>>589 あの娘は…。
【??】「………」
見覚えは無かった。
だが、腰まではあるだろうか…ストレートで、キラキラ綺麗に光る銀髪。
とても色白で、西洋風の人形のように整った端正な顔立ち。
購買の前に佇む彼女はとても目立って見えた。
下級生だろうか…あんな美人がいたら気づかないはずがないんだけどな。
【??】「………」
人気の少ない購買の前、何か欲しい物でもあるんだろうか?
1人、じっとカウンターの方を見つめている。
>>591 【??】「……?」
【創太】「あ…」
目が合ってしまう。
まずい、見ていたのを気づかれたかな。
【??】「………」
彼女はくるりと振り返ると、スタスタと廊下の方に向かって歩いて行ってしまった。
(悪いことしちゃったかな?)
知らない人にじっと見られるなんて気分の良いものではないだろう。何か探していたみたいだし、邪魔をしてしまったな。
【創太】「…あ、時間無いんだった」
慌てて購買で売れ残りのパンを買うと、それを口に含みながら2ーCに向かって走った。
ちなみにパンは辛子マヨネーズ納豆パンなるもので、激マズだった。
創太(なんであんなパン置いてるんだ…)
2―Cに入ろうとしたところであることに気付く。
創太「体操服…ロッカーから出してねぇ」
しかたなくロッカーのところへ行き、体操服を出して戻ろうとしたとき、伊藤とすれ違った。
恵里香「港崎くん、さっきは大丈夫だった?」
創太「いつものことだ。気にするな」
恵里香「怪我とかしてないの?」
創太「体は丈夫なほうだからな。誰かのおかげで…」
そう、輝美のおかげでな。と本人に言ったらどうなることか。考えただけでも恐ろしい。
恵里香「くす、港崎くんてホントに暁さんと仲いいよね」
創太「あれが仲いいと言えるのか? むしろ天敵ぐらいに思ってるんだが…」
恵里香「うん、気の知れてる関係って感じだよ」
創太「そうか、そう見えるのか…」
端から見るとそんな風に見られてると思うと、なぜか気が滅入った気分になった。
恵里香「…羨ましいぐらい」
創太「ん、何か言ったか?」
恵里香「うぅん、なんでもないよ! それより、急がないと間に合わないんじゃない?」
創太「うぉ、やば! またあとでな!」
恵里香「うん」
急いで2―Cに駆け込む。
が、一つ思い出して教室から顔を出して声を上げる。
創太「伊藤! ノート、サンキュな!」
恵里香「あ…うん!」
>>593 ―――ザッザッザッ
(注:出来たら効果音のみで)
【慎二】「なぁ〜創太〜」
―――ザッザッザッ
【創太】「……何だ?」
―――ザッザッザッ
【慎二】「何で男子だけマラソンなんだろうな〜?」
―――ザッザッザッ
【創太】「……知るか」
―――ザッザッザッ
【慎二】「えらく機嫌悪いな?」
―――ザッザッザッ
【創太】「当たり前だ」
―――ザッザッザッ
【慎二】「ははっ、それにしても大分遅いな〜。体力落ちたか?」
―――ザッザッザッ
【創太】「…勝負するか?」
―――ザッザッザッ
【慎二】「お、じゃあ帰りにジュース代でどうだ?」
―――ザッザッザッ
【「2本な」】
【「やっぱ、止める」】
【やっぱやめる】
いつもなら負けない自信はあるが、ちゃんと食べてないから全力で走ると倒れそうだ。
創太「やっぱやめた」
慎二「どうした? 怖気づいたのか?」
創太「そんなんじゃねぇよ。バカらしくなっただけだ。それに、あまり目立ちたくはない」
そう言って、後ろからついてくる体育教師へと目を向ける。
慎二「あぁ、テツか。お前も大変だな」
テツとは体育教師・黒澤鉄次郎のあだ名であり、テツは柔道部の顧問でもある。
なぜ目立ちたくないかというと、俺がテツに目を付けられているからだった。
目を付けられているとは言っても、悪いことをしたわけではない。いや、ある意味悪いことかもしれないのだが…。
その理由とは、
一年の頃、アキ姉が弁当を届けにきたことがあり、当然のごとく抱きつこうとしてきたので、
そのまま向かってくる勢いを借りて、見事な背負い投げを決めてしまった。
そこまでは良かった(?)のだが、誤算は弁当がぐちゃぐちゃになってしまったことと、テツに投げるところを目撃されていたことだった。
それからテツは事あるごとに俺を柔道部に引き込もうとしてくるようになった。
というわけだ。まったくもって迷惑な話だ。
創太「というわけで、このまま他の奴らと同じペースで走るぞ」
慎二「まぁ、どっちでもいいけどな」
結局そのまま終わるまで同じペースで走った。
>>595 【創太】「だぁっ、疲れたっ!!!」
終業のベルが鳴り、やっとマラソン地獄から解放される。
【慎二】「あいつ、絶対Sだぜ…」
授業も終わり、ヘバりながら帰っていく俺たちを見ながら鉄次郎が1人高笑いをしていた。
【創太】「あいつは何で、汗一つかいてないんだ…」
毎度ながら、体育後の奴は返って生き生きしているように見えた。
【慎二】「人間じゃないって噂本当かもな…」
その後、2人無言のまま、ロッカーに向かった。
キ〜ン…コ〜ン…カ〜ン…コ〜ン…
【友】「それではこれで帰りのHRを終わります。暁さんは連絡事項があるので、この後私と一緒に職員室まできてね」
友先生の言葉を合図に教室内が賑やかになる。
帰り支度を始める者、仲間同士部活に行く者、様々だ。
(この緊張感が抜ける瞬間っていいよな)
【慎二】「お〜い、創太帰ろうぜ」
慎二がそう言いながら俺の机まで寄ってくる。お互い用事が無いときは、だいたい一緒に帰ってるからだ。たまに寄り道したりもするけどな。
輝美の方を見ると、教室から出ていくところだった。
さて…どうしようか?
【輝美んとこ覗いて見ようぜ?】
【校内をブラつく】
【駅前まで遊びに行く】
【鈴の教室に行ってみるか】
【輝美んとこ覗いてみようぜ】
そういえば、今日は生徒会最初の集まりがあるんだったな。
ちなみに生徒会は昨日発表と就任式があったのだ。
創太「よし、生徒会にでも顔出してみるか。輝美の応援団長として。お前、団長補佐な」
慎二「誰が団長補佐だ! お前は腹据えるとむちゃくちゃやるからな…行かねぇぞ」
創太「今回は見に行くだけだ。心配ない」
慎二「どうだか…」
創太「と言いつつも付き合う慎二であった」
慎二「勝手なナレーション入れるな!」
創太「で、来るんだろ?」
慎二「はぁ、断るほうが大変そうだ。行ってやるよ」
なんだかんだ言っても結局いい友達だった。
慎二「ただ! お前が変なことやりだしたら逃げるからな」
創太「あぁ、慎二がやるといいさ」
慎二「やらねぇ…」
他愛ないやりとりをしながら教室を出ていこうとするが、あることを思い出す。
創太「悪い、すぐに追い付くから先行っててくれ」
慎二「忘れ物か?」
創太「そんなもんだ」
そう言って慎二と一度別れる。そして、自分の席…の隣まで行き、一人の女の子に声をかける。
創太「よかった。まだ残ってたか」
恵里香「港崎くん?」
創太「伊藤。ノート明日でもいいか?」
恵里香「うん、大丈夫かな」
創太「そうか。今写してもいいんだが、待ってるの嫌だろ?」
恵里香「別に嫌じゃないけど、港崎くんは? 用事ないの?」
創太「特にはないな」
慎二と約束(?)があるが、問題ないだろう。
恵里香「私はどっちでもいいよ」
じゃあ、
【今から写す】
【やっぱり明日にしてもらう】
あぼーん