「どうですか? 時田さん」
青木さんに案内されて、僕らは小さな入り江に来ていた。両側を岩山に囲まれた、幅50メートルほどの砂浜。
「綺麗なところだね」
「でしょう? ちょっと歩くのが玉にキズなんですけど」
まるで自分のことを誉められたかのように、にっこりと微笑む。
「私だけの秘密の場所なんです。誰にも内緒ですよ?」
確かにその浜には僕ら二人のほか誰もいなかった。最初に寄った海水浴場の喧噪が遠くに聞こえる。
「じゃあ、早速泳ぎましょうか」
言うが早いが、着ていたTシャツの裾に手をかけて一気に持ち上げる。赤いビキニに包まれた、形のいいバストが現れた。
そのまま手のひらを組んでストレッチをはじめる。身体をひねり、のばし、傾けるたびに二つのふくらみがふるふると揺れた。
僕はシャツを脱ぐのも忘れて、その光景に見入っていた。
続けて身体を前に倒し、前屈運動。大振りのヒップが青空に向かって突き出される。
思わず海水浴場でのハプニングがフラッシュバックして、股間が熱くなった。
……柔らかそうなお尻だったよなぁ。
……水着の形に日焼け痕が残ってて、それがまた。
「…時田さん?」
突っ立ったままの僕を不審に思ったのだろう、こちらに向き直って声をかけてきた。
「だめですよ、ちゃんと柔軟……」
言いかけた言葉は、途中で飲み込まれてしまった。僕の方をむいて固まったまま、押し黙っている。
いや、正確には僕の顔を見ているわけではない。彼女の視線は僕の腰あたりに向いている。前を大きく膨らませた、僕の海パンに……。
「あ、あはははは」
あわててシャツの裾を引き延ばして、前を押さえる。
「……」
「いや、あの、これはその」
青木さんは両手で胸をかき抱き、こちらをジト目で睨んでいる。
「えーと、ですから」
「…えっち」
そのまま背中を向けて、海に走っていった。
「ああっ、待って」
あわてて後を追う。穏やかな波を蹴立てて、僕も海に入った。
「来ないで下さい」
「ごめん、本っ当にごめん。でも……」
でも、何だろう? そもそも謝らなきゃならないことなんだろうか。青木さんの綺麗な身体を見て興奮することが、果たして罪なのだろうか。
考え事をしているうちに、だいぶ追いついてきた。太股の辺りまで水に浸かっているので、早く歩けないのだろう。
……それとも、わざとゆっくり?
「きゃっ!」
突然ぐらり、と彼女が傾いた。あわてて飛び出して、腕を伸ばす。