興味あるよね!」
「そうね。」
「ねえねえ穂刈君、お花屋さんの仕事ってどんな感じなのかな? 教えてよ!」
「え、でも、そんな面白い話じゃ……。」
「それでもいいわよ。聞いてみたいわ。」
琴子が言うと、純は口をもごもごさせながら話し始める。
「え、えーと、まず花を仕入れて、そのあと水揚げって言って長持ちするように処理して……
うちの場合は、それを殆ど花束とかアレンジにするんだ。」
「あれんじ……?」
「あ、ごめん。生け花って言えばいいかな。おふくろがその教室も開いててさ。
……俺も、時々店で作るのを手伝ったりする。」
「え、お前がそんなことしてるんだ?」
主人公が驚いた顔をする。
>>46の続き
「ま、まあな……。」
「へえ〜! 男の子がそういうことするのって、なんかいいな〜。ね、どういうふうにしてるの?」
「一応、おふくろが決めた基本の形があるんだけどさ……難しいんだ。花はひとつひとつ形が違うし、
時期によっては色だって濃淡が出る。その中でいかに量とか配置を加減して調和させていくか、
それぞれの花を一番らしい表情にしてやれるかって……。」
「華道に通ずるものがあるわね。」
琴子が興味深げに言う。
「そ、そうなんだ。おふくろ、元はそっちをやっててさ。
基本的には同じだって……俺も、やってるときは剣道とは違う集中ができて、
心が落ち着くよ。」
「へえ。」
「それに、やっぱり綺麗なものができると、ああ綺麗だなってうれしくなるんだ。
花もいいなってさ。」
「そうなの。それで……?」
聞き入る琴子に純はたどたどしくはあっても好きなことを語っているときの独特の熱意で
言葉を紡いでいく。そんな純を、光はかっこいいと思った。
>>47の続き
「一番好きな花って何?」
「花じゃないけど……ソテツ。」
「ソテツってあの、山とかにある針業が八方に広がったあれよね?」
「ああ。でも俺が育ててるのは鉢植えで、まだすごく小さいんだ。
ソテツってすごく生長が遅くて、それが自分みたいに思えて……なんか愛着が湧くんだ。」
そう言ったとき、純の眉間にいつもある縦じわが消えて、とてもいい顔になる。
それからも、琴子と純による和やかな会話は続いたのだった。
「……じゃあ、そろそろ出ましょうか。」
一段落としたとき琴子が言った。そして、光に耳打ちする。
(光、もういいでしょ?)
訊かれて、光は主人公と目を合わせた。
もう大丈夫だろう──。
そのとき、琴子が純を見て言った。
>>48の続き
「ねえ穂刈君、この近くに大学付属の植物園があるそうなんだけれど、行ってみないかしら?
開拓前の姿が残っている貴重な場所だそうよ。」
「え! あ……。」
「光たちはさっき言ってた外国人に会いに行くといいわ。」
主人公に肘でこづかれると、純は「すまん」と言って琴子のほうへ歩み寄る。
「あ、ああ行こう、水無月さん。」
「ええ、では、私たちはここで。」
琴子は主人公に向かって言ったあと、光にまた小声で囁いた。
(○○○を抱けとは言わないけれど、頑張りなさい)
(うん)
うなずいた光に微笑みを残し、琴子は純と共に歩いていった。
「……純の奴、上手くいきそうだな。」
「そうだね。」
応えながら、光は遠ざかっていく並んだ背中を見ている。
話しているそばから、2人はとても合いそうに思えた。
>>49の続き
「……さて、と。」
主人公が言ったとき、光はなんだか風通しがよくなった気がして、
2人きりになったのだということを実感させられた。
「えーと、これでやってもらうことは終わったんだけど……光はどうする?」
今度は、私の番だよね。
「……やっぱり、ここで別れ──」
「あ、あのさ折角だし一緒に観光しようよ!」
「そ、そうか? ……そうだな。」
その瞬間、光は気づかれないようほっと息をついた。
「えーと、じゃあどうする?」
「○○○君は行きたいところとか、あるのかな?」
「俺? ……俺は別に。」
「じゃあさ、私の行きたいところでいいかな?」
「ああ、いいよ。どこ?」
「小樽!」
「……なるほど。」
光の答えに、主人公はにやりと笑う。
「えへへ、そういうこと。」
そして2人は、一路硝子の街を目指した。
>>50の続き
さざ波の形に敷かれた石畳の上を、人力車のタイヤが通り過ぎていく。
「人力車なんて初めてみたなあ。」
光はつぶやきながら、運河に沿って走っていく黒い影を目で追う。
「えーと、『この運河の水運によって小樽は貿易で栄え、かつては“日本のウォール街”
とまで呼ばれていた』か。」
主人公が手元のガイドブックに目を通している。
「ベネチアのイメージなんだってさ。」
「ベネチアかあ。そう聞くと、本場のベネチアもこんな感じなのかなあって気がしてくるね。」
そんなやりとりをしつつ、二人は架けられた橋を渡っていく。
>>51の続き
──初めてなんだよね……。
光はこの過ぎていく瞬間を、その大切さを、心の中でとらえていた。
主人公と話をしながら街を歩く──再会してから、これが初めてのことだった。
主人公の背は見上げるほどに高くなり、その肩は広い。
そして、歩く速さを自分にさりげなく合わせてくれる。
自分もあの頃と同じようにふるまいながら、今はこんなに胸が痛い。
「光、ガラス館ってあそこじゃないのか?」
「あ、うん、そうだね!」
……8年の時が過ぎたのだ。
>>52の続き
「うわあ〜……。」
そう吐息をもらしながら、光は瞳を輝かせている。
木造の構内は倉庫だった由来を彷彿とさせる骨太のたたずまいをしていて、
至る所に下げられたガス灯のあかりが周囲を飴色に照らしている。
その空間にずらりと展示されたガラスは、自らの持つ透きとおったひかりを淡々と投げかけていた。
「カフェがあるのかな? コーヒーの匂いがする。」
感激する光の後ろで、主人公が全く別次元のことを言いながらあたりを見回している。
館内は光たちの他にも観光客やカップルたちが大勢いて、にぎわっていた。
「もう、コーヒーじゃないでしょ〜。ほら、○○○君もこっち見てよ!
グラスがずらっと並んできらきらしててさあ、スッゴク綺麗だよね!」
「なんか、クリスマスって感じがするな。」
「クリスマス?」
「ほら、夜にキッチンでキャンドル灯してさ、シャンパンの横でひかってるっていう……。」
「あ、そうだね、そんな感じだね。」
言ってから、光はそれが全て自分への贈り物なんだというようなうれしそうな顔をして周りを見る。
>>53の続き
「目移りしちゃうなあ〜。なんか、どれも欲しいって気がしてくるよ。」
「ははは。まあ、そういうわけにはいかないから、じっくり選んで決めないとな。
俺は適当に見てるから、光もゆっくり探せばいいよ。」
「うん!」
うなずいてから、光は身を眺めて並んだガラス製品をひとつひとつ見ていった。
──あれ? なんだろ……。
光はふと思った。何か憶えがある。こういうことがあった気がする。
「ふーん。」
後ろで、別の何かを見ているらしい主人公の声がした。
──これもだ。
そして空気を震わせている大勢の人のざわめき……。
「………。」
──なんだったっけ……?
不思議に思いつつも、光はとりあえず今は買い物に集中することにした。
グラス、皿、スタンド……見ていくうち、
光は自然と自分が好きな動物の置物が集まったスペースへ向かっていく。
>>54の続き
「あ……。」
あまりにいいと思ったので、光はつい声を出してしまった。
それはガラスで作られた鶴だった。休んでいる途中ふっと首を下ろした仕草をしたその彫刻は、
和製というか、光が持っているものの中にはない雰囲気をしている。
何よりもぴんと一本で立った足が今にも折れそうで、
そこからガラスの繊細さと透明感がたまらなく伝わってきた。
そして光は置物からゆっくり視線を下ろし……そこについた値札を見て「ああ」と、
納得の混じった溜め息をもらす。
光は無駄と知りつつ財布の中身を確認し、速やかにしまった。
「……あ〜あ。」
そんなつぶやきをもらし、光は名残惜しそうに鶴の置物を触る。そのとき──
>>55の続き
「何見てるの?」
『何見てるの?』
──!?
背後からの主人公の声が、光の頭の中で不意に幼い頃のそれと重なった。
「あ、えっと、これいいなって見てたんだ。」
『ね、これかわいい〜』
自分の幼い言葉もよみがえってくる。
「…………。」
──ああ、そうだ……。
光は思い出した。昔、同じようなことがあったのだ。
主人公が引っ越す間際に神社であったお祭り。
その露店で自分は広げられたおもちゃの飾りに見とれ、中でもガラスの指輪が欲しくなった。
「この鶴なんだけどさ。でもやっぱり、いいものはそれなりにするね〜。」
けれどお菓子ひとつ買うお金しか持っていなかった自分には、ただ子供らしく、
できるだけ長い時間それを手放さないでいることしかできないと思っていた。
そしたら──
>>56の続き
「……俺が買おうか?」
『よしっ、僕が買ってあげる!』
「え……。」
主人公がそれを買ってくれたのだ。お小遣いを持ってきたから大丈夫だと言って。
その殆ど全部はたいて。
そのガラスの指輪は今でもタンスの上に、いつでも見える場所にある。
「それって多分ここでしか売ってないんだろ? 大丈夫、今けっこう余裕あるから。」
そういう主人公はあの日と同じ笑顔をしていた。
ただ、今の光にはその「大丈夫」という言葉の裏にある優しい嘘を透かして見ることができる。
>>57の続き
「いいよ。」
「でも……。」
「いいの。」
光は、ガラスの鶴をそっと元の棚に戻した。
「そうか……。まあ、あれだ。これだけ広いんだから、もうちょっと安くていいやつが見つかるさ。」
「ううん、それもいいんだ。ねえ、もう出ようよ。」
「え?」
「ほら、行こっ。」
そう言って光は背を向けて歩き出した。
外に出た直後、主人公が不安げに訊いてくる。
「そんなんじゃないよ!」
「じゃあ、なんで……?」
すると、光はふんわりと、普段見せないやわらかな感じの微笑みをした。
>>58の続き
「何かが欲しい、何かが足りないっていう気分じゃなくなったんだ。
……君からもらった大切な物のこと、思い出したから。」
「俺から……?」
「うん。」
「……何あげたっけ?」
「内緒だよっ。」
光は、さわやかな笑みに戻って言う。そのとき、
「……光がそんなに大切にするような物、俺があげられたとは思えないな。」
主人公が目をふらせながらつぶやいた。
最初冗談と思って光は茶化そうとしたが、主人公の表情があまりに真剣なことに気づいてやめる。
そして、
「君がそうじゃないって思ってても、私にとっては大切な物になったんだよ。」
と言った。
>>59の続き
「そんなもんかな……。」
「そうだよ。すごいとかすごくないとか、そういうことって自分だけじゃ決められないと思うな。」
「……でも……。」
「君ってなんか自分のこと過小評価してる気がするなあ。もっと自信持たなきゃダメだよ!」
主人公がふっと視線を上げて光を見る。
「……自信、か……。」
「そう!君がくれた物は私にとってすごく大事な物になったんだから。
それはぜったい間違いないんだからね!」
「……そうか。」
「そうだよ。」
「………。」
主人公は黙っていたが、どうやら納得してくれたらしいと光は思った。
──いつか、思い出してくれるよね。
そんな願いを抱きながら、光は主人公とともに小樽の街を後にした。