『おにいちゃんは、かなるのこと、すき?』
『ん? まーすきかな』
『えへへ、そしたらけっこんだね』
『結婚?』
『うんっ! けっこん! すきどーしのおとこのことおんなのこは、けっこんするの!』
『ばかだなー、佳奈留。 兄妹は結婚できないんだぞ』
『え・・・?』
『それにだなー、結婚するんなら大人しい女の子がいい、ってきいたことがあるぞ』
『ええ? ええっ?』
『おまえどっちもだめじゃん』
『そ、そんなー・・・かなる、おとなしいおんなのこになるよっ。 だから、だからっ』
『でも、兄妹じゃん』
『う・・うぅ〜・・・・やだぁ・・・・おにいちゃんとけっこんするぅ』
『むりなものはむりなんだよ』
『やだぁ・・・・おにいちゃんとけっこんするんだもんっ』
『泣くなよなぁ・・・しょうがないなぁ』
『にゃう・・・けっこん・・・・』
『佳奈留、結婚はむりだけどな、オレがずっと一緒にいてやるよ』
『ずっと・・・いっしょ?』
『ああ。 それなら結婚と変わんないだろ・・・・・・たぶん』
『うん・・・わかった・・・・・かなる、それでがまんする』
『そのかわり』
『にゃう?』
『もうわがまま言うなよ。 オレがずっと一緒にいてやるんだから』
『にゃう・・・・がんばる・・・』
『がんばる、じゃない! なんでも大丈夫にしろ!』
『にゃ、にゃうぅ・・・・うん、かなる、なんでもだいじょぶにするっ』
『よーし、それでいい』
『だから・・・・ずっといっしょだよ、おにいちゃん?』
朝。
素敵な夢を見た朝は寝起き抜群。
「何で思い出しちゃうかねぇ・・・・」
しかもこのタイミングで・・・・いやこのタイミングだから思い出したんだろうけど。
「ずっと一緒か・・・」
「にゃう・・・? おにいちゃん?」
俺の右腕が声を発した! でなく、右腕に抱きついた佳奈留が寝ぼけ声を出す。
「おにいちゃん・・・今・・」
「あーいや、何でもないぞよ?」
「おにいちゃんも・・・同じ夢・・・・見たの?」
「へ・・? ・・・・・ん、多分な」
「にゃう・・・・えへへ」
む・・・なんか恥ず。
「さて、起きるぞ!」
「にゃうぅ・・・もーちょっと」
「なぬ?」
「もーちょっと・・・・このままがいい」
「・・・・我侭は言わんのじゃなかったのか?」
「お願いだよう・・・・」
「ああもう・・・もう少しだけだぞ」
「にゃう、有り難う、おにいちゃん」
すりすりと頬を擦り付けてくる。 腕がくすぐったい。
「んで? どーすんの?」
「にゃう・・・ちょっと、お話しよ?」
「・・・・この状態でいる理由が分からんが、まぁいいだろう」
「昨日ね・・・保品川さんにね、言われて・・ちょっとショックだったことが・・・・あるの」
「なに? よし言ってみろ、場合によっちゃタダじゃおかんぞあの野郎」
「にゃうぅ・・・駄目だからね?」
「まず話してみなさい」
「うん・・・・あのね・・かなるね、一生懸命伝えたの・・・・・かなるの気持ち」
「うん」
「でもね・・保品川さんにはね・・・・・」
「好きな奴とか・・・恋人とかがいたのか?」
「ううん・・・そうじゃないの。 でもね、誰よりも大切な人が居るんだって」
「・・・・・恋人も作れないくらいか?」
「うん・・・・・」
恋人も作れないくらい大切な人、か。
「だから、ごめん、って・・・」
「それがショックだったのか?」
「ううん・・・・その後ね、別れ際に言われたの」
「何て?」
「キミにも、そういう人が居るんじゃないか、って・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・そうか」
「えへへ・・・・誰だか分かっちゃった」
「・・・誰だよ?」
「にゃう、内緒だもん」
勿論、聞かなくても分かっていた。 自惚れじゃ無く、確信。
「でも、かなるは・・・出来ればその人と、恋人とかになりたかったなぁ・・・」
「・・・なれないのか?」
「にゃう・・・昔、結婚断られちゃったから、ね・・・」
「そうか・・・・」
「にゃうぅ・・」
「でも、それって昔の話なんだろ?」
「にゃう?」
「今だったら・・・・案外おっけーかもしれんぞ?」
「にゃ、にゃ、にゃうぅっっ!?」
真っ赤になる佳奈留。
「お、おにいちゃん、それって・・・っ?!」
「聞いて・・・・みればいいじゃないか」
「お、おにいちゃん・・・・」
見つめ合います。 可愛いです。 俺って幸せ者。
「あの・・・・・かなる・・・・やっぱり、おにいちゃんと・・けっこん・・・・したい・・・・・・」
「いいぜ・・結婚、しちゃおうか」
「にゃあ・・・・・おにい・・ちゃん・・・・・でもぉ・・兄妹は、駄目・・・・なんだよ?」
「なんだ、やっぱり嫌なのか?」
「にゃうぅぅっっ」
ぶんぶんと首を振る。
俺はもう、兄妹とか、どうでも良かった。 ただあるのは、このか弱い一人の女の子を守りたい。
その想いだけだった。
「佳奈留、目、閉じろ」
「にゃう?」
言われたとうりに目を瞑る。
「開けるなよ・・・」
「にゃ・・・・にゃうっ!!??」
唇と唇が触れ合った。
「おにい・・・・ちゃん・・」
「婚約代わりだ、受け取れ」
「にゃう・・・・うん」
「おにいちゃん・・・・すき・・」
「ん・・・まぁ言わなくても分かってるだろうが、俺もだ」
「にゃうぅ・・なんで? なんでちゅーしてくれたの?」
「そりゃ・・・・好きだからだろ」
「今まで・・・なんにもなかったのに?」
「お互い様だろ・・・お前なんて、昨日まで別の男好きだったじゃねぇか」
「にゃ、にゃうぅぅっっ!!」
「あ〜・・・母さん父さんになんて言おうか」
「にゃうぅ・・しょうがないよ、正直に・・・話そ?」
「そうだな・・・さし当たって、母さんに話すか。 もう帰ってきてるだろ」
「にゃう? お母さん宿直から継続で、今晩まで帰って来ないって言ってたよ・・・?」
「なんと? 聞いてなかった。 父さんは?」
「昨日は泊り込み・・・今日も、かな・・・?」
「佳奈留・・・・今日って休みだったよな?」
「にゃう? うん・・・」
「ふむ・・・・夜まで二人っきりだな」
「にゃ・・・・・・にゃうぅっ!!??」
「・・・・佳奈留。 実は俺、すでに辛抱堪らん」
「にゃ・・・・・?」
「・・・・・・かなるぅ〜〜〜っっっ!!」
「にゃにゃっ!?!? お、おにいちゃ、にゃふぅっっ」
「愛してるぞ〜〜〜っっ!!」
まぁ・・・・その後は想像にまかすわ。
ただ確かなのは―――俺たちは愛し合ってるっていう事実。
いろいろこれから大変かもしんないけど、まぁどーにかなるっしょ。
「な、佳奈留?」
「にゃうぅ・・おにいちゃんのばかぁ・・・////」
「でも・・・やっぱりだいすきだよ、おにいちゃんっ」