飽きない2人のやり取りを見ていたら、青木さんが急に僕に向き直った。
千砂「ほ、本当ですよ?私、本当に男の人の部屋になんて入った事ありませんから!」
何故か必死に僕に訴えてくる青木さんが可笑しくて、僕は笑いながら
一也「うん、信じるよ。」
と言うと、青木さんホッとした表情で僕を見た。
千砂「良かった………。」
いつみ「ヤだなぁ、ジョーダンだってぇ。もう千砂ってば可愛いんだからぁ!」
くねくねと身をよじって青木さんに纏わりつくいつみ。
口を尖らせて青木さんにキスを迫るいつみを青木さんは笑いながら遠ざけようとしている。
なんだか羨ましい。
いや、キスが羨ましいんじゃなくて、心を許せる友達を持つ2人が。
千砂「もういつみ、暑いから離れてよ……」
そう言うと青木さんは立ち上がって、いつみを無理矢理引き剥がした。
ぺたっと虚しく身体を床に横たわらせるいつみ。
いつみ「あん……もう、千砂のイ・ケ・ズぅ♪」
タンクトップの隙間から覗くいつみの胸の谷間に僕は思わず2人から顔を背けた。
青木さんは膝までのスカートに涼しげなシャツで清潔感溢れる服装だが、
いつみはタンクトップにミニスカートをいう夏に相応しく危なげな服装なのだ。
こちらが目のやり場に困っているのに、当の本人はさして気にもしていないようで
いつもと変わらない振るまいを見せている。
あぁ……そんなに足を広げると……見えちゃうぞ……。
いつみ「ん?どしたの?」
黙り込んでいた僕にいつみが問いかけてきた。
一也「あ、いや、別に……相変わらず仲良いなって思ってさ」
心の内を悟られないように答えた……が、何やらいつみは笑みを浮かべて僕を見た。
いつみ「だってアタシ達、恋人同士だもん!」
一也「えっ!?」
まさか、2人の関係はそんなに進んでいたのか!?
千砂「バっ、バカな事言わないで!いつみ!う、嘘ですよ時田さん、私達そんなんじゃありません!」
青木さんが必死の形相で弁明する。
いつみ「え〜〜〜千砂つめた〜〜〜い。アタシ振られちゃったの?」
指を咥えて拗ねた表情を見せるいつみだったが、青木さんは本気で怒っているみたいだ。
千砂「いい加減にしないと怒るわよ!?」
いつみ「ひ〜〜〜ん、千砂が怒ったぁ〜〜〜!!」
いつみが立ちあがって僕に抱きついてきた。
ぎゅっと両腕を胴に回して、必要以上に身体をくっ付けてくる。
一也「わぁ!」
千砂「ちょっといつみ!!時田さんから離れなさい!そんなにくっ付くと迷惑でしょう!?」
青木さんが僕からいつみを引き離そうと彼女の腕を引っ張る。
しかしいつみは僕の身体から離れようとしない。
いつみ「迷惑?」
いつみが僕を見上げてそんな事を訊ねてきた。
迷惑……どころか、むしろ嬉しいんだけど………青木さんが怖い。
いつみ「ほぉら、迷惑じゃないって!って言うか嬉しいってさ!」
僕が言いよどんでいると、いつみはさらに身体を密着させてきた。
胸の感触が………柔らかい太股が………。
千砂「時田さん!」
一也「は、はい!」
青木さんの怒りが僕に向けられる。
千砂「いつみ!!はなれな………さいっっ!!」
いつみ「わ!」
青木さんが思いきりいつみを引っ張り、柔らかな感触は僕の身体から去っていった。
名残惜しいが青木さんを怒りっぱなしにさせておく訳にもいかない。
僕から引き剥がされたいつみは引っ張られた反動で再び青木さんに抱きついた。
いつみ「千砂ぁ〜〜、やっぱり私の事が好きなのね〜〜ん!!」
千砂「ちょっといつみっ!?」
いつみ「ぴらっと……」
千砂「きゃああ!!?」
いつみが青木さんのスカートの裾を持ち上げた。
中から真っ白の眩しい下着が見えたのを僕は見逃さなかった。
千砂「なっ……何するのよっ!!」
ドン、といつみを突き飛ばし、すぐさまスカートを直す青木さん。
しかし僕の網膜には真っ白なパンティが焼きついて消えようとはしなかった。
ニヒヒ、と嫌らしい笑みを浮かべたいつみが僕を見つめて、
いつみ「やっぱり千砂の方がいいの?アンタも好きねぇ……それぇ!!」
と青木さんを僕の方へ突き飛ばした。
僕は慌てて青木さんを抱きとめる。
千砂「きゃ……」
いつみ「千砂ぁ!やっちゃえ―――!!」
すっぽりと僕の胸の中に収まった青木さんは俯いたまま、ただじっとしている。
一也「いつみ、もう勘弁してよ……」
僕は少し悪ノリが過ぎるいつみにお願いすると、青木さんの腕の中から解放しようとした。
すっ。
一也「え?」
僕の背中に優しく手がまわされた。
遠慮がちに青木さんが僕の胸に顔を埋めてくる。
千砂「と、時田さん………」
一也「な、なに?」
千砂「…………、わ、私の事……どう思いますか………?」
一也「ど、ど、どうって……?」
千砂「好きとか……嫌い、とか………」
わずかだが、『嫌い』のところで声が小さくなった。
それは青木さんも考えたくない事だったのだろう。
顔を伏せて僕を見ようとしない青木さんに、
僕はどう答えたらいいかただ迷ってしまっていた。
嫌いな訳はない。どちらか選べと言われれば、『好き』なのだろうが、
青木さんが求める『好き』という意味とは何か違うと感じていた。
そう、『Like』であって『Love』じゃない……。
青木さんが僕の何処を気に入ったのかは判らないけれど、
僕はまだ青木さんをあまり知らない。
それなのに軽々と『好き』なんて言葉を口にしてしまっていいものなんだろうか?
いつみ「もう!黙ってないで何とか言ってあげなよ!」
黙っていた僕に、じっと状況を見据えていたいつみが声をかけてきた。
いつまでも答えが出せない僕をもどかしく思ったのか、
親友の青木さんの気持ちを汲み取ってあげたのか。
一也「き、嫌いじゃないよ、うん。青木さん、いいコだと思うし…………」
千砂「………」
ま、まずかったかな?
青木さんは黙ってしまった。
僕の言葉を頭の中で整理しているみたいだ。
千砂「………そうですか……。でも、よかったです。嫌われていないみたいで。」
そう言うと、青木さんは僕から離れた。
しかしその表情は、まるでずっと抱えていた問題が解決したような清々しさを僕に感じさせた。
そして僕らのやり取りを見つめていたいつみが、
青木さんの肩に手を置いて慰めるように語り掛けた。
いつみ「なぁに〜?何だかハッキリしない答え。」
一也「し、しょうがないじゃないか……そんな急に言われて……」
僕はいつみの問いにしどろもどろになりながら、どうなんだろうと自問した。
僕の知っている限りでは、青木さんはすごく可愛い女の子だと思う。
でも、僕は……僕の心の中には、十年前からずっと気になってた……いや、
好きだった女の子がいるんだ。
いつみ「アタシ達、そんなにホイホイこっちに来れる訳じゃないんだからね。
次会えるのだって、いつになるかわかんないんだから。
それまでずぅっと千砂の事、放っておくつもり?」
一也「そ、それは……」
いつみ「ふぅん……でも、脈アリなんだよね、迷ってるってことは。
よぉぉっし!もう一押しだね!こうなったら千砂のカワイイところ、全部見せちゃおうっ!!」
そう言うや否や、いつみは青木さんのスカートの中に手を突っ込んだ。
千砂「いいつみッ!?」