言葉の真意についてあらゆる可能性をこと細かに紹介している。
周囲の人たちから聞き取った話を手がかりに、@海魚と川魚との
ひらき方(割き方)の違いである、A魚のお皿への置き方の違い
である、Bまた、魚の焼き方を表す言葉である、Cいや、そうでは
なくて神様への魚の供え方をいった言葉である、といった諸説に
触れ、D最後に、川は瀬(背)、海は海原(腹)だという語呂合わせ
にも言及している。
著者は「もともとは『海魚は腹から、川魚は背から』と、料理の仕方を言った言葉であった
のだろう」と結論づけているが、@・Bの説に代表される料理の技術論に根ざす言葉なの
か、あるいはCのように心意的な意味合いの強い言葉なのか、興味は尽きない。読者の
一人の私としては、D語呂合わせに端を発するという説も捨て難いような気がするが、こう
いった身近なことわざの真意を追究するという議論にさえ、民俗の本質論にいきつく潜在
性が含まれている。実質的な技術や効能が民俗の本質にあるのか、精神的な神への信
仰が本質なのか、あるいは本来、人々の遊び心が根幹にあってそれが変質していったのか。
http://www.janis.or.jp/users/mitsu/matumura.htm