雨が降る桜並木の道を、俺と眞子は白い傘に身を寄せ合って歩いていた。
二人の間に会話は無く、延々と続く桜の街道をひたすら前へ進んでいく。
「……朝倉。」
丁度桜公園に差し掛かったところで、眞子の方から沈黙は破られた。
「ん?」
「もう少しこっち寄りなよ。制服濡れちゃってるじゃない。」
傘は俺が持っていたが、それに収まりきらなかった右肩の部分は雨に打たれて濡れてしまっていた。
「別にいいよ。」
「じゃあ、もう少し傘をあんたの方に向けなさいよ。」
「それだとお前が濡れるだろ?」
「そ、そうだけど…」
俺がそう言うと、眞子は心なしか頬を紅潮させているような気がした。
「………」
またしばらく会話の無い時間が続いた。
雨は学園にいた頃よりも更に激しい勢いで地面を叩きつけている。
沈黙を繕うように二人の間に響き渡る雨の音。
視界は透明な水のシャッターに塞がれて、わずか先までしか見渡すことが出来ない。
『 まるで、この世界に俺達しか居ないような――― 』 そんな感覚に襲われた。
「…くら? …さくら?」
「………」
「ちょっと、聞いてるの朝倉?」
「え?」
眞子の声に俺はフッと我に帰る。どうやらまた意識を飛ばしてしまったらしい。
1行だけ入りきらなかった…(´・ω・`)ショボーン