昔懐かし慟哭スレ P2

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「この屋敷では、こんな事ばかりだな…」
完全な密室と化したエレベーター内で、僕たちは途方に暮れていた。
いつみと一緒に青木さんを捜しに行こうと思った矢先の出来事だった。
エレベーターで二階に向かおうとしたところ、何らかの故障か、誰かの作為かは分からないが、途中でエレベーターが停止してしまったのだ。
格子の外には本来あるべき廊下は見えず、薄汚れた灰色の壁があるのみだった。
「………………」
いつみは、さっきまでは操作パネルのボタンをいじくり回していたが、何の反応も無い事に諦めてしまったのか、今はエレベーターの隅にしゃがみ込んで、じっとしている。
「しばらく待つしかない…な」
「アタシたち、このまま出れなかったら…」
天井にある埃を被った蛍光灯からの光が、いつみの顔に陰影をつくっていた。
前髪が垂れ下がっているため、目元は暗い。まぶたも半分ほど伏せられて、いつもなら無駄なぐらい元気に輝いている瞳には光が届いていない。
「あまり悪い方に考えるなよ。キリがないぞ」
「なんかもっと、色々やりたい事があったのにな…。何でこんな事に巻き込まれちゃったんだろ」
両手で抱え込んだ膝に、ちょこんとおでこを乗せたまま、いつみは黙り込んだ。彼女にかける言葉も見つからないまま、僕は出入り口の格子をぼんやりと眺めていた。
182 :02/02/10 23:48
「このままどうにかなるなら…」
不意に、いつみが立ち上がった。
「? いつみ?」
「アタシ、前向きに考える事にした」
開き直ったかのように言い捨てると、いつみは不敵な笑みを浮かべた。
「それはいいけど、何するつもり?」
「気持ちいいコト」
「え…」
「わかんない?」
そう言うと、いつみは皮ジャンとスカートをあっさりと脱ぎ捨てた。
「実はアタシ…あんたって結構イイって思ってたんだ」
「ちょっと待てって…」
「ヤだ」
いつみは僕の頼みをきっぱり断ると、黒の長袖シャツも床に落とした。
「ホントに襲うぞ」
「いいよ」
少し凄みを込めた僕の言葉に、余裕たっぷりにいつみは答える。
「駄目だって…」
「何で?」
喋りながらも、いつみは服を脱ぎ続ける。
ついに完全な下着姿になってしまった。身体のラインがはっきりわかる。
肌は白く、何のけがれも知らないかのように綺麗だ。うっすらと浮いた鎖骨、充分に成熟した胸、腰からおしりにかけては理想的な肉付きで実にやわらかそうだ。
さすがに恥ずかしくなってきたのだろう、いつみの頬は紅潮していた。
183 :02/02/10 23:53
「えいっ!」
勢いよく、いつみが僕の胸に飛び込んできた。僕の首に腕を回し、間近で見つめてくる。
息がかかるような距離に、いつみの顔がある。赤い頬、ピンク色の唇、そしていつもより少し真剣なまなざし。
「いつ…」
そのまま何か言おうとした僕の口を、いつみは唇で塞いだ。ふたりの距離がゼロになる。僕の視界は、いつみでいっぱいだ。おとなしく目を閉じる。
僕に残った感覚は、いつみの唇の感触だけだった。
唇を重ねていた間、僕はずっと息を止めていた。数分間にも感じたが、実際はその十分の一ぐらいの時間だっただろう。
「ん…」
いつみがゆっくりと離れていく。今度は僕がその唇を追いかけた。
勢い余って鼻と鼻とがぶつかる。そんな事はお構いなしに僕はいつみの唇を貪った。
いつみの下唇を挟み込むように吸う。そのまま舌を差しこみ、歯茎を舐める。やがて、いつみも舌を伸ばしてきた。それを受け入れ、自分の舌と絡め、味わう。
生暖かい、ねっとりとした感触。いつみの口から洩れる熱い吐息。
呼吸さえ、もどかしい。獣のように、貪欲に、僕たちは激しいキスを交わした。