停滞しているようなのでネタ投下して行きます。
初SSなので大目に見て下さい。
ではどうぞ。
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「ちょっとたかちゃん!もう見たこの記事?」
珍しく先に部室に着いたので置いてあったミステリな雑誌(月刊む〜む〜)で時間を潰していたのだが、
けたたましく現れた待ち人の声で現実に引き戻された。
「どうしたの笹森さん、そんな慌てて。宇宙人とビッグフットの朝帰り2ショット写真でも見付けた?」
「あ、それもちょっと魅力的かも。ってそうじゃなくて、これなんよ!」
ズビッと目の前に紙を突き出される。どこかのサイトをプリントアウトした物のようだ。
どうせまたろくでもない物を用意して来たんじゃないのかと思いつつも、
無視したらしたでやいのやいの五月蝿いので仕方なく目を通してみる。
「えーと、何だって…。」
英国防省、空飛ぶ円盤は存在しないと研究報告書で結論??
ttp://www.zakzak.co.jp/top/2006_05/t2006050805.html 「ねえ、どう思うたかちゃん。わざわざイギリス国防省がUFOの存在を否定するなんて、怪しいと思わない?
これは国家機密的何かの隠蔽工作に違いないんよ!」
「国家機密的何かって言われても…。大体隠蔽工作ならこんな大っぴらにする方が怪しまれるんじゃないの?
それこそ笹森さんみたいな人達が居る団体とかに…」
と言っているうちに想像(妄想?)の虫が変な羽を広げ始めた。
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花梨A「イギリスがUFO、ううん地球外生命体に関して何らかの情報を隠しているのはほぼ間違いないんよ!」
花梨B「そうなんよ、民衆の知る権利をないがしろにするなんて紳士の国が聞いて呆れるんよ」
花梨C「ミステリ研究会英国支部の私達としては、ここで負けるわけにはいかないんだからっ」
花梨D「貴明会員!ありったけの食料(タマゴサンドしかないけど)を用意して!これから英政府に対して持久戦だよ!」
花梨A「絶対に情報公開させてやるんだからぁっ!」
花梨B「もうこっちは実力行使だって辞さない覚悟なんよ。並み居る敵はこのタマゴ爆弾
(自作、作製方法はゆで卵をレンジでチン、良い子は真似しないでね)で!」
花梨C「ほら何してるの、ミステリ研英国支部は貴明会員の双肩にかかってるんだよ!」
花梨D「私の予定だと貴明会員は政府との交渉、その裏で密かに行われる政府からの刺客との戦闘、食料確保と
八面六臂の大活躍をするんだから。そして最後は愛する私達を助けるために…うぅ」
花梨ABCD「…たかちゃんっ、可哀想」
「何で俺ばっかそんな目に遭うんだよ!そもそも何だよこの笹森さんだらけのアヤシゲな集会は!
一人居れば十分って、うわ何で押し倒ちょっ泣きながら服脱がす意味がわかんな…アッー!」
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「…ちょっと、ねえ、たかちゃん?たかちゃん!」ユサユサ
「ッヒイィ!!」
花梨に揺さぶられて我に返る。
「ヒイィって何よヒイィって!こんな可愛い娘目の前にしてそんな声あげるなんて。
何か言いかけて止まっちゃったから心配して声掛けてるのに、全然反応しないんだもん」
本当に心配してくれていたのか、少し困った顔だった花梨だが、
俺の悲鳴が気に食わなかったらしくすぐに表情を変えプリプリ怒り出した。
「え?あ?あ、そう、ごめん、何か今見てはいけない物が見えたって言うか思い出したくないって言うか」
「?変なたかちゃん、それより話を戻すけど、これ、やっぱり私としては気になるんよ…」
俺のしどろもどろな言葉に訝しげな様子の花梨だったが、特に追求せず本題に戻ろうとする。
さすがミステリ研会長。ミステリに対する飽くなき情熱。
でも俺はまださっきのダメージから回復出来ていなかったので適当に受け流す。
「あー。気にしなくていいんじゃない」
「たかちゃん!」
バン!と机を叩く花梨。ついでに身を乗り出して机に乗っかり俺の顔に手を伸ばしてくる。
「何でいーっつもそんなやる気ないの!もう名誉会員の称号は剥奪なんよ、たかちゃんは一生会長専用奴隷に決定!」
「ひあ!ほんはほほひはへれも、らひらいひふへいよはいいんにらっれはろは
(いや!そんな事言われても、大体いつ名誉会員になってたのさ)」
頬の肉をぐにんぐにん引っ張られながらも口答えをする俺。
きつくやられていないので痛くは無いのだが、その、ちょっと近いんですけど、顔。
図らずもじっと見詰め合う事になり気恥ずかしくなってきたので、花梨の手を外して椅子から立ち上がる。
「それに名誉会員だろうと、専用奴隷だろうと、笹森さんの俺に対する扱いって変わらない気がするんだけど」
さすがに言われっぱなしも癪なので、じとーっとした目付きで頬をさすりながら言ってみる。
「〜すぴ〜すぴぴ〜すぴ〜♪」
明後日の方向を見て口から何やら空気を漏らす花梨。
「いや、だから、口笛吹けてないし。何も誤魔化せてないよ、それ」
「うぅ〜元はと言えばたかちゃんが意地悪言うからなんよ〜、気にならないの?イギリスだよ?
ミステリの本場だよ?ミステリの宝庫なんだよ?ねぇ、たかちゃ〜ん〜」
いつの間にか机を降りてにじりよってくる花梨。
何だかここ最近甘え方が一段とパワーアップしている気がする。
それとも前からこんなだったのかな。今はこっちが意識し過ぎてるだけで。
あぁもうそんな目で見るな、捨てられた子猫か。
うっかり手を出すと懐いて離れなくなりそうな所なんてもうそのまんまだ。
にゃあにゃあ言いながら足元にまとわりつく猫花梨を想像しつつ。
「そう言われてもなぁ。気になるって言ったってほいほい行けるもんじゃないでしょ、イギリスなんて」
「諦めちゃ駄目だよ、たかちゃん!ミステリ研会員なら不屈の精神で物事に当たらないと!」
「…で、具体的に何か考えてるの、そう言う笹森さんは」
「………えーっと………密航?」
「却下、って言うか何でいきなりド犯罪な発想なのさ。もっと真面目に考えてるかと思えば」
「飛行機は無理でも、北欧ツアーのクルーザーなら何とか忍び込めるんじゃないかなーって」
「本気で言ってたのかよ!無茶言うな!大体忍び込んでイギリス着けたとしても、それから
どうすんのさ。そもそも笹森さん英語話せるの?きゃんゆーすぴーくいんぐりっしゅ?」
「え?あ、うー、うーん。ぱ、ぱーどぅん?」
「…もういい。ごめん、悪かったよ。そんなひょっとこみたいな顔しなくていいから」
「してない!失礼だよたかちゃん!私の事あほの子だと思ってるでしょ!」
「Unidentified Mysterious Animalなんて澱みなく言った時は英語得意なのかと思ったけど、
やっぱり自分が興味無い事にはからっきしだね」
「んー、だってUMA自体日本人が考えた造語だから」
「へー、そうなんだ。って本当どうでもいい知識だな」
「どうでもいいとは何よー、たかちゃんたまにミステリ研とは思えない暴言吐くんよね」
「無理矢理会員にしたのはどこの誰だよ」
「えへへ…」
舌を出して照れたように笑う花梨。
う、く、駄目だ。いつもこの笑顔にしてやられて余計な苦労背負い込んでるんだ。
これは悪魔の微笑みなのだ。魅了されちゃいけない、気をしっかり保て俺!
などと花梨から視線を逸らし一所懸命自己暗示を掛けていると、じっと見詰められている事に気付いた。
「ん?どうかした笹森さん」
「ねぇ、たかちゃん」
「うん」
「新婚旅行は、イギリスにしようよ」
「ぶぴっ」
「うわわ、たかちゃん、えんがちょ!」
吃驚し過ぎて鼻水吹いた。
「さ、笹森さんが変な事言うからだろ!!何言い出すんだよいきなり!!!」
「え〜、変かなぁ。まぁ確かにアマゾンの奥地とかアフリカの秘境も魅力的だとは思うけど、
はいバッチィのふきふきしましょうね〜」
「変なのはそっちじゃなくて!!あと自分でふくから!やめれ恥ずかしい!!!」
「んふ、照れ屋さんだね、たかちゃんは」
「あああ、もう、ほんとに、何でいきなりそんな方向に話飛ぶかな…」
「だって、やっぱり結婚したら、新婚旅行はしたいでしょ?その旅行をミステリーツアーにしたら
一石二鳥じゃない!?もう、花梨ちゃんってば天才!」
「…はいはい。そうですね。笹森花梨会長は大天災です…」白旗宣言。
「でしょ〜♪」心からって感じの満面の笑みでにこにこする花梨。
まったく、先が思いやられる。俺達の将来が一番ミステリだよ。
心の中で愚痴りながらも、目の前の笑顔に抗えない自分を感じていた。
黄色い悪魔に取り憑かれた俺の受難はまだまだ続いていくんだろう。
この笑顔に魅了されながら、多分ずっと。
おしまい