【メグの】美樹原愛をマターリ語るスレ4【髪型は?】
「みっきはっらさ〜ん」
朝比奈夕子の声が夕焼けに染まった帰り道にこだまする。
夕子から声をかけられることが殆どなかった愛は少しだけビクッとした。
「ど、どうしたの?」
「実はね……じゃ〜ん」
夕子は鞄からカラフルな瓶を取り出した。
夕焼けが反射して綺麗だな、と愛は思った。
「それ…お酒?」
「うん、そうだよ。これから私の部屋で飲もうかと思って。」
「で、でも私達まだ未成年だし…」
「いいの、いいの。お酒は高校生からだよッ!」
「あ…ち、ちょっと」
ぐいぐいと腕を引っ張る夕子の強引さにはかなわなかった。
「先に部屋に行ってて」
愛は初めて来る家に緊張しながらも2階に上がって行った。
夕子の部屋は意外に(本人を前にして言えないが)スッキリとしていた。
壁にはアイドルのポスターが張ってあり、机の上には写真が立て掛けてある。
想像していた部屋と全く違っていた。ただ、
「あら美樹原さん、こんにちわ。」
紐緒結奈が座っている。いや、鎮座されている。
その佇まいはすでに威圧感が満ち満ちている。
「あの…どうして紐緒さんが?」
「私もお酒を飲んでみようと思って」
必要なこと意外は言わせないで。目がそう語っている。
緊張、沈黙のリフレイン。耐え切れない。そう思い始めた頃
「おまち〜」
さっきのカラフルな瓶を両手に数本持って夕子があらわれた。
やっぱりあの瓶は綺麗だな、と思ってしまった。
「ささ、どうぞ」
「じゃあ私はこれを頂くわ」
「…」
あのカラフルな瓶だけ残った。
愛はしょうがなくそれを手に取る。夕子と結奈はすでに飲み始めている。
キャップを回すとプシュっという心地よい音が鳴った。
香りは…いい香りだ。味は…
愛の記憶はそこで途絶えてしまった。
「本当にこれでいいの?紐緒さん」
「ええ、いいのよ。これでいいデータが取れそうだわ」
「ところで…例の薬、本当に出来るの?」
「ホレ薬のことね。簡単だわ。任せておきなさい」
結奈は鞄から意味不明な機械を出し始めていた。
夕子と結奈はこれから始まる地獄を想像すらしていなかっただろう。
ちょ、ちょ、ちょっと〜あああ、私の部屋がぁぁぁ」
「これは意外な行動だわ。レポートにまとめないと」
愛は夕子のベッドの上で飛び跳ねていた。ワケの分からないことも喋っている。
ケタケタ笑っている。いや、ぎゃははははー、と笑っている。
当の本人はすでに泥酔状態だ。カラフルな瓶を片手に持っている。
「私の酒乱Qのポスターがぁぁぁ、あっ!甲玉リコのポスターまで!」
夕子はすでに泣きそうだ。すると愛は突然ぴたりと止まり、
「時に、朝比奈夕子よ」
芝居がかった口調で愛が語り始めた。
「なんでそんなに可愛いの?」
「へ?」
スッと愛の右腕が夕子の首の後ろへ回る。
愛の鼻息を感じられるほどの距離に顔が近づいた。
夕子の鼓動が激しくなっていく。
「どどどどどうしたの?」夕子はどうにも逃げ出せない状況になっていた。
次の瞬間、愛の唇は夕子の唇と重なった。軽い感じのキスではない。
立っていた夕子の膝がカクンと砕ける。結奈もキーボードを打つのを止めている。
「そんなに可愛いからキスしちゃうの」
愛の目がトロンとしている。夕子の目も同じような感じだ。
もう一度愛がキスをした。今度はかなり深い。
夕子は両膝から崩れ落ちた。
「次は…紐緒さん」
「え、い、いや私は…」
またもやスッと首の後ろに手を回された。唇が近づいてくる。
「え、あ、い、いやぁ…」
結奈は自分がこんな女らしい声が出せることに少し驚いていた。
だが次の瞬間、そんな声とは全く別の激しい音と光が部屋に飛び散った。
愛は糸の切れた操り人形のようにぺたん、と倒れた。
「スタンガン…用意しておいて正解だったわ…」
全てをやり遂げた、そんな気持ちが心に溢れている。
…翌日。
結奈と夕子が話しているところを愛が見かけた。
近寄っていく。離れていく結奈と夕子。
おかしいな、と思いつつも声をかけてみた。
「朝比奈さん、紐緒さんおはようございます。昨日は…」
「あ、あはは。いいのよ、いいのよ〜」
「私もいいデータ…い、いえ、楽しかったから」
愛の記憶は一口飲んだ時点で飛んでいる。
気付いたときには何故か倒れている夕子と怯えた目をした結奈が部屋にいた。
「おかしな二人」そう思いながら教室へと愛は向かっていった。
「おかしいのはアンタよ!」
結奈と夕子の考えは被っていた。