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ttp://honmononotisiki.jimdo.com/創作/架空映画企画-人国記-その/ 『人国記』本文・現代語訳
和泉国の人は、自堕落の極みのような生活です。
もっとも、千人にひとりかふたり程度はまともな人もいるでしょうが、何のとりえもない人がほとんどで、ましてや名人と呼ばれるほどの人は少ないでしょう。
こういう状態を「世も末」というべきです。
もともと、この和泉国は河内と紀伊の国から土地をわけてもらって出来た国だと聞いています。
まずそのお国柄を見てみると、人を誑かすなどは序の口で、僧侶や他国の商売人が金銀などを多く持っている時には、関東人のように殺して金を奪うのではなく、善人面して油断させた後にどこかに連れてゆくというのが彼らのやり口です。
根が自堕落であるせいで、彼らの生き方は、例えば地金の悪い剃刀のようなものです。
他人の前でこそうまくふるまっているようですが、剃刀で鋼が少ないのと同じで、後の使い道は無いに等しいのです。
この国を滅ぼすには五日もかかりません。
歯向かうと痛い目にあうとさんざん宣伝して、彼らを動揺させてからかかれば、和泉国を攻略するのは簡単です。
信太明神近くには野狐が多く、人をだます能力に長けています。
つまりこの国は、狐に服を着せたようなもので、信用できません。
特に、かつて役所のあった日根(大阪府泉佐野市日根野)の住人は信用するべきではありません。