サクラ大戦の中で一番セーラー服が似合うのは?

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222201
秋晴れの日曜日。いつもは静かなはずの休日の学校は、今日は賑やかです。
白線を引いて臨時の駐車場にした校庭は、いっぱいの車でうまり、
校門の方を見ると学生に交ざって、小さい子供の手を引いた親子もこちらに歩いてきます。
今日は学園の大講堂で慈善バザーが行われているのです。

「ひゅ〜ひゅ〜、みなさん、バザー楽しんでますか〜?」
「現在、大講堂で慈善バザー、初等部1階で模擬店による軽食の販売を行っています」
「午後からは大講堂で中等部、高等部合同の管弦楽部の発表、
 初等部体育館では高等部の軽音楽部がミニコンサートをやるんですよぉ」
「管弦楽部は昨年の全国高総文祭でも演奏している実力派ですし」
「軽音楽部は加山先輩のギターがかっこいいですぅ♪」
「シー、そういうのは放送にのせる言葉じゃないでしょ」
「えへへ、でも、ホントにかっこいいんだよ。
 あ、もちろん、管弦楽部や軽音楽部の聴きごたえのある演奏も楽しみですよぉ」
「なお、今回のバザーの売上げは財団法人『賢人機関』を通じまして、
 全世界の恵まれない子供達のために役立てられる事になっています」
「以上、放送部のシー・カプリスと」
「メル・レゾンがお届けしました」
223201:02/04/24 00:31
明るい放送が響く大講堂では、盛況なバザーを満足げに眺める女の人がありました。
「かえで先生、大成功ですね」
「ええ、これも今日まであなた達が一生懸命に努力してくれたおかげよ。
 本当にありがとう」
静かに頭を下げるかえで先生に、ツンツン頭の少年は慌てて頭を上げるように頼みました。
「先生、俺は何もやっていませんよ。
 今回は一年のさくらくん達ががんばってくれたから…」
「でも、この子達をまとめてくれたのは、あなたよ。
 自信を持ちなさい、大神くん。次期生徒会長でしょ?」
「本当にたいした事はやってないですよ。これだけの品物を集めてくれたのも、
 ほとんど、さくらくん達なんですから」
「それは、すみれさんやグリシーヌさんが呼びかけてくれたおかげです。
 あたし達だけでは、とてもこれだけの物は集められませんでした」
綺麗な黒髪を大きな赤いリボンでポニーテールにした女の子が、
頬を真っ赤にして言いました。
「うん、確かにすみれくんやグリシーヌがお家の人に頼んで
 一般に呼びかけてくれたおかげで、バザーに多くの品物が集まったよ。
 でも、君達が事前の準備にかけた努力も決してそれに劣ったものじゃない。
 さくらくんがどんなにガンバッていたか、俺はちゃんと見ていたよ」
「…大神さん。そんな、あたし……」
さくらさんは耳まで真っ赤になってうつむいてしまいました。
かえで先生は、そんな2人を、なにか眩しいものを見るような表情で見つめています。
224201:02/04/24 00:33
「大神さん、あたし、お弁当作ってきたんです。あの…、もし良かったら…」
「さくらさん!抜け駆けはゆるしませんわよ!」
制服を独特に着崩した綺麗な女の人が、怖い顔でさくらさんの肩をギュッとつかみました。
「す…みれさん、来てたんですか?」
「わたくしも実行委員ですもの、来ていないわけがありませんわ!」
さくらさんはとても残念そうな顔をしています。
険悪になりそうな雰囲気を察した大神くんが、急いで口を開きました。
「すみれくん、今、君達の事を話していたんだ。今回のバザーにこれだけの人が来てくれたのは、
 君達が広く呼びかけてくれたおかげだよ。本当にありがとう」
「お礼を言われることじゃありませんわ。こんなことは当然ですもの。
 世界には最初のお誕生日も向かえられない子供が、まだ多くいるのですのよ。
 小さな命を救うために、わたくしに出来ることがあるのでしたら、何でもやりますわ」
「すみれくん、その言葉が何よりも嬉しいよ。本当にありがとう」
「で、ですから、お礼を言われることではありませんわ」
さわやかな笑顔で軽く頭を下げる大神くんに、すみれさんの頬も赤くなっています。
「そんなことより先輩、わたくしも今日はお弁当を用意しましたのよ。
 おかかえの料理人が腕を振るった秋の味覚ですの。
 もう、あちらに用意してありますわ。さあ、行きましょう」
強引に腕を組んで大神くんを連れて行こうとするすみれさんの肩を、
今度は、さくらさんが力いっぱいつかみました。
「すみれさん!大神さんは、あたしとお弁当を食べるんですよ!」
「さくらさんのお弁当より、プロの作ったお弁当の方が美味しいに決まってますわ!
 先輩はお疲れですもの、美味しいものを食べて鋭気を養っていただかなければなりませんのよ!」
大神くんは困った顔でオロオロしていますが、そんな大神くんとは対照的に、
かえで先生は面白そうな顔で3人を見ています。
225201:02/04/24 00:35
「おお、先輩、ここにいたのか。
 そろそろ昼食の時間であろう。ついて来るがよい」
「グリシーヌ?」
また、ややこしいのがやってきました。
「うむ、この学園の調理実習室は一流レストラン並みの設備が整えてあるからな、
 我が家のシェフを連れて来てあるのだ。
 庶民の貴公であるが、たまには宮廷料理もよかろう」
「おあいにくさまでした!大神さんは、あたしのお弁当を食べるんですよ!」
「さくらさん、冗談はそのくらいになさい!先輩には日本料理の粋を尽くした、
 わたくしのお弁当を召し上がっていただきます!」
「フランス宮廷料理に匹敵するものなど、この世にあるわけがなかろう!
 先輩は調理実習室に連れて行くぞ!」
オロオロする対象が3人に増えて、大神くんは大弱り。
かえで先生は笑いをこらえるのに必死です。

ぽろ〜ん♪
「いやぁ、大神ぃ〜、モテモテはいいなぁ〜」
白い学生服に白いギターを抱えた優男が、大神くんを面白そうにみつめています。
「加山、いたのか!?」
「お前のいるところなら、俺はどこにでも行くさぁ。いつだって見守っているぞ」
口にくわえた真紅のバラを右手に持ち替えてポーズを取りながら、
加山くんは白い歯を輝かせます。
「見てるだけじゃなくて、助けてくれよ!」
「残念だが、今から軽音で演奏の打ち合わせがあってな。
 お前にかまっている時間はないんだ。あでゅ〜、大神ぃ〜」
「そのためだけに、やってきたのか!?」
226201:02/04/24 00:36
大騒ぎしている大神くん達を、周りの人達はクスクス笑いながら見ています。
「やっぱり、あの人達は目立ってますねー」
「織姫、知ってる人なの?」
褐色の健康そうな肌をした女の子に、銀の髪の女の子が尋ねました。
「レニは知らないですかー?高等部の次の生徒会長はモテるので有名ですよー」
「興味ない」
レニさんは、つまらなそうに大神くん達から視線をそらしました。
「そういうところが、レニらしいと言えば、レニらしいんですけどねー」
あきれたように肩をすくめる織姫さんに、レニさんは少しも態度を変えずに尋ねました。
「ところで時間は大丈夫なの?管弦楽部の発表まで、そんなに時間はないと思うけど」
「おー、ミステイクでーす。もう行かないといけませんねー。
 レニもついて来てもらえますかー?」
「管弦楽部の発表に、何故ボクが?」
「それはシークレットで〜す」

何やら腑に落ちない表情ではありましたが、レニさんは織姫さんに連れられて、
舞台袖の方にに歩いていきました。
                                           <つづく>
227名無しくん、、、好きです。。。:02/04/24 01:23
age
危うし、レニの貞操の危機だ。
229201:02/04/25 19:13
「遅れてすみませんでーす」
織姫さんが集合場所の舞台袖に入った時には、もう管弦楽部の人は集合した後でした。
「織姫、おそ〜い!」
「時間守んなきゃダメだってぇ!」
「後でオゴリだよ〜」
お友達から集中砲火を浴びて、さすがの織姫さんも今回は形勢が悪いようです。
「ソーリーで〜す。でも、レニはちゃんと連れてきましたよー」
「あ、ホントだ。レニくん、がんばってね〜」
「期待してるよ♪」
「織姫、どういうこと?」
予想外の展開で繰り返される自分の名前に、
レニさんが説明を求めようと織姫さんの方を向いた時、
司会役の放送部の女の子が怒った声で言いました。
「もぉ、時間おしてるんだから、静かにしてくださいよぉ!」
「そうですよ。打ち合わせの時間も、そんなに残っていないんですから。
 遅れてきた2人も、早く椅子に座って下さい」
「は〜い。ほら、レニも早く座ってくださ〜い」
疑問は晴れず釈然としないままでしたが、
レニさんは織姫さんに促されるままに席につきました。
230201:02/04/25 19:13
「それじゃ、最初から繰り返しますね」
ネコ毛の女の子がパンフレットを片手に説明を始めます。
「えっと、発表は午後1時から開始です。
 幕を開けたら、最初にあたしとメルとで曲目と演奏者を紹介しますから、
 紹介を受けた順に、座ったままでいいですから礼をして下さい」
「演奏の順番は、最初が高等部、中等部合同で『くるみ割り人形』の第2幕。
 次に高等部のホルン協奏曲第2幕変ホ長調。
 その次が中等部のル・グラン・タンゴ。
 最後がアヴェマリアの独唱ですね」
「え?最後のアヴェマリアは、あたしの方のパンフには載ってないよ」
「あ、ごめんなさい。さっき部長さんから変更があったって言われたの。
 シーには、まだ言ってなかったわ。今日になってからの変更だったから、
 パンフレットには載ってないのよ」
「もぉ、そういうことは、ちゃんと言っておいてよぉ!」
シーさんは少しすねた様子で、メルさんのパンフレットに丁寧な字で書きこまれた
新しい曲目を読み上げました。
「え〜と、アヴェマリア。伴奏はソレッタ・織姫さん。
 独唱はレニ・ミルヒシュトラーセさんですね」
その場にいた全員の視線が銀の髪の少女に向けられました。
231201:02/04/25 19:14
「レニ、がんばりましょーね」
いたずらっぽくウインクをして語りかける織姫さんに、
レニさんは、静かな、けれど強い力を込めた瞳を向けました。
「聞いていないよ」
「当然でーす。言ってませんからねー」
その言葉を聞いたレニさんは、無言で席を立ちました。
「どこ行くですかー?」
「ボクの意志を無視して決定された事項に従う必要はない。帰るよ」
「レニに帰られたら、わたし達は困りまーす」
織姫さんはレニさんの上着のすそを掴んで、少し潤んだ瞳で見つめています。
「泣いたふりをしても無駄だよ」
「レニくん、いいじゃない。歌おうよ〜」
「そうだよ、あんなに上手いんだもの。みんなに聞いてもらお、ね?」
他の部員も口々に勧めるのですが、レニさんの強い力を込めた一瞥を向けられると
途端に黙り込んでしまいます。
「強情ですねー。わたしと2人でいる時みたいに歌えばいいだけですよー」
「人に聞かせるために歌ったことはない」
けんもほろろなレニさんの言葉。取りつく島もないとは、このことです。
232201:02/04/25 19:14
「それで、アヴェマリアは演目に加えるんですか?」
「早く決めてもらわないと困りますぅ」
司会の2人が困り顔できいてきます。
「説得しますから、ちょっとだけ待ってくださーい」
「心配する必要はない。歌わないから」
どこまでも噛み合わない会話に、司会の2人は顔を見合わせて溜息をつきました。
「いいかげんにして下さい!ホントに時間がないんですよ!」
「このままだと演奏の時間が来てしまいます。
 この際、これで決めますか?」
メルさんは制服のポケットから一組のトランプを取り出しました。
「織姫さんとレニさんに一枚づつ引いてもらいます。数の大きい方が勝ち。
 負けた方が相手の主張を認めるということでどうですか?」
「グッドアイデアでーす!」
「織姫が勝てばボクが歌う。それで、ボクが勝った場合のメリットは?
 何もないのなら賭けとは言わないよ」
レニさんの主張はあくまでクールです。
「メリットがあれば歌うということですか?」
「…………」
レニさんは、その質問に答えませんでしたが、メルさんは気にする様子も無く、
そのまま続けました。
「レニ・ミルヒシュトラーセさん。中等部3年2組。所属は天文部ですね」
233201:02/04/25 19:15
「何故、知っているの?」
初対面の相手に自分の情報を握られている。あまり快い状態ではありません。
レニさんは不快感を顕わにしてメルさんに尋ねましたが、
メルさんはニッコリ笑ってレニさんの問いを受け流し、そのことには触れぬまま話を続けます。
「中等部の天文部は、高等部屋上の天体望遠鏡を使った観測を申請しましたが
 却下されていますね。
 まあ、顧問の付き添いも無しで生徒だけで学校に泊り込むとなれば、
 却下されるのも当然ですが」
レニさんは不満を隠そうともせずに、メルさんを睨みつけます。
「望遠鏡使用の件、力になれると思いますよ。
 それがメリットということで、どうですか?」
しばしの静寂の後、レニさんが口を開きました。
「できるの?」
「任せて下さい。これでもグラン・マとは親しいんですよ」
「理事長と?」
「ええ。賭けをやる気になりましたか?」
メルさんは柔らかな微笑を浮かべていますが、
それとは対照的にレニさんの表情は固く険しいものです。
2人はしばらく視線を絡ませていましたが、
やがて、レニさんが根負けしたように言いました。
「わかった、その賭けを受けるよ」
                                           <つづく>
234201:02/04/25 19:23
お待たせしましたデス。(ホントに待っててくれた人はいるデスか?(;´Д`)
第2話の続きデス。
このお話は次で終わる予定デスから、今週中にはあげたいと思うデス。

>>228
しまったデス。その展開は思いつかなかったデス。
続きを書く前に228を読んでれば、そっちになったかも知れないのに、
自分の愚かしさが恨めしいデス。
another storyで、そっちも書こうか…
いえ、何も言ってないデスよ!
書きませんデスよ!書きませんデスよ!書きませんデスよ!書きません…
235名無しくん、、、好きです。。。:02/04/26 18:25
age
すまん、あんまり長いと読む気がせんのだ。
もっと短く、例えるなら4コマ漫画的な笑いをネタを提供してくれると
うれしいんだけど。
237201:02/04/27 19:00
読み手の心情も考慮せず、長々と駄文を書き連ねてしまい
真に申し訳ございませんでした。
>233以降の文章も仕上げてはみたのですが、
236氏のご指摘を拝読する前に書き上げたもので、
これまでに貼り付けた文章とほぼ同量のものとなってしまいました。
文章を減らし、笑いを中心にしようと書き直してみたのですが、
今までの話の流れもあり、納得のいくものとはなりません。
>201以降、ほぼ一人でスレを消費してきた責任があるのは重々承知致しておりますが、
私の力量では、求められる形でこの話を終了させることが能いません。
真にもって無責任な話ではありますが、この連作は>233をもって終了とさせていただきます。

>例えるなら4コマ漫画的な笑いをネタを提供してくれると
とのお言葉ですが、今までとは少々違った形の発想が必要となりますので、
私のような不器用な人間には切り替えに時間が必要になります。
今しばらくの猶予を賜りたく存じます。
>>237
201さん、あまり気にしなくてもいいのでは?
私は十分楽しく読ませてもらってました。
続きも楽しみにしていたんですが・・・
話の合間に割り込むのも悪いかな、と思って感想とかは控えてましたが。
続きも上げてくれたら嬉しいです。
201氏は打たれ弱いね。気にすることないのに。

別にここは201氏の個人スレってわけじゃないんだから、
シチュだけの短いやつが好きなんだったら、
201氏以外でそういうのも書けばいいんだよ。
もともと出来あがってるサクラ大戦のキャラ使ってるんだから、
全員に共通のキャライメージは出来あがってるし、
学校内の役割もある程度割り振ってるんだから、
思いついたシチュでキャラに会話させるだけでいい。
長文で仕上げるよりは、よほど簡単に出来ると思うがね。
職人が増えれば、236好みの短文派の職人も出てくるだろうよ。

まあ、何にせよ、自分の好みに合わないからスタイルを
変えて書けってのは、どうにも傲慢だね。
長いのがイヤなら読み飛ばせばいいだけだろ?
作品の出来不出来に関して批評するならともかく、
読みもせずにウダウダ言うのはやめとけよ…
201氏へ。
続きを楽しみにしています。
完成しているのでしたら、ぜひ読ませてください。お願いします。
241201:02/04/29 19:18
>238,240
暖かいお言葉、ありがとうございます。
>232の続きは書けていますし、あとは貼り付けるだけでよいのですが、
233以前のものも含めて、今までに張った伏線を消化しようとすると、
まだしばらく書きつづけなければなりません。
一人で長々と長文を張っている状況では他の人も書きこみ辛いのでは
ないかと思うと、気が引けているというのが現状です。
さびれてるし、いいんじゃねぇの?何書いたって。
243201:02/04/30 08:12
>242
了解デス。
では、第2話終了まで貼り付けますデス。
244201:02/04/30 08:12
「カードを確かめさせてもらうよ」
「ふぅ…、疑い深いんですね…」
あきれ顔でトランプを差し出すメルさん。レニさんはしばらくカードを確認していましたが、
おかしな所は見つからなかったのか、無言でメルさんにそれを返しました。
「気が済みましたか?」
「カードに仕掛けはないようだね」
トランプを受け取ったメルさんは鮮やかな手つきでシャッフルを始めます。
しばらくシャッフルを続けてカードを無作為に並べ変えたメルさんは、
トランプを載せた白い綺麗な手をレニさんに向けました。
「カットをお願いします」
無言でカードに手を伸ばすレニさん。しかし、その最中にもレニさんの視線は
メルさんの瞳に向けられ、一瞬の変化も見逃そうとはしません。
シャッフルを終えたメルさんは微笑を浮かべて織姫さんに向き直りました。
「まずは、織姫さんからお願いします」
「わかりましたー!」
明るく答えた織姫さんは、しばらく迷った後、山から一枚のカードを抜き出します。
245201:02/04/30 08:13
数を確かめた途端、織姫さんはこめかみを押さえて溜息をつきました。
「ついてませ〜ん!ダイヤの8で〜す!」
「それでも真中よりは大きい数ですよ」
クスクスと笑いながらメルさんが今度はレニさんの方へ向き直ります。
「次はレニさんの番です」
「……了解」
レニさんは無造作に手を伸ばすと、山から一枚のカードを抜き出しました。
引いた数が思わしくなかったのか、カードを確かめたレニさんは一瞬眉根を寄せ、
いかにも不本意な様子でメルさんに言いました。
「……スペードの5。ボクの負けだ」
「勝負ありましたね」
満面の笑みでレニさんに語り掛けるメルさん。
その魅力的な笑顔も、今は嫌味にしか受け取れません。
「それじゃ、アヴェマリアは決定ですね。管弦楽部の人は、今座ってる椅子と
 自分の楽器を持ってステージの方に移動してくださ〜い」
シーさんに促されて、管弦楽部の人達はレニさんの方を心配そうな目で見ながらも
ステージに移動していきます。
音合わせが聞こえる舞台袖に残ったのはレニさんと織姫さんだけでした。
246201:02/04/30 08:13
「……レニ、怒ってますか…?」
「……別に」
気まずい沈黙が辺りをつつみます。
「……レニが怒るのは、当たり前だと思ってまーす…。
 でも、わたし達も悪ふざけでこんな事をやったわけじゃないですよー。
 レニの歌をもっと色々な人にに聞いて欲しいから…、
 ……みんな、レニの歌が大好きなんでーす…」
不安げな表情でレニさんを見つめる織姫さん。潤んだ瞳はまるで迷子の仔犬のようで
いつもの勝気な彼女らしくありません。
そんな織姫さんに声もかけずに、レニさんは、また立ちあがりました。
「……レニ」
「心配しなくていい」
上目使いに見上げる織姫さんに、レニさんが答えます。
「賭けを受けたのはボクだ。どんな結果になろうと、責任はボクにある。
 ここでは邪魔になるだろうから、しばらくよそで発声練習をしてくる。
 …織姫も一緒に来てくれる?」
それだけを言い終えると、レニさんは恥ずかしそうに微笑みながら、
織姫さんに右手を差し出しました。
「当然でーす!」
織姫さんは花のような笑顔を浮かべて立ちあがり、
レニさんの小さな体をギュッと抱きしめました。
247201:02/04/30 08:14
発表の開始から約一時間がたちました。3回目に幕が降り、中等部の人達が
自分の楽器とパイプ椅子を持って舞台袖に帰ってきます。
いよいよ、次がアヴェマリアの演奏です。
「レニくん、しっかりね!」
「いつもみたいに歌って、みんなをビックリさせてやりなよ!」
お友達から励ましの言葉を受けて、レニさんはステージに歩いていきました。

「みなさんにお楽しみいただきました演奏も、次が最後の曲になります」
「独唱、中等部3年、レニ・ミルヒシュトラーセさん。伴奏、同じく中等部3年、
 ソレッタ・織姫さんで、グノー/バッハ作曲、アヴェマリア」
「では、ごゆっくりとお楽しみください」
メルさんとシーさんの紹介を受けて、2人が客席に一礼します。
椅子に腰を下ろした織姫さんは、瞳を閉じて大きく息をつくと鍵盤に手を伸ばしました。
織姫さんの白く細い指が鍵盤の上をゆっくりと滑り始めると、
静かな、しかし深い旋律が紡ぎ出され、大講堂に満ちていきます。
今までの学生レベルのものとは明らかに質の違う演奏に、観客席の人達が
驚きの目を向けたとき、レニさんの澄んだ歌声が、その伴奏に載せられました。
248201:02/04/30 08:14
Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,

柔らかな深みのある歌声は、織姫さんのピアノ以上に観客に驚きを与えます。

benedicta tu in mulieribus,
et benedictus fructus
ventris tui, Jesu

驚嘆の波紋が大講堂いっぱいに広がって行きます。他に気をとられる人など
一人も無く、まだ小さな子供でさえ、少しも聞き漏らすことがないようにと、
まるで魅入られたように舞台のレニさんを見つめています。

Sacta Maria, Sancta Maria, Maria
ora pro nobis,
nobis preccatoribus,
nunc et in hora,

誰もが息をするのも忘れてレニさんに注目しています。その歌声が引き起こした
小さな奇跡を気にする様子も無く、レニさんは歌い続けました。

in hora mortis nostrae.
Amen, Amen.

3分にも満たない演奏が終わった時、大講堂は完全な静寂につつまれました。
演奏の余韻を失うことをおそれるように誰一人物音を立てず、
時間すら止まったように感じられる空間は
誰かが小さく手を打ち合わせる音に破られました。
感動は次々に伝わり、まるで今までの静寂を取り戻そうかとするように、
会場は割れんばかりの拍手とアンコールを求める声で埋まりました。
249201:02/04/30 08:15
「うまくいったようだね」
「ここまではな」
2階の貴賓席では、ふくよかな熟年の女の人と、少しお酒の匂いのする
男の人が楽しそうに話しています。
「レニのことは、わたしも噂には聞いていたんだがね。これほどとは思わなかったよ。
 ムッシュヨネダの見立てに間違いはないってことだね」
「よせやい、あんまり、おだてるもんじゃねえぜ。
 まあ、本当のとこを言うと、俺もこれほどとは思ってなかったんだがな。
 これだけの観衆の前にいきなり引っ張り出されて、あの歌だ。
 やつの舞台度胸はたいしたもんだよ。・・…ありゃあ、化けるぜ」
米田さんはズレ落ち気味の小さなメガネの奥の瞳をいたずらっぽく輝かせています。
「それにしても、あのレニをよく引っ張り出せたもんだな」
「それについちゃ織姫とメルの手柄さ。あの子たちが、よくやってくれたんだよ」
「メル・レゾン、グラン・マの秘蔵っ子か。いい具合に育ってるようじゃねえか」
「まあね。メルとシーは、今までわたしが育てた子の中でもスペシャルだよ」
嬉しそうに笑うグラン・マさん。放送部の二人が、よほどお気に入りのようです。
「それじゃ、ムッシュヨネダ、あれは予定通りレニでいくかい?」
「ああ、今年の『奇跡の鐘』はやつで決まりだな」
2人は顔を見合わせると、耐えかねたように笑い出しました。
「わはははは。しかし、大神も、とんでもない大荷物をしょわされたもんだ」
「そうだねぇ。いったいどうやってレニを口説きおとすものか。
 まったく見物だよ」

2人は大神くんに何をさせるつもりなのでしょうか?
いったい『奇跡の鐘』とは、何のことなのでしょう?
お話は、まだまだ続きます。
                                    <第二話、おわり>
うーん大作ですなサクラ学園
続きがたのしみいいいいいいいい!


まあ、外野の声がうるさくなってきたとか思ったら、
自分でサイト開いてSS上げればいいんじゃないのかなあ?
そんで、ここにそのリンク貼ればいーじゃん。
ネタがサクラ大戦なわりにはちょっと地味な気もするけど
丁寧で上手いと思うよ。
もし良かったら続きもおながいします。
(・∀・)イイ!!星組二人とっても(・∀・)イイ!!
ラチェたんは出てこないのかな?
続き楽しみにしてるよ。がんばれ!!
253201:02/05/03 19:50
>250
これからもまだ続きますし、ホームページも考えに入れた方がいいですね。
ただ、自分のサイトを作るとなるとSSだけでは見栄えが悪いですし、
イラストを描いて挿絵を作るとなると、時間が……

>251
はい、話が地味なのは自覚しています(笑
自分の作風などと言い訳していないで、
構成を考え直した方がよさそうですね。

>252
ラチェットは魅力的なキャラのようですが、私、映画見てないんです…
ビデオ屋に行ったら貸し出し中だったし……

では、第三話です。これも今までのように三回のUPで終了の予定です。
254201:02/05/03 19:51
「はぁ、それも生徒会長の仕事ですか?」
バザーの次の日、放課後に校長室まで呼び出された大神くんは、
何やら弱った顔で校長先生に聞き返しました。
「大神くん、聞いてなかったの?」
校長先生の隣に立った、長髪でメガネをかけた理知的な顔つきの男の人が、
不思議そうな顔で逆に聞き返してきます。
「そうよ、一郎ちゃん。この話は結構有名なはずだけどぉ」
2メートル近くありそうな長身に、それに見合った厚い胸板。
まるで、プロレスラーのような男の人は、外見に似合わない話し方で
大神くんにウインクをしました。
「会長も副会長も、そんな話してくれなかったじゃないですか!」
「大神くん、私達はもう引退したんだから、会長はやめて欲しいわね。
 ちゃんと名前で、……琴音って呼んで」
「わたしのことは斧彦。うまく言えたらチュ〜してあ・げ・る」
「…………いえ、チューは結構です」
頬をさくら色に染める2人に、大神くんの顔色はゲッソリと青ざめています。
255201:02/05/03 19:51
「それよりも、大神、本当に知らなかったのか?」
「知りませんよ!聖誕祭の歌劇なら、演劇部と合唱部とで分担でしょう?
 その出演交渉を、なんで生徒会長がするんですか!?
 そんなこと、校長は一言も言わなかったじゃないですか!」
「知ってるもんだと思ってたからなぁ」
校長先生も困り顔。どうやら、本当に大神くんが知っていると思っていたようです。
「でもね、一郎ちゃん、これは初代会長からの伝統なのよ。
 初等部から通ってて、ホントに知らなかったの?」
「そうよ。去年は私もやったことなんだから。
 『奇跡の鐘』の運営は、生徒会の一番大事な仕事なのよ」
立派な体格の男の人がシナを作って話す様子は、見ている方としては、どうにも落ち着きません。
256201:02/05/03 19:52
「それと、大神よ。おめえ、間違ってるぞ。演劇部と合唱部がやってんのは協力だ。
 主催はあくまで生徒会なんだぜ。でえいち、去年の聖母役は演劇部だったか?」
「……たしかに、違います」
「聖誕祭は学校全体が1つになって行うことだし、特に歌劇はその目玉だもの。
 1つの部に頼るってわけにはいかないわね」
「だから、高等部の生徒会が中心になって運営することになってるのよ。おわかり、一郎ちゃん?」
2人の言うことは一々もっともなのですが、どうにも、その口調が……。
「はぁ、だいたいのことはわかりましたけど……」
そうは言うものの、大神くんの態度は、あまり乗り気には見えません。
「大神!なんだ、そのフヌけたツラは!やるならやるで、もっとシャキッとしやがれっ!」
校長先生が一喝すると、大神くんの表情が一変しました。
「はい、米田校長!大神一郎、粉骨砕身の覚悟で、聖誕祭を成功させてみせます!」
「その顔だ、大神!やりゃあ出来るじゃねえか!」
校長先生も、大神くんの様子を見て満足げに笑います。
もともと、大神くんは切れ長の一重が印象的な男らしい顔立ち、
整った目鼻立ちで美形と言ってもよいでしょう。
その大神くんが、やる気のみなぎらせた横顔は、さながら、精悍な若狼を思わせます。
「や〜ん、大神くんセクスィ〜!」
「斧彦、惚れなおしちゃうわ〜!」
大神くんの表情は、また青ざめてゲッソリに戻ってしまいました……。
257201:02/05/03 19:52
「出演者は自薦他薦を問わず…か。こんな項目があったなんて、知らなかったよ」
「大神は、いつも大事なとこでヌケてるからなぁ」
「おにいちゃんは、ヌケてなんかないもん!」
大神くんと加山くん、それにアイリスちゃん。
3人は仲良く話しながら、中等部の方に歩いていきます。
「アイリスはねぇ、自分で『りっこうほ』したの。
 これで、学部はちがっても、おにいちゃんと一緒にいられるでしょ?」
大好きな大神くんと手を繋いでいるのが、よほど嬉しいのでしょう、
アイリスちゃんはニコニコ笑いながら話しています。
「聖母さまになれなかったのは残念だけど、でも、これで放課後は、いつも一緒だね♪
 おにいちゃん、今年の聖母さま役の人は、どんな人なの?」
「アイリスは昨日のバザーで、管弦楽部の発表は聞いてなかったのかな?
 最後のアヴェマリアを歌った人が推薦されているんだよ」
「え!じゃあ、あの銀色の髪の人が、今年の聖母さまなの?
 楽しみだなぁ、すっごく上手だったもん。アイリスなんて、あのお歌聞いて涙でちゃった!」
「そうだね。今日は学校中が、昨日のアヴェマリアの話ばかりだったからね。
 うん、あの子が歌うのなら、舞台は成功間違い無しだ。加山も、そう思うだろ?」
大神くんが横を向くと、加山くんは口を尖らせてジトーッとした目でこちらを見ています。
「……加…山?」
「え〜え〜、そうでしょうね、そうでしょうとも。軽音はそんな感動は与えられなかったしな……。
 へっ、どうせ俺達なんて……」
「……スネるなよ、加山」
258201:02/05/03 19:53
「ところで、このレニ・ミルヒシュトラーセって子は、本当に中庭にいるんだろうな?」
「大神、俺の情報収集力を疑ってるのか?
 昼休みや放課後は、いつも中庭で読書。友達の多い方ではないようだな」
「そうか、人付き合いが苦手で読書が好きな、内気で純粋な子なんだな。
 昨日の歌も素晴らしかったし、きっと素直で可憐な子なんだろうなぁ」
「……まあ、好きなだけ妄想しておけ」
あきれ顔でつぶやく加山くん。
「ん?何か言ったか?」
「いや、もうすぐ中庭だなって言っただけさ」
中等部の第2棟を通り抜けて、3人は枯葉の舞う中庭に入ります。
大神くん達が探していた銀の髪の女の子は、大きな銀杏の木の下にあるベンチに座っていました。
259名無しくん、、、好きです。。。:02/05/05 11:47 ID:ZFOFObrU
何げに、ageておく
260:02/05/05 11:50 ID:M6HtW1NY
このネタ公式であった
花コラ1でアイリスのセーラー姿見られるの忘れてるな。
262名無しくん、、、好きです。。。:02/05/08 17:24 ID:JNAE6k5o
おもろい、ただただ楽しい
コクリコだろ!!
もうセラもどき着てるけど
264名無しくん、、、好きです。。。:02/05/08 23:42 ID:hQgtsu2Y
保全
265ガッツたんハァハァ:02/05/08 23:47 ID:cyixgKOI
ガッツたん。
266名無しくん、、、好きです。。。:02/05/09 15:44 ID:9qr6lnRM
何にせよコクリコ萌え
267201:02/05/09 22:48 ID:???
「レニ・ミルヒシュトラーセさんですね?」
大神くんが声をかけると、レニさんは、それまで読んでいた本を伏せて、ゆっくりと顔を上げました。
「…………」
まったく表情を変えずに見つめるレニさん。大神くんは慌てて口を開きます。
「あ、怪しい者じゃない。俺は高等部の生徒会長で大神一郎というものだ」
「……それで?」
レニさんの態度は変わりません。くじけそうになりながら、大神くんは続けます。
「昨日のアヴェマリア感動したよ!いい歌だった!
 俺だけじゃない、今日なんて学校中がこの話ばかりだったし…」
「用件は、整理して話して欲しい」
大神くんは泣きそうになりました。
268201:02/05/09 22:49 ID:???
(加山!話が違うじゃないか!どこが素直で可憐な子だ!)
(お前が勝手に妄想しただけだろうが!俺は知らん!)
2人がボソボソと小声で言い争っていると、レニさんは興味なさそうに読書に戻ります。
「待ってくれ!話を聞いて欲しいんだ!」
もう一度、めんどうくさそうに顔を上げるレニさん。
「君も知っていると思うが、聖誕祭の楽劇は毎年有志を募って運営されているんだ。
 その聖母役に君を強く推す人があってね。どうしても君に出演して欲しい」
「……誰かに言われたから、交渉に来たの?」
冬の泉のように澄んだレニさんの瞳が、正面から大神くんをとらえます。
「そうじゃない!昨日の発表を聞いてしまったら、君以外のマリアは想像もつかないよ。
 俺は、俺の意思でここに来たんだ」
レニさんは少しも表情を変えずに大神くんを見ています。
269201:02/05/09 22:49 ID:???
どのくらい時間がたったのか、耐えきれなくなった大神くんは、もう一度呼びかけました。
「ミルヒュトラーセくん!」
「レニでいい」
少しは進展したと思ったのか、大神くんが嬉しそうに顔をほころばせた時、
レニさんは、ゆっくりと瞬きをして大神くんに話かけました。
「……1つ確認しておきたい。それは、強制なの?」
「いや、あくまで本人の意思を尊重して…」
「それなら、話は簡単だね。歌わない」
慌てて何かを言おうとする大神くんを制するようにレニさんは立ちあがって、
校舎の方に歩き出します。
「待って!お話、聞いてほしいの!」
アイリスちゃんが両手をいっぱいに開いて通せんぼをします。
「きのう、レニさんのお歌を聞いて、アイリス涙がでちゃったの!」
「……『さん』はいらない」
レニさんの硬い声にアイリスちゃんは少しだけひるみましたが、
勇気を出して、もう一度大きな声で言いました。
270201:02/05/09 22:50 ID:???
「きっと、アイリスだけじゃないの!きのうのお歌は、みんなを幸せな気分にしてくれたの!
 アイリスはレニの聖母さまが、とっても楽しみ。
 みんなも、レニが聖母さまをするってきいたら喜んでくれると思うよ。
 それでも、レニは歌ってくれないの?」
大きな青い目にいっぱい涙をためて見上げるアイリスちゃん。
レニさんは、そのアイリスちゃんを見下ろして、まったく無表情で言いました。
「……歌わないよ」
ぽろぽろと涙が玉になって零れ落ちます。
レニさんは、それを気にする様子もなく校舎に入っていきました。
                                           <つづく>
271201:02/05/09 22:53 ID:???
しばらくネットに繋げなかったので遅くなりましたが、
ようやく続きを貼り付けられました。
続きはほとんど書けているので、明日中には貼り付けます。
保全してくださった方、ありがとうございました。
>>271
ワーイ 大期待!!
273201:02/05/10 21:08 ID:???
次の日の昼休み、いつものように一人で購買にパンを買いに来た
レニさんを、同じクラスの女の子が呼び止めました。
「レニくん、さっき用事があるって高等部の人が尋ねてきてたよ。
 いつも、ご飯食べてる中庭に行くように言っておいたから、
 パン買ったら、そっちに行ってね」
また、大神くんが来たのでしょうか。レニさんは興味がなさそうに頷いて、
購買に入って行きました。

「レニさん、早かったですね。お弁当食べながら話しましょうか」
中庭でレニさんを待っていたのは、思いもかけない人でした。
「……メル・レゾン。どうして、君が?」
「それを今からお話するんです。さあ、座ってください」
にっこり笑うと、メルさんはポケットから取り出したハンカチをベンチに敷いて、
自分も腰を下ろしました。
274201:02/05/10 21:09 ID:???
メルさんに流される形でベンチに座ったレニさんが隣を見ると、
先に座ったメルさんは、もう自分のお弁当を広げています。
栄養の他に彩りも考えて盛り付けられたメルさんのお弁当に比べて、
レニさんの買ってきた調理パンは、いかにも味気なく思われました。
「実はですね、この間お話した望遠鏡の使用許可が下りたので、
 今日は、それを知らせに来たんです」
ふんわりと美味しそうな厚焼き玉子を口に運びながら、メルさんが話し掛けます。
「賭けに負けたのはボクだ。それなのに、何故、使用許可を?」
「あ、そのことですか。それは簡単です。わたしがズルをしましたからね」
食べかけたコロッケパンを、もう一度袋に戻して、レニさんはメルさんを不満げににらみます。
「……どういうこと?」
「簡単に言うと、あの時イカサマをやったんです。あのままだとレニさんが勝ちそうだったので、
 レニさんの引くカ−ドを、あらかじめ用意したのと摩り替えました」
その言葉とは裏腹に、メルさんは邪気のない微笑を浮かべています。
「全部、仕組んでいたというわけ?」
「あ、織姫さんや管弦楽部の人を怒らないで下さいね。
 これは、グラン・マに言われて、私が考えたことですから」
「…………」
275201:02/05/10 21:09 ID:???
「『奇跡の鐘』の件は、もう聞いていると思いますけど、グラン・マと米田校長が
 あなたを聖母役に推しているんですよ。とはいえ大役ですからね、
 抜擢の前に観衆の前でどのくらい歌えるかを調べておきたいということで、
 わたしがお膳立てをしました」
そこまで言うと、メルさんはナスのはさみ揚げを器用にお箸で割って口に運びます。
「一昨日と同じように、今度もボクを騙して歌わせるつもり?」
「そんなわけはありませんよ。おとといのことは、わたしも申し訳なかったと思っています。
 ですから、こうやって望遠鏡の使用許可を取ってきたんです」
「信用できない……」
「そうでしょうね」
クスクスと笑いながらメルさんは続けます。
「でも、この許可書は本物ですよ。ほら、理事長の判も押してあります。
 わたしが何かを考えていたとしても、あなた達が望遠鏡を使えることに変わりはありませんよ」
「……そうだね、今度は騙されないようにするよ」
「ええ、それがいいと思います」
レニさんの挑むような目にも少しもひるまずに、メルさんはニッコリと切り返しました。
276201:02/05/10 21:09 ID:???
「ただ、中等部の生徒だけでは利用をみとめられません。
 わたしも心安い先生方にお願いをしてみたのですが、よいお返事は頂けませんでした」
「だろうね。ボクも手はつくして、その上であきらめた」
「ええ、中等部の先生方にお願いした時に、その話は聞きました。
 初等部や高等部の先生方にもお願いしたのですが、やはり、無理でしたね」
「なら、それには意味がないね」
レニさんはメルさんの取り出した学校側の許可書に視線を移して、
諦めとも嘲りともつかない微笑みを浮かべます。
「いえ、学校側に信頼をおかれている方が代表として責任をとれる立場にあれば、
 許可は下りますよ」
「……つまり、その『信頼のおける方』を用意してあるの?」
「わかりますか?」
冷めた表情のレニさん。メルさんは、それとは対照的にとても嬉しそうです。
「高等部の生徒会長はご存知ですね。
 大神さんが責任者ということで、学校には納得してもらいました」
メルさんはいたずらっ子の笑顔でニッコリと笑いました。
                                    <第三話、おわり>
277201:02/05/10 21:21 ID:???
第三話終了です。
まだ、登場していないのは、カンナ、紅蘭、ロベリア、花火ですが、
次回で紅蘭も登場します。あと三人か… (;´Д`)フゥ
さくらやすみれも顔見せ程度ですから、もっと大きい役をやりたいところですし
全員出して動かすのは難しいですね。

次は今回ほど間を空けずに書きこみたいと思います。
>>277
お疲れ様です。
続きがすごく楽しみです。これからも頑張って下さいね。

…で、拙いですが挿絵もどきを描いてみました。
1話のアイリスとコクリコ。
ttp://www68.dns.ne.jp/~bbs2/upload3/helen/OB0005284.jpg

ほんわかな雰囲気を意識して描いたんですが…
イメージ崩してしまったらごめんなさい。
お目汚しで失礼しました。
279201:02/05/12 22:20 ID:???
>278に書きこんであるURLに飛んでみたのですが、
サボール計画というサイトに行ってしまいます。
uploadとあるのでUP板があるのかと思ったのですが、
それも見当たりませんし、どうしたら見られるのでしょうか?
ご教示いただけませんか。
>>279
ログが流れてしまったみたいですね。
もう一度UPしておきます。
ttp://www68.dns.ne.jp/~bbs2/upload3/helen/OB0005689.jpg
281201:02/05/13 07:54 ID:???
>280
ありがとうございました。おかげさまで見れました。
>ほんわかな雰囲気を意識して描いた
とのことですが、仲良しの2人が、とてもいい感じですね。
こういうのって励みになるなぁ。
今日から次の話にとりかかりますので、また3回にわけて貼り付けます。
それでは、学校にいってきま〜す。
個人的に織姫にはブレザーが似合うと思う。

せめて小ネタでも書ければ協力できるのになあ。
201さん頑張れ!