http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/index.html ──HIVの発見を自認する米国・国立癌研究所の
ロバート・ギャロらの研究チームが1990年に、『サ
イエンス』誌(247巻、848頁)に「マウスの内在性レ
トロウイルスとの表現型混合によって拡張された
HIV-1の細胞親和性」と題する興味深い論文を発
表している。これはHIVが遺伝子治療用のヴェクタ
ーに使用される事態を想定して、試しにネズミの培
養細胞に感染させたらどうなるかを観察したものだ
ったが、結果、培養細胞に感染したHIVはその細胞
の染色体内にあらかじめ潜伏していた別のレトロ
ウイルス(=マウス内在性レトロウイルス)と《部品
交換》(=表現型混合)を行なって、そうして誕生し
た新たなHIVは、これまでなら不可能だった呼吸器
細胞などへの感染まで観察されたのである。
つまり、HIVが《空気伝播できるエイズウイルス》に
変身し得ることを実験的に証明したわけだが、この
研究チームは「同実験を厳重な封じ込め実験室内
で行なったからウイルスが漏れ出る心配はない」と
断り書きを入れていた。
こうしたウイルスが、事故や悪意によって環境放出
されることになれば、インフルエンザのように空気
伝播によってエイズが拡散することも当然考えられ
る。(2000年1月20日発行、佐藤雅彦著『現代医学
の大逆説』工学社刊)