ようやく、しおらしくなってきた韓国サッカー2744

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韓国で“イルボン(日本)”はTV・新聞で毎日溢れかえる“深く特別な記号”

韓国に赴任したばかりのころ、何げなくテレビの三択クイズを見ていて、「イルボン」という
言葉が聞こえるたびに、ドキッとしていたのを思い出す。韓国語では「日本」と「一番」は同じ
「イルボン」。もちろん「ボ」の部分の発音には、れっきとした差があるのだが、日本人には
なかなか区別が難しい。
また何か日本の批判をしているのではないか―。韓国で暮らしていると、メディアの論調に
敏感になる。その過敏さが、クイズ番組を見ている際にもつい現れるのが在韓日本人の悲し
い性(さが)だ。実際、韓国のテレビ、新聞などへの「日本」の露出度は相当なものだ。日本
関連のニュースがない日はない、と言ってもいいだろう。テレビでは「イルボン」の言葉が
あふれ、新聞紙面では日本の略称、「日」の見出しが躍っている。
韓国の人たちの日本への関心は極めて高い。正直、通常日本関連ニュースの7割程度は
否定的な内容で、現在のように竹島問題が浮上したりすると、まさに10割がそうなってしま
うが、これはご存じのように不幸な歴史が背景にある。
日本の現代史を振り返れば、戦争の主な相手国だった米国を中心に、自国の歴史に深く
かかわる外国は複数あって韓国はワン・オブ・ゼムだが、韓国の場合、植民地支配を受けた
日本との関係が大半を占める。日本の一挙手一投足を見守り、何か得るものがあると思え
ば「参考」にし、またおかしいと感じれば厳しく批判する。こんな隣人がいることを日本の側は
あまり意識しないから、激しい反日デモなどをテレビで見て、「一体何で?」などといぶかった
りするのだ。
日韓関係の最大の問題は互いに関する情報の量と質、関心の差だろう。韓流ブームが
情報量の差を少し埋め、韓国側も若者を中心にアニメなどを通じて、現在の日本について
歴史問題とは関連しない質の情報を得るようになったが、竹島問題のような争点が生じると
歩み寄りの機運はどこかに吹き飛んでしまう。
韓国の人たちにとってイルボンとは、特別な記号だ。使われる状況によって憤慨したり、
元気が出たり。そんな深い言葉を持つ隣人たちの姿を私たちも、ただ不思議がるばかりで
なく、正面から見据えるときが来たのかもしれない。 (前ソウル支局・藤井通彦)