思い出に残る食事

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628名無しさん@1周年
厨房時代の冬、家出をした。最初の頃はツレの家を泊まり歩いていたが、
やがて行く所もなくなり、野宿もキツくなり、空腹も限界だった。
そこで、「婆ちゃんの店」を思い出した。
通学していた小学校の前にあった、文房具屋も兼ねる駄菓子屋だが、食料品も置いていた、
俺が幾多の万引きを繰り返してきた店だった。
・・・店に行くとあの頃と同じく無人だったので、容赦なく魚肉ソーセージを万引きした。
やがて、婆ちゃんが出てきたので「ジャンプない?」と聞くと(ないのは分かっていた)、
「ないよ・・・明日だよ」と笑顔で言った。俺は無言で店を出た。
夕暮れの誰も来ない小学校の体育館の裏で、俺は魚肉ソーセージを貪り喰った。
食べながら、情けないやら寂しいやら寒いやらで、涙が止まらなくなった。
そして、俺の家出は終わった。

やがて春が来て、「婆ちゃんの店」の前を通ると「忌中」の紙が貼り出されていた。
俺はそのとき初めて婆ちゃんの名前を知った。

あんな惨めな食事はしたくないと思いながら今まで生きてきた。
もちろん、万引きをやめたのは言うまでもない。