思い出に残る食事 2

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571もぐもぐ名無しさん
2年前、父が病気で入院した。
ふだんは父と母の二人暮しの実家に、電車で2時間ぐらいのところに住む
弟が戻ってきた。私も休みを利用して遠い街から実家に行った。母と一緒に
父を見舞ったあと、母と弟と私は家で夕食を食べ、TVを見てお茶を飲んだ。

思えばいつも父がいる食卓は、いつ狂ったように怒りだし暴力を振るうか
わからない父の顔色を伺いながらみんな黙りこくって、父が嬉しそうに母の
親族をバカにしたり、私や弟や妹を「バカ、不細工、性格が歪んでる」と
罵ったりするのをただ聞いているだけの時間で、母が作ってくれる食事も
砂を噛むように味気なくて、ただ早く食べ終わって自分の部屋に戻りたかった。

父がいないその日の食卓は暖かかった。いつもは食べ終わったらすぐ部屋に
こもってしまう弟も私も、居間でお茶を飲みながら静かに母といろんな話を
した。いつもはいたたまれない場所が、普通の家族の団欒の場所ってやつに
なった気がした。

父は元気になり、相変わらずの暴君ぶりで、たぶん私はもう父が生きている
間は実家には帰らないと思うけど、あの日母が作ってくれたじゃがいもの
煮物がもう一度食べたい。あの日のように、父がいない食卓で。