Schalke 04 内田篤人 part207

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284名無しに人種はない@実況はサッカーch
 ソファの前のローテーブルに置かれた携帯電話が、シンプルな着信音を鳴らし始める。
 しかし篤人は、自分の電話が鳴っているにもかかわらず、反応する素振りを全く見せようとはしなかった。
「……ウッチー。電話、出ないの……?」
 麻也が内緒話をする声量で尋ねれば、熱い吐息と囁き声が頬を掠めていく。
「……出たくない」
「なんで?」
 わがままな一言に、苦笑しながら問い掛ける。
 麻也の両腿を跨いで座り込んでいる篤人は、ずっと閉じていた瞼をそっと押し上げると、ほとんど触れ合う距離にある唇をもぞもぞと動かして、拗ね声をぽつりと零した。
「……出て欲しいのかよ」
「いや、今は……出て欲しくない、かな」
 と言って散々重ね合わせた唇をまた一度だけ軽く啄めば、もっと欲しいと言わんばかり啄み返してくる。抱き合う二人の体が揺れる度にソファが軋み、篤人の重みの乗せられた太腿には熱が籠もっていった。
 テーブルの上では、留守電を設定していないらしき電話がしつこく鳴り続けている。
 それよりも、まるで美味しい物でも食べるかのように唇が食まれる、その熱心さがどうしようもなく嬉しくて、麻也は篤人のジャージの上から緩く反った背中に手を滑らせ、くびれた腰に腕を回して抱き寄せると、
密着した胸と腹から伝わってくる温もりを感じる中、自らに施されるものと同じだけ熱いキスを返した。
「んっ、んっ、……っ」
 上擦った声、艶めかしい水音。腕に食い込む指の動き、そして力強さ。
 穏やかでいて狂おしい触れ合いに没頭しているうちに、電話が鳴り止んだ。
 ようやく諦めてくれたかと、一旦キスを中断し、黙り込んだ携帯電話を篤人の肩越しに見てほっと息をつく。
 自分に連絡が来た訳でもないのに共犯者じみた罪悪感を覚えつつ、目の前で息を弾ませている篤人の頭に手を遣り、癖のある黒髪に指を絡める。指先に僅かな汗の湿り気を感じながら優しく梳けば、心地良さげに目が伏せられた。
 間近で見る度その長さに驚かされる、濃い睫の揺れる様子を眺めながら、問い掛けを吐息に乗せる。
「……ウッチー、俺とキスすんの好きだよね」
「好きじゃねえし」
 直ぐ様ぱっと開かれた目が、向きになったように鋭い視線をぶつけてきた。
「じゃあ、なんで電話無視してまで続けてくれんの?」