〜19〜あの電波ライターの頭蓋骨わって〜19〜

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未曾有の幸運まだ続いている


一夜明けても、まだ興奮の余韻が残っている。

 これまで、日本サッカー界にもっとも欠けていたのは、めざす目標が現実的なもので
あるととらえる感覚だった。マラソンを走ったことのない者には、42.195キロは気が遠
くなるほどの距離に感じられる。実際に走っているという人間が大勢いるということを
知りながらも、いざ自分のこととなると完走できるはずがない、としり込みをしてしま
う。日本のサッカー関係者にとって、W杯は走ったことのないマラソンのようなものだ
った。

 だが、これからは違う。日本人にとって、決勝トーナメントは現実的な目標となる。
次のW杯ドイツ大会は今回よりもはるかに厳しい戦いになるだろうが、それでも、日本
人は今回と同じか、それ以上の成績を望むだろう。そうなって初めて、日本のサッカー
は柔道やかつてのバレーボールと同じ段階に足を踏み入れたことになる。
110 :02/06/16 04:54 ID:VZYNTDO5
 だから、忘れてはいけない。決勝トーナメント進出は、日本サッカーの歴史にとって、
確かに偉業ではある。だが、日本のスポーツには、サッカーよりもはるかに世界で好成績
を残してきた種目がある。日本のサッカーは、まだようやく世界の新参者としてテーブル
の末席につかせてもらったにすぎないのだ。

 あなたは、メキシコのペーニャという選手を知っているだろうか。あるいは、
アメリカのスチュアートという選手を。
彼らは、地元開催のW杯で母国を決勝トーナメントに進出させるゴールを決めたヒーローである。
だが、私は記録をひっくり返してみるまで、彼らの名前を知らなかったし、おそらくは、
世界中の誰に聞いても「知らない」との答えが返ってくることだろう。

 日本のサッカーは、自分たちの歴史には偉大なる一歩を記した。しかし、
この一歩は、日本人が考えているほど、世界にインパクトを与えてはいない。
日本人が、70年と86年のメキシコ、94年のアメリカにインパクトを受けていない以上、
これは仕方のないことである。
111 :02/06/16 04:55 ID:VZYNTDO5
 日本サッカーのレベルがまだそこまでの段階に達していないとわかったうえで、
言わせてもらおう。本当に世界のサッカー史に名前を刻もうと思うのならば、
ベスト4までは進出しなければならない。今回のベスト16は日本にとって素晴らしい結果だが、
しかし、あくまでも日本にとっての偉業でしかない。

 セネガル、スウェーデン、トルコ。日本が準決勝に進出するためには、このうちの
2つを倒さなければならない。簡単なことではない。しかし、日本のエリアだけには、
W杯優勝経験国が1カ国も入っていないのだ。幸運は、まだ続いている。
未来永劫(ごう)訪れないかもしれない、未曽有の幸運が。(スポーツライター)