昔懐かし慟哭スレ P2

このエントリーをはてなブックマークに追加
967埋めたて職人
ミンミンミンミン………ジ―――――………

家の壁に止まったセミがうるさい。
いよいよ夏も本格的になってきたと実感させる泣き声だ。
「暑いなぁ……。」
そんな事を1人ぼやいてみる。
僕は団扇を片手にぱたぱたと扇ぎ、カラカラに晴れた青空を窓から見上げた。
夏休みが始まったのは嬉しいが、こう暑いと何もやる気が起こらない。
ここ3日はこんな状態で寝そべる毎日が続いている。
「宿題……しないとな………。」
毎年、休みの終わりに大急ぎで必死で終わらせている課題を思いやりながら、
重い身体を机に向かわせる。
しかしそんなにすぐ集中できるはずもなく、僕は立て肘をついて壁に掛かってる時計を見た。
時計の針は午前10時を指そうとしていた。
「梨代……何してるかな?」
僕はシャーペンを指で遊びながら、そんな事を考えた。
彼女と僕の関係は”クラスメイト”のままだったが、あの事件から確かに2人の距離は近づいていた。
お喋りも楽しいし一緒に帰る事も多くなって、以前よりもより彼女を身近に感じる。
だけど、僕はまだ自分の想いを伝えてはいない。
もうお互いの気持ちは通じ合っていると想うが、僕は一歩前へ踏み出すことが出来ずにいた。
夏休みに入る前に言ってしまおうかと思ったものの、
いざ2人っきりになると照れくささが勝ってしまって口篭もってしまう。
おかげで寂しい夏休みを送る毎日だよ……。

ミンミンミンミン………ジ―――――………

暑いなぁ。
外から、キャイキャイと騒ぐ女の子の声が聞こえる。プールでも行くんだろうか?
いいなぁ、プール。僕も梨代と一緒に………。
賑やかな声が近づいて来る。そしてそのまま家の前の道を通りすぎると思っていた
その瞬間、家のインターホンが鳴った。
ピンポーン。
968埋めたて職人:02/07/20 12:03 ID:???
「……ん?」
お客さんかな。
僕はトントンと階段を降りると、玄関に早足で向かった。
何やらドアの外から声が聞こえる……。

(ほ、本当にブザー押しちゃったの?)
(今更何言ってんの?もうここまで来ちゃったんだから覚悟決めなよ!)
(そ、そんな事言ったって……)
(さっさと言っちゃわないと、手遅れになるよ?)
(え?)
(千砂はアイツが他の女の子とイチャイチャしててもいいの?)
(…………………ぃゃ)
(んじゃもう言っちゃうしか!時田さぁ〜〜ん、愛してます〜〜〜っって!!)
(ちょ、ちょっと!!いつみ、声が大きいっ!!)

がちゃ。
「「あ!!」」
ドアを開けてみると、あれからさほど時間は経っていないのに
妙に懐かしく感じる顔が2つ。
969埋めたて職人:02/07/20 12:04 ID:???
一也「あれ?青木さんと……いつみ……どうして?」
千砂「こっこここ……、こんにちわ!!」
青木さんがじっと僕の足元を見て顔を真っ赤にしながら挨拶してきた。
千砂「ごご迷惑かと思ったんですけど夏休みに入って私も時間が余ってしまって退屈でしたから
    ちょっとこちらの方に遊びに行こうと思いつきましてでもやっぱり急に来られても時田さん
    困っちゃいますよねごめんなさい私どうかしてたんですだけどあの時きちんとお礼…」
いつみ「千砂ぁ」
千砂「言えなかったし元気にしてるかなぁとか考えてると居ても立ってもいられなくなって
    こっち来てから考えようとか思っちゃってそれで後先考えずに来ちゃったんですけど
    よく考えたらすごく迷惑な話ですよねホントにごめんなさい私は時田さんの…」
いつみ「千砂ぁっ」
千砂「元気な姿をちょっと見れればそれでいいって思ってたんですけどいつみが急にブザー
    押しちゃってここまで来て顔見るだけじゃ意味ないじゃんとか訳わかんない事言って
    でも元気そうで安心しました病気とかしてたらどうしようかと思っちゃいましたじゃあ
    帰りますねどうもすみま…」
いつみ「千砂ってばぁ」
千砂「何よいつみっ!!ちょっと黙ってて!!」
いつみ「何言ってんのかわかんないよ?」

ジ―――――……ジッジジッ………

短い命を終えたのか、どこかへ飛び立ったのかは解からないが、
セミの鳴き声が止んだ。
辺りを静寂が包む。なんだか空気が重い……。
970埋めたて職人:02/07/20 12:05 ID:???
一也「あ、あの……ここで立ってても暑いし、良かったら上がっていかない?」
僕は居心地の悪いこの雰囲気をなんとか打開しようと、2人を家に招き入れた。
千砂「は、はい………お邪魔します…………」
いつみ「おっ邪魔しま―――す!!」


いつみ「こっちも暑いね――!焼けないように気をつけなきゃ。」
ボスンと僕のベッドに腰を下ろして、いつみがパタパタと自分に手で風を送っている。
お客が来たので部屋に冷房を入れたが、僕達はまだ少し蒸し暑さが残る部屋でなんとか
涼しさを得ようと各自努力していたのだった。
そんな中、部屋の入り口で立ったままだった青木さんに僕は座布団を用意して彼女に勧めた。
一也「青木さんも座ってよ。ちょっと散らかってるけどね。」
ははは、と自嘲気味に笑う。
女のコが遊びに来るならきちんと片付けておけばよかった……と今更ながら思う。
エッチな本とか出てないよな……。
千砂「い、いえ……、男の人の部屋にしては綺麗な部屋だと思います。
    ここが時田さんのお部屋なんですね……。」
いつみ「へぇぇぇ……千砂って男の子の部屋入った事あるんだぁ。ふ〜〜〜ん。」
千砂「なっ…、無いわよ!変な事言わないでいつみ!!」
いつみ「だぁってぇ、綺麗な部屋だって解かるんだからぁ汚い部屋に入った事あるんでしょ?」
千砂「わ、私が言ったのはあくまで客観的に見て……」
いつみ「アタシィ〜〜、難しい言葉わかんな〜〜〜い」
両手を広げて白々しくいつみがとぼける。あれは青木さんをからかって楽しんでいるな……。
青木さんもいちいち相手しなくていいのに…でも根が真面目だから答えちゃうんだろう。