「どうぞお入りになって下さい」
「お邪魔します」
コンビニで久しぶりに子鈴さんに再会した僕は彼女のアパートへとやって来た。
六畳の部屋だがキッチンが広いので割と広く感じる造りだ。
「へー。綺麗な部屋ですね」
「そうですか? コタツ、電源入ったままですから座って下さって結構ですよ」
言われるまま僕はコタツに入った。
子鈴さんはジャンパーとマフラーをハンガーにかけ眼鏡も外し、買ってきた食料をキッチンに持っていく。
「時田さん、ご飯はもう食べられました?」
「まだですけど……」
「でしたら一緒に食べませんか? 簡単なものですけど」
「いいんですか?」
「はい。お誘いしたのはこちらですから」
彼女はもう準備を始めているようだ。この位置からは直接見えないけれど、冷蔵庫を開ける音や水の音が聞こえてくる。
しばらくするといい匂いがしてきた。シチューか何かの匂いだろうか?
「シチューですか?」
「ん。いえ……スープです」
返ってきた声が気のせいか弱々しい。
「子鈴さん? どうかしました?」
「な、何でもないです。もう少しですから待っていて下さい」
と言われたもののただ待ってるのも悪い気がする。料理は得意ではないけど手伝いくらいなら出来るだろう。
「やっぱり手伝いますよ」
立ち上がってキッチンへ行くと、慌てた声で子鈴さんがそれを制した。
「だ、駄目!」
「……え?」
キッチンに入った瞬間、僕は言葉を失った。
子鈴さんはセーターを捲り上げ、胸を外気に晒した状態でこちらを向いていたのだ。タオルを持った手が僕を阻んでいるが、彼女の胸は目に焼きついてしまった。
顔を見ると真っ赤にして俯いている。
「す、すみません!」
僕は慌てて居間に戻り、コタツに入って僕は頭を冷やそうとした。
少ししてようやく大体の様子が想像できた。
(多分、子鈴さんは料理をしていて何かをこぼしたんだ。確か胸に牛乳みたいな白い液体がついていたからそうだろう。それを拭いていた時に僕がキッチンに入ってしまったんだな)
しっくりこない気もするがこんな所だろう。