返却の手続きが終わると、ACミランが尋ねた。
「借りる選手は、ありませんね?」
「はい」
アラベスがうなずいてUEFAカップ出場権を受け取ると、ヘスス・ヒルが背後から首を伸ばしていった。
「あの、その選手、予約が入っていなければ、借りていきたいんですが」
「コロッチーニ、ですか」
ベルルスコーニは、アラベスが返したばかりの選手をピッチの上で指差して聞き返した。
「はい、彼」
「ミランで使う予定はないと思いますが……」
(中略)
「あの。結局、コロッチーニはどうなさいます?」
ACミランがおずおずと尋ねてきた。アンチェロッティの構想に入っていないことを確認して、
いざ貸し出しをというときに、マスコミが「完全移籍?」なんて話を始めたものだから、
一応確かめてからと、噂が途切れるのを待っていたのだろう。
「あ、借ります借ります」
アトレティコがオファーを出して、コロッチーニは無事にマドリードに渡り、それでめでたしめでたし。
……になると思いきや。
「あら、面白そうね。アレティの後、私も借りようかしら」
3回目のレンタルが終わるなり、今度はビジャレアルがのぞき込んできてオファーを出したものだから、
2001年以来の彼のファンが目を白黒させるのも無理はない。
かつてWY優勝チームのキャプテンが、こんなにもたらい回しにされたことがあっただろうか。
それも、リーガの中堅クラブの間で。いや、ない。たぶん。