思い出に残る食事

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31もぐもぐ名無しさん
番台のおばさんが言った。「先生からお代は頂いているからね」
俺はその意味が直ぐには解からなかった。そんな話。
小学校五年生の頃、親父の会社が潰れた。母に引き取られた。
典型的な一家離散だった。広い家に住んでいた頃からは想像出来ないアパート。
勿論、風呂なんか無い。銭湯に行くのは初めてだった。カミソリや排水溝が気味悪く
最初は余り馴染めなかった。ある日番台のばあさんが言った。
「牛乳飲みな 先生からお代は頂いてるからね」お代を払ってくれていたのは
保険の先生だった。いつも優しかったウト先生だった。
水槽の鯉が腹を向けて泳いでいた時、パニックになった俺は鯉を掴み、
ウト先生の元に走って持っていった。そんな時もウト先生は「あららら」と優しい声。
それから、銭湯に行くたびに無料で飲ませてくれた。中の上だった家から転落した児童への
哀れみか?と思った時期もあった。でも今の年になってわかる。誰にでも出来る事じゃないって。
あの牛乳の味を俺は忘れた事が無いです。
いつか会って御礼をしたいと思っています。今、自分の足で立っています。