137 :
OP:
暗闇につつまれた中、彼らはほぼ一斉に覚醒する。
ここはどこだ?自分はどうして…
大神一郎は未だ何が何だかという感じでようやく身を起こす。
そこは、やけに広々としたホールの中だった、闇の中目を凝らすと自分の他にも何人かいるのが分かる。
数は50人以上はいるだろうか?しかし暗闇とはいえどの顔も自分の見知ってる人間の者ではない。
(さくらくん…エリカくん…どこだ?)
大神は自分の部下の名前を心の中で叫びながら、必死で闇の中を這っていく。
「ん…さくらくん?」
そして不安げな彼の目にようやく彼の部下であると同時に恋人である真宮寺さくらの姿が写る。
「さくらくん?」
「大神さんっ!」
2人が寄り添いその手を握り合った刹那、
そして突如鋭い光が彼らの視界を照らす、光の差すその先にいたのは一部の隙なく裃の上下を着込んだ若い男。
その男の名は、かつて帝都を騒がした黒之巣会死天王の一人にして、魔王サタンの化身を嘯き世界の破滅を目論んだ男、
葵叉丹だった。
「死んだはずじゃ…」
「貴様…生きていたのか!」
大神とさくらの叫びに、我が意を得たとばかり頷く壇上の男。
「その通り、久しいな、華撃団の諸君」
叉丹はにやと薄笑いを浮かべ、一同の顔を見渡す。
「さて、ここで君たちに集まってもらったのは他でもない」
「君たちにはここで殺し合いをしてもらう」
殺し合い…その言葉を聞いて一同は息を呑む。
「ふっ…ふざけ…」
誰かが叫ぼうとした刹那、一人の少年が脱兎のごとくその場から逃げ出そうとするが。
「!!」
数歩走ったところでそのまま床に倒れ付す、背中には叉丹が放った短刀が深々と刺さっていた。
138 :
OP:2006/02/28(火) 18:34:29 ID:4zYXtR5e
「つまりはこういうことだ」
その無残な屍を目の当たりにし、再び場に静寂が訪れる。
しかしそんな中、大神とさくらはお互い目で合図する、2人の力ならば刺し違え…
「2人とも今は動いたらあかん」
しかし後ろから香蘭が2人にささやく
「大神はん、さくらはん…くやしいけどうちら丸腰や…耐えるしかあらへん…」
「しかし」
「犬死は帝国軍人として一番恥ずべき死だと言ってたやないか、な…」
大神とさくらは叉丹を睨みつけながらも、引き下がっていく。
それを見て叉丹はまたにやと微笑む。
「さてとルールの説明をしようか…まずは」
叉丹は淡々とルールの説明を行っていく、そして説明が核心に入ろうとしたときだった。
「あれえここはどこですか?」
妙に暢気な声がホールの最後尾から聞こえてきた。
「ミ…ミルフィーユ」
その声を聞いたフォルテがあわてて振り向く。
「みなさんそんなところでなにをなさってるんですかあ、タクトさぁんどこですかぁ?」
ミルフィーユは…どうやらあの騒ぎの中でも平然と寝こけていたらしい、は空気を読まずマイペースを貫く。
「ミルフィーユさん、お静かになさって!」
「あれ、ミントさんどうしたんですかぁ、それに隣の人見たことありませんけど、どちらの人ですかぁ?」
もはやフォルテとミントだけではなく、ホールに集った全員がミルフィーユに注目している。
そして無視された形となった叉丹のこめかみに血管が浮きでる。
「ちょうどいい…ここで首輪についての実演を行う」
叉丹は左手に嵌めた指輪に念を送り、それをミルフィーユの方へとかざす。
するとミルフィーユの首輪が赤く輝きだす。
「あれ?みなさん?」
どうやらミルフィーユ当人以外は確実に起こりうる事態を予測したようだ、
首輪が輝きを増すのを見て、蜘蛛の子を散らすようにミルフィーユの周囲から避難していく。
139 :
OP:2006/02/28(火) 18:36:08 ID:4zYXtR5e
「何です?ねぇ何なんですかぁ?」
「ミルフィーユさんっ!」
「放せっ!ミルフィーユがっ!」
フォルテとミントだけがミルフィーユの元へ向かおうとしたが、他の人々がそれを止める、そして首輪の輝きが不意に消えたとき。
ボン!
爆発と同時にミルフィーユの首が弾け飛んだ。
「つまり逃走や反抗など、今話したルールに逸脱すればこうなるということだ、了解いただけたかな?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!ミルフィーユっ!」
「こんな…こんなのって酷すぎますっ!」
笑顔のまま床に転がったミルフィーユの生首を抱きかかえ泣き叫ぶフォルテとミントにはもはや構わず
さらに叉丹は説明を続ける。
「それと12時間以内に誰も死ななかった場合、ここにいる全員がその少女と同じ運命となるだろう」
「つまり殺しあわない限り、生き残る道はない…か」
ライダースーツ姿の少女の言葉に叉丹は頷く。
「さてと、あとは自分たちで考えるがいい、刻限だ」
叉丹が指を鳴らすと、ホールにいくつかの門が突如現れる、
門には休だの生だの傷だのと刻まれている。
「各自、その門の前に置かれているリュックを一つずつ持参し、門をくぐるがいい
丸腰で戦えとはいわん、そのリュックの中には武器や道具、それから食料が入っている、手向けというべきかな」
叉丹の冗談に笑うものはだれもいなかった。
「さてと、では宴の開演だ…名を呼ばれた者から門をくぐって行け」