僕もノーマと付き合うようになってから、『ホントにいるんだ』って思うようになったし。
メイド……それは男のロマン。世の男性がきっと一度は夢見るものだろう…と僕は思う。
でも……ジロジロジロジロ見られるのは…悪い気分じゃないけど、かなり恥ずかしい。
しかし、メイドさんと歩くなんて普通じゃ経験できないだろうから、この機会を逃したら…。
「あの……子鈴さんは、恥ずかしくないですか?その格好……。」
「えっ…いえ、別に。もう慣れてしまったみたいで…。
あっ、時田さんはお恥ずかしいですよね、私がこの格好だと……。
すみません、気づかなくて…。少し離れて歩きましょうか…?」
「いっ、いいえぇ!!ぜひ並んで歩いていただきたく……っ」
子鈴さんは僕が急に大声を出したので一瞬ビクッとして身体を固まらせたけど、
にこっと優しい笑顔で僕を見て、
「ふふふっ。じゃあ行きましょう。ノーマ様が待っています。」
と言ってくれた。
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「遅い!おっそいでー!!何しとったんや?ウチをほったらかしにしてっ!!」
見事な桜が咲いている木の下、薄いブラウスと短いスカートのノーマが僕達に口を開く。
「何って…ちゃんと真っ直ぐここに来たよ……。」
「ウソやっ!こんな時間かかる訳あらへんっ!!2人で茶ぁしばいてたんとちゃうか!」
「いえっ、ノーマ様をお待たせしておいてそんな事は絶対致しませんっ。」
ノーマがちょっとムキになって弁解する子鈴さんを見る。
「そーか…子鈴がそう言うんやったらなぁ。でもウチ退屈で死にそうやったわ。」
なんだよぅ…僕の言う事には聞く耳持たないのに、子鈴さんが言う事はすぐに信じて……。
でも、この2人がそれだけ深い信頼関係で結ばれているのかな。
「それよりノーマ、もうちょっと地図は丁寧に書いてよ。
いきなりFAXでこんなの送られたって、僕この辺はよく解らないんだから。」
「まぁま、無事に着いたんやからエエやん。終わり良ければ全て良し、やっ!」
……。
ほーら、思った通り。
「何や?ヘンな顔して。気色悪いなぁ。それよりほら、座りぃな。」
ノーマが横にずれて、僕らに席を空ける。
「でも綺麗に咲いてるね。ちょうど良い時に見れたみたい。」
「本当ですね。風も暖かくて気持ち良い……。」
僕らはしばし春の匂いを楽しむ。
「あ、僕手ぶらで来ちゃったけど何も持ってこなくて良かったのかな?」
「エエねんエエねん。こっちで全部用意したから。
取りあえず食べよ。さ、一也も子鈴も。」
そう言って、ノーマが脇に積んであった重箱の包みを僕らの輪の中で開く。
「じゃーん!!どやこの料理!正月ぐらいしかお目にかかられへんで!」
重箱の中には色とりどりの料理がぎっしり詰められている。
「うわー……すごいねぇ。でもこんなに食べられるの…?」
「ま、足らんよりマシやろ。でも全部食べんと作った子鈴が可哀想やなぁ。」
「えっ?これ子鈴さんが全部…?」
「はい…。時田さんのお口に合えば良いんですけど……。」
「子鈴の料理は天下一品や!そんな心配いらんわ。」
「へー、それじゃぁ頂こうかな。」
「どうぞ、召し上がってください。」
僕は子鈴さんから割り箸を受け取って手を合わせる。
「いただきまーす。」
「どうや…?」
「まだ食べてないよ……むぐむぐ。」
「……。」
2人はじっと僕のほうを見ている。