【妹は】シスプリに姉が嫉妬しました4【どうした】

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312鈴凛
>>311
ハーイ、アニキ♥

ハハーン、賢い鈴凛ちゃんが察するに、大学の化学で分光器を使って
物質測定するとか、あるいはボーアの原子モデルを物理で扱うとか、
そういうハナシになっちゃったってワケね。

エッヘン!それじゃぁ心優しい鈴凛ちゃんが、自分の誕生日にもかかわらず、
可哀想なアニキに気前よく教えてあげましょう!代わりに……ヘヘヘ分かってるよね、アニキ?
でも、いかんせんアニキの書き込みだけだとどんな文脈で出てきたのかよく分からないから……
あくまで原子スペクトルについてだけの説明ね。

普通の白い光をプリズムで屈折させると、虹みたいにいろいろな色の光に分かれるってのは、いいよね?
実は、世の中に「白」っていう純粋な色っていうのは、無いの。あるのは、複数の色の光が混ざった「白」だけ。
だから、人間の目には同じ「白」って見えても、実際にプリズムを使って光を分けてから見る(分光)と、
いろいろな白があるわ。
つまり、人間の目では光を特定する情報全てを調べることは、プリズムを使わない限りできない、ってこと。

逆に言えば、プリズムを使えば、モノから出てきたり反射したりして見えている光から、
普通に見ただけでは分からない、モノの性質を知ることが出来るの。そのモノの温度とか、どんな物質からできてるか、とか。

で、それを知るために、ある光が何と何の色からできているか(光を物質に例えるなら、どんな元素から構成されてるかってことね)、
を、色と強度の間の分布として見ることを、光のスペクトル分解って言うの。
313鈴凛:2005/07/09(土) 08:26:11 ID:NuWj0jps
で、まずはじっくりと太陽の光をプリズムで分けて見てみましょ。
そうすると、虹は七色って言われてるけど、本当は色の境界は全然無くて……つまり、
連続に色が変化してるのが分かると思うわ。

これが、連続波長の光。

例えば、アツーイ鉄の塊は赤く光ってたり、あるいは白くなったりするケド、こういった光は連続波長(熱放射)なの。
だから、例えば赤い鉄に見えたとしても、プリズムで分光してみると、とりわけ赤い光が強いから
赤く見えているだけで、わずかだけど黄色や緑の光も入っているのね。で、こういった熱放射の光は、
物体の物質に依らずに物体の温度のみで決まる色の光を出すの。あ、正確には温度によって決まる波長毎の
スペクトル分布が計算できるってコトなんだけど。そして、熱放射の時、スペクトルの形は一つの頂上のみを持つ
山の形になるの。こんな風に。

 強度
   ↑
   | **
   | *****
   | ********
   | *************
   |*********************
   ---------------------------→波長

簡単な形してるでしょ?
314鈴凛:2005/07/09(土) 08:28:51 ID:NuWj0jps
あ、AA を即席で作ったら初歩的なミスしちゃった……(汗)
 強度
   ↑
   |  **
   | .*****
   | .********
   | *************
   |*********************
   ---------------------------→波長
こんな感じね。
315鈴凛:2005/07/09(土) 08:29:44 ID:NuWj0jps
>>313 の続き。

と・こ・ろ・が。

アニキ、高校の実験とかで、炎色反応ってやってみなかった?アルコールランプに銅とか、鉄とかのイオン溶液を
溶かしたのを吹き付けるヤツ。このとき、例えば二価の銅イオンの化合物を溶かしていたら、例えそれが塩化銅であっても、
あるいは硫酸銅であっても、同じ緑色が出てきたでしょ。つまり、この色は炎の温度が見えている色ではなくて……
炎によって暖められたイオンが、それも二価の銅イオンだったら何でもその色を出してる、ってわけ。
もしここに、ナニが溶けているかよく分からない……そんな水があったとしても、火にくべてみて緑色の光が出たら、
あっ、二価の銅イオンを含む物質が溶けてる!って分かるのね。

そして、ホントウは光を見て分かるのは、イオンだけじゃない。例えば、紫外線や可視光線を見れば化合物の中にどんな化学結合が
あるかを知ることが出来て……そして、物質に含まれている元素特有の「色」もある。

それが、原子スペクトル。だから、例えば水(H2O)の中の水素原子も、メタン(CH4)の中の水素原子も、
どちらもオレンジ色の光をだすわ。でも、分光してみるとオレンジ以外の光も見えてくる。
実際には、水素の原子スペクトルは……ジャーン!こんな感じになっています。
ttp://cfa-www.harvard.edu/seuforum/galSpeed/images/hydrogen.GIF

で、見てみて!さっきの太陽の光とは、全然違うでしょ?山が幾つかある分布っていうか、
山って言うよりもずっと鋭い針みたいな分布。

これが、不連続波長の光。離散波長とも言うわね。
316鈴凛:2005/07/09(土) 08:31:03 ID:NuWj0jps
オレンジに見えているのは、656.28nm の山が一番強いから、ね。
で、他にも 波長486.13nm の青い光が見えるでしょ?分光すると、こんなコトまで分かっちゃうの。
このオレンジの山を、特に Hα線、青い方をHβ線と呼ぶわ。こんな風に、
物質毎に原子スペクトルがあって、さらにその中の特徴的な山には名前が、例えばナトリウムの光Naα線とか
いった感じで付いています。

さて、それじゃもう一度さっきの太陽の光を分光したものを見てみましょ。
さっき、私は太陽の光は山が一つしか無いって言ったけど……ホントウは、ちょっとチガウの。
ttp://kame.mpec.jp/kishou/013/013%205.jpg

見て……連続波長の中に、所々はっきりとした黒い線が入ってるでしょ。そして、Hβ線の波長を見てみると……ね?
ちょうどピッタシのところに黒い線が入ってる。これも実はHβ線。
さっきの不連続波長の光は山が見えていたけど、今度はそこが谷になって見えているわけ。

つまり、原子スペクトルには輝線と吸収線の二つがあるのね。太陽光のスペクトルは、こんな感じ。
大まかには一つの山を作る分布があって、そこから幾つかの物質の吸収線を引き算した形になってるって分かるかしら?
ttp://kuroppe.tagen.tohoku.ac.jp/~dsc/saidaichi/1.gif
317鈴凛:2005/07/09(土) 08:35:34 ID:NuWj0jps
ちなみに、理屈から言うと原子スペクトルを持たない物質は無いわ。

だけど、それじゃ熱放射を計算するときに面倒くさいじゃない?
だって、温度が分かったら基本的な山の形は分かるんであって、あとは物質毎に
決められた部分の吸収線を引き算すればいいだからね。なるべく物質毎に憶える部分は減らしたいでしょ?

というわけで、理想的な物質、実在はしないけど、ナニも輝線も吸収線も一切持たないようなモノを考えるの。
この物質、普通の温度だと何の色も付いていないから、コレは黒体(こくたい)、
そして黒体が放射しているスペクトル分布を黒体放射と言います。まるで鈴凛ちゃん方式の、素敵なネーミングでしょ?
一方、黒体放射の結果では説明できない、例えば原子スペクトルだとか、あるいは化学結合のスペクトルだとか……をまとめて、
特性スペクトルって呼ぶの。
318鈴凛:2005/07/09(土) 08:37:57 ID:NuWj0jps
さてさて……最後に。太陽光を分光したときに分かった、輝線と吸収線が同じ役割を果たすってことを、ちょっと考えてみましょ。

私たちが普通に目にしているモノって、二種類あるじゃない?自分から光ってるモノと、光を反射して見えているモノ。
で、葉っぱを考えてみると……どう考えたって、葉っぱが緑色だからといって、その葉っぱが数千度の温度になってるわけないわよね。
というわけで、普通のモノの色は黒体放射の結果ではなくて、反射光に色が付いているワケ。
そうすると、一回光は物質の中に入って、そのあと何かの特性スペクトルに引っかからなかった光だけが見えている……
つまり、私たちはさっきの太陽の光みたく、吸収スペクトルを見て、モノの(実際にはそのモノの物質の)色を判断しているのね。

でも……吸収スペクトルに入った光は、全てが熱に変わるわけじゃないわ。特性スペクトルが、改めて輝線スペクトルとして働いて、
弱いながらもその光を出す。それが見えないのは、物質に吸収されることなく残った光が、物質の後ろで反射して戻って来ちゃうから。

ってことはー……。ねー、アニキは昔、赤いマジックを黒い下敷きとか、筆箱とかに塗ってみなかった?
私は結構それで遊んでみたかな……とってもチープな実験なんだけど……。

ジャーン!赤いマジックで書いたのに、赤じゃなくて緑の反射がうっすらと見えます!

コレこそ、輝線と吸収の両方のスペクトルが同じことから起こる結果なの。

マジックの後ろの黒い部分が、いつもだったら反射しちゃう光を吸収して、消しちゃう。
ところが、赤い光はマジックの層に先に吸収されているから、弱いながらも輝線スペクトルとして放出し続ける。そして、いつもは見えていなかった
輝線としての特性スペクトルが見えるから、いつもとはまるで逆の色が見えてくるわけ。タネが分かると簡単な手品でしょ?
319鈴凛:2005/07/09(土) 08:38:35 ID:NuWj0jps
でも、物理はそれで終わりじゃない。どうして、黒体放射はあんなスペクトル分布になるのか?
どうして、物質や結合毎に違った特性スペクトルが生まれるのか?……実は、それは 19 世紀の物理、
ニュートンの力学と、マックスウェルの電磁気学からは、どうしても導けないモノだったのね。

そして、やがてその二つの謎(黒体放射と特性スペクトル)を解く鍵……
それが量子力学を生み出すわ。そして、特性スペクトルの謎を物理が解いたってことは、
物質と物質の間に働く不思議な力、そう、化学結合の謎を解いたってことなの。

量子力学によって、化学は物理学と結婚するのね。でも、その話は難しくなるから……
ま、入門書だけ挙げておくわ。興味があったら見てみればイイと思う。
http://sapphire.pc.uec.ac.jp/~yamadac/zenki2004/modphysch12.pdf

それじゃ、ね!                           鈴凛より♥