ようやく、しおらしくなってきた韓国サッカー3472
http://www.kfa.or.kr/Japan_kfa/news/news/view.asp?g_gubun=2&g_conid=2008512105337 [韓国へのメッセージ@]日本サッカー協会・田嶋幸三専務理事インタビュー前編
[ 2008-05-12 ]
http://www.kfa.or.kr/kfa_photo/japan_image/200851210535201.JPG JFAハウスでインタビューに応じてくれた田嶋専務理事
KFA公式サイトでは韓国サッカーとゆかりある日本のサッカー関係者にも取材し、韓日のサッカー交流促進と
相互理解をより深める空間にしたいと考えている。その記念すべき第1回目を飾るのは、日本サッカー協会
(JFA)の田嶋幸三専務理事。日本サッカー協会の中枢ともいうべき“専務理事”の立場から、JFAが
掲げる目標やJリーグの現状、さらには日本から見た韓国サッカーや韓国とのサッカー交流などについて聞いた。
―日本サッカー協会(以下JFA)において専務理事という仕事がどのような役割を担っているのかお聞かせください。
「JFAが行なっているすべての仕事を受け持っています。上は日本代表から始まり、下はシニアサッカーや
キッズサッカー、プレーヤー以外でも指導者と審判の養成、社会貢献事業も進めていますが、ようするに
日本サッカー協会が展開している事業のすべてに関わりを持っている役職といえます。もちろんこれらは
会長や副会長をサポートするという意味でもあります。日本サッカー発展のため仕事を進めています」
―それではJFAが掲げる今年一番の目標はなんでしょうか?
「まずはワールドカップ3次予選の突破、そしてワールドカップ最終予選も9月から始まりますから、そこでしっかり
戦って2010年の南アフリカ・ワールドカップ出場権を獲得することが一番大きな目標ですね。そしてもう一つは、
今年8月に開催される北京オリンピックで好成績をあげることも目標に置いています」
―何がなんでも今年は“ワールドカップ出場”と“オリンピックでのメダル獲得”に一番力を注いでいるということですね。
「そうですね。でも結局のところ試合は毎年ありますよね。それが主になることは仕方のないことです。もちろん、
そのほかにも色々なことをやっているんですけれども“表”に出るものは、形として表れる部分になります」
―サッカーの普及とスポーツ環境の充実を目指し、日韓ワールドカップ開催の2002年から『キャプテンズ・ミッション
(以下CHQ)』に取り組んで5年が過ぎましたが、振り返ってみて何が一番変わりましたか?
「現在、全11項目あるミッションの1番目に制定されたのが『JFAメンバーシップ制度の推進』なのですが、
これはサッカーに携わる人々の全てを“サッカーファミリー”として迎え入れ、JFAからのメリットを積極的に提供
することで、JFAとリンクする人を増やし、サッカーファミリーの拡大を目指すという事業です。この事業で
登録者数を増やすことを重点的に実行してきたことが挙げられます。『JFA2005年宣言』では、
『2015年にはサッカーファミリーを500万人にする』という目標を掲げていて、今のところファン登録を実施して
いないので、その人数は含まれていませんが、間違いなく増えてきています。もう一つは47都道府県の協会が
すべて法人化したことも成果として挙げられます。これは何かというと、それぞれの協会が積極的に事業を
行ない、それをしっかりとやっていくことで、経営の透明性や信用度も高まり、規模も大きくすることができる
わけです。JFAだけが大きくなるということは、私はありえないと思っているので、各都道府県が法人格を
取ったということは、『CHQ』が出来てからの一つの成果だと思っています。それが5年、10年先の日本サッカーに
とっては大きな一歩だと思います」
―2004年のKFA公式サイト・インタビュー時、「ゴールキーパー・プロジェクト」、「ストライカー・プロジェクト」など、
JFAがさまざまなプロジェクトに意欲的に取り組んでいることを教えていただきました。ときが過ぎた今、
それらのプロジェクトの成果は? 今後10年の日本サッカーを牽引していくであろう逸材は発掘できましたか?
「まず、『ゴールキーパー・プロジェクト』ではとても大きな成果を挙げています。代表のゴールキーパーはほとんどが
このプロジェクトの出身です。このプロジェクトを始めたことによって、若年層から身長が高くて、身体能力の
高い選手がどんどん育っているので、間違いなく実績として出てきています。もう一つの『ストライカー・プロジェクト』
なんですが、これはとても難しい。まだストライカーが輩出されていないのが現状ですね。5年ちょっとじゃ
育つとは思えないし、時間がかかると思いますが、とりあえず、やるべきことはしっかりやっていきたいと考えています」
―『やるべきこと』というのは具体的にどのようなことでしょうか?
「『ゴールキーパー・プロジェクト』はこれからも継続することで、より多くの才能あるキーパーたちを発掘し、育てて
いきたいと考えています。『ストライカー・プロジェクト』の方は『結果が出ていないじゃないか』ということでやめるの
ではなく、いい選手を集めて競いあわせて、シュートを打つ意識やゴールへの意欲、技術的なことまでしっかりと
教えたい。そこで学んだ選手たちがチームに帰ったときに、ほかの選手にもその意識や影響を与えるという形に
つなげていきたいし、それによって才能ある選手を発掘するチャンスが増えると思いますね」
―現在、JFAがもっとも力を入れている部分は何でしょう。ピッチ内のこと、ピッチ外のことに分けて、教えて
いただけますでしょうか。
「まずは“ピッチ内”のことから話しましょう。技術委員会が中心となって中学校1年、2年になる13、14歳の
子どもたちに何を教えるかということに重点を置いているのですが、まずは“技術の習得”ということを徹底して
います。特に『JFAアカデミー福島』(JFAが2006年4月に開校した中高一貫の教育機関)を立ち上げたん
ですが、そこで中1、2年の子どもたちが何をすべきか。今まで中1、2年はなおざりにされていたことが多かったん
ですが、この年代をしっかり育てないといけないと思ったんですね。そこで学んでいる子どもたちだけを伸ばすの
ではなく、そこで実施している内容をJリーグの下部組織や中学校の先生など、様々な人たちがシェアする
ことで、より多くの選手たちの層を厚くできると思うんです。次に“ピッチ外”のことでいえば、『エリート教育』を
実施していることです。アカデミーの生徒だけでなく、他の選手たちにも指導していることなのですが、ピッチの
外での立ち居振る舞いや礼儀、言語技術などを教えています」
-JFAではアジアサッカーへの貢献も課題として取り上げていますが、具体的にどのような形で貢献しようと
お考えでしょうか? 昨年から取り組んできた「AFCプロリーグプロジェクト」の内容も教えてください。
「『AFCプロリーグプロジェクト』において、JFAの川淵三郎キャプテンが委員長を務めています。川淵キャプテンが
中心となって、専属のスタッフたちがアジアのプロリーグ改革にあたっていて、アジア各国のサッカーを調査しながら、
2009年から始まるアジアチャンピオンズリーグの質を高めようと活動を進めています。各国リーグ戦の評価や
ACLに出場できる国はどのような国なのか、プロリーグはどのような形態をとっているのかなどを調査し、我々が
Jリーグを立ち上げるときに培ってきたノウハウも盛り込むことで、AFCの中でプロリーグを成熟させていこうと
一生懸命に取り組んでいます。ほかにもUEFAなどを対象に調査した内容をいま様々な国に還元しながら
プロジェクトを進めています」
―アジアはとても広く、文化的な部分で考えると大変なプロジェクトに思えますが。
「確かにその通りです。それぞれの国によって文化や宗教などが違うなかで、これらを進めていくことは簡単な
ことではありませんが、トライすることによって間違いなくアジアサッカーの貢献につながると思います。内容的に
いえば、プロリーグがどのように成熟しているのか、例えばプロリーグの位置や法人格を持っているのか持って
いないのか、文化的な違いによってサウジアラビアをはじめ中東の国は王様がパトロンになって運営している
リーグもあるわけですから、一概に日本や韓国の規定のなかで図れるようなものじゃない。そういう部分も
踏またうえで、どのようにしてアジアの中でプロジェクトを推進していくのかが、とても大切だと考えています」
―Jリーグがスタートして15年目を迎えましたが、現状をどう見ていますか? 具体的な成果や課題があれば
お聞かせください。
「いまはJ1が18クラブ、J2が15クラブという形で運営されています。ここにきて成功しているクラブとそうでない
クラブの差が出てきたかなと感じています。それでもヨーロッパや他の国を見ても分かるとおり、リーグ全体が
成熟してくるとそのような現象も起こるのだろうと思っています。現在はJリーグが観客数を上げようと『イレブン
ミリオンプロジェクト』(2010年までにスタジアムの観客動員数を1100万人にする)というキャンペーンを打ち出して
いますが、昨年から今年にかけて観客数の伸びは、かなりいい傾向にあると感じています。ですから、
代表チームの成績が良かろうが悪かろうが、そこに影響はないと思います。例えばイングランド代表がヨーロッパ
選手権やワールドカップに出ようが出まいが、プレミアリーグは盛り上がりを見せていますよね。それと同じで、
Jリーグもしっかりとした土台を作っているので、とてもいい方向に向かっているのではないのでしょうか。
ここ15年の間には、クラブの経営危機、観客数の激減、一時期的に爆発的な人気が出たり様々なことが
ありましたが、今は成熟したリーグになりつつあると感じています」
―韓国のサッカー、Kリーグにどのような印象をお持ちでしょうか?
「Kリーグは過去に何試合か見させてもらいました。2、3のクラブが非常にいい施設を持っているのも知って
いますし、今では下部組織のユースも整備しようというリーグ全体の動きがあるということを感じています。
大韓サッカー協会といろいろな情報交換をする過程で感じることも多いのですが、確か『カタール国際大会』を
突然キャンセルしたこともありましたよね? その理由が『Kリーグから選手を送り出さなかった』とからと聞いて
います。昔は代表戦があればすべてを捧げるような感じで選手を出していましたよね(笑)。でもそういう現象は、
Kリーグが成熟したなかで進んできたからだと思いますね」
―代表とクラブチームの“共存”は日本でも課題なのでしょうか?
「そうですね。韓国と日本はアジアをリードしなくてはならない立場にあります。クラブと代表チームは共存できるし、
そうならなくてはサッカー界の発展はありえません。なので、韓国も日本も代表とクラブの両方を強化、成熟させて
いくことが大切だと思いますね。最近は『韓国もその段階に来ているんだなぁ』と感じることが多くて、大韓サッカー
協会の方も大変だなと思いますが、かならず通らなくてはいけない道だと感じています。我々も大変ですけれども、
ぜひ両協会が協力していろいろなことはやっていきたいと考えています。しかしながら、AFCの方がスケジューリングの
問題などで、なかなか長期的なことを実施できないのが、非常にネックになっているので、そこはCリーグ、Kリーグ、
Jリーグが力を合わせることが大切です。それによってアジアチャンピオンズリーグの発展にもつながります。いろんな
国のリーグがもっと活性化されて、ひいてはアジアサッカーの発展につながりますからね」
―現在の日本代表や日本五輪代表を韓国から見ると、日本は韓国に比べ代表選手招集問題が非常に
スムーズに進んでいるように思えます。韓国ではプロクラブからの反発がありますが、Jリーグから反発はありませんか?
また、JFAはどのように対処しているのでしょうか?
「まずは1年以上前からJのスケジュールを決めるときに、代表とオリンピック優先の期間を設定して、そこだけで
活動することにしています。早い段階で約束事を決めてしまうわけです。もちろん決定するなかで侃々諤々
(かんかんがくがく)ありますが、この数年来、クラブに払うペイメントを高く設定しています。ペイメントをしっかり
払うということや選手がケガしたときの様々な補償や保険を整備しています。大切な選手をクラブから借りて
いるわけですから、そこの部分はしっかりケアするようにしていますね。それによって、事前にしっかりとした
スケジューリングと約束事が取れています。あとはクラブとの様々な契約をきちっと遵守していくことがスムーズな
やり取りにつながると思いますね。今は2009、2010年のスケジュールの進行にあたっていますよ」
(後編につづく)
取材・文=金 明c・慎 武宏