[嫡出推定をめぐる判例の変遷 (www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/perinatal.htmlより)
これに対して、実は夫の子ではないが夫の子として育てたいと母が望んでいるようなケースでは、
嫡出推定を解釈によってはずしてしまうことの弊害は大きい。
しかしこの最高裁判決後の裁判実務は、この判例をより広い範囲で適用して嫡出推定を崩す方向に進んだ。
出生後数年経ってから、夫が自分の子として育てる気を失って親子関係不存在確認訴訟を提起するようなケースでは、
夫婦関係が壊れて家庭の平和が失われているケースが多い。
そして懐胎時には実体的な夫婦関係が存在してもその後夫婦関係が壊れてしまっている場合に、
嫡出推定制度の保護の対象外として親子関係不存在確認請求を認める下級審判例が多かった。
嫡出推定制度の存在意義は、夫が自分の子として育てている家庭の平和があるときに、
家庭外の男性が自分の子だと主張することを許すのはいけないが、家庭の平和が失われているときは、
もはやこの制度によって守られる利益はないとする学説が存在し、その学説に従う下級審判決が続いたためである。
この傾向のままでは、AIDによる子が成長した後で両親が離婚したりすると子の身分が覆される危険があったが、
最高裁平成10年8月31日判決家裁月報51巻4号33頁は、
子の生まれる9ヶ月余り前から別居し裁判中に離婚した夫からの親子関係不存在確認請求について、
懐胎時に「婚姻の実態が存しないことが明らかであったとまでは言い難い」として認めない判決を下し、
嫡出推定制度の空洞化傾向に歯止めをかけた。
この事件では、妻側が鑑定を拒絶したために親子鑑定はできなかったが、
心証的には夫の子ではない可能性が非常に高い事件であった。
この判例によって生後一年経過後は人工授精子の身分が守られる蓋然性は一挙に高まったものと思われる。
つまり懐胎した時点で夫婦の仲が崩壊していなければ、かつ夫が生後一年以内に嫡出否認の訴えを提起しなければ、
その子は夫の子であることが確定されるからである。 ]
>894の続き
「懐胎した時点で夫婦の仲が崩壊していなければ」って在るけど、
嫁が不倫し、又、避妊もせず性交渉し配偶者以外にの子供を妊娠した場合、
それは、夫婦の仲が実質上崩壊しているとも解釈出来ないのだろうか?
それは、不倫相手の子供を妊娠し出産した場合、夫に事実が知れた時点で離婚原因(夫婦の仲の崩壊)
になる事は十分に認識出来る事であるから、未必の故意として十分に考えられるのでは?
生後一年以内だし未必の故意として認めて貰えたら裁判勝てないかな?・・・無理かな?