興奮したせいか、僕は少しばかり喉の渇きを感じていた。
「ふう、少し落ち着きましょうか。すみませんが紅茶を頂けませんか」
「は…はい」
愛撫の余韻が残っていたのか、子鈴さんの返事はどこか虚ろだった。
「いいかげんにパンツを穿いたらどうですか?」
意地悪く言うと、子鈴さんは頬を赤く染めて下着を上げる。
「それでは、こ、紅茶を用意してきます」
退室を許可すると、子鈴さんはあわてて部屋を飛び出した。
さて…と。彼女がいないうちに僕はする事があった。
室内の物色だ。
神田川の性格を考えれば、まず間違いなく、ろくでもない仕掛けがあると容易に予想がつく。
あたりを見回すと、さりげない位置に配置してある隠しカメラが見つかった。
これ一つだけではないだろう。
きっと、部屋のあちこちに同じような『眼』を用意しているはずだ。
神田川は屋敷のどこかで、この様子を見ている。
子鈴さんの痴態を楽しんでいる。
「僕も、楽しまなきゃな…」
ベッドのそばに配置されていたドレッサーの中身をあさる。
案の定、というか期待通りの品々がそこにはあった。
「お待たせしまして申し訳ありません。紅茶をお持ち致しました」
それほどの時間も経たないうちに子鈴さんが戻ってきた。
いくらか落ち着きを取り戻したかのように見える。
「いえ、それほどでもないですよ」
僕はソファに腰かけて、テーブルの上にティーセットを並べる子鈴さんのしなやかな動作を悠然と眺めていた。
ティーカップに琥珀色の液体が注がれる。
「砂糖はひとつでお願いします」
「かしこまりました。レモンとミルク、どちらになさいますか?」
「ミルクで」
「はい」
素直に返事をして子鈴さんはミルクピッチャーに手を伸ばす。
「あぁ、子鈴さん。その必要は無いですよ」
「え…?」
怪訝そうな顔をして子鈴さんはこちらを見る。
僕は彼女を手招きした。
「いいから、こっちへ…そう、膝をついて」
ちょうど僕の眼前に、子鈴さんの胸がくるように彼女を誘導する。
「そのまま、じっとしていて下さいね、子鈴さん」
僕は懐から、先ほど見つけたばかりのハサミを取り出した。